魔法少女まどか☆マギカ 焔の物語   作:かばお

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オリジナルキャラは出てきませんが、作者独自の設定があります。

本作が小説ではなくシナリオ方式になっていますのは、原作が映像作品ですので原作の世界観を出来るだけ再現しようと思ったからです。


焔の物語Ⅰ

〇 深夜 夜の街 

   近代的な高層ビルには明かりがつき、空には白銀の半月が浮いている。

   静まり返った夜の街を静かに飛ぶ悪魔  

 

 

〇 深夜 鹿目家外観

   月明かりがぼんやりと鹿目家を照らしている。

 

 

〇 深夜 まどかの部屋 

   部屋の窓際や棚の上にはぬいぐるみが置かれ、女の子らしい内装である。

   机の上のパソコンを慣れない手つきで打ち込んでいるまどか。提出された宿題が終わっていない。

   悪魔が薔薇の魔女の使い魔(警戒)を引き連れ鹿目まどかの部屋に侵入する。宿題に夢中のまどかは侵

   入に気付かない。悪魔、まどかに眠りの砂を投げかける。

   机にうつ伏す体勢で眠りにつくまどか。悪魔、まどかに接近し寝顔を覗き込む。

悪魔「夜ふかしは感心しないわね」

   悪魔が指でまどかの首筋に刻印を刻み込む。苦痛のうめき声を上げ、体を痙攣させるまどか。

   まどかの首筋に刻印が刻み込まれる。まどかの神力を封じ込めるための呪い。鹿目まどかが自分の役割

   を思い出すのを防ぐ効力を持つ。

   ショックで目を見開くまどか。瞳の色は金色。

   悪魔まどか瞼を閉じ、ベッドに運び横たわらせ布団をかける。

   パソコンを睨みつける悪魔。パソコンに凄まじい速さで文字が打ち込まれ、残りの宿題を終わらせる。

   全ての作業を終わらせ髪を掻き上げる悪魔。

 

 

〇 深夜 鹿目家外

   悪魔、壁をすり抜け外に出る。夜空に飛び立つ。夜空には白銀の月が浮かんでいる。

 

 

〇 朝 鹿目家外観

   静かな一等地に立つ小さなマイホーム。

 

 

〇朝 まどかの部屋 

   めざまし時計がけたたましく鳴っている

   まどか大きな熊のぬいぐるみを抱きしめ眠っている。掛け布団を跳ね除け体がはみ出ている。

   爆睡して目覚ましの音に反応すらしないまどか。

 

 

〇 朝 鹿目家リビング

   外の庭でしゃがみこみ庭仕事をしている知久。

   リビングに入ってくる詢子。

まどか「おはよう、知久」

   知久、まどかを見る。

知久「おはよう、ママ。悪いけどまどかを起こしてくれないかい? たつやが先に行ってる」

詢子「よぉし、きた」

   意地の悪いニヤリ笑いをする詢子。

   詢子を見て微笑む知久。

 

 

〇 朝 まどかの部屋 

   カーテンを締め切っていて薄暗い。目覚ましの音が鳴り響いている。

   毛布にくるまりまだ眠っているまどか。

   まどかの上に跨り拳で叩いているタツヤ。

タツヤ「まどかー! あーさーあーさー! あさだよー!」

   部屋に勢いよく入って来る詢子。思いっきりカーテンを引き開ける。

   毛布を引き剥がす詢子。

詢子「グッドモーニング! まどか!」

まどか「うわあああああああああああ!」

   毛布を引き剥がされ、朝日を顔面に浴び悲鳴を上げるまどか。

まどか「あう……もう、朝」

   まだ眠り眼で起き上がるまどか。

 

 

〇 朝 洗面所

   まどか詢子二人並んで歯を磨いている。

まどか「ママ昨日私をベッドに寝かせてくれた?」

詢子「昨日? 知らねえな」

まどか「本当に? じゃあパパかな?」

詢子「パパが? パパもあたしと一緒に寝たはずだけど」

まどか「昨日宿題していたはずなんだけどね、気がついたらベッドに寝てて、朝になってたんだ」

詢子「寝ぼけて忘れただけじゃないのかい」

まどか「それはないよぉ、宿題しているところまでは覚えているから」

詢子「人間疲れて睡眠モードに入ると意識が飛んじゃうからさ、あ、ということは宿題すんでないんだな」

まどか「それが全部終わってたんだ」

詢子「だったら、まどかが寝ぼけていただけさ」

   口の中をすすぎ、顔を洗うまどか。

   詢子口紅を塗りファンデーションを塗り化粧を終わらせる。

詢子「パーフェクト!」

 

 

〇 朝 鹿目家リビング。 

   洋風の朝食が並べられている。

   まどかと詢子とタツヤ椅子に座り知久の作った料理を食べている。

   タツヤがフォークでトマトを突き刺そうとする。ミニトマトが破裂する。

   ミニトマトの果汁が詢子のスーツにこびり付く。

   小さな悲鳴を上げる詢子。

知久「コラ! タツヤ、ミニトマトは突き刺しちゃダメ」

タツヤ「ごめんなちゃい」

   知久詢子のスーツを布巾で拭く。

知久「大丈夫かいシミになってない?」

詢子「あージャケット変えるから平気、平気」

   立ち上がって二階に上がる詢子。

   自分の首に違和感を感じ撫でるまどか。

   駆け足で一階に下りてくる詢子。

詢子「おっ、そろそろ時間だ」

知久「今日も頑張っておいで」

   キスをする、知久と詢子。それを微笑んでその様を見ているまどか。

   詢子とまどかハイタッチをする。

詢子「おっし! いってくる!」

まどか 知久 タツヤ「いってらっしやーい」

   やはり違和感を感じ首を撫でるまどか。

まどか「パパ、首の所が痒いんだけど、どうかなってないかな?」

知久「どこだい?」

   知久まどか傍まで行く。

まどか「ここなんだけど」

   悪魔のくちづけの箇所を指で指す。

知久「うーん何もないけど」

   悪魔のくちづけは悪魔とキュウべえにしか認識できない。

まどか「虫にでもさされたのかなぁ」

知久「お薬塗っておくかい?」

まどか「ううん、だったらいいや」

   時計を見るまどか。

まどか「あっ、そろそろ行かなくちゃ」

知久「気をつけて行ってらっしゃい」

まどか「いってきまーす」

タツヤ「いってらっしゃーい」

   元気よく家を飛び出し駆け出すまどか。後を薔薇の魔女の使い魔(警戒)が飛んで(まどかには目視できない)まどかの後を追う。

 

 

