勝利特急、カツタダイスカイ   作:だぶるすたぁ

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青春18杯(春)(はるのせいしゅん18かっぷ):マケタダイスカイ

 オザークさんに勝って浮かれていたのかもしれない。

 あるいは、早く出過ぎたのが悪かったのかもしれない。

 

「貫きなさい。《エアロストリーム》」

 

 そもそも、現役最強と言われる鳥飼(オサ)天帝(ロード)が同じレースに出ることなんかわかりきっていたのに、そのレースにぶつけていったのが間違いだったのかもしれない。

 

 いかんにせよ、私は。

 現役日本最強選手、ビシャスオサナジミ号に負けた。それは紛れもない事実だった。

 


 

【青春18杯(春)】やっぱり強かった! ビシャスオサナジミ、4連勝の凱旋

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4/3(土) 15:45 配信

               

 

 

 

 

後続を大きく引き離しガッツポーズをとるビシャスオサナジミ(記者撮影)

 

◆春の青春18カップ(694M、21日)

 

 今年度初の長距離戦線。国内最長レースたる春の青春18カップは、メートル換算すると1000kmを超える超長距離レースだ。その長くて短いレースを制しビシャスオサナジミ【帝国】が4連覇を果たした。

 

 現役最強の座を賭けたレースは一桁世代期待の新人、ナンプウメモリアル【ゴールデンエイジ】がエンジントラブルでいったん線路を降りスタートをやり直すという波乱があったが、ノーザンフィールド【一体、陣馬】が抜群のスタートを決めて敢然と先頭に。9番線10号車という不利なスタート位置をものともしない逃げは他の選手たちに「俺についてこられるのか?」と言っているようにも見えた。

 

 往路の丹那トンネル、ノーザンフィールドが後続に1マイル以上の差をつけての道を切り拓く。ビシャスオサナジミは中団やや後方にいた。スタート位置にしては後ろすぎるかのようにも思えたが、その走りに焦りは全く見られない。むしろ逃げるノーザンフィールドや直前を走る2年連続G2の実力者カツタダイスカイの動向を確認しながら、アタックをかけるタイミングをうかがっていたのだろう。

 

 往路野洲時点でも悠々と逃げるノーザンフィールドの勢いは衰えることなく、その無尽蔵なスタミナに追う後続が苦しくなっていたかのようにも見えた。そしてそのままの勢いで大阪をラケット状に折り返し、勝負は後半戦へ。逃げ切り勝ちを戦術の核の1つとするノーザンフィールドにとってはお誂え向きの流れを掴んだかに思えたが、後続も黙っちゃいない。復路岐阜のコーナーを通過してから試合は大きく動き始めた。

 

 まずはスタートをやり直したナンプウメモリアルがアタックをかけはじめ、続けて複数のランナーが追走する。ナンプウメモリアルは集団に吸収されはしたものの、ノーザンフィールドのリードは縮むことになった。続けて断続的に複数のランナーが百マイル以上にわたってアタックを継続し、その中ではじめに吸収されることなく抜け出したカツタダイスカイがロングスパートでノーザンフィールドの影を掴み、復路不動山トンネルを過ぎた先で追い抜いた。

 

 更にその後ろからはビシャスオサナジミが猛烈なアタック。ノーザンフィールド、カツタダイスカイの両者に並ぶ暇すら与えずに追い抜く姿は、まさに天帝の貫禄を見せつけるものとなった。

 

 そして迎えた関東平野はビシャスオサナジミの独壇場となった。後からカツタダイスカイが抜き返さんと懸命に追い上げるも、その差は縮むことなく開くばかり。最終的にビシャスオサナジミは後続を一切寄せ付けることなく先頭でゴール、当競走4連覇を果たした。

 

 感想を求められると、「4連覇という偉業を達成できてうれしい」とビシャスオサナジミ。一方2着カツタダイスカイは自身のSNSで敗北宣言をし、3着ノーザンフィールドもビシャスオサナジミの偉業を称えた。

 

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「大丈夫?」

 

 朝の電車の中で、隣に座るサク姉ぇがそう声をかけてくれた。

 

「……大丈夫。今日一日でなんとかとりもどすから」

「ならいい。でも、ダメそうなら教えて。早引けしてでも、駆け付ける」

「いいってば」

 

 サク姉ぇの仕事は大事な仕事だ。いつサク姉ぇを――いや、佐倉空というトレイナーが緊急に必要になるかわからない。でも、そんなトレイナー達がいるからこそ、私達はクィムガンに怯えすぎることなく過ごせているのだ。

