らいばる・ざ・ろっく!   作:ベーシストベーシストベーシスト

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ギリギリ初投稿です。


らいぶはうす・へ・いこう

 金髪のサイドテールとアホ毛が特徴的なオシャレデカリボン女子、虹夏曰く。

 これから自分のバンドがライブを行うものの、ギターの子が急に逃げてしまい代わりのギターが必要になった。

 そこでサポートギターを探していたところ、偶然ギターを背負いながらたまたま公園で黄昏ていたひとりを奇跡的に発見。天文学的確率であったバンドへの勧誘が今ここで成立した、ということだった。

 

「お目が高い!ここにいる後藤ひとりは中学一年生の頃から今にいたるまで毎日ギターを練習し続けている努力の天才だ!」

「あちょ、ちっ千尋ちゃん!?」

「三年も毎日!じゃあ演奏の腕には期待して良さそうかな?」

「もちろんだ!どれだけハードルが上がろうと、ひとりはその先を行く!」

「えっちょっあのえっと」

 

 ひとりの顔面が崩壊し始めたが、問題はない。

 彼女の腕前がプロ級なのは聞いている私が確信を持って言えるし、彼女の弾いてみた動画の投稿アカウント、『guitarhero』では三万人近くのファンがいる。人前に出しても恥ずかしくない腕前のはずだ。

 ……さっき三万人いった?見なかったことにしておこう。私のアカウントは二万行くかどうかの瀬戸際なのに……。

 

「とにかく大丈夫だ。な、ひとり?」

「えっあっえっと」

「ありがとうひとりちゃん!それじゃ早速ライブハウスへGO!」

「えっあっあ!?」

 

 勢いよく進もうとする虹夏に、ひとりが手を引かれながらも困惑している。

 ひとりを見てみると、すがるような目でこちらを見てくいる。

 まあ、虹夏の誘い方は多少強引だし、ひとり自身もコミュニケーションを必要とする環境に適応できていない。心の準備が出来ておらず不安なんだろう。

 

 なので私はサムズアップで応えた。ウィンク付きだ。

 こんな偶然は二度と起きないだろうし、初対面のメンバーとのライブも彼女ならきっと乗り越えられるだろう。私と何回かセッションしているから不安定にはならないだろうし、期待しているぞ!

 

 私の満面の笑みに何故かひとりはショックを受けていた。

 私の笑顔って不気味なのか……?

 

 

◻︎

 

 

 やって来ました、下北沢。

 街の至る所から溢れ出るオシャレ感によってひとりがスリップダメージを受けているが、ライブハウスが並び立つ良い街で私は好きだ。

 

「さっきは聞きそびれたけど、二人は()()()()……なの?」

「そうだ!」

「あっいや違います……」

「意見が全く違う……」

 

 えっ私たちはライバルじゃなかったのか!?結構ショックなのだが!?

 いや待て、中二の時に二人で約束したはずだから私の一方的な思い込みではないはずだ。となると……。

 なるほど。ひとりと未だ対等だと思っていたのは私だけで、彼女は既に私を超えたつもりだから、私をライバルとして見ていなかったということか。良い度胸だな。

 

「ひとり、私はいつかお前を置き去りにしていくからな、覚悟しろよ」

「えっあっうん」

「どうして急な決意表明!?」

 

 虹夏のツッコミのキレ凄いな、漫才のコンテストに出場できそう。ボケの相方はひとりに任せろ、台本に囚われない予測不可能なボケをアドリブで、しかもノンストップでやれるからな。高尚すぎて理解する人は選ぶけど。

 

「えーと、とりあえず二人は幼馴染なんだよね?」

「それはそうだな」

「あっはい、そうです」

「初めて意見が一致したね」

 

 ひとりとは幼稚園の頃からの縁だ。

 親同士の付き合いもあったから、幼稚園、小学生は一貫して二人で一緒にいた。別にひとり以外の友達が作れなかったからではない。断じてない!……ひとり以外の友達が初めて出来たのは中学生の時だが。

 だが、あの頃の私の友達付き合いがひとりとの関係で完結していたのは事実だ。

 

「あたしにも幼馴染がいるんだ。私と一緒にバンドやってるベースの子なんだけどね。ってそうだ千尋ちゃんもギター弾けるんだよね、一緒にバンドやってみる?」

「絶対に断る!」

「そんなに嫌なの!?」

「あいや、虹夏のことが嫌いなわけじゃないんだ。ひとりとは一緒のバンドになりたくないだけなんだ」

「ひとりちゃんのこと嫌いじゃないんだよね……」

「何を言ってるもちろん大好きに決まってるだろう当然のことだ」

「圧が強いよ、圧が」

 

 一度、ひとりとバンドを組むことを考えたこともあった。だが、それはライバルらしくない気がしたのだ。私はひとりのライバルであることに全身全霊を注いでいるし、今後もそうするつもりだからな。

 

「ひとりちゃん、もしかして千尋ちゃんって変な子なの?」

「スンスン……あっえっと、そうなんですかね……?」

「あーうん、なるほどね……」

 

 虹夏の匂いを嗅いでいたひとりに対しても微妙な反応をした後に「頼む相手間違えたかな……」って呟いたの聞こえてるからな。気持ちは分からんでもないが。

 

 

◻︎

 

 