〇 朝 通学路

   美樹さやかとその妹美樹杏子が待っている。

さやか「おはよー」

   さやかと杏子の姿を認め、手を振りながら走ってくるまどか。

美樹杏子「まどか、遅せーぞ」

まどか「ごめーん! さやかちゃん杏子ちゃん」

さやか「三日連続で遅刻ギリギリまで待たせた私たちが言える立場じゃないけど」

杏子「昨日のはねーちゃんのせいだろ、出る前になって体操着がないって大騒ぎしやがって」

さやか「あんたがあたしの分まで持ってたのが、悪いんでしょうが」

杏子「自分で確認しないのがわるいんですよーだ」

   笑いながら杏子走って逃げる。

さやか「なんだとー待ちやがれー! コラー」

   拳を振り上げて杏子を追いかける。

   ×       ×     ×

   まどか、さやか、杏子三人並んで歩いている。

杏子「えー! まどか昨日もラブレター貰ったのか?」

さやか「今度はどこの身の程知らずのアタックだよ?」

まどか「同じのクラスの中沢くんだよ」

杏子「あの中沢かよ」

さやか「で、どうするのよ、まどか、付き合っちゃう? 中沢女子からも人気あるよ」

まどか「中沢君のことよくわからないから断ろうかなと思う」

杏子「えーまどかどれだけ理想が高いんだよ」

まどか「そんなんじゃないよ、本当に中沢君ともあんまり話したことないし」

さやか「それにしてもこのまどか人気何なんだろうね、この学校に来てから一ヶ月経つけど、ラブレター五通 と告白が三回でしょう、どれだけモテ力がチートなのよ」

杏子「あたしも一度でもいいから、もらってみてーよ」

まどか「もらっても反応に困るよ、返事をするのにも緊張しちゃうし、いいもんじゃないよ」

さやか「あーでたなーモテる女の苦悩。モテない女を見下してしてこりゃー完全にちょーしに乗ってますね」

まどか「そんなー私も困ってるのにー」

さやか「まどかーあたしたちを挑発するなよぉ」

 後ろに回りニヤニヤしながら首に腕を回すさやか。ニヤニヤ笑いを浮かべながら近寄ってくる杏子。

まどか「さやかちゃん、なんか怖いよぉ」

杏子「男どもを手玉にとってちょーしに乗ってる、悪い女はこうだーっ!」

杏子、さやか笑いながらまどかに抱きつく。まどか二人を振りほどこうとする。

まどか「もー! 離してよー」

杏子「よいではないか、よいではないか、減るもんじゃあるまいし」

   まどかの体に手を這わせる杏子。

さやか「良い香りじゃ、いい体つきをしておるのお」

   すんすんと髪の匂いを嗅ぐさやか

まどか「本当におこるよー二人ともー」

   少し困惑気味のまどか。

   遠巻きにその様子を見ている中沢。

じゃれあう三人の後ろからためらいがちに中沢が近づいてくる。

中沢「あのっ! 鹿目さん」

   三人じゃれあうのをやめて中沢の方を見る。

中沢「少し付き合ってもらってもいいですか?」

 

 

〇 朝 通学路

   さやかと杏子が立ってまどかを待っている。杏子はりんごを頬張っている。

   大樹の陰から出てくるまどかと中沢。

中沢「ありがとう、鹿目さん気持ちを伝えられただけでも嬉しいよ」

   中沢、一人寂しく立ち去る。

   困惑した顔でさやかと杏子の顔を見るまどか。

   木の上から様子を伺う少女の影(ほむら)。

 

 

 

〇 朝 教室

   まどかのクラス。机にうつ伏す中沢、男子のクラスメイトが群がり励ましの声をかけている。

   まどかの机の周りに集まっている杏子とさやか。

杏子「おーおー結構ダメージうけてるなぁ」

さやか「自信満々だったんだろうねえ」

志筑「おはようございます、皆さん」

   まどかたちに挨拶をする仁美。

杏子「おはよう仁美」

さやか「おはよー仁美」

まどか「おはよう志筑さん」

志筑「中沢君元気がないようですけど、どうなさったのでしょう」

   意気消沈の中沢を見ながら聞く仁美。

杏子「それがな、中沢がまどかにな……」

   杏子、口に手を当て無邪気に笑う。

さやか「あんまりほじくり返すんじゃないの」

   教室に入ってくる恭介。

恭介「おはよう」

   男子Aが恭介に近づいてくる

男子A「よう、上条」

さやか「あれ? 仁美、恭介と一緒じゃなかったの」

   仁美と一緒に登校していないことを不思議に思い問いただすさやか。

仁美「はい、上条君は大切なコンクールが近いですので、朝早くからこの時間までずっと練習していますの」

さやか「へエ、そうだったんだ、恭介も大変だね」

仁美「ですからわたし最近ずっと一人で登校ですわ」

さやか「お嬢様の仁美が、まさかのお一人様登校かよ、行く人がいないんだったら明日から一緒に行こうよ、まどかと杏子もいるし」

仁美「さやかさんたちが迷惑でなければしたらそうさせてもらいます」

杏子「お前んちのロールケーキで送ってもらえばいいのに」

まどか「仁美ちゃんちのロールケーキ?」

さやか「ロールスロイスだろ」

杏子「そうそう、あのでっけえ車で二人とも毎日送ってもらえよ」

仁美「それは嫌ですわ。そんなことをしてしまえば周りから浮いてしまいもの」

まどか「仁美ちゃんは偉いねぇ」

さやか「あたしたちとは意識からして違うもんなぁ」

   さやかに向けて人形のような笑みを見せる仁美

杏子「しかし、仁美の旦那は相変わらず無神経だな」

仁美「仕方がないことですわ、上条君の将来がかかっているんですもの」

まどか「志筑さんたちの恋愛は大変だねえ」

杏子「本当にな、あたしは愚民で良かったよ」

   仁美、恭介の方を寂しそうに見る。さやか寂しそうな仁美の顔を見て心中を察する。

   一人教室に入ってくる少女。長い黒髪、頭に巻いた赤いリボン。一旦立ち止まりまどかの顔をじっと見   

   るほむら。

   まどか暁美ほむらと目が合い怯える。

さやか「どうしたのまどか」

   さやかまどかの挙動に異変を感じ聞く。

まどか「なんでもないよ」

   まどかちらりと暁美ほむらの方を見る。

   何事もないように自分の席に座るほむら。

   さやか、まどかの視線を追う。

   まどかに視線を送っていたほむらと目が合う。バツが悪そうに素早く目をそらすほむら。

さやか「まどか、暁美さんからガン飛ばされてない?」

まどか「うん」

さやか「あいつに何かされたの?」

まどか「昼休みに話すよ」

 

 

〇 朝 教室 

   朝のホームルーム、教壇に立っている早乙女先生。

和子「皆さんにとても重要な話があります、目玉焼きは堅焼きはですか半熟派ですか? ハイ中沢君」

中沢「ハイ……どちらでもいいと思います」

和子「ハイ、どちらでもいい……そうどちらでもいい、どうでもいいことを気にかけるめんどう臭い男が好きに なったわたしが負けなのです」

   不気味な笑みを浮かべる和子

中沢「ひいっ」

和子「先生、その男に好かれるために今日の朝三時から必死で半熟の目玉焼き焼けるように練習したのです。 おかげで今日は二時間しか寝ていません」

   手と服の袖が卵黄で汚れている。

和子「もう食べてくれたかしら、郵便受けの中にいっぱい入れてあげたけど」

   うっとりとした笑みを浮かべる和子先生。どよめく生徒たち。

中沢「あの……先生」

和子「中沢君、彼女が作ってくれたものは好き嫌いをせずに全部食べてあげなきゃダメよ、それが長続きの秘 訣」

中沢「は、はぁ」

和子「中沢くん男のあなたとしては何がいいかしら、家庭の味って言ったら肉じゃがよねえ、いやもやしと大根、味噌汁なんかもねえ……できるだけ手の込んだものの方が喜んでくれるかしら」

   へらへらと笑う和子先生。

和子「女子の皆さん! 女は中身です、スキルです料理ができるか、家事がちゃんとできるか、旦那を上手く 操れるかが問題なのです。外見や学歴ましてや年齢なんかで判断されると思っては大間違いです。女子のみなさんは日々 女子力を磨き若いうちに優しくて操りやすい三高男を見つけ結婚しましょう。絶対に先生みた いにならないように」

   半泣きで女生徒に忠告する和子先生。

杏子「うわっ! 先生が壊れっちまった」

 

 

