〇 放課後 教室。
さやか、ほむらと杏子の元に行く。
さやか「ほむら、ごめん今日急用が入ったからいけない!」
手を合わせ、ほむらに頭を下げるさやか。
杏子「ああ? 姉ちゃんそれどういうことだよ?」
語気を強めて問いよる杏子。
さやか「仁美が話すことがあるらしんだけど、他の日に都合がつかないみたいだから、今日は仁美に つきあってあげたいんだわ」
杏子「あの仁美の奴がか?」
仁美にしては珍しく強気に出るなと思い意外そうな顔をする杏子。
まどか「だけど、ほむらちゃんとの約束は……」
ほむらの反応をきにしてさやかに問いかけるまどか。
さやか「ごめん、自分で言い出したことを反故することになるはわかっている、今朝仁美を待たせて たでしょう、昨日あたしから誘ったくせに仁美との約束を守れなかったから、その埋め合わせをし たいんだ、仁美は昔からの友人だし、二人だけで話しをしたいって、いってたから、ほっとけない んだ、明日からはちゃんとついていくから、今日は仁美と一緒にいさせて」
真摯に謝るさやか、自分の思慮のなさを反省する。
ほむらさやかの姿をみて、いかにもさやからしい反応だと思い微笑む。
ほむら「気にしないで、美樹さんなにも毎日絶対についてきこいと言っているわけじゃないのよ、気 がむいた時でもいいし、優先すべき用事があるのだったら、そっちの方を優先して」
ほむら優しくさやかに言う。自分の心が寛大であることをアピールする。
さやか「ごめん、今度から気をつけるよ」
ほむら「そんなに堅苦しく謝らないで、美樹さんのキャラじゃないわよ」
さやか「ありがとうほむら、仁美を待たせたらいけないから」
さやか、待たせていた仁美のもとに行く。
さやかと仁美ほむら、まどか、杏子の前を通って教室の入口まで歩いて行く。
さやか「じゃあ、みんな頑張ってきて」
入口前で一度立ち止まり手を振り教室から出て行くさやか、仁美も軽く一礼する。
さやかたちの方を向いて見送るほむら。
ほむら「それじゃあ、わたしたちも行きましょうか」
まどかと杏子の方を向くほむら。
杏子「おう!」
ほむらがさやかを怒らずホッ胸をなでおろしほっとするまどか。
〇 放課後 ショッピングモールのフードコート
まどか、ほむら、マミ、杏子、なぎさの五人がソファー席を占領し座っている。まどか、ほむ ら、マミ、なぎさはSサイズのドリンクが置いてあるが、杏子の前にだけファーストフードの セットメニューが置かれている。持ち物のカバンやランドセルは椅子の上に置いている。
マミ「それじゃあ、みんな魔法少女体験レッスン一日目いってみましょうか」
杏子「イエーイ!」
まどか「はい、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げるまどかと杏子。
杏子「昨日は散々追いかけられたけど、今日は一泡ふかせてやるからな!」
そう言ってカバンからヌンチャクを取り出す杏子。
ヌンチャクを持って立ち上がり。
杏子「アチョー! アタッ! アタッ!」
奇声を上げながらヌンチャクを巧みな手さばきで振り回す杏子。
目を丸くして杏子のヌンチャクプレイを見守る一同。
杏子「アチャー!」
ポーズを決める杏子。
シーンと静まり返る店内、奇異の眼差しにさらされる一同。
パチパチと拍手をするほむら。ぼーっと杏子を見るマミ、まどか、なぎさ。
マミ「う、うん、やる気満々ね、いいじゃない」
恥ずかしさで顔を赤くしながらとりあえず褒めるマミ。
杏子「だろー小学生の時にカンフー映画を見てからずっと練習してるんだぜ」
相変わらず周りの視線に気づかず、自信満々にいう杏子。
まどか「す、すごいね、杏子ちゃん、だけどお店でやる必要があるのかな?」
周りの視線を気にしながら言うまどか。
杏子「おっ!」
周りの視線に気づく杏子。いそいそと席に戻りヌンチャクをカバンに入れて隠す杏子。
杏子「まどか、お前は何を持ってきたんだ」
ヒソヒソ声でまどかに聞く杏子。
まどか「声はひそめなくてもいいんじゃないかな」
苦笑いをするまどか。
まどか「わたしはねー」
カバンの中を漁りノートを取り出すまどか。事実何も持ってこなかったが見せるだけみせてみ ようと思い、出してみる。
まどか「杏子ちゃんとさやかちゃんの衣装デザインを考えてきました」
ノートをテーブルの上に出すまどか。一日の授業の全時間を使い書いた大作。
杏子「はー? デザインかよ」
まどかののんきさに脱力する杏子。
マミ「ふふふ、鹿目さんったら」
まどかの天然っぷりをおかしく思うマミ。
なぎさ「絵がすごくかわいいのです」
杏子「まったくもっと役に立つものを持ってこいよな、これは戦いなんだぞ、例えばジュースとか食 い物とかお菓子とか」
ハンバーガーをかぶりつきながらいう杏子。
なぎさ「つまり何か食べる物を持って来いってことなのですね」
杏子「そーいうこと」
ハンバーガーを一気に食べ終わり、つまようじで歯の掃除をする杏子。
マミ「わーわたしも書いてある、とても可愛い」
なぎさ「実物よりも可愛いのです」
マミ「なぎさちゃん、そんなこと言わないの」
杏子「なんかひらひらしてて恥ずかしいよ! スカートも超ミニだし」
まどか「えー動きやすくていいと思うよ」
マミ「さやかさんの格好はセクシーすぎる気がするんだけど」
