らいばる・ざ・ろっく!   作:ベーシストベーシストベーシスト

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誤字報告ありがとうございます!本当に助かります!
そして、今回から『オリキャラ』タグが本領を発揮します。



どらまー・の・とうじょう

 ひとりの初ライブがあった次の日。

 今日は至って平和な日だ。

 

 昨日が記念すべき日だったので後藤家とともにパーティーを開こうとしたら、ひとりに全力で辞めさせられてしまったことを除けば。

 あんなにも拒否されるとは思わないじゃないか。直樹さんは完熟マンゴーをリサイクルして段ボールギターを作ってたし、私もふたりと一緒にケーキを作ろうとしてたのに。結局、後藤家で赤飯を炊いたくらいでしか祝えなかった。

 

 それはそうと、昨日ひとりはついに念願だったバンド加入を果たした訳だ。今日はSTARRYでミーティングもするらしい。すごい、昨日までのひとりには考えられないような予定が入っている!赤飯を炊こう!

 

 今頃楽しく仲を深められている……のだろうか。正直、今日の朝に何故かひとりが私をSTARRYに連れて行こうとしていたから不安だ。

 もっとも、私はそれを拒否した。私の介護ありきでメンバーと接するべきではないし、そもそも私はバンドメンバーではない。いやまあ、いつかリョウ様にあだ名の恩返しをするべきだろうとは思うが、今日やる必要性は感じない。

 

 結局何が言いたいのかと言うと。

 

「今日から私たちも本格的に活動するぞ!」

「開口一番それを言われても、ボクが話についていけないんだけど」

 

 そう私に返すのは、エメラルドのように透明感のある緑髪のショートヘアーに、縁が黒い眼鏡が特徴の少女。中性的で少年のような雰囲気を持つ彼女こそ、私にとってひとり以外の唯一の友達である西雪(にしゆき)双葉(ふたば)、私のバンドのドラム担当である。

 リョウ様がクール系美青年のようだとしたら、彼女はカワイイ系美少年のような見た目だ。

 

 彼女は私が中学生の時に知り合った人物だ。その辺の路地裏を物悲しげきにウロウロしていたので、ロックを感じてバンドに誘った。

 楽器については素人だったが、この二年間で腕を上げてきているから問題ない。むしろ彼女が自分の演奏を世間に知らせたくてウズウズしていたくらいだ。

 

 放課後、とりあえずその辺のカフェに双葉と集合した私が放った言葉は彼女を大困惑の海に放ってしまったようだ。……長々と喋っていた気がしたが、これ全部私の独り言か。ひとりみたいなことをしてしまった。いや逆に誇らしいことだな。

 

「ひとりがついにバンド活動を始めてな。良い加減私たちも活動すべきだと思ったのだよ」

「……え?あの後藤が?バンドを始めたの?」

「そうだ」

「悪いことは言わないから病院行こうか」

「幻覚じゃない」

 

 ひとりは双葉に直接の面識があるわけではないが、双葉はひとりと同じクラスだ。私が少し、そう少し語っているから気になっていたらしいが、入学式から一週間後に貰ったコメントは『なにあの人外生命体』だった。以来双葉はひとりに関わろうとしていない。解せぬ。

 私が双葉のことをひとりに話していないから、ひとりは私のバンド仲間に恐れられていることは知らない。というか、第一印象が今のままでは会わせるのは気が引けるので会わせないようにしている。

 

「……まあそれが本当だとしても、まだ活動は出来ないよ」

「何故だ!?既にお前はかなり演奏できる腕前だろう!そこら辺のドラマーよりは格段に上手いぞ!」

「褒められるのは嬉しいけども!それ以前の問題があるでしょ」

 

 彼女はそっぽ向きながらそう言う。少し顔が赤いのはまあ、いつものことだ。

 だが、その後に真剣な表情でこちらを見てきた。そして、彼女は忘れがたい事実を言った。

 

「二人だけしかバンドメンバーがいない上に、どっちもボーカル無理じゃん」

「ああああああああああああ!!」

 

 いや、忘れていた訳ではない。別にひとりが人生の大躍進を成し遂げたからって忘れていた訳じゃない。本当だ、勢いで活動を宣言した訳じゃない。

 ……いや少しの間だけ忘れていた。

 

