第6話
エリス・ヴォルフ。彼女は第一次世界大戦後のヴァイマル共和政時のドイツに産まれた。彼女は孤児院で幼少期を過ごす。そこで彼女は潜在的な呪力が高い事から古い
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「ここがあの有名なベルリンの壁かあー」
「思ってたほど大きくないねー」
「絵がたくさん描いてありますね」
ドイツの首都ベルリン。16からなる州の首都州にあるベルリンの壁。かつて、この壁を境にドイツは西と東に分たれていた。現在に現存する壁には様々なアートが施されている。その壁を見物しに来た3人、1人はスカジャンに白のインナー、イージーパンツで裸足に下駄という一見チンピラ風に見える服装の日本人の男、1人はスカジャンの下は白いキャミワンピのみという明らかに軽装すぎる日本人の女、1人は黒一辺倒のゴシック系の服で身を包んだアメリカ人の少女。蘭丸、薫、アヴゲイルはドイツ、ベルリンの地に足を踏み入れていた。
「いゃ〜びーるうめぇ〜」
「呑むのがはえーよ」
「まだ、日も高いですよ」
どこから仕入れてきたのか。薫の手にはビール瓶で両手が塞がっていた。
「それより観光終わったなら、早くホテル行こうぜ。せっかく、今川さんにカジノホテル予約させたんだから、早くなんか賭けたい」
「いや、そっちこそはやいよー」
「まだ、日が高いですよ」
蘭丸もこちらはこちらでギャンブルがしたくて体に禁断症状が出始めている。2人ともあいも変わらずマイペースというか、我が道をいっていた。
「お二人とも、目的を忘れていませんか?」
「いや、わすれてないよーアヴィたそ。だからこうやってアルコールでエンジンをチャージしてるんだよー」
「そうだよ。どうせ、俺らがドイツに入ったのは知られてるだろうから、向こうからアプローチして来るだろ?それまで、ルーレットかないかで金を溶かそうぜ」
ここはドイツ、それは当代2番目に古いカンピオーネ、“
「それでも、エリス少佐はチャンピオンいえ、カンピオーネの中でも集団戦にたけた方です。気を引き締めてください」
「「はーい」」
アヴゲイルの出身であるアメリカでは神殺しのことをチャンピオンと呼ぶのだが、国家公安部神事魔王対策課の今川夏彦が欧州ではイタリア語で勝利者を意味するカンピオーネと呼ばれていると2人に伝わり、その呼び方を2人が気に入ったためにアヴゲイルもカンピオーネと呼ぶように心がけていた。
「しかし、この間は興味なかったから話半分で聞いてだけどエリスってカンピオーネはどういうやつなんだ」
「エリス少佐はドイツの魔術結社を束めた“魔術連合協会”の会長です。また、ドイツの裏社会を牛耳る3つの犯罪組織の事実上のドンであり、その組織力はドイツのみならず欧州全体に及びます」
「あらためてきくとやばいですなあ〜」
「エリスさまの権能で有名なのは《
「なんか一つやばいヤツがあったんだけど。え?ドイツ軍吸血鬼化してんの?」
「それは寸前のところで阻止されました」
その権能は大概大雑把で個より民衆を苦しめるものに特化しているという。根っからの魔王ということだ。
「他にも権能が多数所有していると言われていますが、詳細はわかっていません」
「とりあえず、吸血鬼になれるんだろ?それがメインウェポンって考えていいだよな」
「じゃあ〜おひさまがのぼっへるときゅはつかへないねえ〜」
酔っぱらいが仕上がっていくにつれて、話も進む。
「《
「ラミアー、ゼウスの愛人のひとり、ヘラの被害者、子供を奪われた子供を食らう化け物か」
「ゼウスが奔放で、愛多きキャラクター性は古代の女神を零落させるためや王族の正当性を証明するためです。どの王族も自身の先祖が大神ゼウスに由来があるとしたかったためですね」
「日本の大国主と一緒か」
古代では大地の恵みと畏怖の象徴であった女神も武力の時代になることで、男神に征服されていく。その多くが、妻や娘などに貶められた。
「それにしても吸血鬼か、パッと考えると太陽由来の俺たちの権能なら有利そうだよな」