ワイワイ言いながらガールズトークを楽しむまどか、マミ、杏子、なぎさを寂しそうな目で眺 めるほむら。過去の出来事を懐かしみ、そして何かを諦めている冷めた目。
まどか「ほむらちゃんのことも書いてみたんだよ……うまいかな」
まどかに話しかけられはっとするほむら。
ほむら「ええ、可愛らしいわ」
ドギマギするほむら。
ほむら「みなさん、そろそろ行きましょうか」
動揺を打ち消すかのように話を切り上げるほむら。
杏子「おう」
マミ「ええ」
カバンやランドセルを取り立ち上がる一同。
ほむら「鹿目さんは、あなたはもうここで帰りなさい」
まどか「えっ!」
驚くまどか。
ほむら「昨日一晩考えたんだけど、やはり一般人のあなたを連れて魔獣の結界に入るのは
危険だわ、いくら巴さんとなぎさちゃんが付いているとはいえ守りきる自信がない」
なぎさ「ですけどそれは杏子も同じではないのですか?」
ほむら「杏子は魔法少女の素質があるから危なくなったら契約できるけど、鹿目さんはそ
うはいかない、もしも私たちが不覚をとったらもう戦える魔法少女がいない、杏子がな
ったとしても戦力になるかわからない、必ず守りきるって約束ができないから連れていけな
いの」
まどか「……」
顔一面に寂しそうな顔をするまどか。
ほむら「ごめんなさい、わたしたちは一般人を危険にさらすわけにはいかないの」
まどか「わかってるの、ほむらちゃん達の足を引っ張ることになるって自覚があって。
それでもそれで何かできることはないかと思って来たたけど、やっぱり本当になに
もできないんだね」
マミ「実はわたしもそう思っててね、わたしとなぎさちゃんも魔法少女になって間もない
から、三人も女の子を連れて大丈夫かなって心配だったの、暁美さんの言うことは正
しいと思うわ」
まどか「マミさんわたしをの事を思って言っていることだから、それはわかっています。
ほむらちゃんわたしはもう先に帰るね、魔獣退治頑張ってね」
マミ「また別の機会に埋め合わせをするわ」
なぎさ「ごめんなさいなのですまどか」
杏子「じゃあな、まどか」
小走りでエレベーターの所に走っていくまどか。
まどか、一度エレベーターの前で立ち止まり手を振り、エレベーターに乗り降り
ていく。
ほむら「わたしたちも行きましょうか」
ほむらがマミ、杏子、なぎさに言う。
〇 放課後(前と同時刻) 喫茶店
あまり目立たない閑静な場所にある喫茶店。
向かい合って座っているさやかと仁美。さやかの前には高そうなケーキと紅茶が出されてい る。志筑仁美の奢り。
さやか「なんか悪いね、ご馳走になっちゃって」
仁美「いいんですの、さやかさんの予定を取り消してもらったのですから」
自分の注文した紅茶をすする仁美。
さやか「で、あたしに話ってなんなのさ」
仁美「あの、実はさやかさんには聞きづらいことなんですけど」
さやか「あたしに聞きにくいこと?」
仁美「わたしが恥を晒してでもあなたに聞きたいことなのです」
真剣な眼差しでさやかを見る仁美、話題の検討もつかず不審な顔をするさやか。
仁美「わたし、最近上条君との関係が疎遠になってますの」
意を決したように静かに話し始める仁美。
さやか「朝一緒に登校していないって言ってたけど、あんたちそんなにヤバイの」
仁美「はい、もう帰りも別々ですし、休日に会う機会も全くありません。メールや電話もするんです けど、返事が無愛想でそっけなくて、練習が忙しいのは十分承知しているのですが、少し優しくし てくれてはいいんじゃないかと思っているのです、もうしかしたら疎ましく思っているのではない かとわたし不安になって」
仁美、さやかに携帯電話を渡す。
ケータイの恭介専用メール受信箱を見るさやか。メールの内容は『うん』だとか『そうだね』とか『アハハハ(笑)』と素っ気のない返事。
さやか「ナニコレ? 恭介のやつちょっと酷いんじゃない」
仁美「さやかさんもそう思いますか?」
さやか「無神経にもほどがあるんじゃないの、あいつ」
仁美に携帯電話を返す。
仁美「わたしもう上条君に必要とされていないんじゃないかと、心配になってしまって、こういうと きにどうすればいいか上条君の事をよく知っている、さやかさんに相談をしたんです」
さやか「うーん、難しいなぁあたしと恭介はただの友達だし男女の仲となるとなぁ」
仁美「よく考えると上条君のこと全く知らなくて、それなのに一気に関係が恋人どうしになってし まったものですから、上条君の考えていることがわからないのです」
少しの時間アドバイスを考えて。
さやか「……あたしの勘で言わせてもらうけど、恭介の性格から考えてみるとね、ほっといてほしい 時にはほっといていたほうがいいのかも」
仁美「といいますと?」
意外なアンサーに驚く仁美。
さやか「むしろ仁美が構って欲しくてベタベタしているから、恭介が疎ましく思ってわざと距離を とっているのかも、わたしはあいつのことを昔から知っているからわかるんだけど、今の仁美は ちょっと恭介にとって重たいのかもしれない」
仁美「少しは上条君と距離をとったほうがいいのかもしれない、ということですわね」
納得するようなしないような気持ちになる仁美。
さやか「うん、今はコンクールが近いからヴァイオリンに集中していたい、誰にも邪魔をされずに特 訓に励みたいんだろうと思う」
仁美「そうでしょうか……」
