Mistake / たまにはこんな日だってある
朝、いつものように目が覚める。シャワーを浴びて、簡単な朝食を摂り、制服に身を包んで、家から外へ歩み出す。
天気は晴れ。白い雲が少しだけ浮いていて、青い空に眩い太陽光を遮るものはない。あまりの陽射しに前腕で日陰を作り、目を細めて地面からの反射光を軽減する。
ジリジリと焼ける肌。
汗でじっとりしてくるシャツ。
信号を守らない歩行者。
運転手から飛ぶ怒号。
甲高い声で囀ずる広告。
高架橋の下に座り込む浮浪者。
日陰に入れば暑さも幾分か和らいだ。車通りも多く、駅に着くまでの信号には全て引っ掛かる。いつも通りの時間に出たのに、今日は運が悪いなと人知れず溜め息を吐いた。
昼、学業の合間に訪れる少しの休息。携帯できる軽食と飲み物を持って外に出る。ベンチに座って、空を泳ぐ魚を見ながら何を考えるでもなくボーッとして、それが広場を3周くらい漂ってから思い出したように食料の袋を開けた。
心ここにあらず。居場所だってない。
退屈な授業を聞き流したら、放課後は周囲の喧騒がBGMに。
気が付けば曇った空。
吹き抜けた涼しげな風。
ド派手なエンジン音で爆走するギャング。
サイレンを鳴らしながら追走する警察。
響く銃声に、身を屈めた一般人。
その少し上をドローンが流れていく。
そのうちの一機が目の前で撃墜される。煙を上げ、小さな爆発を繰り出した後、回転しながら一番近い街路樹に衝突する。
パチパチと火花を散らしながらそれは進路上に立ちはだかった。最後にボンと爆発するともう動く気配はない。
モノアイのようなレンズが、なんの因果か真正面に自身を捉えている。そこに光はないが、じっと見つめられているような気がして、居心地の悪さに足早に教室へと帰った。
授業も終わり、日が暮れる頃。きっといつの時代でも変わらないだろう赤い空も、今日は暗い灰色だ。
ポツポツと雨も降り始め、制服に染みていく。こんな天気になるとは、なんて思いながらメトロの入り口まで小走りで向かった。
電車は混んでいた。みんな同じように少し濡れている服、湿った髪。
満員電車になることはないが、いつもよりは人が多い。そんな混雑状況。
降り続く雨は気づけば勢いを増して、
走行音で掻き消えた雨音は扉が開くと騒ぎ始める。
地元の駅にたどり着く頃には土砂降りになっていた。
打ち付ける雨、雑踏、知らない人の会話、走り去っていく電車。
今日1日、どこか自分事にならない世界。
濡れるのは仕方がない。ならば存分に濡れてみようと、いつもより歩調は遅く。走っていく男女が憎々しげに振り返る。チンタラ歩いてんじゃねーぞ、って?仕方ないだろ、そんな気分じゃないんだか―――――
「市民に被害が出た。アラサカアカデミーの制服を着用、学生と思われる。」
「あーあ、悠長に歩いてるからこうなるんだ。」
「可哀想に……」
「周りが逃げてるってわからなかったのかな。」
「脳天1発、クリティカルヒットだってさ。」
いつの時点かは特に明確でない、ナイトシティに生きる市民として経験するだろう不慮の死亡事故。
みたいな体でふんわり書きたかったものです。
知らない人の死にその時だけ同情はするけど、少し経てばそんなこともあったねと笑いながら食事したりして。
事件現場の描写、なんにも考えてなかったからあまりにも適当すぎるのはご愛嬌ということにしておいてください。!