「そうですねオメテオトルは太陽神としての属性がありますから、太陽神の従僕として働いていたラミアーの権能と相性がいいと思います」
「なぁ薫はどうおもう……………あいつどこ行った⁉︎」
「え⁉︎薫さま?」
いつのまにか、酔っぱらいの姿が居なくなっていた。蘭丸は、いつも自身の半身である薫の行動を気にかけており、見失うことはほぼない。しかし、薫にとっても蘭丸は己の半身なので蘭丸の考えがある程度わかる。むしろ、こういう突発的な行動で相手の裏をかくのは薫の専売特許であり、行動が読めないという点では蘭丸より優れていた。故に、蘭丸の意識が一瞬でも逸れた間に離脱するなど薫にとっては朝飯前なのだ。
「あのサケカス!!!!!あれほど離れるなって言ったのに‼︎」
「早く、薫さまを捜さなければ!」
蘭丸とアヴゲイルは行方をたった薫を求めて、ベルリンの街をかけていく。
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どんな街にもダークサイドというのはあるもので、警備意識が世界で見てもトップクラスに厳重なドイツでもそれは当然見られる。そんなベルリンの裏路地で薄着で酒瓶片手に酔っぱらった日本人女性がいたらどうなるだろう。確実に犯罪に巻き込まれる。しかし、この女酔っぱらいなれど世界有数のカンピオーネだ。すでに3人の男に声をかけられたが、半殺しにしてことなきを得ていた。
「ひっくッ!あれ〜ここどこ〜」
ふらふらと自分で歩いてきたくせに自分が今どこにいるかがわからない。これが酔っぱらいである。
「みんな〜どきょにいりゅの〜」
また、同じところにとどまらずに至る所に行こうとするのも酔っぱらいである。薫はさらにダークサイドの方へと向かおうとしていた。しかし、そこに前の道を塞ぐように2人、後ろを塞ぐように2人、計4人の男が薫を取り囲んだ。明らかに今までのゴロツキではない。4人とも筋骨隆々なことがスーツの上からもわかるぐらいに体を鍛えている。また、サングラスを全員かけており、雰囲気からしてカタギではないことがわかった。
「ボスから指示された女で間違い無いな」
「ああ、写真と一致している」
「では、お嬢さん我々と一緒に来て貰おう。ボスがお呼びだ」
まるで映画のワンシーンのような場面だ。もし本当に映画なのだとしたら、ここで主人公が登場しそうだが、なに分この酔っぱらいカンピオーネの一角である。当然、こんな脅しには狼狽えない。
「え〜?おさけあります?」
しかし、この女酔っぱらいのサケカスである。酒が呑むるならどこへでもついていく。この言動に連れて行こうとする男たちも失笑する。
「ああ、ボスが極上の酒を用意してお待ちだ。来ていただけるかな?」
「いくいく〜らけどえっちなことわきんしだよ」
「フッ安心しろボスはグラマラスな女性がタイプだ」
男の1人が小馬鹿にするような笑みと共にその言葉を吐いた時だった。その男は後ろの道を塞いでいるひとりだったが、勢いよく吹き飛ばされる隣人を目撃する事になる。
「られがひんにゅうらあ〜!!!!!」
酔っぱらいとはさまざまな良い癖があり、時に人によっては喜怒哀楽の起伏が激しくなる場合がある。まさにそれである。男は、先程まで自身の隣にいた仲間が後方に勢いよく蹴り飛ばされるのを見た。
「ヒッ⁉︎」
「お〜お〜‼︎きょにゅうがそんなにへへのかあ〜‼︎お?わたひもだいしゅきだばーろー!!!!!」
「では、なぜ蹴った!しかも、言った本人ではない奴を!」
「やはりボス直々に指名する女。只者では無いと思ったが……」
「ああ、間違いない!ジャパニーズニンジャガール!クノイチだ!」
余談だが、ドイツ人は妙に日本の忍者好きの文化があり、よく映画にも登場するらしい。
「おーなんりゃなんりゃけんかかあ〜?」
「全員で囲むぞ!」
それはさておき、残った男たちは全員拳銃を抜き、薫へとむける。薫はその光景に驚いた。しかし、彼女が驚いたのは拳銃を向けられたからではない。
「いたたたたーーなんて力だ」
先程蹴り飛ばした男が平然と立ち上がってきたからである。
(あれれれのれ?よってたからきゅうしょはずしたかな?)