さやか「あいつは神経質な芸術家タイプだからね、自分のやりたいことを集中してやってどんどん上 を目指していくタイプなんだ、昔練習の邪魔をして怒られたり喧嘩になったりってことが何度か あったんだよ」
遠い目で過去の出来事をなつかしむさやか。そのさやかの表情をみて不安になる仁美。
仁美「わたしは上条君の恋人失格ですわ、わたしが一番わかってあげなければいけませんのに」
弱気になりため息をつく仁美。
さやか「あいつは考えることは難しいからね、逆に引けば恭介の方から声をかけてくると思うよ」
黙り込む仁美。
さやか「仁美も大げさだなぁ、こんなことでかしこまらなくてもいいのに」
仁美に気を使い明るく笑うさやか。
仁美「やはり、さやかさんの方が上条君の事をちゃんとみてますのね」
仁美の表情は浮かない。
さやか「ううん、ただ身近に居たから仲良くしていただけさ、腐れ縁ってやつかな」
黙り込む仁美、友達を思う友情と恭介との距離を妬む気持ちで複雑な心境になる。
さやか「あたしからメールの返信くらいは、ちゃんと返しなさいって喝を入れておくから
今は仁美は恭介を見守っていれば良いと思うよ」
仁美「わかりました、それが今、上条君に私ができることならばそうします」
さやか「うん、がんばりな仁美」
椅子から立ち上がるさやかと仁美。
〇 放課後 喫茶店入口。
夕日で美しいオレンジに染まった小路。喫茶店の入口前で向かい合う二人。
さやか「今日は話を出来て良かったよ、あんたたち見てて少し心配だったんだ」
仁美「今日はわたしのためにありがとうございました」
さやか「じゃあね、仁美」
手を振るさやか。
仁美「さやかさんもお気をつけて」
別々の方向に立ち去る二人。
〇 放課後(前と同時刻) 工場跡地
ほむら、マミ、杏子、なぎさ、夕暮れの寂れた工場団地を歩いている。ダークオーブを手のひらに乗せ魔力の波動をさぐるほむら。
杏子「つかれたよ、まだ歩くのか」
だらだらと歩く杏子。
ほむら「もう少しだから我慢して」
杏子「あれから、あっちうろうろ、こっちうろうろもう何時間歩いたと……」
なぎさ「まだ、一時間もあるいていないのです」
マミ「魔獣の探索は忍耐を伴う地道な作業よ、こうやって歩くのも狩りの内なの」
杏子「てゆうか、使い魔が居場所を教えてくれるんじゃないのかよ」
なぎさ「魔獣が使い魔の偵察に気付くと逃走を図るので、大体の場所しか探知できないことが多いの です」
杏子「なんか融通の効かない奴らだなぁ」
ダークオーブが反応する。
ダラダラ歩く杏子を制するほむら。シャッターの降りた工場の入口。
ほむら「ここよ」
魔法少女に変身するほむら。
弓でシャッターを攻撃し魔獣の結界に切れ目を入れ、結界に侵入するほむら。
マミ、なぎさも変身する。
マミ「結界の中に入るわよ、杏子ちゃんもここからは気を引き締めて行動して」
杏子「わかってらぁ」
マミ、杏子、なぎさ、結界に侵入する。
〇 放課後 魔獣の結界(偽の見滝原市)
空襲でも受けたかのように焼け焦げ廃墟と化した街の最下層。
三角頭巾を被り、白ずくめの格好をした魔獣たちが侵入者を探しうろついている。
建物の物陰に隠れてやり過ごす三人。
マミ「警戒しているわ、侵入に気づいたようね」
ほむら「不意を打って奇襲をしかけましょう」
なぎさ「杏子、こっちを向いてください」
持っていたラッパで巨大なシャボン玉を作り杏子に吹きかけるなぎさ。
杏子の全身がシャボン玉の中に入る。
杏子「うおお、すげえ」
シャボン玉を手で触れたり、飛び跳ねる杏子。
なぎさ「それはなぎさの能力を利用したバリアなのです、その中に入っていれば魔法少女ばりの跳躍 ができますし、軽い攻撃くらいは防ぐことができるのです」
杏子「しゃあ、サンキューなぎさ。やってやるぞ、どこからでもかかってこい」
ヌンチャクを取り出す杏子。
ほむら「杏子、それは魔獣との戦いにあまり役に立たないから、わたしが昔使っていた武器を使いな さい」
腕に取り付けた盾の中からノリンコ製五四式手槍を取り出し、コッキングをして杏子に渡す。
ほむら「気休め程度にしかならないけど、この銃を貸してあげる。わたしの魔力が込められているから、その武器だったら魔獣に攻撃できるわ」
ずっしりと重く冷たい拳銃を押し付けられ戸惑う杏子。
マミ「暁美さん、すごい武器をいっぱい持ってるのよ」
杏子「こんなもん、どこで手に入れたんだよ」
なぎさ「とても気になるのです」
ほむら「どうでもいいじゃない、秘密事項よ。これは弾丸」
マガジンを七個渡す。
ほむら「それじゃあ、みんな行くわよ」
マミ「ええ」
マスケット銃を召喚するマミ。
なぎさ「あいさーなのです」
仮面を被り皿に乗ったチーズを召喚するなぎさ。
弓を構えながら魔獣に飛びかかるほむら。共に突進するなぎさ。後ろで援護射撃をするマミ、 杏子。
〇 放課後 工場跡地
結界の中に飛び込む使い魔たち。
三匹のナイトメアが工場跡地をさまよっている。ほむらの世界改変後は架空敵の役割を失い、 人の夢見る悪夢がただ具体化したものとして存在している。
三匹が結界の割れ目のシャッターの前を通り過ぎようとすると、突然結界の割れ目から編みこ まれた髪が出現し、ナイトメアに絡みつき結界の中に引きずり込む。
〇 放課後 魔獣の結界の中
魔獣にマスケット銃の一斉射撃をするマミ。蜂の巣になり消滅する魔獣。