 やって来ました、STARRY。

 アングラな雰囲気が漂うライブハウスで、虹夏の姉が経営しているらしい。家族がライブハウスを経営してるって凄いな。

 ちなみに、ひとりは暗くて狭い環境が気に入ったようで、妙に落ち着いている。

 

「私の家!」

「いやあたしの家だよ!?」

「……言われてみれば、ここ押し入れと同じ環境か」

「STARRYを押し入れと一緒にしないで!というか、ひとりちゃんの家って押し入れなの!?」

 

 そうは言っても、暗い、狭い、ひとりがいる、の三拍子が揃ってるからな。他に後藤家の押し入れとして必要なのは後藤一家くらいだ。ビルの地下にあるおかげで押し入れ特有の秘密基地感もあるし。

 

「さしずめ、ライブハウスHITOORYといったところか……」

「STARRYをひとりちゃんで染めないで!?」

「虹夏、やっと帰ってきた」

 

 そうやって話していると、奥の方から青髪の少女がやってきた。

 少女と表現したものの、顔は中性的でミステリアスな雰囲気を持っており、性別の判断に一瞬迷う顔をしている。

 それでも私が彼女を少女だと判断した理由はただ一つ。それは一種の直感とシンパシーである。

 

「……お前、私と同じカッコいい系ビジュアルの持ち主なのか。なかなかの顔立ちだな」

「そういう君もなかなか」

「それは私に対する宣戦布告か?よろしい受けてやろう!」

「望むところだ」

「ちょちょちょ、なんで会って早々にバチバチなの!?」

 

 止めるな虹夏。

 これは私たち少数派属性持ちの宿命にして最大の欠点、『似たような属性の新キャラが出たら大体旧キャラが食われる』のジレンマだ。

 しかし、このジレンマは旧キャラが持ち味を進化させて新キャラを超えるのがワンセットだ。

 そう、つまり私は今覚醒イベントの真っ最中なのだ。この少女を倒せば私は更なる高みへとー!

 

「はい二人ともやーめ。それ以上やると他の人に迷惑だから」

「……それを言われてしまうとな」

「勝負はお預けだ」

 

 ふっ、と軽い笑いを付け足した彼女がこちらを見据える。

 なんで勝ったような顔をしているか分からないが、勝負がお預けになっただけでお前はまだ私に勝ってないからな!そこをよく覚えておけよ!

 あとひとり、せめて応援してくれ!隅で怖がられるのも心にくるものがあるんだからな!……いやあれSTARRYのスタッフにビビってるだけみたいだな、良くないけど良かった。

 

「じゃあ改めて。この子はベースの山田リョウ、あたしの幼馴染だよ」

「どうも」

「お前、幼馴染キャラも被ってんのか……!」

 

 やはりこいつとの戦いは避けては通れないようだな。いつか倒して、私は次のステージへと進む!

 

「千尋ちゃん、抑えて抑えて。えーと、紹介するねリョウ。こっちの縮んでるのが後藤ひとりちゃん、代わりのギターの子。で、さっきリョウと火花を散らしていたのがひとりちゃんの幼馴染の園田千尋ちゃん」

「後藤ひとりです大変申し訳ございません!」

「園田千尋だ首洗って待ってろ!」

「挨拶が両極端!というか、ひとりちゃんは怖がらなくて大丈夫だよ。リョウは表情に出にくいだけだから。変人って言ったら喜ぶよ」

「嬉しくないし」

「ほっ本当に嬉しそう……ですね」

「なるほど、それが弱点か……」

 

 呑気なものだな、ひとり。お前が交流を深めている間に、私はそいつへの対策法を一つ一つ覚えていくからな。そして、完膚なきまでに叩く。

 ただでさえカッコイイ系で被っているのに、幼馴染属性まで被ってると聞いたら血が抑えられん。もしかしたら私の先祖は戦闘民族なのかもしれない。

 

「そういえば、店長が時間まで練習しといてって。それと、虹夏が勝手にライブハウス抜け出したの怒りながら買い出し行った」

「ひぃ、帰ってくる前にスタジオ行こ!」

 

 文句を垂れながらも、虹夏がリョウと奥の方へ向かっていった。スタジオがそちらにあるのだろう。

 にしても、二人とも笑ってはいなかったが、口ではライブへの期待が隠せていない。ライブをするのが楽しみなようだ。

 

「ひとりちゃんも!ほら!」

「あっはい!」

 

 ひとりが虹夏の声に反応する。

 そこで私は唐突に気がついた。

 そうか、私はついにひとりのバンドでのライブが観れるのか。

 今まで、ひとりはバンドを組めていなかった。だから、この光景は私がずっと待ち望んでいたものだ。いつか、ひとりが誰かとバンドを組んで、バンドの音楽を演奏する光景。

 演奏するわけでもないのにスタジオに入るのは良くないし、私がライブ前にひとりに声をかけられるのはここが最後だろう。

 なら、ひとりの後押しをしないとな。

 

「ひとり」

「えっなっなに千尋ちゃん」

「お前の演奏を、私は待ってるからな」

「……!うん!」

 

 楽しみだ。

 私のライバルの、初めてのバンドでのライブ。

 彼女が初めて公の場で、夢である『世界平和』を伝えられるのだ。

 ワクワクしながら、私はその時を待つことにした。

 




高評価くれー!感想くれー!
と、私の中の承認欲求モンスターが言ってました。
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