らいばる・ざ・ろっく!   作:ベーシストベーシストベーシスト

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同日模試から帰ってきました。受験生って忙しいんですね。

(2023/01/19 追記)一部シーンを加筆しました。


ばいと・を・しろ

 とりあえず虹夏からはリョウ様と拭き掃除を任された。モップを使って床を拭けばいいらしい。

 一方でひとりはドリンクの仕事を覚えるようだ。不安だが、ひとりが昨日の自分よりも進もうとしていることが何よりも大事だ。何かあったら虹夏に任せよう。

 

「じゃ、よろしく」

「よろしく頼む!」

 

 こうして考えてみると、リョウ様とは話したことがあまり無いな。虹夏とはちょこちょこと話しているが、リョウ様とまともに話したのは初対面の時とあだ名の時だけだ。

 

「改めまして、園田千尋だ!ひとりにあだ名をつけてくれた大恩は必ず返す!」

「おー、これはご丁寧に。改めまして、山田リョウです。……恩返しって今すぐにできる?」

「もちろん!私にできる範囲なら何でもやるぞ!」

「今何でもやるって言った!?」

「急に近づかれると怖いな……」

 

 私が『何でもやる』と言ったら、リョウ様が急に顔を近づけてきた。心なしか目も光っているような……というか、近い!

 まあ、私は恩を仇で返そうとするような人間ではない。恩人には行動を持って恩を返すのが原則だからな。

 

「無論だ!私、園田千尋にできる範囲のことであれば何でもやろう!」

「じゃあこれ」

「…… モップ?」

 

 急に仕事道具を目の前に突き出されても意味がわからないのだが。

 まさか、これを使ってエアギターをしろということか?確かに一時期エアギターを練習していた時期はあったが、あれはギターを弾き始めた頃の現実逃避の行動だ。あまりやっていて面白いものではないんだよな。

 

「仕事よろしく」

「……いや、仕事は二人で分担するのでは」

「恩人のために働いてくれ」

 

 そう言い放った後、リョウ様は手に持っていたモップを放り出し近くにあった椅子に腰掛けた。

 いやあれ全体重を乗せて座っているし、なんなら腕と足の両方とも組んでいる。冗談とかじゃなくて本気で私に仕事を頼んでいるようだ。

 

 確かにリョウ様はあだ名の大恩人だ。彼女に可能な限りであれば何かをすると言ったのは私だし、掃除程度で恩返しになるのであれば私だって喜んでやろう。

 

 ただし、これが仕事ではない場合だが。

 

「これは仕事だ。雇用主である店長さんから私たちに指示をする権限を譲渡されている虹夏に命令されたことにより発生している労働であり、私たちは労働の対価として賃金を得ている。今回の私はボランティアだが、そうでないリョウは賃金が発生している。ならば、自分でやれる範囲の仕事を最大限やるのが義務だ」

 

 私の言葉に、リョウは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。どうしてそんな意外そうな顔をしているのだ?

 

「てっきり千尋はこっち側だと思ってた」

「どっち側だよ」

 

 よく分からないが、仕事をしないリョウの同種だと思われていたらしい。もしかしたら、私が恩でタダ働きすると思ったのかもしれない。

 

 そんなわけないだろう。私たちは賃金を得る代わりに労働をしているのであって、ならば賃金を得ることへの対価として最大限の労働を雇用主に提供する必要がある。今までも本来のバイト先の店長に頼まれた仕事は断っていないし、急なシフトにもできる限りは入るようにしている。

 そしてこれは全ての労働者に当てはまるわけで、それは例えば目の前で未だに椅子に座っているリョウのことだったりする。

 

「労働しろ。バイトの給料分は働け」

「これが恩人に対する態度だというのか……!」

 

 そんな拳握り締められながら血涙流されても。

 

 というか、もしかしてリョウってろくでもない人なのか……?

 

 

◻︎

 

 

「うっ、腹が痛ぇ!休んでくる!」

「学校を休みたい時のひとりと同じ空気を感じるぞ」

 

「急用ができた!ちょっと抜けてくる!」

「さっきまで虚空を眺めていただろう」

 

「あっ、あそこにUFO!」

「えっどこどこ!?もしかしてあっち……おいモップを放り出して逃げるな!」

 

「それじゃあ、受付の仕事の説明するね」

「……あ、ああ。頼む」

「……?もしかして疲れてる?」

「元凶が全く心当たりないの怖いな!」

 

 前言撤回だ。

 リョウは『ろくでもない人かもしれない』ではない、『ろくでもない人』だ!しかも私が今まで会ってきた人たちの中でも群を抜いてクズだ!労働を何だと思ってるんだこいつ!あの後藤家のなんちゃって大黒柱こと直樹さんは窓際族なのに一家養えるくらい仕事してるんだぞ!少しは見習え!