 だけど姉さんたちと違って、私は――自分のエゴで動いている。誰かを助けたいとか、社会の役に立ちたいだとか、そんな高潔な動機でこの仕事を選んだわけじゃない。

 いったい私の仕事――レールレーサーというのは、どういう役割を社会に与えているんだろう。現代レールレースを興したスウィンドンのRhuddlan(リズラン) Castle(カースル)号、ダービーのThe() Lancer(ランサー)号、ドンカスターのSt(サン) Simon(シモン)号の3名は、日本においてその導入に尽力したに尽力した浜松(ハツ)帝王(キング)、ヒカリエターナル号は何を考えてたんだろう。Ozark(オザーク) State(ステート) Zephyr(ゼファー)号に先着したからと言って、私が彼女より優れてるなんてことがないなんてのは、こんな些細な悩みを抱いて、そしてその答えをまだ見つけられてないことからも明らかだよね。

 

 私は、からっぽだ。

 エクスプの後を追ってこの世界に入った。でも、彼を追い越してしまってからというもの、私は目的を失った。

 エクスプだったら、この問いになんて答えてるんだろう。

 私は強い、それは客観的な事実。だからこそ、(グループ)1という希望が見えてるんだ。そして届かなかったとはいえ、現役最強のビシャスオサナジミ号の背中も見えちゃってる。それらの()()()()()()()だけが今、私をレールレースの世界に縛り付けてる。

 

『まもなく、新小平、新小平。お出口は左側です』

 

 電車の自動放送が、サク姉ぇの降りる駅が近づいていることを知らせながら私の思考を遮ってくれた。

 ……だめだ。自分がそんな無価値じゃないってことはわかってる。なのにいざ負けてしまうと、こんな仕方もない思考の無限回廊にとらわれて、そして私を評価してくれる方たち、ファンのみんなを裏切るような評価を自分に与えちゃう。こんなんじゃだめだよね。

 列車は駅に滑り込む。そしてサク姉ぇは私の顔を心配そうに覗き込んでから、「それじゃ、行ってくる」とだけ残して出勤していった。

 そして電車は走り出す。何度か選手として走ったこの武蔵野線も、乗客として乗ると文字通り見える風景は全然違ってて。それはきっと、車の頃にこの線路を走った者たちに言わせれば、その感覚とも違うんじゃないかな。

 

「お客様ー、府中本町(ふちゅうほんまち)ですっ! 終点ですよー!」

「あっ……すみません」

 

 どうやらまた、私は周りが見えなくなっていたみたいだ。声をかけてくれた駅員さんに頭を下げて電車を降りる。

 ……さて、どうしよう。私の状態が不安になったサク姉ぇが出勤ついでに連れ出してくれただけで、今日どこに行こうかだとかそんなことは一切決めてない。とりあえずその辺でもぶらついてみようか。そう思いながら私は改札を出て、なんとなく左の方へ歩き始めた。

 

 府中の風が顔を撫でた。

 府中、国分寺、そして国立……スピードの向こう側を目指した技術者たちはこのあたりに集まって、かつて夢の超特急、新幹線を完成させた。彼らも同じ風を感じていたのだかな……なんてかんがえてたところで。

 

 急に左から強い衝撃を受けて、私は横断歩道へとふっ飛ばされた。とっさに受け身をとって着地すると、そのやってきた方向から若い男性の声が聞こえた。

 

「何やってるんすかカイザー! と、お姉さん、大丈夫っすか?」

 

 ぶつかってきたなんらかの管理者か何かだろうか。

 体を起こしてそちらを見れば、声から予想した通りの青年が1人、ローラースケートを履いてこちらに近寄ってきていた。

 

「私だからよかったけど、これが普通の人間だったら怪我じゃすまなかったよ?」

「いや本当におっしゃる通りっす。……こういうものでして、何かお体とかに不調があればいつでも連絡してほしいっす。……ほらカイザー、謝罪するっすよ」

 

 そう言いながら彼は私に名刺を渡すと、カイザーと呼ばれていた子を叩き起こして、引っ張り上げた。

 って、これ……。

 

 独立行政法人日本ノリモン研究開発機構(Japan Reserchment of Norimon Agency)

 国内事業本部 安全保障課 ノーブル

 認定トレイナー

 名松 一志 Ichishi MEISHO

〒187-85XY 東京都小平市小川東町A-B-C 

JRN7号館301 

TEL:042-3WZ-NRMN/FAX:042-3WZ-TRIN 

 

「JRNのトレイナーさん?」

 

 そう呼びかけると、名松さんはカイザーを担ぎ上げながら答えた。

 