〇 昼 学校の屋上

   まどか、さやか、杏子、段差に三人腰掛け弁当を食べている。

杏子「今日の先生、めっちゃ怖かったなぁ」

まどか「ママから恋愛のことで悩んでるって聞いてたけど、ここまでなるなんて」

さやか「郵便受けに目玉焼き入れるってどんな神経よ、何が先生をそこまで突き動かす?」

まどか「元彼のことなんか忘れて、早く新しい出会いを探せばいいのにね」

杏子「だよなぁ、くよくよしてるから心が病むんだよ」

   弁当のご飯をかき込む杏子。

さやか「ねぇ、ところで、暁美さんの件だけど」

   キリのいいところで話題を変えるさやか。

杏子「暁美さんがどうかしたのか」

まどか「なんでかわからないけど、転校してきた日から暁美さんに睨まれているような気がして」

杏子「まどかがなんで暁美さんに睨まれなきゃならないんだよ」

まどか「それがわからないから、怖いんだよぉ、わたし暁美さんに何かしたのかなぁ?」

   頭を傾げるまどか。

杏子「なんだそりゃあ、聞き捨てならねえなあ」

さやか「あたしたちが暁美さんをとっちめてやろうか」

杏子「いけ好かない奴だとは思っていたが、理由もなしにアタシのダチにガン付けられちゃあ、黙ってられね えなぁ」

   目の奥を光らせる杏子。

まどか「喧嘩腰にならないで欲しいな、いつかわたしが自分で行くから」

さやか「まどか、あの暁美さんとさしで対決できるの?」

   言葉に詰まり目を逸らすまどか。まどかは転校してきた当初からほむらの睨みに怯え、ほむらを怖がっ   ている

さやか「あの暁美さんだけど、あたしと杏子が行けば大丈夫だって」

まどか「喧嘩にならないかなあ」

杏子「なったら、なったらさ。あたしがとっちめてやるからさ安心しな」

まどか「やっぱり不安だよ、自分で聞いたほうがいいと思う」

さやか「本当に大丈夫かぁ?」

まどか「……それはわからない」

杏子「だったらさ、アタシたちが用心棒で付いていけばいいんじゃねぇ? 二人いればあいつも手出しできな いだろうし」

まどか「さやかちゃんたちがついてきてくれれば平気かも」

   まどか、さやか、杏子黙り込む。

まどか「暁美さんってどういう子なのかな? やっぱり怖い子なの?」

杏子「クラスの評判そのままさ、年中目の下に隈を作って誰とも話さないし、いつも一人でいるし得体の知れ 

 ないやつさ」

さやか「だけど成績はめっちゃよくて、運動神経も抜群な超美人ですよ、もはや完全人間ですわ。だれも怖  

 がって近寄らないけど、実は男女問わず隠れファンが多いんだよねえ」

杏子「あたしは好きになる連中の気が知れないねえ」

さやか「本当にねぇ、ああいうヤンデレ女子がいいのか? 今はキャラ萌え女がきているのか? サバサバで

 がさつなわたしたちはまどかや暁美さんみたいな属性持ちの相手にはならないのか」

杏子「わたくしはお姉さまと一緒にされたくありませんわ」

   仁美の口調をまねる杏子。

   まどか、呆れた調子で笑う。

まどか「だけど、少しはわかるかも。暁美さん雰囲気は怖いけど、大人びてて綺麗だもんね、わたしもああい

 う女の人に風になれたらいいけどなぁ」

さやか「えーまどかは今のままで十分だよ」

杏子「そうだよ、まどかがああなっちまったらあたし嫌だぜ」

   まどか、杏子、さやかの笑い声が屋上に響く。

 

 

〇 放課後 教室 

   ほむら、カバンに教科書を詰めている。

まどか「……暁美さんちょっと話があるんだけど……いいかな?」

   まどか、さやか、杏子。ほむらに近づく。三人を見るほむら。

ほむら「かまわないけど」

まどか「……わたし暁美さんに何かしたのかな」

   まどかを冷たい目で睨むほむら。

ほむら「何が言いたいのかさっぱりわからないわ、はっきりいってもらえないかしら?」

まどか「暁美さんわたしとよく目が合うよね、それがなんでなのか分からないからすごく怖くて」

   おどおどと話すまどか。

まどか「何か怒らせたことがあったら、謝るんだけど……」

ほむら「わたしがあなたを睨みつけたことはないし、あなたに何かされた覚えはないわ。勘違いじゃないかし

 ら」

   ほむら、席を立とうとする。

杏子「おい、コラァ! てめえ逃げようとすんじゃねえぞ!」

   ほむらの胸元を掴み引き上げる杏子。教室内の生徒全員が二人を見る。

杏子「まどかは転校してからずっとお前にガン飛ばされて怖がってたんだぞ、言いたいことがあるなならハッ

 キリ言えばいいじゃねえか」

   ほむら、動揺する様子を見せずジッと杏子を睨みつける

ほむら「何も言いたいことはないわ、言いがかりを付けないでもらえるかしら」

さやか「とぼけるんじゃないわよ、あんた今朝もまどかにガン飛ばしてたろ」

まどか「二人共やめてよ」

さやか「あたしとも目があったじゃないか」

ほむら「知らないわよ」

   杏子「嘘つくな!」

ほむら「……」

   ほむら意思疎通を拒むかのように斜め上を見る。クラスがこの一触即発状態にざわめきだす。

杏子「ちっ」

   舌打ちをする杏子、ほむらの生意気な態度に激昂し拳を固める。

   まどか自分が原因で喧嘩が始まったことに怯える。

まどか「わかった。暁美さんに悪気がないのはわかったから」

杏子「まどかいいのかよ、こいつは……」

まどか「ごめんね、暁美さん。わたしの勘違いだから気分を悪くしないでね」

   まどかカバンを持ち、教室から逃げ去る。

さやか「待ってよ、まどか」

   まどかの後を走って追いかけるさやか。

杏子「ねーちゃん、まどかちょっと待て……てめえ、もしまどかになにかしたら許さねえからな」

杏子、ほむらから手を離し走ってまどかとさやかを追いかける。

   ほむら、冷たい目線で三人の姿を追う。

 

 

〇 放課後 ショッピングモールのフードコート。

   賑わう夕方のフードコート。チラホラと寄り道をしている見滝原中学の生徒の姿が見える。

   まどか、さやか、杏子テーブル席に座っている。テーブルの上には三人が注文した食べかけのファース 

   トフードが置かれている。

まどか「あんな言い方ってないよ、さやかちゃん、杏子ちゃん」

   平和的に話が進まなかったことにおちこむまどか。

杏子「あれだけいわねねえと効かねえんだよ、ああいう類の奴には」

   杏子フライドポテトをくわえる

まどか「喧嘩腰でいうのはやめてっていったよね」

さやか「攻撃は最大の防御だよ、初戦で舐められたら負け」

まどか「……だけど、ほむらちゃんに申し訳ないよ。本当に私の勘違いかもしれないし」

杏子「ガン飛ばされて怖いって、怯えてたのはだれだよ、勘違いってそれは絶対にないんだろ」

まどか「そうだけど」

さやか「あたしもあいつと目があったもん、それはない」

   朝にあった事を思い出すさやか。

杏子「しかしなんだ、あいつ腹が立つなぁ、まどかの何がきにくわねぇんだ」

   怒りをぶつけるがごとくハンバーガーに食らいつく杏子。

さやか「もうあんなやつの相手にしないほうがいいと思うよ。腹が立つだけでロクなことがない」

杏子「だけどよ、またあいつから突っかかってこないともかぎらないぜ」

まどか「そのときはわたしも気にしないようにするからあんまり気にかけないで」

さやか「まどか本当に心当たりがないわけ」

まどか「わからない、だけど自分で覚えていないだけかも」

杏子「覚えていない?」

まどか「わたしはアメリカに行く前は見滝原に住んでたでしょ、もうしかしたらその間にほむらちゃんに会っ 

 たことがあるのかなって」

   目で宙を見て思い出そうとするまどか。

杏子「そうだったな、まどかは元々ジモッティーだったんだよな。あたしたちとは校区が違ったから同じ小学 

 校じゃなかったけど」

さやか「その間に暁美さんと何かがあったと、その大昔のトラブルをずっと根に持っているってことですな」

まどか「そういうこと……に、なるのかな」

杏子「心当たりとかはないのか?」

まどか「ないけど、もしかしたら過去なにかあったって事しか……」

   目を落としカップの中をみるまどか。突然カップ円型の口が中のオレンジジュースが市松模様の空間に 

   変わる。

   ×   ×   ×

   まどかの脳裏で市松模様の空間の中を必死に走る自分の姿が浮かぶ。

   走りながら振り向くと闇の中から黒衣をまとった人物が追ってくる(悪魔ほむらだが顔は見えない)。

   ×   ×   ×

杏子「まどか?」

   杏子カップの中身に見とれていたまどかに声をかける。

   ハッと我にかえるまどか。

   杏子「どうかしたのか?」

まどか「なんでもないよ、なんでも……ぼーっとしていただけ」

   頭に重い痛みを感じ手で押さえるまどか。

さやか「なにか思い出したの」

まどか「思い出したわけじゃあ……」

   黒衣の人物のことが頭をよぎるが、説明しづらく言葉が詰まる。

まどか「いや、本当になんでもないよ」

   目が疲れたのかと思って目を擦る。

   コップの中はオレンジジュースに戻っている。

 

 

〇 放課後 ゲームセンター

   フロア内にはアーケードゲームやクレーンゲームの機体が置かれており、ゲーム機の照明が薄暗い店内   

   を照らしている。フロアに鳴り響くけたたましいBGM(magiaユーロビートVer)