魔獣に向かい無数のシャボン玉を発射し攻撃をするなぎさ。無数のシャボン玉が魔獣に直撃し 爆発する。
お菓子の使い魔(飛行機)と爆撃攻撃を仕掛け地味にダメージを与える。
杏子とほむらが二匹の魔獣を翻弄しながら戦う。魔獣の攻撃をかわしながら銃弾と矢を打ち込 む杏子とほむら。
魔獣空間に引きずり込まれたナイトメアの一匹がパニクり、モンキレンチを持って杏子に殴り かかってくる。
ほむらそれにいち早く察知する。
ほむら「杏子危ない!」
時間操作を発動し時間を止め、杏子を突き飛ばす。突然、ほむらが目の前に現れ、驚く杏子。
はるか遠くへ飛んでいく杏子。
重い打撃をくらったほむらだが、直ぐに体勢を立て直し弓でナイトメアを殴る。
凄まじい攻撃をくらい一瞬でダウンするナイトメア。抜け殻になったナイトメアから疲れた顔 をした男の顔(工場長)が出てくる。それを弓で殴り粉砕するほむら。
魔獣のパンチで吹き飛ばされるほむら。
マミ「暁美さん!」
ほむら「大丈夫、これっきしの攻撃」
言葉のわりにはつらそうな表情をしながら反転し体勢を立て直すほむら。
黒い翼を召喚し、弓を構え反撃するほむら。矢を放ち一瞬で魔獣を粉砕する。
杏子の吹き飛んだ辺りを飛び回るほむら。ビルの中にめり込んでいるシャボン玉と杏子を発見する。
ほむら「大丈夫? 杏子?」
杏子「……ああ」
怯え切った様子の杏子。
震える手で弾倉の交換をしようとする杏子、が上手く入らない。
ほむら「もう無理しないで、ここに隠れていて」
銃を取り上げようとするほむら。ぎゅっと手を握ったまま銃を離さない杏子。
杏子「だけど足を引っ張らないって約束したんだ、せめてあのぬいぐるみ野郎だけは……」
ほむら「今、ここであなたに死なれるとさやかに合わせる顔がない、あなたは初めてにして怖がらず に頑張ったわ」
優しい滑らかな手つきで銃のグリップから指を一本一本引き剥がすほむら。杏子は手が硬直し て銃を手放せなかった。
杏子「……足を引っ張らないって約束したのに」
ほむら「誰だって最初はこうなのよ、巴さんやなぎさちゃん、わたしもね」
杏子「……やっぱり戦うのは怖いな」
ほむら「ええ、怖いわよ……(間を置き聞こえないような声で)今でも」
ほむら盾に銃を仕舞う。
マミのリボンによって縛り上げられる最後に残った二匹の魔獣。
巨大な大砲を持ち勝利を確信した顔でニコリと笑うマミ。
マミ「ティロ・フィナーレ」
必殺技名を叫び、巨大魔大砲で魔獣を粉砕するマミ。
ナイトメアを捕まえ、ぐりぐりとチーズを押し付けるなぎさ。
ドロドロと溶けたチーズが全身にかかり、煙を上げながら溶けていくナイトメア。
ほむら「全部すんだみたいね」
〇 放課後 魔獣の結界
広場のような開けた空間にほむら、杏子、マミ、なぎさが全員集結している。
マミ「暁美さん大丈夫だった?」
ほむら「ええ、ナイトメア如きに不覚をとってしまって情けないわ」
少し気怠そうな様子のほむら。
マミ「杏子ちゃんをかばいながらの戦いだったから仕方ないわ」
杏子「ほむら、そういえばさっきのぬいぐるみはなんなんだ? あれも魔獣の一種なのか?」
ほむら「ごめんなさい、最初に説明するのをすっかり忘れていたわ、あれはナイトメアという怪物で 人の夢見る悪夢が具現化したものなの、魔獣と違って結界は発生させないけど、直接人に襲いかか るの、たまに結界の中に侵入してきて魔獣と一緒に魔法少女に立ち向かってくることがあるわ」
半分嘘の説明をシラッとするほむら。
杏子「そういうことは忘れるなよなー」
話し込む三人をビルの物陰から様子を伺うナイトメア。武器のバットを取り出し杏子を狙って突進する。
マミ、杏子、なぎさがナイトメアに気づく前に。ほむらの上半身がバネじかけのように曲がり上半身が直角状態で背後のナイトメアを射る。
ナイトメアがダウンし子供の顔が出てくるがそれも容赦なく矢で打ち倒す。
〇 夜 工業団地
魔獣の結界が崩壊し元の工業団地に戻る。バラバラと飛び散るグリーフシード。それを一つず つ拾っていくなぎさとほむら。
マミその一つを拾い。ソウルジェムと一緒に見せる。
マミ「わたしのソウルジェム昨日よりちょっと濁っているでしょ、こうやってグリーフシードを使え ば」
グリーフシードをソウルジェムにくっつける。ソウルジェムの汚れが少しキレイになる
杏子「色が少し綺麗になった」
なぎさ「魔法の力を維持し続けるためにはグリーフシードを手に入れてこうやってソウルジェムのコンディションを最高に整えてなければならないのです」
杏子「じゃあ魔獣をいっぱい狩らなきゃいけないわけだ」
マミ「戦いの見返りがこれになるわけ」
ほむら「ご苦労様、今日の分はみんな巴さんとなぎさちゃんにあげるわ」
惜しげもなく拾ったグリーフシード全てを渡すほむら。
マミ「暁美さんいつももらってばかりで悪いわ」
なぎさ「ありがとうなのです」
工場の倉庫の陰から何者かが姿をあらわす。すばやく振り返る全員。
影の正体は小さな紙袋を抱えたまどか、帰ったと見せかけて実はほむらたちの後をつけてい た。
まどか「あの……みんな魔獣退治……お疲れ様……お腹が減っているんじゃないかと思って、差し入れ買ってきたんだ」
紙袋の中身は菓子パンである。まどかが場所を確認したあと街で買ってきたもの。