「お恥ずかしい事をしてしまったっすけどね。事務の方には伝えておくので、お名前をいただいても」

「あー、それなんだけど……」

 

 どうしよう。いつも通り軽く変装とかしてるし、一応私ってそこそこ名前は有名だし。

 そう答えに困っていると、名松さんは名前を言いたくないのだと判断したようだった。

 

「言いたくないんでしたら今日の日付と下河原(しもがわら)緑道の件って言って頂ければ……」

「そうじゃなくって! こんなところじゃ何だし、せめて公園とかで落ち着いて話したいかなーって」

 

 そう伝えると名松さんは辺りをきょろきょろと見まわし、そして顔を僅かに赤らめた。

 

「……そっすね」

 

 それから名松さんの案内で、衝突した緑道を南下する。彼曰く、この緑道は砂利を運ぶための貨物支線の廃線跡で、ランニングには適しているからカイザーを連れてきていたのだという。確かに途中、鉄道の廃線跡にしか思えないような左カーブの分岐――彼曰く、今は無き東京競馬場前駅へと続く更なる支線の跡らしい――があった。そしてこれまた廃線跡らしい右カーブに差し掛かると、ここで少し道を外れた先にある静かな公園へと案内され、そこのベンチに私達は腰を落ち着けた。この間ぶつかってきたカイザーは常に無口で、名松さんに抱えられて運ばれていた。なんというか、気難しい子だ。

 

「いや本当にすみませんね」

「大丈夫、私はこの通り元気だし。気にしてない。それに、ここならいいかな」

 

 ポーチをおろし、中からケースを取り出して黒いカラーコンタクトを外すと、その奥からは燃える勝熱(じょうねつ)のような赤と未来のような青のオッドアイが姿を現す。そしていくつかのワンタッチエクステを外したら……あ、驚いてる驚いてる。

 

「えっ? あっ」

「名前、伝えてなかったよね。私はカツタダイスカイ」

「あのG(グループ)2の防衛に成功した……!?」

 

 すると名松さんはベンチから降りて飛び上がると、アクロバティックに両ひざとつま先、そして手先の6点着地をきめた。俗にいう土下座である。

 

「いや本っ当に申し訳ありませんでしたっっ」

「だから気にしてないってば。それより……」

 

 そして私は未だに拗ね続けているカイザーの方を向いた。

 

「名松トレイナーからはともかく、君からの謝罪の言葉は1つも受け取ってないんだけど?」

「なぜ謝る必要がある? そっちが進路を閉塞してきたんだろう」

「こらカイザーっ! 君の主観じゃそうかもしれないっすけど、客観的には悪いのはカイザーっすからね?」

 

 やっと口を開いたかと思いきや、このカイザーというノリモンはこうだ。怒りを通り越して呆れるというか……。

 

「お仕事、ご苦労様です」

理解(わか)るっすか……。理解っちゃうっすよね」

 

 それはもう、本当に。今さっきので彼もまた被害者なんだなってことがなんとなく察せられた。

 私も成ってすぐの頃はトレイナーさんにかなり手をかけさせてしまった。けれど、目の前のカイザーほどでは流石になかったよ?

 まぁ、姉さんたちの同僚――つまりは名松さんの同僚でもある――によると、こういう子ほど自分の心を強く持っている訳だから優れた才能を秘めている可能性が高いのだそうだけど。

 

「おい一志、さっきからどうしてそいつに」

「ねぇ、こいつ理解らせていい?」

「そうしてくれた方がこっちも助かるっすね」

「話を聞けぃ!」

 

 打って変わってなんとも賑やかな奴である。さっきまでめちゃくちゃ拗ねて口も聞かなかったのに。

 まぁ、こういう驕り高いお調子者には、特効薬は決まっているもので。

 

「わかった、ならば勝負をしよう。負けた方が勝った方に謝る、ということで」

「ふん、いいだろう。俺は負け犬とは違う」

 

 うん、ちょろい。まだなんの勝負なのかも告げてないのに乗ってくるあたり、単純というか天然というか。これには名松さんも後ろで苦笑いを抑えきれていない。頑張れ、トレイナー。

 

「勝負の内容は……そうだね、公平を期すためにあなたのトレイナーにきめてもらおっか」

「えぇっ! ちょっと、カツタさん!?」

「異論はない」

「カイザー! ……まったく、しょうがないっすね」

 

 ごめん、名松さん。あとでもらった連絡先に何か送るから。

 そう心の中で謝りながら、私は彼の方を見つめた。

 

「じゃあふたりには……『レース』をしてもらうっす」

 

 コホンと咳払いをしてから、名松さんはそう発表した。

 それ、私に有利じゃ?