普段なら半殺しにできているのだが、男があまりにも平然と立ち上がってきたために薫は少し驚いていた。
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「GHD?なにそれ」
「ドイツを中心に全国に広がっている麻薬です。その効果は身体を異常なほどまでに頑丈にし、頭の回転も増すと言われています。しかし、依存度が高く高額のため、手を出した者はほぼ間違いなく破滅します」
「それがどうしたんだ?」
「その麻薬は、エリスさまの権能《
蘭丸とアヴゲイルは薫を捜索しながらエリス・ヴォルフについての情報を整理していた。《
「碌な権能じゃ無いな。《
「《
「絶対ヤベェ権能じゃないか」
今のところエリス・ヴォルフについて分かっているのは吸血鬼になれ、麻薬を作り出せるという事だ。蘭丸は頭の中で舌打ちをしながら考える。
(やはり、カンピオーネとしての手数が違う)
真正面から戦えば間違いなく敗北は色濃くなる。果たして、自分達の権能で太刀打ちできるだろうかと蘭丸は頭を働かせていく。
「正直、碌でもないのは蘭丸さまの権能も同じでは?」
「おまッ⁉︎なんてこというだ!あえて人がスルーしていたことを」
そう、蘭丸と薫の権能も碌でもなさならどっこいどっこいだ。逆に瞬時の被害規模ならこちらの方が上である。
「巨大ジャガーへの変身、台風並みの大風、地上を焼き尽くす火の雨、全てを洗い流す大洪水、天の悪鬼を呼ぶ大地震。蘭丸さま達の権能は後になるほど、被害規模が大きくなりますね」
「まて!本当にやばいのは薫の方だろう!」
「蘭丸さまも似たようなものでしょう」
「なんだよわかってるよ」
蘭丸の最近の悩みはアヴゲイルが蘭丸のあまり意識しないようにしているなけなしの罪悪感を的確についてくることだった。
「もう少し周りに配慮されては?」
「しょうがないだろう。俺の通常攻撃は全体攻撃しかないんだから」
「以前蘭丸さまは頭の中でいくつものパターンを並列思考で行えると言っていましたが本当ですか?俄には信じがたいのですが」
「してるよ…結局全パターンが爆散になるだけだよ」
「あらあら」とアヴゲイルは蘭丸を嘲笑する。なぜか最近こんな感じで小馬鹿にされることが多くなった気がすると蘭丸は感じていた。まあ、それだけ彼女が自信に打ち解けてきているということだろう。しかし、それはそれとして腹が立つのでいつか仕返しをしようと考えていた。
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ベルリンの都市部に立つとあるビルの一室。高級ホテル並みに整備されているその一室で、エリスはミハイルのいれたコーヒーを嗜んでいた。すぐ近くには赤髪の若いメイド、そして黒スーツに身を包み肌の浅黒いスキンヘッドの男が立っている。
「それでマルコ・シュヴァルツ、貴様の配下のものが先走りカンピオーネと接触した件について弁明をしに来たのか?我は寛大だからな、我を楽しませる良き方便があるなら生かしておいても良いぞ?」
マルコ・シュヴァルツと呼ばれたスキンヘッドの男はエリスの前に跪き、首を垂れる。
「まったくの弁明もございません我が主よ。我が主に不快感を与えたこと、我ファミリーの恥にございます。どうか、私めに罰を与えください」
「まったく、お前はミハイル・ヘシアンよりも面白みがないな。興がさめた、この件に関わった貴様の配下の親兄弟その家族の生き血で許してやろう」
「寛大なお心遣いありがとうございます。すぐに献上いたします。少々お待ちください」
エリスはコーヒーカップを持ち上げ、口をつける。
「新参者の手引きは貴様に一任する。ゆけ、マルコ・シュヴァルツ」
「御命令頂戴いたしました。この命に変えても遂行して見せます」
マルコはエリスの前で一礼し、スタスタと部屋を出て行った。エリスは深いため息をつく。
「あやつと喋っていると息が詰まる。そう思わんかミハイル・ヘシアン?」
「マルコ殿はお嬢様のご命令を史上の喜びにしております故、仕方ないかと」
「お前ら男はやはりつまらんな。メアリー・ヘシアン、悪魔憑きの娘はいまどうしておる?」
メアリー・ヘシアンと呼ばれた赤髪のメイドは口を開く。
「お嬢の言いつけ通り、地下室で躾をしてる途中っス。あのあま、なかなかいうこときかねぇからやりがいあるぜ。まあ、俺に任せれてくれよお嬢、最高の味にしてみせるぜ」
「メアリー、お嬢様の前だぞ。なんだその話し方は」
「おっと、いけねぇいけねぇ。申し訳ありませんお嬢様。つい口調が野蛮になってしまいました」
粗野な物言いからすぐさまお淑やかな物言いに変わる。その姿を間近で見たとしても、同一人物とは信じられないだろう。