   ダンスゲームの上で激しいステップを踏んでいる杏子。

   さやかがクレーンゲームに興じていて、まどかはそれを見ている。

   ぬいぐるみの振りをしてゲーム機体内に積まれている落書きの魔女使い魔のたち。

さやか「よし! このまま持って来い」

   クレーンが落書きの魔女の使い魔(飛行機型)のぬいぐるみをはさみ、穴まで移動するが途中で落ち  

   る。

さやか「あ〜あ〜! いけそうだったのに」

まどか「次はわたしがやってみるよ」

   まどか財布の小銭入れの中を漁る。百円硬貨がないことに気づくまどか。

まどか「小銭が切れちゃったみたい、わたし両替に行ってくるね」

さやか「おう! いってらー」

   さやか、ゲーム機に百円玉を投下する。

杏子「まどかあたしにコーラ頼むわ」

   ゲーム機の上でステップを踏みながら見返る。

さやか「コラ、まどかをパシるんじゃないの」

まどか「いいよ、いいよ」

   笑って立ち去るまどか。

   ×   ×   ×

   ゲームセンター端の両替所、両替機の右手には倉庫に続く通路がある。全体的に暗い雰囲気である。

   まどか両替機に向かい、財布から千円札を出す。

   倉庫に続く通路をお菓子の魔女の使い魔が歩いている。それを目撃するまどか。

   まるでまどかの先導をするかのように、暗い通路を歩いていくお菓子の使い魔。

   まどか操られているかのように使い魔の後を追っていく。

   ×   ×   ×

   ゲームフロア。杏子のプレイしているゲームは終盤に差し掛かっている。

   ダンスゲーム機の上で両手を水平に伸ばしキメポーズを取る杏子。液晶画面にはパーフェクトの文字。

杏子「よっしゃあ、ランク入り!」

   ガッツポーズを取る杏子。後ろでさやかが見ている。

杏子「あれ、まどかは?」

さやか「そういえば、遅いねえ」

   首を傾げるさやか。

   ×   ×   ×

   倉庫の入口前に立つまどか。殺風景な通路照明が蛍光灯だけで薄暗い。

   倉庫の中に入っていくお菓子の魔女。

   通路の角に隠れ顔を出して様子を伺っていたまどか、使い魔を追いかける。

   ×   ×   ×

   ゲームセンターの倉庫内。埃かぶった旧式のクレーンゲームや古いアーケードゲームが無造作に置かれ  

   ている。小さな照明がついているだけで薄暗い。

   まどか、お菓子の使い魔の後を追って倉庫内に入るが使い魔の姿は消えている。

まどか「あれっ」

   あたりを見回すまどか、人気を感じてふりかえったまどかの顔に冷えた缶が押し付けられる。

   小さな悲鳴をあげるまどか、後ろにはさやかと杏子が立っている。

杏子「こんなところでなにしてんだよ」

まどか「なんか、さっき変な生物がここに入っていくのを見たの」

杏子「はあ?」

まどか「本当だよ、目玉の大きいねずみみたいな生き物が歩いてたんだよ」

さやか「まどかひょっとして冗談言ってる?」

まどか「冗談じゃないよ、見たんだよ」

   必死に言い張るまどかを見て笑う杏子。冗談だと思っている

杏子「まったく冗談ならもっと面白いことを言えよな……」

   ゲーム機の並べられた倉庫内を見回す杏子。

杏子「……なぁ早くここ出ないか……なんだか、嫌な感じがする」

   突如どこかで鈴の音が鳴り始めて三人とも会話をやめる。

杏子「なんだ、この音」

さやか「なに、どこからなってるの?」

   鳴り続ける鈴の音が序々に大きくなっていく。辺りを見回す三人。

   倉庫内にある全てのアーケードゲーム機体の画面に杖を付きながら歩く山伏姿の魔獣が映る。小さな悲 

   鳴を上げるまどか。

杏子「なんだこれ、幻覚か何かか?」

   空間が歪み倉庫が魔獣の結界内に変化する。

まどか「ここなんだかおかしいよ」

 

 

〇 放課後 魔獣の結界内(砂漠)

   黒雲が立ち込めた砂漠、無限とも思える砂の空間。なり続ける鈴の音。

   七人の山伏姿の魔獣が横並びで並んでいる。高層ビル位の大きさはある巨人。手に持った錫杖を地面に   

   叩きつけ先端についた鈴を鳴らしている。

杏子「なんだ、てめえらは? ここはどこだ?」

   まどか、さやかの後ろに隠れる。

   錫杖で地面を叩き鈴の音を立てながら近づいてくる魔獣たち。

杏子「寄るな! こっちくんじゃねー」

   飲みかけのコーラ缶を魔獣に向けて投げつける杏子。投げた空き缶は魔獣の体をすり抜ける。

杏子「なっ! すり抜けた」

さやか「なんかやばい……早く逃げるよ杏子」

   まどかの腕を握り走り出すさやか。そのあとを追う杏子。

さやか「なんなのあいつら? ひょっとして幽霊」

   振り返り魔獣を見るさやか。

杏子「わからねえ、だが、あいつらがあたしたちを狙ってることはたしかだ」

   砂漠の中を走る三人。ゆっくりだが、ペースを乱すことなく追いかける魔獣。

   いくら走っても出口が見えない、終わりが見えない空間。

杏子「なんだ、この空間、景色が変わらねえぞ、全然走ってるって感じがしねえ」

   さやか後ろを振り返る、魔獣が追いかけてくる姿が見える。だが確実に距離を縮めている。

   息を切らし絶え絶えの状態で付いてきているまどか。ついに小さな悲鳴を上げ倒れる。

   まどかの体を掴む魔獣。

さやか「あっ! まどか」

   手に力をいれまどかの体を締め上げる魔獣。苦痛でうめき声を上げて体をじらせるまどか。

   どこからともなく矢が飛んできて魔獣を打ち倒す。

   ゆっくりと崩れ落ちる魔獣。魔獣の手から解き放たれたまどかを魔法少女姿の暁美ほむらが受け止め    

   る。

   恐る恐る目を開くまどか。目の前には暁美ほむらの顔。

まどか「暁美……さん?」

   杖を両手で持ち、構える魔獣、その一匹の顔に黄色いリボンが巻き付く。

マミ「間に合ってよかったわ」

   魔法少女姿の巴マミと百江なぎさが立っている。二人の足元にキュウべえが座っている。

杏子「あ、あんたたちは何もんなんだ?」

   杏子が異様な風貌の二人の少女に問いかける。

マミ「怪しいものじゃなくてよ」

なぎさ「私たちは魔法少女、この世の呪いを取り除く魔法の戦士なのです」

   両手で顔を隠し、仮面の状態に変化させるまぎさ。

   ほむらがまどかの体を下ろし魔獣の一匹を弓で射抜く。矢をくらい倒れる魔獣。

   マミ、大量のマスケット銃を召喚し一気に魔獣三体を打ち抜く。

   両手に蓋付きの皿を持ち魔獣に向かって突進をするなぎさ。

   魔獣の一体がなぎさに向かって錫杖を振り下ろす。バク転をして攻撃をかわし錫杖の上に乗るなぎさ、   

   杖の上に乗った後も魔獣に向かって突進をする。

なぎさ、高く飛び、皿の上の蓋を取る。皿の上には大きなチーズが乗っている。

なぎさ「レガーロ・フォルマッジョ」

   高く飛んだ渚巨大なチーズを魔獣の顔面に叩きつける。

   ドロドロと溶けたチーズが魔獣の顔にこびり付く。チーズを取ろうと顔面を押さえもがく魔獣。

   チーズが炎上し、全身が火だるまになり消滅する魔獣。

   コツコツ音をたて、さやかと杏子のところまで歩いていくほむら。

ほむら「運が良かったわね、あなたたち」

   いつもの無感情な口調でさやかと杏子に言うほむら。

さやか「あんたに助けられたってことになるのか? あたしたち」

   さやかの言葉には不信感と警戒心がにじみ出ている。

ほむら「結果的にはそういうことになるのかしらね」

   髪をバサっとかき上げるほむら。

   黒い禍々しいオーラの羽がほむらの背中に生える。砂の中から現れる巨大な大砲(巴マミの魔大砲)  