 

「私、G2だよ?」

「構わん。この俺はいずれG1を得る者だ」

 

 なぜか自信満々でそう宣言するカイザー。まぁ、彼が納得してるなら別に私はいいんだけど。

 そして私達は、名松さんに連れていかれる形で多摩川の河原へと案内された。

 

 のだが……。

 

「ここは……?」

『府中多摩川かぜのみち』っす。ここ是政(これまさ)橋北の交差点から稲城(いなぎ)大橋の下の水門、北多摩一号水門までのおよそ2.4km……いや、1マイル(40チェーン)って言った方がいいっすかね。もちろん他の通行者とか自転車とかにはぶつかっちゃだめっすよ」

「それはいいんだけど」

「おい一志、線路はどこだ?」

 

 私の疑問を代弁するように、カイザーが尋ねた。

 

「遊歩道にあるわけないじゃないっすか」

「ならどうやって走ればいいのだ!?」

「その2本の足はなんのためについてるんすか?」

 

 ……あぁ、なるほどね。そういうことか。

 名松さんの言いたいことは理解した。レールレースにおいて、足を動かして前へと駆け出すことは車輪を回すのと同じくらい重要な要素だ。だけど、成ったばかりのノリモンとかだと今まで車輪だけで走ってきたわけだから、それらを組み合わせるという発想にはならないことが多い。結果として、足を動かさずに車輪だけで走るノリモンのできあがり、になるってこと。

 もちろん、そんなんじゃレースには勝てるわけがない。名松さんはそれを理解らせようとしているのだろう。

 

「聞いてないぞ」

「言ってないっすから」

「私はいけるよ」

「ほら、彼女はこう言ってるっすよ? それとも、自分で一度快諾した勝負から逃げるんすか?」

「わかった、走ればいいんだろう、走れば!」

「いつもこれくらい素直だと嬉しいんすけどね……」

 

 名松さんの指示に従って、スタート位置に構えて左足をぐっと後ろに伸ばす。するとカイザーは私の姿勢をまず見て、同じようにした。……そこまで知らなかったか。

 

「それじゃ行くっすよー! 位置について、ヨーイ……どんっ!」

 

 その掛け声とともに、私は走り出した。通行量も皆無とはいえない道だし、まぁ40mph(マイル毎時)弱、マイル半だから140秒くらいのペースで……。

 だけど少し走って、どうも様子がおかしいことに気づいた。まだ走り出したばかりだというのにカイザーが追ってくる気配がない。さすがに前から自転車とかジョギングとかが来ているので後ろを見るのは危険だからしないけど……。

 そしてゴールの水門に辿り着いてから後ろを見たら、そこにカイザーはいなくて、そして5秒くらいしてから先に名松さんが来た。どうして。

 

「あの子は」

「遅いんで先回りしてきたっす」

「えぇ……」

 

 いやいくらローラースケートを履いてるとはいえ人間より走るのが遅いって、どうしてそんなんなのにあんなに自信満々だったのさ。

 

「ふだんからこうなの?」

「車輪使ってるから速いんだって言って負けを認めないんすよ……あっ来たっすね」

 

 なんとなくそんな気はしていたけど、見えてきたカイザーのフォームは、それはもうお粗末なものだった。うーんこの。

 だいたい、生まれた時からずっと人型で生活しているのが人間なんだから、同じ人型になった私達は彼らから学んだ方が効率がいいなんてことは、少し考えればすぐわかることだ。どうもそこまで頭が回っていないからこんなことになってるんだろうけど。

 

「お疲れ、カイザー。さて、完走した感想はどうっすか」

 

 名称さんがそう聞くも、カイザーはなにも発しない。また拗ねているのだろうか。

 名松さんはため息をついて、カイザーの後ろに回って肩に手を置いた。

 

「いいから謝罪するっすよ」

「くっ……済まなかった」

 

 そう言うとカイザーは、ほんの少しだけ体を前に傾けた。その後ろでは申し訳なさそうに名松さんがもう片方の手を額に当てている。どこまでも強情な奴め。

 ま、その言葉が聞けただけ、トレイナーの名松さんに免じて良しとするか。

 

「これに懲りたら、ちゃーんとトレイナーさんの言うことは聞きなさいよ?」

 

 カイザーはばつが悪そうに振り向いた。目線の合った名松さんは静かに頷く。

 そしてカイザーはようやく、私の言葉を受け入れた。

 

「そうしよう。……だが! ここで負けて終わるネオトウカイザーではない! デビューした暁には、カツタダイスカイ号! レールの上で先着してみせよう! 先日の()()()()のようにな!」

「……ナジミ姉?」

 

 ちょっと待って。なんかとんでもない名前が聞こえたような気がするんだけど。それって、まさか……?