まどか少しぎこちのない笑顔を浮かべている。
杏子「……まどか」
さっきのさりげない冗談を思い出す杏子。
マミ「……鹿目さん」
まどかの行き過ぎた思いやりにどう反応すればいいかわからないマミ。
ほむら「あなたはここで何をしているの? 何もできないから帰りなさいっていったわよ
ね」
冷たい言葉を浴びせるほむら。覚悟はしていたがいざ面と向かって言われるとつらく悄気返る まどか。
ほむら「そんな暗い所に一人でいて魔獣やナイトメアに襲われたらどうするの? いった
い誰が助けるの? あなたは本来私たちに関わるべきではない、あなたが死んでしま
ったらわたしたちは何のために魔獣を狩っているの、あなたが死んでしまったらご両親
や志筑さんみんな悲しむわよ。お願いだからわたしの言うことを素直に聞いてちょうだ
い」
突き放すような冷たい口調で言うほむら。
杏子「おい! ほむら!」
さっきの態度とは打ってかわりきっとした目でほむらを睨みつける。
杏子「そりゃあねえんじゃねぇか? まどかはあたしたちのためにずっと一人で危険を犯
してまでずっとここで待ってたんだぞ、そんなきつい言い方しなくてもいいだろう」
ほむら「だけど……」
まどか「ほむらちゃんわかってるの、わたしがほむらちゃんの警告を無視したことも、わ
たしは何もできないことを、でも今からほむらちゃんたちが命をかけて戦っていると思
うと一人じゃ家に帰りたくなくなって、せめてほむらちゃんたちが無事に帰るのを確認
したら帰ろうって、お腹も減っているかもしれないから何かを食べるものを買っていこ
うって……もし明日杏子ちゃんもほむらちゃんも来なかったどうしようって心配にな
って」
まどかポロポロと涙を流す。
ほむら「……鹿目さん」
罪悪感で胸を押しつぶされそうになるほむら。
マミ「気持ちはわかったわ、わたしたちが死んじゃうかもしれないって、不安になったの
ね、大丈夫よ、わたしたちは魔獣なんかに負けたりしないんだから」
まどかを抱きしめるマミ。
ほむら「ごめんなさい、あなたの気持ちがわからなくて、わたしも言い方が悪かったわ」
まどか「わたしバカだよね、ほむらちゃんたちが負けるわけないのに」
涙をぬぐって笑顔を見せるまどか。
ほむら「ええ、わたしは絶対に負けないわ。だから安心して」
杏子「なあ、みんなまどかが買ってきたパンを食べようぜ。あたし腹が減っちまったよ」
まどか「うん、食べて」
涙をふくまどか。
なぎさ「いただくのです」
立ちながらパンを食べるまどかたち。
杏子「うまいなぁ」
マミ「お腹がすいてたから、とてもおいしく感じるわね」
まどかたちより少し離れたところで背を向け一人で食べているほむら。
杏子、声をかけようとほむらを見ると、涙を拭っている動作が目に入る。
バツの悪さを感じ、声をかけない杏子。
〇 夜 さやかのマンション
杏子、さやか家の玄関に入る。
杏子「ただいま」
杏子の声をきいてさやかが出迎える。ホッとしたような顔。
杏子「なっ、なんだよ、ねーちゃん出迎えなんてらしくないじゃん」
さやか「いや、出迎えとかそんなんじゃないんだから」
杏子「もうしかして心配した? あたしが死ぬわけないじゃん。拳銃をばりばり撃ちまくっての大立 ち回りだったんだぜ」
誇らしげな顔をして見栄を張る杏子。
さやか「バカ、あんたのことだから調子に乗りすぎて怪我でもしてきたんじゃないかって心配してた んだから……」
杏子「……姉ちゃん」
姉の思いやりに思わずハットさせられる杏子。
さやか「さあ、さっさと風呂入っちゃいなよ」
杏子「姉ちゃんは?」
さやか「あたしは今ご飯を食べてるところだから」
杏子「わかった」
× × ×
美樹家のバスルーム。入浴剤を湯船に入れ、湯船に浸かる杏子。
杏子「はあ、姉ちゃんにはあんなことを言ったけどダメダメだったなぁ」
自分の醜態を思い出しため息をつく杏子。
杏子「さっきのナイトメアの攻撃にはビビっちまったなぁ、いきなり来られたから体が動かなくて、ほむらが庇ってくれなきゃ、死んでたんだよなぁ。こんなので大丈夫なのかなあたし」
思い出して身をすくめる杏子。
杏子「うー弱気になるな。親父の理想を次ぐためにも怯えちゃいけないんだ。わたしの力があれば誰 かを助けられるんだ、明日こそはほむらの足を引っ張らないようにしなくちゃな」
手で銃の形を作り空想上の標的に狙いを定める杏子。
〇 夜 まどかの家リビング
風呂と夕食を済ませたまどかはタツヤと一緒に、デザートのクリームコーヒープリンを食べ ている。キッチンでは知久が皿洗いをしている。母親絢子は残業でまだ帰っていない。
まどかコーヒープリンを食べる手が止まる。あなたには何もできないって言ったわよねとほ むらの言葉を思い出し、己の無力を感じるまどか。
まどか「ねえ、パパ」
知久「なんだいまどか?」
知久、手を止めまどかの方を向く。
まどか「もしも、パパの友達が人を助けるための仕事を始めて、本当は自分も手伝いたい
けど知識も実力もないから足でまといにしかならないってなった時にパパはどういうに友達と接す るようになると思う?」
知久「難しい状況だなぁだなぁ……僕の年くらいになると奥さんや子供たちを養って家庭
を守らなきゃいけないから、できることは限られてくるなぁ」
まどか「何もしてあげられないの?」