   その上に乗るほむら。

   残り二匹になった魔獣が背を向けて走り逃走を図ろうとする。

   なぎさがぴょんぴょんとバッタのように跳ねながら大砲の方まで戻りその中に入る。

   ほむら矢をつかえ、ぎりぎりと音を立てて弓の弦を引き魔獣

   に狙いを定める。

マミ&なぎさ「ティロ・フォルマッジョ」

   マミが号令を発すると大砲が爆音を立て、なぎさを発射する。同時に矢を放つほむら。

   逃亡する魔獣に矢と、チーズを両手に持った人間砲弾なぎさが迫る。

   魔獣に矢となぎさが直撃し大爆発起こす。

   爆発で砂塵が巻き上がりまどか、さやか、杏子に吹きかかる。

   魔獣が撃破され結界が消滅する。

   空間が元の薄暗いゲームセンターの倉庫に戻る。グリーフシードが九個音を立てて散らばる。それを一   

   つひろうほむら。

   倉庫の真ん中で目を回すなぎさ。ハッと素早く我に返る。

なぎさ「やったのです!」

   嬉しそうな笑顔を見せ飛び上がるなぎさ。媚を含んだ鳴き声を上げてなぎさの肩に飛び乗るなぎさ。

杏子「……すげえ」

   アクション映画顔負けの迫力に圧倒される杏子。

マミ「あなたたち大丈夫だった? 怪我とかしていない?」

   安心させるため優しい微笑みを浮かべ聞くマミ。  

さやか「あ、あたしはだ、大丈夫です」

   目の前の展開についていけず呆然と立ちすくむ、さやか、杏子。

杏子「なんともないけど……まどかが」

   擦りむいた右膝を両手で押さえるまどか。怯えきって体が微かに震えている。

   ほむら自分のカバンを持ちまどかに歩み寄る。

ほむら「そこに座って鹿目さん」

   地べたに座り込むまどか。しゃがみこみ傷口を診察するほむら。

ほむら「大丈夫よ、大きな怪我じゃない。消毒して絆創膏を貼っておけばいいわ」

   カバンの中からポーチを取り出し、その中から消毒液と絆創膏を取り出し、手馴れた手つきで怪我の手   

   当てをするほむら。

   まどか自分の膝の手当てをしているほむらを意外そうにじっと見る。

   傷口に消毒液を吹きかけられ、痛みで顔をしかめるまどか。

マミ「みんなに自己紹介をしなくちゃね、わたしは巴マミ見滝原中学校の3年生よ」

なぎさ「わたしは百江なぎさというのです、見滝原小学校に通っているのです」

   ぺこりと頭を下げるなぎさ。

   甘い鳴き声を上げながらなぎさの頬に体を摺り寄せるキュウべえ。

さやか「うわあ、この猫みたいな生物なに?」

マミ「あら、あなたちこの子が見えるの?」

杏子「あたしにも見えるぞ」

なぎさ「この子はキュウべえ、わたしたちのパートナー、そして魔法の国の使者なのです」

まどか「わあ、この子可愛い」

   ほむらの手を借り立ち上がるまどか。キュウべえが挨拶をするかのように鳴き声をあげる。

   媚を作ろうキュウべぇに冷ややかな視線をおくるほむら。

杏子「まどかが見た生き物ってこいつか」

まどか「ううん、違うよ、もっと大きくて毒々しい色をしてた」

さやか「あたしは美樹さやか二年です、よろしく、さっきの巨人から助けてくれてありがとう、もうダメかと 思いましたよ」

マミ「お礼なんていいのよ、これがわたしたちの使命だから」

さやかマミとなぎさを見た後ほむらを見る。。

杏子「あたしは美樹杏子さやかの妹だ、組も学年も同じさ」

マミ「よろしくね、佐倉さん。姉妹にしてはふたりともあまり似ていないのね」

杏子「ああ、血は繋がっていないんだ」

   あまり詮索されたくないようにさっぱりとした表情でいう杏子。

マミ「あ……そういうことだったのね、ごめんなさい」

杏子「気にしないでいいぜ」

   杏子の顔を見て微笑むマミ。

まどか「あの……わたしは鹿目まどかといいます、先月アメリカから引っ越してきました」

マミ「あなたが噂の帰国子女? 小さなかわいらしい子が転校してきたって三年生の間でも評判よ」

まどか「そんな」

自分よりも年上の容姿端麗な女子に褒められ、照れて顔を赤らめて体をよじるまどか。

ほむら「みなさん、こんな暗い場所で立ち話というのもなんだから、今からわたしの家に来ない? 落ち着い

 たところで話をしたほうがいいと思うの」

マミ「一応彼女たちに話すつもりなのかしら?」

ほむら「できれば同じクラスの子達を巻き込みたくなかったけど……キュウべえや使い魔が見えるってことはこ

 の子たちも無関係というわけではないから」

 

 