 

「知らんのか、鳥飼の天帝、ビシャスオサナジミ号を」

 

 やっぱり。

 彼女の弟分ってことは、この子もしかして【帝国(セントラル)】の関係者だったり?

 ……へえ。面白いじゃん。まともに走り方すらわかってないこの子がどこまで強くなれるのか、興味が湧いてきた。

 

「知らない訳ないでしょうが。でも、()()()()()? わかった。同じレールを走る時を楽しみに待ってるから」

「逃げ出すんじゃないぞ」

「レールの上で逃げることはあっても、レールの上からは逃げないよ」

 

 気の難しい子ではあるけれど、悪い子ではない。それが私が抱いた、ネオトウカイザーというノリモンに対するこの日の最終的な印象だった。

 

 それに。

 

 追われるっていうのは、案外気持ちがいい。

 こうやって私の背中を追ってきてくれる子や、応援してくれるファンの方たちがいる。そのことを、彼らは改めて私に気づかせてくれた。

 

 ビシャスオサナジミ号は、私を打ち負かした。それは当然だった。だけど、私はそれで絶望するほどには弱くはない。

 ()()()()()()()が私をこの世界から引き剥がしてくれたとしたら、どれほどよかったことだろうか――そのことを【帝国】に思い知らせてやるんだ。

 今はからっぽな私だけど、それでも走り続けてやる。そして見つけ出してやる。本当に、私が走るべき意味を。

 

 ★

 

「確認しますわ。えーっとこれとこれと……はい、たしかに受け取りました」

 

 JRN7号館。購買部のヤチヨダイスカイは、ノーヴルから発注された備品の納品のためにここを訪れていた。

 

「いつもご苦労さまです」

「あと、コダマ号。名松トレイナーはいらっしゃいますか?」

「名松君? 少々お待ちを」

 

 ノーヴルの理事、コダマが奥に戻ってから少しして、ヤチヨダイスカイのもとに名松がやってくる。

 

「何か注文してたっすかね……」

「いや、届け物を頼まれてるの。これ、姉さんからあなたにって」

 

 そう言ってヤチヨは角2サイズの封筒を差し出した。それを名松は受け取ると、首を傾げながら中を確認する。

 そこに入っていたのは、2枚の色紙と1通の便箋だった。

 

「な、なななななっ」

「えっ? もしかして姉さん、何か失礼なことを?」

 

 ヤチヨは色紙を覗き込んだ。そこには、カツタダイスカイのサインと『名松一志トレイナーへ いつも応援ありがとう』というメッセージが。もう1枚はネオトウカイザーに充てられたものだった。

 

「あなた姉さんのファンなの?」

「この前ばったりと会ったんすよ。隠してたつもりだったんすけどね……」

 

 名松は少しだけ照れながら封筒の中にそれを戻すと、「確かに、受け取ったっすから」とだけ残して、興奮を隠せていない様子でその場を去っていった。

 

「ふーん。後で姉さんに何があったのか聞いておこうかしら」

 

 残されたヤチヨはボソリとそうつぶやいてから、購買部へと戻ったのだった。

 


 

カツタダイスカイ号 今期の成績

 

1月2日 1着 標034M25C 成田山初夢杯 (スカーレットセイロン)

2月21日 1着 標116M00C 名阪PYDS (ナラビスタ)

3月28日 1着 狭095M20C 胆振最速決定戦4R (Ozark State Zephyr)

4月3日 2着 狭694M00C 青春18杯(春) ビシャスオサナジミ

 

勝利回数 3回

獲得SP 35

G4 (前期:G2)

 


 

Dear Simon,

I watched some races in Japan and identified one of the reason. I feel happy if this helps you draft recommendation for the Association of Japan Rail Racing.

As has been said before, more runners entry in races in Japan than in the rest of the world. I felt because there are not enough races that is over 10 miles have been held for the number of runners. But its root cause is low track capacity, so they are canceling, not diverting, all trains operated in courses to hold races.

If there is anything unclear, please let me know.

Warm wishes,

Ozark State Zephyr

 

 

 

マケタダイスカイ

@WinningLiner

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マケタダイスカイ@WinningLiner ・1日前

    
#青春18杯 負けました。

#ビシャスオサナジミ 号、本当に強かった

完敗です! そして、4連覇おめでとう!

 

    
102
1,059
3,150
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1か所くらいリンク生かしても……まぁバレへんか……。
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