知久「うーん、そういうことじゃなくて話を聞いてあげるとか、出せる範囲ならお金を貸してあげる とかそういうことはできるかもしれない」
まどか「足を引っ張ることしかできないのについていくのって悪いことかなぁ」
少し間を置いて。
知久「うん、僕はいいことだと思わないな。現実がよくわかってない人が首を突っ込んだってね、迷 惑をかけちゃうし、最終的には自分も人も傷つけちゃっていいことがないよ」
何かを思い出すような顔をして語る知久。
まどか「うん……やっぱりいいことじゃないよね」
知久「そのことが関係して今日と昨日は遅くなったのかい?」
まどか「うん、そうなんだ」
嘘をつけない性格のまどか。正直にうなずく。
少し間を置いて。
知久「僕は絢子さんからまどかのことを任せられているんだ、君をのびのびと束縛せず育てたい、だ けど毎日夜遅くまで出歩いて危ないことをしようとしているんだったら、話は別だ、ほっとけな い」
まどか「パパ、違うの、危ないことじゃないの」
タツヤ不穏な空気を感じ取って不安そうな顔をする。
まどか「……ボランティアみたいなものなの、みんなで困っている人のためになにかしようってさや かちゃんや杏子ちゃんたちと話をしているの」
魔法少女のことなど言えるはずもなく、口を濁すまどか。
知久「本当かい?」
まどか「本当だよ」
嘘をついてはいないと知久を見つめるまどか。
知久「うんわかってるよ。まどかは嘘をつくような子じゃないもんな。疑ってごめんね」
まどかの表情から何かを隠していると感じ取るが以上追求しようとするのはやめようと思う知久。
まどか「パパは悪くないよ、父親として当然だもんね。明日からできるだけ遅くならないようにするから」
タツヤ「パパ、まろか怒らないで」
姉が怒られていると思い、姉を庇うたつや。
知久「怒ってなんかないよ、タツヤ」
父親の心配そうな態度を感じて顔を落とし、やっぱり魔法少女のことに深入りはしないように しようと思うまどか。
〇 深夜 ほむらの家
部屋の灯りが消え映像投射の映像だけが部屋を薄暗く照らしている。
長椅子にひとり寝転がるほむら。眠りの砂を精製すると自分の顔にばらまく。
眠りにつき胸糞の悪い夢を見るほむら。過去の記憶断片、繋ぎ合わされたフラッシュバック。
はるか昔のまどかとの出会い。凄惨な最後。きゅうべえとの契約。誰も信じないと一人で戦っ た日々。まどかの概念化。キュウべぇの裏切りと拷問。架空世界で知ったまどかの本音。自身 の絶望、魔女化。円環の理とまどかの分離。さやかの敵対宣言。そして新たに始まった闘いの 日々……
さやか「ねえ、ほむら、ほむら」
意識の奥底から誰かに呼ばれている声がする。
〇 夜 暗い街角の一角
夢の中から覚醒するほむら。夢だったのか一瞬見た白昼夢なのか自身でもわからない。魔獣の 結界が消滅し寂れた街の街角にほむら、さやか、マミ、杏子、なぎさ、キュウべぇが立ってい ることに気付く。ほむらとマミ、なぎさは魔法少女の姿。
さやか「意識がどこかにいってたよ」
M二〇三グレネードランチャー付きのM一六A一を抱えているさやか。
ほむら「ええ、魔獣を倒したからほっとして」
さやか「ほーお、普段から隙がない、ほむら先輩でも気を抜くことがあるんですなぁ」
ほむら「うるさいわねぇ、美樹さやか。早くそれを返しなさい」
さやか「はーい」
さやかからアサルトライフルを杏子からはRPG七を回収する。
さやか「杏子―あんたわたしが魔獣に近づいた時にバズーカ砲で撃ったでしょう、ちょっとマジ勘弁 してくれない? 目の前で爆発して死ぬかと思ったんだけど」
杏子「何も考えずに突っ込んで行くねーちゃんが悪いだろ」
さやか「あたしの武器はマシンガンと爆弾だよ、近づかないと当たらないじゃん。次はあんたのバ ズーカ砲を貸しなさい」
杏子「イヤだね、この武器を気に入ってるし。ねーちゃんはイノシシみたいに何も考えずに突っ込ん でいくスタイルがお似合いさ」
さやか「コノヤロー! いっぺんあたしの身になってみなさいよ」
杏子の頬をつねり、ひっぱる。餅のようによく伸びる頬。
杏子「いだだ! ほむら、マミ助けて」
マミ「二人とも仲がいいわね」
ほむら「ほっといて行きましょう」
歩き始めるほむら。
なぎさ「いつまでも仲良く喧嘩するのです」
ほむらについていくなぎさ、マミ。
杏子「いだだだだ! マジでちぎれるって」
〇 夜 夜道
ほむら、さやか、マミ、杏子、なぎさが並んで歩いている。杏子はつねられた頬をさすってい る。
マミ「美樹さんたちが体験コースを始めてもう一週間ね」
ほむら「早いものね」
なぎさ「ほむらの矢のごとしです」
マミ「なぎさちゃん、面白いことをいうのね」
さやか「……マミさんなんだか、最近魔獣の発生数が多くなってきてません、二日続きで二連戦です よ」
マミ「そういえば多いわね、気のせいか手ごわくなってきもするし」
ほむら「みんな気付いていたのね、確かに最近この街の瘴気が異常に濃いわ。今は人が憂鬱になる季 節だから、魔獣の発生率が高いのかもしれないわ。明日からは巴さんとなぎさちゃんとで別働隊で 行動してもらうことにしたわ」
マミ「わたしとなぎさちゃんが?」
ほむら「ええ、そうよ。あなたたちは一人で戦えるほどの実力を持っている。もうわたしが教えるこ とはないわ」
なぎさ「免許皆伝ってやつですか? やったー!」