「ボクはボーカルできるほど歌が上手くないし、君の場合はそもそも歌が論外だし」

「……なあ、やはりもう一回カラオケに行って確かめないか?」

「嫌だよ!?まさか君の歌声を聞いた隣の部屋の客が担架で運ばれて行ったのを忘れた訳じゃないよね!?」

「……何も返す言葉がない」

 

 そう、私はオブラートに包んで言うと歌がド下手クソだ。ひとりと一緒に行った時はひとりが自分の体で液状化現象を引き起こしていたし、双葉が言った通りの惨劇を引き起こしてしまったことがある。

 あの茶髪のツインテールの女性、一人でカラオケに来ていたみたいだがあの後無事に帰れたのだろうか。料理もたくさん注文していたし、よっぽどのヒトカラ好きだったのだろうな……。

 

「とにかく!バンドとして活動したいならボーカル探さないといけないからね」

「だなー。……とはいっても既に手詰まりなのだがな。私は当てになる知り合いが全くいないし、お前は」

「うぐっ」

 

 今度は気まずそうに顔を背けた。心なしか顔が青い。 

 そう、双葉も私と同じ人種であるぼっちだ。友達は私以外いない。

 昔はバスケ部に所属していたらしいのだが、今はその時の部員とは疎遠になってしまっているらしいので、その伝手も頼りにすることができない。

 私たちが出会ってから二年間、バンド活動ができないのはこれが主な原因、というかそれ以外を優先して片付けていったせいでこれだけなのだ。

 

「インストバンド路線は」

「バンドが目立たないからボクは嫌だ」

 

 双葉は謎に目立ちたがりな部分がある。バンドをやっているのだって『ビッグになりたいから』だそうだ。そのくせ路上ライブは遠慮するし、ドラムができることを私以外に言ったことがない。多分小心者なんだろう。

 

「曲も一曲できてしまったというのに……」

「なんでメンバーが集まっていないのに歌詞まで書き終わったんだろうね、ボクら……」

 

 あの時は勢いでやってしまったからな。できた後に虚無感に襲われてしまったが、悔やんでもいても仕方がない。とにかく、私たちが今しなければならないことをことをしなければ。

 

「とりあえず張り紙でも出すか?」

「それは賛成。あとは、今更だけどSNSアカウントで募集するとか?ということでバンド用のアカウント動かしてね」

「……バンド用のアカウントの運用はお前に一任してるはずだが」

「……苦手なんだよ、こういうの」

 

 双葉は機械に弱かったのか。とはいえ、私にはさっぱりだから頑張ってもらうしかない。前にギターでやった武田信玄の軍配モノマネを投稿しようとしたら、双葉に全力で止められてしまったからな。大爆笑間違いなしのネタのはずなんだけどなぁ……。前にひとりと『軍配モノマネ選手権』をやったのが懐かしいや。

 

「とりあえず、今できることは待つことくらいだね」

「了解だ……。仕方ない、やはり」

「先に言っておくけど、学校の放送室を乗っ取ってメンバー募集みたいなことはやらないでよ」

 

 私がやろうとしていたことがバレてる!?

 双葉はエスパーだったのか。もしかすると予言する能力も持っているかもしれない。昨日のひとりのファッションを『ダサい』と言い放ったのは、私が思い改まることが見えていたからだったのか。

 普通にダサかった気もしないでもないが、そんな筈はない。

 

「……園田、一個聞いても良い?」

「ん?」

 

 

◻︎

 

 

「じゃあ、また明日だな!」

「うん、また明日」

 

 結局、あの後も議論は平行線のままだった。結論としては『ボーカルを早く探そう』に収まった。というか再確認した、が正しいけどね。

 

 駅の方に歩いて行く彼女を見送りながら、ボクはさっきの会話を思い返す。

 

『園田はもっと上手いドラマーがいたら、その人を誘う?』

『……は?うちのバンドのドラマーはお前だし、二人もドラムいるか?』

 

 面倒臭い質問をしたなぁー、と我ながら思う。あれは彼女の中のボクの存在価値を計るための質問で、答えは変わらずだ。前も似たような質問をしたことがあるが、その時も『お前の代えはいない』と返された。