〇 夜 繁華街

   人でごった返した道を六人でかたまり歩いているまどかたち。

さやか「さっきの巨人みたいなのってなんなのさ」

ほむら「あれは魔獣といって人の無意識のうちに発する呪いが生み出した怪物よ、魔獣は心の弱っている人間 

や女性や子供をさっきみたいに群れで襲い、を食い物にしているの」

杏子「暁美さんたちはそんな連中と今まで戦ってきたのかよ?」

ほむら「そうよ、魔獣を狩ることができるのは私たち魔法少女だけ。人間には認識できないし人間の反撃を受 

 け付けないから抵抗をすることもできない。さっきの砂漠のような空間があったでしょ、あれは魔獣の発し 

 た結界で獲物を狩るための狩場」

さやか「もし、暁美さんや巴さんが来るのが遅かったら……」

ほむら「あなたたちの命は無かったかもしれないわね」

   言葉を詰まらせ身をこわばらせるまどか、さやか、杏子。

マミ「暁美さんの言った通り、あの結界に人間が飲まれたらまず助かることはないわ、魔獣は獲物を狩り終  

 わったらすぐに結界を閉じて逃げてしまうから大きな事件になることもない、犠牲者も結界とともに消えて

 しまうから証拠が残ることもない、大半が行方不明や未解決事件で済まされるの」

杏子「そんなやつら絶対に野放しにできねえなぁ」

さやか「か弱い女子供を狙うなんて魔獣って性格の悪い連中だなぁ」

なぎさ「退治しないと呪いが溢れかえって、この世はしっちゃかめっちゃかになってしまうのです」

ほむら「だから、わたしたちは戦い続けるの」

   まどか立ち止まる。

まどか「暁美さんたちは怖くはないの? そんな怪物と戦って。わたし追いかけられている時にすっごく怖く 

 て……いつも通り寄り道をして帰ろうとしたのに突然あんな怪物に襲われて、思い出すだけで体の震えが止ま 

 らなくなるくらい怖くて……」

   全員が立ち止まり振り返る。恐怖が蘇ったのか小刻みに震えているまどか。

なぎさ「正義の味方は全然怖いなんてことはないのです」

   ぴょんぴょんと片足飛びをするなぎさ。

マミ「怖くないと言ったら嘘になるかもしれないわね、だけど私たちがこの世の裏側で魔獣を倒すことによっ 

 て人が救われのよ、せっかく与えられた素質を無駄にできないじゃない、暁美さんがいてくれるし、誰かの 

 命を救えるんだったら怖いことなんてないわ」

ほむら「二人ともたくましくなってくれてうれしいわ、なぎさちゃんはショッピングモールで襲われたときは 

 わんわん泣いてたのに」

   珍しく顔をほころばせるほむら。

なぎさ「もー! それは言わない約束なのです」

   怒って飛び上がるなぎさを見て笑う六人。場の雰囲気が少し和やかになる。

   ×     ×     ×

   夜空には白銀の半月が浮いている。人気がない住宅街の小道を六人が歩いている。

さやか「さっき、ショッピングモールで襲われたって言ってたけど。マミさんとなぎさちゃんも魔獣に襲われ

  たんだ」

マミ「ええ、あれはなぎさちゃんと初めてあった日のことだったわね、小さい子が一人でたくさんの荷物を

 持ってうろうろしてたから、危ないなと思ってついていてあげたの。そしてトイレに入った時に魔獣の群れ 

 に襲われたの」

なぎさ「結界の中を追われて魔獣の群れに囲まれて、もーだめだーって思った時にほむらがあっという間に魔 

 獣を倒してしまったのです」

杏子「へえーすげえなぁ! 一人で全滅させたのか?」

ほむら「たわいもないことだわ、今まではわたしはずっと一人で狩ってきたから」

マミ「しばらくなぎさちゃんと暁美さんの魔女退治に同行してたんだけど、先週決心がついて魔法少女になっ

  たの」

さやか「勇気があるなあマミさんは」

   マミの勇気を褒めるまどかたち。怒ったように頬を膨らませるなぎさ。

なぎさ「そんなことないのです、マミは本当は泣き虫なのです」

マミ「あれ、なぎさちゃん、なんか機嫌悪くない?」

なぎさ「誰もなぎさを褒めてくれないから面白くないのです!」

マミ「うふふふ、ヤキモチを焼いてるのね、この子」

   小動物を落ち着かせるかのように頭を撫でるマミ。

まどか「暁美さんも仲間が増えてよかったね」

ほむら「ええ、二人とも戦いに慣れてきてくれたからとても頼りになるわ」

まどか「それもそうだけど、頼りになる仲間ができて、賑やかになって……ね」

ほむら「……」

   だまりこむほむら。

まどか「暁美さんはずっと一人で魔獣たちと戦ってきたんでしょ……だから寂しかったり心細かったりとあった 

 んじゃないかなと思って……こんなこと誰にも相談できることじゃないから同じ秘密を共有する仲間がいると 

安心するんじゃないかと………ごめんねしったような口をきいて」

   少し不安になり早口になるまどか口調もしどろもどろになる。

ほむら「そうね」

   そっけなく答えるほむらの表情に翳りが差す。

 

 

〇 夜 ほむらの自宅

   ほむらの自宅前、三叉路の突き当たりにある洋風の二階建てアパート。

ほむら「ついたわ、ここがわたしの住んでるアパートよ」

   杏子「結構、時間が遅いけど家に入れてもいいのか?」

ほむら「気を使わないで、わたしは一人暮らしだから」

さやか「世界の平和を守っている上に自立までしているのか。暁美さんは偉いなぁ!」

まどか「ああそうだ、パパに電話しなくちゃぁ」

   ×   ×   ×

   レッドカーペットの敷かれた薄暗い通路を歩く六人。両側のレンガの壁にカンテラが埋め込まれてお

   り、それが通路内を照らしている。

   薄暗い通路を見回すさやか。

さやか「変わったアパートだね、まるで魔王の城みたいだ」

   肌寒さと雰囲気の悪さをごまかすため冗談をいうさやか。

ほむら「そう」

   そっけなく相打ちを打つほむら。

まどか「さやかちゃん、暁美さんに失礼だよ」

さやか「えへへ、ごめん」

ほむら「ここが私の部屋よ」

   ほむら立ち止まる。

   六人の前に背の丈二つ分ある大きな両開きの木のドアがある。

   ほむら古びた鍵で鍵を開け、戸を開く。戸の向こうには闇が広がっている。

ほむら「さあ、上がっていって歓迎するわ」

   ほむら艶かしい声で囁く。

 

 

〇 朝 さやかの家

   さやかの部屋カーテンが締め切っていて暗い、毛布に包まり眠るパジャマ姿のさやか。

   はっと目を覚まし起き上がり、まだ夢見心地でぼーっと周りを見回すさやか。さやかの隣には心地よさ

   そうないびきをかいて寝ているきゅうべえ。

   はっと昨日のことを思い出し、薬指の爪をみるさやか。爪には小さな紋様が浮かび上がっている。

   部屋の外からドタバタとけたたましい足音が聞こえ、音を立てドアが開かれる。

杏子「ねーちゃん! やばい起きろ! 寝過ごした」

   髪がボサボサのパジャマ姿の杏子が現れる。

   さやか壁に掛けられた柱時計を見る。

   八時五十五分を指している。

さやか「げっ! 大変だ」

   ポイポイとパジャマを脱ぎ捨て大急ぎで着替えるさやか。

 

 

〇 さやかの住むマンションの外観。

   朝日の差すさわやかな1日の始まり、さやかと杏子のやりとりが騒々しく響いている。

さやか「あれ、リボンがないどこにやったっけ?」

   ドアの開く音。

杏子「ねーちゃん、あたしのブラウスがない!」

さやか「畳んで引き出しの中入れてるって、昨日お母さんがいってたでしょう」

杏子「そんなこときーてねーよ!」

   ドアの閉まる音。

さやか「あんたテレビを見て聞いてなかったからな」

   ドアの開く音

杏子「ねーちゃん! なんかリボンがひとつ多いいぞ」

さやか「それあたしの、なんであんたが持ってるのよ」

杏子「知らねーよ」

   ドタバタと騒がしい足音。

   ドライヤーの音。

さやか「ちょっと洗面台占領しないでよ。顔洗えないじゃん」

杏子「仕方ねーだろ」

   ばちゃばちゃと顔を洗う水音

さやか「ほら、もたもたしないの、もう行くよ」

杏子「ちょ……待てよ! 弁当忘れてるって」

さやか・杏子「いってきまーす」

   マンションからさやかと杏子が出てくる。キュウべぇがさやかの肩に乗る。さやか笑ってキュウべぇの

   頭を撫でる。

 

  

〇 朝 通学路

   杏子、さやかが菓子パンを食べながら走っている。

杏子「ねーちゃんの馬鹿! なんで起こしてくれなかったんだよ」

   片手に持った紙パック牛乳をすする杏子。寝坊遅刻が頻繁なので買い置きしてある。

さやか「うるさいなぁ! 目覚まし時計の電池が切れてたんだよ」

杏子「まったくそういうのはちゃんと毎日チェックしとけよな」

さやか「まず自分で起きろっての」

   パンを一気に口の中に押し込む。

杏子「無理無理、姉ちゃんが、ばーってカーテン開けてくれないと無理、朝日を浴びなきゃ起きれない」

さやか「人に文句言うくらいだったら自分のことちゃんとする」

杏子「わかったよ、文句は言わないから明日はちゃんと起こしてくれよな」

さやか「だから、自力で起きる努力しろってえのぉ!」

   騒がしいやりとりをしながら走る美樹姉妹。

 

 

〇 朝 通学路

   まどか、ほむら、マミが立ってさやか、杏子を待っている。

まどか「さやかちゃーん! 杏子ちゃーん! 遅すぎるよーー」

   時間の余裕がなく焦るまどか。優等生なので遅刻をしたくない様子。

さやか「おはよう、ごめん、そしてごめんまどか」

杏子「わりいわりい、ねーちゃんのせいで遅れた」

さやか「責任転嫁するなっての」

まどか「志筑さん怒って先にいっちゃったよ!」

   ドタバタで昨日の約束を忘れていたさやか。

さやか「あちゃー自分で誘っておきながら面目ない」

ほむら「とにかく早く行きましょう」

   走り出す五人。

杏子「ほむら昨日の黒い翼出して学校まで飛んでいってくれよ」

ほむら「それは正しい力の使い道ではないわ」

杏子「ええー」

マミ「人前でやたらめったらに魔法を使っちゃダメよ、魔法少女はあくまでも影の存在、

普通の人に存在を知られたらいけないんだから」

杏子「冗談だよ」

さやか「全くあんたが魔法少女になったら私利私欲で魔法を使いそうで怖いわ」

杏子「はあ!? あたしはねーちゃんと違ってそんなことしねーし」

   ハハハと苦笑いをするまどか。

   さやか走りながら薬指の爪の紋様を見る。

 

 

〇 夜 ほむらのアパート(回想)