嬉しそうに飛び跳ねるなぎさ。
ほむら「あなたは本当に難しい言葉を知っているのね」
マミ「暁美さん……大丈夫なのかなぁ、わたし」
不安そうなマミ。
ほむら「不安なの? 巴さん」
マミ「ええ……ちょっとね……」
ほむら「あなたなら大丈夫よ、巴さん。あなたはわたしに負けないくらいに強くなったわ。一緒に 戦ってくれるなぎさちゃんもついている。もしわたしが居なくなったとしても街を守れるだけの力 があなたにはあるわ」
マミ「暁美さん……」
感極まって涙を流すマミ。
杏子「ほむら、あたしが魔法少女になったら一緒に戦ってくれるかい?」
二人のやり取りを横で見ていた杏子、横から口を挟む。
ほむら「当たり前でしょう、決心はついたの」
杏子「いや、決心がついたってほどじゃないけど。最近は魔獣の数も多くなってきてるからさ、あた しも戦力になるのかなって思ってさ」
ほむら「魔獣の数が増えてきたから魔法少女になるの?」
杏子「そういうわけじゃないけどさ。あたしもあんたの背中を守ることぐらいできるのかなって」
ほむら「だったら、やめておきなさい。私一人で十分。ただの頭合わせのつもりなら後悔することに なるわよ」
杏子「だからそういうわけじゃ!」
ほむらの他人事の言いように憤る杏子。
ほむら「美樹杏子、あなたは戦い続ける覚悟はあるの? 今まで通りの生活を送れなくなるのよ。遊 ぶ時間もなくなるし、怪我することもあるのよ、かえる場所があって、家族がいて何不自由のない 生活を送っている人間が簡単になるっていうものじゃないのよ」
杏子「それでもわたしは戦いたんだ。親父の意思を継ぐためにもさ」
ほむら「……」
感情が昂ぶりに過去の辛い記憶を引き出してしまう杏子。
さやか「ほむら言いすぎだよ、確かにほむらやマミさんは戦わざるを得ない状況になったのはわか る、だけどさ、あんたに誰かを助けたいって気持ちを否定する権利はあるの? 闘いの宿命を背負 おうとしている人を育った環境とかで差別していいわけ? 杏子が苦労もせずに育った人間だと 思ってるの? 杏子はね、現実をわかった上でいってるんだよ、その思いを批判しようってんだっ たらあんたを許さないから」
ほむらの言いように流石に怒りを感じたさやか、ほむらを批判する。
全員の間に気まずい沈黙が流れる
ほむら「……ごめんなさい、ついカッとなってしまっていいすぎたわ」
さやか「あんたの悪いとこだよ、そういう冷淡で偏見持ちなところ」
ほむら「……」
睨み合ったままのさやかとほむら。中を取り付くおうとおろおろするマミ。
杏子「やっぱりそうだよな、ほむらの言うとおりさ。覚悟がない人間が魔法少女になっても後悔するだけだもんな」
考えを改めたのかそうぼそっと呟く杏子。
さやか「……杏子」
杏子「あたしほんとにもう一度よく考えてみるよ、考えて、考えて後悔するようだったらわたしは魔 法少女にならない。そうするよ」
ほむら「なろうって気があるなら、そうしてほしいわ。本当に悔いを残さないようにね」
マミ「う、うん暁美さんの言うとおりよく考えたほうがいいわよ」
オロオロしてむらのフォローをするマミ。
ほむら「今日はここで別れましょう、また明日学校でね」
マミ「ええ、また明日」
なぎさ「バイバイなのです」
立ち去るマミとなぎさ。
ほむら「さやか、はっきり言ってくれてありがとう。自分の悪いところをそのままにするところだっ たわ」
さやか「うん、わたしも人のことを言えないけど、前から言っておきたかったからさ」
仲直りとばかりに笑顔を浮かべるさやか。
杏子「ほむら、じゃあな」
さやか「じゃあ」
ほむら「また明日」
〇 夜 住宅街
杏子、さやか夜道を歩き始める。常にほむらと行動しているキュウべぇがなぜかさやかと杏子 についてきてきている。
杏子「なんでさっきほむらにあんなことを言ったのさ」
さやか「あんなことって何さ」
杏子「姉ちゃんがほむらにぶちかました理論さ」
さやか「あたしの意見を言っただけだよ、あんたもなんか文句あるの?」
杏子「いや、あたしもほむらの言葉に心をくじかれそうになったからさ」
さやか「……わたしは不公平に思ってたんだ、ほむらやマミさんみたいに、辛い過去を背負って生き ている人たちが、なんで命をかけて魔獣狩りなんてやらないといけないのかなって。それであたし でもできるかなって思い始めた時にほむらがああいうことを言ったからさ、痛いところをつかれて 腹を立てたって言えばそれまでだけど、自分が普段から平和馬鹿だって意識してるってことだけは 言いたくてさ」
杏子「姉ちゃんが普段からそういうことを考えてたなんてな」
さやか「お父さんがあんたを引き取ってきた時から感じてたんだ、神様は不幸が大好きで意地悪なんだってね」
〇 昼 さやかの家(回想)
過去のフラッシュバック。敵意に満ちた目で手を差し出した幼いさやかの手を振り払う幼い杏子。
杏子「………」
今でも神への信仰心がある杏子、さやかの言葉に複雑な心境になり眉をひそめる。
二人の足元を歩いていたキュウべぇ、突然立ち止まり、唸り声をあげる。
キュウべぇ「フキュー! フキュー!」
杏子「どうしたんだ? キュウべぇ」
足元を見るとキュウべぇが何かを威嚇している。付箋紙で出来た人型。
人型青色「なんでこんなに入力ミスがあるんだ、確認はちゃんとしたのかね」