 自己満足でしかない質問だ。

 

 最近はずっとそうだ。

 彼女に見捨てられないようにビクビクしてる。

 彼女の中にいる自分の存在が軽くないか、ずっと不安になっている。

 

 ボクは中学生の頃、いじめにあっていた。原因については知っている。

 ボクが可愛すぎたことだ。いや冗談じゃなく、一度聞いてみた時の理由がこれだった。ボクは自分の容姿に関して特段意識していなかったが、どうやら周りはそうではなかったらしい。実際、いじめてた奴の好きな奴はボクに釘付けだったらしい。今思い出してもだいぶアホらしい理由だ。

 今よりも周りの言うことを無条件で褒めるような良い子ぶってたのもあるだろうけどね。あの頃のボクは、適当に誉めていれば勝手に仲良くしてくれる人のことを便利に思ってたし。ボクも大概だね。

 ようするに、外見も性格も嫌われる要因だったということだ。

 

 ドラマとかによくある画鋲を靴の中に、みたいなことはされていない。そりゃそうだ、いじめる側も証拠を残すようなバカはしない。

 私も気づかないように根回しされてて、気づいた時には軽蔑してくる目線しかなかった。

 生まれて初めてだった、毎日が恐怖でしかなかったのは。

 クラスはボクが存在しないことを前提に回っていたし、バスケ部でも空気のように扱われてた。結局、バスケ部は中学二年の頃からサボるようになった。

 

 そうして、人生がどん詰まりだった時に会ったのが園田だった。血迷って路地裏に入り込んだ時に、急に手を引かれて、急に大声で勧誘された。

 

『お前、中々ロックな目をしてるな!私と一緒にバンドをやらないか?』

 

 バンド。私にとっては晴天の霹靂だった。

 

 あの時の園田の言葉に乗って、今のボクがいる。

 ボクがバンドをやっている理由は二つ。

 

 一つは、バンドで有名になって、あの時にいじめていた連中を見返すこと。

 今でも、あの時の連中は怖い。見つかるかもしれないとSNSのアカウントを運用するのが怖いし、路上ライブで見つかって、馬鹿にされるのも怖い。

 でも、いつか連中が敵わないような、有名なバンドになって。見返してやるのだ。

 

 もう一つが、園田と一緒にいたいから。

 ボクが今生きているのは、冗談抜きで園田のおかげだ。

 二人でバンドについてあれこれ話して、楽器の練習をして、曲について議論して。バスケ部で過ごしていた時間なんかよりも、何千倍も充実していた。毎日、生きててよかったって思えるような、退屈で、地味で、変わり映えのしない、輝かしい毎日だった。

 

 園田は私にとって親友で、救世主だ。

 

 ……だから、後藤のことは受け入れられない。

 あいつは無条件で園田に好かれてて、多分愛想を尽かされることなんて未来永劫ない。ボクと話してる時だって、園田は耳にタコができるほど同じ言葉を言ってきた。

 

 ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが、ひとりが。

 

 同じクラスになった時も、彼女に対する感情は敵対心しかなかった。

 へらへら笑って、ビクビクと周りを警戒して。……ボクを見ているようだった。

 もっとも、その後に溶け始めたから理解が追いつかなかったけど。人間って液体になれるものなんだね。思わず教育テレビを見返したくなってしまったよ。

 

 園田がライバルらしくない、とかいって後藤とバンドを組まないのは、元を辿ればボクのせいだ。同じバンドにいると仲良しになるだけだぞ、とかそれっぽい言葉をつらつらと並べて。

 ボクが、後藤と一緒にバンドをやる園田を想像したくなかっただけだろうに。

 

 いつかバンドで有名になって、いじめてきた連中を見返す。

 そんでもって、園田の中のボクの存在を、後藤と同じくらいにする。

 

 そのためにも、まずはボーカルを探さなきゃな。




落ち着いて聞いてください。
気づいたらいつもよりも多い字数で、当初の予定よりも重めの感情を持っていました。
ぼざろの登場人物って全員配置に隙がないから、主人公のバンドメンバーがオリキャラくらいしか思いつきませんでした……。やめて、石を投げないで!
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