   テーブルの周りにを囲むように長椅子が配置されている。部屋の中は天井のシャンデリアが照らしてい   

   る為明るい。壁には映像投射で見滝原市各地の映像が流れている。悪魔の解き放っている使い魔の視

   点。

   部屋の壁に鎌形をした影の振り子が揺れている。

   六人ドアから部屋に入る。

まどか「うわぁ、すっごい」

   シャンデリアや影像投射を見上げ感嘆するまどか。

杏子「うへー」

   感心した様子で辺りを見回すさやかと杏子。

さやか「まるで秘密基地みたいだ」

まどか「ここから、魔獣の動きを監視しているんだね」

ほむら「さあ、好きに座って」

   長椅子に座るよう促すほむら。

   ×   ×   ×

   巴マミの作ったケーキと紅茶が人数分並べられている。キュウべぇがテーブルの上で眠っている。

   ケーキを食べる六人。ケーキは以前もらったものをとっておいた。

杏子「このケーキすんげーうめー」

   ほぼ一口でケーキを食べきる杏子。

まどか「すごく美味しい」

さやか「ほんとーどこの店で買ったの、これ?」

ほむら「巴さんの手作りよ」

   自分のブラックコーヒーをすするほむら。ほむらだけコーヒー。

まどか「本当ですか! 巴さんすごーい」

さやか「マミさんやるなぁ」

   最後の一キレを口に運ぶさやか。

なぎさ「なぎさはマミの作るチーズケーキが大好きなのです」

マミ「ふふふ、ありがとう」

   ほむら全員がもてなしのケーキを食べきったことを確認し、フォークを置く。

ほむら「それじゃあ、美樹さん鹿目さん薬指の爪を見せてくれないかしら」

   言われるがまま手を差し出す3人。

   ほむら、ダーク・オーブを取り出し、三人の手の上にかざす。

   さやか、杏子の爪に紋様が浮かび上がる。

さやか「わあ、なんか浮かび上がった」

ほむら「おめでとう、美樹さやかさん美樹杏子さん」

マミ「すごいわ、姉妹二人とも才能があるなんて」

ほむら「この紋様は魔法少女になる素質のある少女だけに浮かび上がるもの、あなたたち二人には魔法少女に 

 なる資格があるわ」

杏子「やったぁ!」

さやか「まあ、当然の結果ってやつですな」

まどか「ううっ」

   がっくりと頭を垂れるまどか。

なぎさ「まどかには出てこないですねぇ」

   まどかはほむらの魔女の口づけで力を封じられているため、証が浮かび上がらない。

マミ「ほんとうにね、残念」

杏子「へへへ、残念だったなまどか」

まどか「はぁ」

   ため息をつくまどか。

マミ「鹿目さん気にしないで、魔法少女の素質は誰にでもあるわけではないから」

まどか「でも、わたしにだけないって……」

ほむら「むしろわたしは安心しているわ、あなたの性格は戦いに向かない。魔獣と戦い続けるには強い精神力 

 とそれを持続する安定性が必要なの。どちらかが欠けていたら長くは持たない、それは死を招く結果にも繋

 がるわ」

さやか「……死」

   さやかの言葉に反応し顔を上げ、ほむらを見るキュウべぇ。

ほむら「そうよ、美樹さん魔法少女の戦いは命懸け、一瞬の気の迷いや油断が命取りになりかねない。戦いの 

 中命を落とす魔法少女も少なくはないわ」

杏子「命がけってなるとちょっと考えさせられるなぁ」

ほむら「だから契約をするときには悔いのないようによく考えて」

さやか「なんかちょっと怖くなっちゃったなぁ」

   死という現実に臆病風に吹かれるさやか。

マミ「でもそれなりに見返りはあるのよ、魔法の力でちょっとだけ得することが出来るわね」

なぎさ「そうです、便利な力なのです、なぎさは宿題を全部魔法で済ましているのです」

マミ「あれぇ、それは正しい魔法の使い方じゃないわね、なぎさちゃん」

なぎさ「おっと、うっかり口が滑ってしまったのです」

   手をクロスさせ口元を隠すなぎさ。

   全員声を上げて笑う。

 

 

〇 朝 教室

   教室に駆け込むまどか、ほむら、さやか、杏子。

杏子「セーフ……間に合ったー」

ほむら「わたしとしたことが時間ギリギリなんて初めてだわ」

杏子「スリル満点だろ」

ほむら「そんなスリル味わいたくないわ」

   杏子、ほむらと話し始める。天地がひっくり返ったような異様な光景を見てざわめく、クラスメイトた

   ち。

   さやかとまどか、自分の席でふくれている仁美に近づく。

さやか「仁美ごめん遅れちゃって目覚ましが止まってて」

仁美「……今日もお一人様登校で嫌でも人目につきましたわ」

   優雅なため息を付く仁美。

さやか「ごめん、この埋め合わせは必ずするから」

仁美「あら、本当に? それでしたらわたくしのおこずかいでは手の届かないあのウルトラ特大パフェでもご

 馳走になろうかしら」

   意地悪そうな目つきでさやかに見返りを要求する仁美。

さやか「機嫌直してよぉ仁美ィ」

まどか「志筑さん、さやかちゃんを許してくれないかな」

   さやかに気を利かして横槍を入れるまどか。   

仁美「はぁ、鹿目さんがそうおっしゃるのでしたらかまいませんわ」

   渋々といった様子で頷く仁美。

さやか「ほんとすんません仁美先輩」

   ぺこりと頭を下げるさやか。

仁美「それにしてもさやかさん、昨日一体なにがありましたの? お二人共昨日あんなに暁美さんといがみ

 合っていましたのに、朝一緒に登校する仲になっているなんて」

   仁美、談笑しているほむらと杏子を見る。待ち合わせ場所にほむらと見知らぬ三年生が居たので気に 

   なっている様子。

さやか「ああ、ほむらとマミさんね、あの後ちょっとした共通点が見つかりまして意気投合したんですよ」

仁美「暁美さんとさやかさん、杏子さんに一体何の共通点が」

さやか「まあ、ちょっと非日常的な点でね……」

仁美「非日常? さやかさん……まさか、白百合色の世界に足を踏み入れてしまいましたの?」

さやか「へっ?」

まどか「……仁美ちゃん?」

    妄想がヒートアップして頭を抱える仁美。

仁美「それはいけません事よ、いくら暁美さんがお美しく魅惑的な方であってもさやかさんは乙女、純真を汚 してはいけませんわ」

さやか「なっ、そんなんじゃねってえの」

まどか「今日の仁美ちゃんなんかおかしいよぉ」

   体をガバッと起こす仁美。

仁美「まどかさんはそのままのあなたでいてください……この世界はあなたのような方が深入りしていい世界で はありませんですことよ」

   なぜか真剣な表情で忠告する仁美。

まどか「えーわけがわからないよ」

さやか「ぎえー仁美のキャラが崩壊しちゃったよーこっちの世界に帰ってこいよー仁美ィ―!」

   大騒ぎしているさやかたちを遠目で見ている男子グループ、上条恭介の姿もある。

男子A「お前の彼女と幼馴染がカオスなことになっているぞ」

中沢「まさか、お前の彼女も暁美さんのファンなのか」

恭介「ハハハ、違うよ」

   苦笑いをする恭介。

和子「はーい、皆さーん席に座ってーHRが始まりますよー」

   和子がフラフラと教室に入ってくる。不幸のオーラを身にまとい顔は頬コケ目元には隈ができている。

中沢「ううっ、そして新たなるカオスが……」

   早乙女先生の姿を見て、腹を抑え顔が青ざめる中沢君、また胃の痛くなる質問をされると考えている。

   自分の席に戻るクラスメイトたち。さやか、まどかも自分の席に戻る。

女生徒A「起立、おはようございます」

クラス全員「おはようございます」

和子「おはようございますみなさん」

   クラスの生徒全員座る。

和子「それでは、点呼をとりまーす」

   一人一人の名前を読んでいく和子。

仁美「あの、さやかさん」

   隣の席の仁美が小声で話しかけてくる。(さやかと仁美の席は隣同士)

さやか「何?」

仁美「放課後さやかさんとだけでお話したいことがありますの、お時間よろしいでしょうか」

さやか「ううん……でも帰り予定があるしなあ」

仁美「できることなら先方にお断りを入れていただけませんか? 今月は今日だけしか時間を作れませんの」

   仁美の顔を見るさやか、さっきとは打って変わり深刻な顔をしている。

さやか「うん……まどかたちとの約束だから、仁美の名前をだせば何も言わないと思う」

   有無を言わせぬ強い口調に圧倒され、いわれるがままになるさやか。

仁美「ありがとうございます」

   さやかに小さく礼をする仁美。

 

 

〇 授業中 教室

   数学の授業、ほむらがホワイトボードに出題された出題の解をかいている。

   パソコンの影で駄菓子をこっそり食べる杏子。

   うつらうつらと頭を揺らし寝るさやか。全く勉強すやる気のない姉妹。

   ノートに落書きをするまどか。ノートには魔法少女姿の友達たちの姿や使い魔が描かれている。

   暁美ほむらのダークオーブを書き終わりニコリと笑うまどか。

ほむら「できました」

   回答を全て書きこんだほむら。

数学教師「途中式を含め全問正解だな……暁美の書いたとおりこのnの素数は……」

   ほむらの書いた数式の解説をする数学教師。

   自分の席に戻るほむら、目だけでちらりとまどかの姿を見る。

 