「よいよい、メアリーはやはりかわいいな。貴様もこのぐらい可愛げがあれば良いものを」
「あっそうっすか。じゃあ、遠慮なく」
「メアリー‼︎」
「うるさいぞミハイル・ヘシアン。我が良いと言っているのだ。それ以上は不敬だぞ?」
ピシリッと空気が張り詰める。鋭く、美しい、サファイアの瞳がミハイルを目視していた。
「お嬢、気にしなくても大丈夫っすよ。うちの旦那は、自分以外に俺の素の口調を聞かせたくなくて嫉妬してるだけですから」
「な⁉︎」
「はっはっはっ!!!!!そうかそうか、結婚して十数年だが、貴様らはまだまだ円満のようだな。ミハイル、貴様にもかわいいところがあるでは無いか」
「いえ、その・・・・お戯を…」
「照れるでない。しかし、そうだな我が忠実なる第一の眷属たるミハイルの特権を奪うのも忍びないな。よかろう、メアリー。我の前では引き続き畏まった口調で話せ」
「かしこまりましたお嬢様」
メアリーはメイド服の両裾を軽く持ち上げ一礼する。ミハイルは苦虫を噛み潰したような顔でメアリーを見ているのを確認するとエリスはまた愉快そうに笑う。
「さて、興がのってきた。我も新参者の相手をしてやるかな」
エリスは呪力を高め、言霊を口にする。
「困難と闘争を与えよう。相手にしなければ小さいままだが、相手にして争えばどこまでも膨れ上がる」
言霊を唱えるとエリスの影から10歳にも満たない幼女が現れる。その顔はエリスに似ており、エリスをそのまま幼くしたような容姿だった。違うところと言ったら、肌と髪は黒く、瞳は金色で、黒い翼が生えているということだけだ。
「《
幼女は翼を羽ばたかせ、窓を突き破り外へと出て行った。
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「なんか、変だったなー」
ベルリンの路地裏で4人の気絶した男を積み上げた上に鎮座する女がそこにはいた。薫はその状態で頭を悩ませる。
「結局、5、6回伸さないと倒れなかったなこいつら。おかげで酔いが覚めちゃった」
悩みの種は薫が下敷きにしている男達。本来なら、薫の攻撃になすすべもなく半殺しになっていれのだが、この男たちは何か違った。異常なまでのタフで、何度も立ち上がってきたのだ。さらに、薫は己の拳を見る。
「ちょっと血が出てる」
己の拳に逆剥けができているのを確認する。やはり、おかしい。
「なんか、硬かったなこいつら」
薫は知らない。彼らがGHDという麻薬の服用者であることを。さらに、それが敵の権能で作り出されたということを。
「まっいっか。外国の人だもん、日本人より硬いよね」
とりあえず自身の中で解答を見つけ、薫は男たちの上から降りる。このまま、どこかで飲み直そうかと考えたていたその時だった。
ドカーーーーーン!!!!!
何かが突然落下し、あたりが爆散する。
「なんじゃらほい⁉︎」
土煙から現れた翼をもつ黒幼女。その姿に薫は唖然とし、言葉を失う。
(か、かかか、かかかかかわいいいいい!!!!!)
ここでおさらいしておくが、薫は酔っている際や戦いの際は強気だが、酔いが覚めている時や通常時には人見知りな性格があらわになる。その際に最も苦手としているコミュニケーションの障害の相手となるのが子供であった。薫はかわいいものが好きで子供も好きだが、故に何を話せばいいか分からなくなるのだ。なので完全に油断していた。相手の攻撃に対してあまりにも無防備だったのだ。
「クハハハハ!!!!!」
黒幼女は薫に向かって突撃し拳を突き立てる。薫はその攻撃をモロに喰らい、後方に吹き飛ばされ背後の建物に叩きつけられる。先程のまで呑んでいたビールが胃酸と共に口から湧き出る。
(なんだこいつ)
攻撃を食らったことによってようやくスイッチが入る薫。両手の拳を握り、ファイティングポーズを構える。追撃を喰らわせるために黒幼女は再び突撃してきた。薫はその突き出された拳に合わせてカウンターパンチをお見舞いする。今度は黒幼女が後方へと吹き飛ばされた。しかし、黒幼女はクルリと旋回し、華麗に地上に着地する。それだけではなく、体が成長を始めた。先程までは10歳にも満たない幼女だったのに、今では10代後半の少女へと姿を変える。
(何こいつ⁉︎全然攻撃が聞いてない!)
それだけではなく、明らかに先ほどよりもパワーアップしていることに薫は直感で築く。これまでに感じたことのない強敵の登場に自らも気付かずに薫は笑みを浮かべるのであった。
エリス・ヴォルフ
権能
《黄金を産む魔薬(ゴールデンハンド・ドラッグ)》
簒奪した神 不明
体を頑丈にする麻薬のを製造する権能?
《攻略困難な少女(アポリア・エリス)》
簒奪した神 エリス
効果は次回判明。