 ……いやあの人を仕事で見習ったらダメだ。窓際族に配属されている時点で察せる。人間としては尊敬すべき人なんだけど、それ以外の部分が残念というか……。

 

 一旦切り替えよう。目の前にあるクズと頭の中にいるおっさんを思考から外そう。

 

 あの後、拭き掃除が一通り終わった(七割ほど私がやった)ので虹夏に指示を仰いだところ、リョウと一緒に受付をしてほしいとのことだった。途中でひとりが隣でギターを弾いていたが、感動的な旋律だった。また新しくひとりのアルバムを作れるな。

 

 よし、切り替え終わり。労働をしよう。

 

「とりあえず、やり方を教える。そしたら後は全部頼める?」

「頑なに私に仕事させる気だな!?」

 

 何がお前を突き動かすんだよ!ここまで来ると執念だぞ!?

 

「……店長に良いところ見せたほうがいいでしょ?」

「お、お前……」

 

 まさかリョウは私に仕事を任せることによって、店長の私に対する印象を良くしようとしてくれていたのか……?

 確かに、さっきの件は許されたと言われたが、言葉と心は分けられるものだ。店長さんは優しい人だが、まだ傷ついていて私のことを許していない可能性もある。それを考慮して……?

 

「リョウ、お前……」

「私のことは気にするな。君の道を行くんだ!」

「ああ、ありがとう!」

 

 リョウのその想い、無駄にはしない。私は全身全霊を持って、リョウの分の労働にも励むとしよう!

 

 ……あれ?いつの間にかリョウの分の仕事もしてるような。

 

「そういえば、千尋はぼっちとバンド組まないの?」

「急だな。まあ、私はひとりとバンドを組む気はないな」

「気になってたから。二人とも仲良いし。……理由とかあるの?」

「仲が良いと言われると嬉しいな。……理由か」

 

 確か、双葉に『ライバルなら、一緒に歩むよりも目の前で敵になったほうがいいよ』と言われたことがきっかけな気がする。

 双葉には背中を押してもらっていたわけだな。

 

「ウチのドラマーにアドバイスをされてな。ひとりと対決したほうがライバルっぽいと」

「……ライバルっぽい?っていうか、千尋はバンド組んでたんだ」

「私とそのドラマーしかいないから活動していないんだけどな……。Starryって貼り紙とか許可されてるか?」

「メンバー募集なら店長に許可取ればいける気もする」

「ならちょうどいいや。さっき貼り紙を書いてきたから許可取りに行こうよ」

「おお、仕事が早いな」

「ボクは真面目だからね」

「お前もそこまで……ってうわああああああああああ!?」

 

 びっくりした、なんで双葉がここにいるんだ!?

 

 受付の前にいつの間にかいたのは、制服姿のままの双葉だ。トレードマークの黒いメガネもつけているから間違いない。

 

 いや、本当に何でここにいるんだ?STARRYに私がいるって連絡してないよな?

 もしかして『おっ噂をすれば……』的なあれか!?だとしたらすごい感知性能だ、少なくとも下北沢全域が支配下に置かれていることになるからな。

 というか、なんでリョウは驚いてないんだ。急に生えたんだぞ?

 なんでそんな二人でお辞儀し合うような精神状態でいられるんだ?

 

 とりあえず、冷静になれ園田千尋。今日ずっとテンパってる気がするが、頭を冷やすんだ。

 現状最悪なのは双葉がひとりと会うことだ。二人の初の会話なのに双葉側の認識が『ダサい人外生命体』なのはひとりの精神衛生上よろしくない。それは避けるべきだ。ならば私のするべきことは……。

 

「千尋、喉が渇いた。ドリンク持ってきて」

「……!りょ、了解した!任せろ!」

「園田、君こんな狭い場所でクラウチングスタートできるのか……」

 

 ナイスだリョウ様、やっぱりお前は大恩人だ!

 

 とりあえずリョウ様の為のドリンクを持ってくる時に、ひとりをゴミ箱なり冷蔵庫なりに詰めれば問題解決だ!私は冷静かつ合理的、今ならミレニアム懸賞問題も解ける!

 私は今、最高に頭が回転しているぞ!




先に言ってしまうと、次回がいつになるのか分かりません……。申し訳ない。
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