 

〇 夜 ほむらのアパート(回想)

   椅子に座っている全員。

杏子「ところで魔法少女になるにはどうすればいいんだ? ほむらがあたしたちを魔法少女にしてくれるの

 か」

ほむら「いいえ、あなたたちを魔法少女にするのはキュウべぇの仕事、魔法少女になるには彼らと契約し、契

 約の証としてソウルジェムを受け取るの」

   ダークオーブを手に乗せるほむら、マミ、なぎさも指輪をソウルジェムに変え手のひらに乗せる。

ほむら「これはソウルジェム魔法少女に変身するときに必要な物で魔法少女の全魔力の源。これを無くすと変

 身することもできなくなるし、魔法を使うこともできなくなる、どんなときにも肌身離さず持っているこ 

 と、絶対に無くしたり他の人間に渡したりしないように気を付けて」

杏子「これがなきゃなにもできないわけだ」

ほむら「これにはダメージを軽減する効果もある、魔獣との戦闘で傷ついても肉体の負傷と痛みを軽減してく

 れるし、魔力を使って自動治癒するから怪我の治りも早くなるわ」

さやか「へえ、だったら絶対になくしちゃいけないな」

ほむら「そうよ、だから扱いには細心の注意をはらわないといけないの」

   真剣な眼差しで全員を見渡すほむら。

まどか「……ほむらちゃんのだけ、形が違うんだね」

   ほむら、まどかに鋭い眼差しを送る。

まどか「いや……違うんだよ……なんだかほむらちゃんのソウルジェムなんだか強そうだなって思って……」

なぎさ「わたしもそう思っていたのです、ほむらのだけ強そうで羨ましいのです」

   なぎさも不思議そうにほむらのダークオーブを見ていう。

ほむら「……いつからこんな形になったのか覚えていないわ」

マミ「最初からってわけではなかったの」

ほむら「そうよ」

ほむら「わたしは長年魔法少女をやっているから、戦いで背負い込んだ膨大な因果が形を変えたのでしょうね」

まどか「因果って……」

ほむら「わたしは今まで多くの魔獣を狩り何人もの魔法少女の最後を見届けてきたの、苦しみながら彼女たち

 が死ぬところを何度も見てきて、彼女たちの業と呪いをわたしが引き受けて生き残った。だから形が変わり

 強力な魔術を使えるようになったの」

   視線を落としまどかから目を逸らし寂しそうな表情をするほむら。

まどか「……暁美さん」

   ほむらの重い過去に静まり返る一同。重い空気になる部屋。

   杏子、足元に違和感を覚え、悲鳴をあげる。

杏子「なんか足元にいる」

   暗闇の魔女の使い魔が杏子の脚にじゃれている。

杏子「ひええ、なんだこいつは」

   立ち上がり後ずさる、後ろにいた鳥籠の魔女の使い魔にぶつかる。

杏子「ひえええええええ!」

   顔を引きつらせひっくりかえる杏子。

マミ「暁美さん、佐倉さんがびっくりしてるわよ」

ほむら「そうだったわね、紹介がまだだったわね」

   パンパンと手を叩くほむら。

   部屋の隅の暗がりの中からぞろぞろと使い魔たちが出てくる。

さやか「うわあ!」

   声を上げてまどかに抱きつくさやか。

まどか「わあ、可愛い」

   部屋中で蠢く使い魔に目を輝かせるまどか。

   パソコンの魔女の使い魔が食器を持っていく。

マミ「ふふふ、さすがの美樹さんもびっくりしているわね」

   微笑むマミ。

さやか「げげ! な、な、なんなのさ、このモンスター軍団は? あんたこんなの家に飼ってるの」

ほむら「ペットじゃないわ、彼らは使い魔、魔法少女たちの活動をアシストするクリーチャーたちよ」

杏子「使い魔?」

   あせあせしながら席に座る杏子。

ほむら「そうよ、魔法少女になったらこの使い魔を使役することができるようになる」

さやか「具体的にはどんなことをしてくれるわけ」

ほむら「彼らには巡回、警邏、監視などの魔獣の動きを魔法少女に知らせる使い魔と戦闘のアシストをする使 

 い魔に分かれていて、それぞれの個体に役割があるの」

まどか「だったらさっき私が見たのは……」

ほむら「巡回中の使い魔でしょうね、そのモニターの映像も使い魔の目線を転送しているものなのよ」

杏子「便利な連中だな」

マミ「魔法少女には欠かせないパートナーよね、使い魔が魔獣の位置を知らせてくれるから歩き回る必要がな 

 いし、魔獣を翻弄してくれるからとても役に立つのよ」

まどか「あなたたちは偉いんだねえ」

   優しい笑みを浮かべ、バラ園の魔女の使い魔(造園)の綿を撫でるまどか。

   お菓子の使い魔を膝に抱き撫でるなぎさ。

さやか「まどかもなぎさちゃんよく触れるね、なんかちょっとキモイ」

まどか「そうかなあ」

   バラの使い魔のヒゲをいじりながら聞き返すまどか。

マミ「わたしも最初は怖かったけど人懐っこくて可愛い子達なのよ」

   自分にもとばかりに次から次にかつての主人に駆け寄る使い魔たち。

   使い魔に囲まれるまどか。

まどか「ひやぁ! どうしたの?」

   突然使い魔たちが囲んできたことに驚くまどか。

なぎさ「なぜかまどかが一番懐かれているのです(相変わらず使い魔を撫でている)」

マミ「鹿目さんが一番の人気者ね」

   口を押さえて笑うマミ。

まどか「みんなどうしたのー?」

   ほむら面白くなさそうにその様子を見ている。

ほむら「お前たち調子に乗って鹿目さんを驚かすのをやめなさい」

   静かだが厳しい口調で命じるほむら。

   命令に従いまどかからそそくさと離れる使い魔たち。

   ほむらの厳しい口調に慄くまどか。

ほむら「ごめんなさい、鹿目さん驚いた?」

   笑みを浮かべまどかに聞くほむら。

まどか「ぜ、全然、そんなことないよ」

   使い魔よりも、ほむらの厳しい口調に怯えるまどか。

ほむら「そう、ならいいわ……」

   怯えさせてしまったことを後悔した様子のほむら。心を落ち着かせ一息をおく。

ほむら「みなさん、魔法少女についての説明は大体終わったけどどうかしら?」

さやか「なにもいえないねぇ」

杏子「命懸けでしょうあたしも少し考えたいなぁ」

   やはり一概に返事をできないさやか、杏子。

ほむら「今すぐに返事とは言わないわ、よく考えて、自分の生活が犠牲になってもと思うならキュウべぇと契 

 約して。魔法少女と関わって後悔した子を何人も知っているから」

なぎさ「わたしからの提案ですけど、まどかたちに魔法少女体験コースをしてはどうでしょうか」

   人差し指を立ててほむらに提案するなぎさ。

マミ「そうよ、彼女たちに実際に体験をしてもらえば、どんなものかわかってもらえるんじゃないかしら」

ほむら「でも……」

   口ごもるほむら。なぜか少し嫌そうな表情をする。

なぎさ「わたしたちの時と違って、魔法少女が三人いますし、わたしのバリアの能力を使えば三人とも守りき

 れるのです」

   拳をグッと握って自信満々の表情を浮かべるなぎさ。

さやか「そうだよ、あたしたちがついていけばいいんだよ」

ほむら「でも……危険がつきまとうわよ、私たち三人でもあなたたちを確実に守れるという保証はないのよ」

杏子「足でまといになんか絶対にならねぇよ」

さやか「暁美さんが戦う姿をみてちゃんと考えたいんだ、気をぬかないようについていくからさ」

   純粋な綺麗な瞳でほむらを見つめるさやか。

目をそらし、宙を見て考えるほむら。

ほむら「興味があるならいいわ、ついてきなさい、だけど危険な事をしているということは忘れないで」

さやか「うん、それは絶対に忘れないようにする暁美さん」

   額から汗を一筋流すほむら。

ほむら「ほむらでいいわ」 

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