人型ピンク「すいません、すいません確認はしたはずなんですが(頭を下げる)」
人型青色「確認して、こんなに間違えするかこのバカが」
キュウべえ「キュシュウウウウウウ!」
紙人形を尻尾で弾き飛ばすキュウべぇ。悲鳴を上げて消滅する紙人形。
杏子、さやか驚いて一面を見る。付箋紙でできた大勢の紙人形たちがコピーを取ったりパソコ ンを操作したりとデスクウォークをしている。
薔薇の魔女の使い魔軍団(造園)がナイトメアの使い魔たちに襲いかかる。使い魔とナイトメ アの使い魔の乱闘になる路上。
さやか「杏子、もうしかしてコレ……」
桃子「イヤアアアアアアアア!」
小さな女の子の悲鳴が辺りに響き渡る。
杏子「誰かが襲われているんだ」
さやか「行こう!」
悲鳴をした方に走り出す杏子とさやか。
〇 夜 住宅街(見滝原番外地)
古い家屋や木造のアパートの立ち並んだ、あまり治安の良くない一角。悲鳴の主をさがして走 る、さやかと杏子。
桃子「たすけてー」
ナイトメアに追いかけられる少女の姿。
さやか「杏子こっちだ」
杏子「あれはナイトメアか?」
電話機をヌンチャクのように振り回すナイトメア、必死に逃げ回る少女。
さやか「どうしよう、ほむらとマミさんの携帯に連絡しなくちゃ」
杏子「だけど、来るまで時間がかかるぞ、あの子がやられちまう」
さやか「だったら、どうするのよ」
言葉に詰まるさやか。足元のキュウべぇを見下ろす杏子。
杏子「わかった……わかったよ。キュウべぇあたしを魔法少女にしてくれ」
杏子を見上げるキュウべぇ。
さやか「杏子?」
キュウべぇ「キュウキューーーーー!」
キュウべぇ耳を伸ばして、杏子の胸の辺りを指す。
杏子の胸からソウルジェムが浮かび上がる。苦痛の声をあげる杏子。
意を決してソウルジェム掴み変身する杏子。
狭い路地裏を逃げ回る少女。ついにコンクリートの段差につまづき転び、ナイトメアに追い詰 められる。
ナイトメアの受話器の餌食になるその瞬間、委員長の魔女の使い魔がナイトメアを蹴り飛ば す。
杏子が槍で吹っ飛ばされたナイトメアを槍で斬りつける。
一方的にナイトメアをボコボコに殴りつけダウン状態のナイトメアを空高く弾き飛ばす杏子。
杏子「これでとどめだぁ!」
ナイトメアに最後の一撃を叩き込む杏子。その姿を半月の月が美しく照らし出す。
破裂したナイトメアから髪を結ったOLの顔が現れる。容赦なくOLの顔を粉砕する杏子。
地上に降り立った杏子、変身をとき倒れたまま泣いている少女に手を差し伸べる。
杏子「大丈夫かい?」
桃子「……怖かったよう」
グズグズとすすり泣く桃子に手を貸し立ち上がらせる杏子。
さやか「……杏子」
杏子「姉ちゃん、あたし後悔なんかしてねえからな」
まるで自分に言い聞かせるようにさやかに言う杏子。呆然とするさやか。
杏子「よしよし、悪い奴はやっつけたけたからな。もう泣きやめよ」
カバンからチョコレートプリッツエルを取り出す。
杏子「食うかい?」
〇 夜 見滝原番外地のコンビニ
さやか、杏子、桃子の三人とキュウべぇコンビニの入口にしゃがみ込んでいる。桃子は菓子パ ンを貪るように食べている。
さやか「あんた、お腹減ってたの?」
杏子「ちゃんと噛んで食べないと詰まらせるぞ」
忠告通り喉に詰まらせる桃子。
杏子「ほら、言わんこっちゃない」
桃子「うん、朝から何も食べていないんだ」
ペットボトルに入った清涼飲料水を流し込む桃子。
杏子「朝から?」
桃子「今日はお母さんのお祈りの日だから。一日中帰ってこないの」
杏子「お祈り?」
さやか「帰ってこないって」
桃子「それがお母さんの仕事だから、帰ってくるまで一人で遊んでるんだ」
わけありの家庭の子だと感じ取り顔を見合わせる杏子とさやか。パンパンと手を叩いてパンく ずを落として立ち上がる桃子。
桃子「お姉ちゃん達パンありがとう。わたし帰らないと、お母さんが帰ってくるころだし」
杏子「家まで送ってやるよ、一人じゃ危ないだろう」
桃子「本当に? ありがとう」
〇 夜 小汚い木造アパートの前
さやか、杏子、桃子アパートの前に立っている。
桃子「あそこの二階が私の家なの、電気ついてないからまだ帰ってないと思う」
道路沿いのテラスを指差して言う。
さやか「お母さんが帰ったらちゃんとご飯食べさせてもらうんだぞ」
桃子「今日はありがとう。それに助けてくれて」
杏子「あっ……そうだ、今日のことはお母さんにも誰にも話しちゃダメだぞ」
桃子「話さないです、おばけに襲われたこともお姉ちゃんがヒーローってことも」
正義のヒーローについてある程度のルールを知っている少女。
杏子「ああ、じゃあ」
元気に階段を駆け上がっていく桃子。にこやかな笑顔を浮かべ手を振る杏子。
少し離れた電柱の影から二人を見張るほむらの影。
〇 夜(前と同時刻)マミの住んでいるマンション
半身を湯船に身を横たえバスタイムのマミ。ほむらにも実力を認められ機嫌がいい目を瞑むっ て自作のテーマ曲を歌っている。
マミ「ゆーめーをかーなえてー一人でさーがしてーたほーしーのー」
キュウべぇ「キューキュー」
すりガラスを引っ掻くキュウべぇの姿(杏子、さやかについているのとは別の個体)
マミ「あら? キュウべぇ」
湯船から上がり、すりガラスの戸を開けるマミ。バスルームに入ってくるキュウべぇ。
マミ「あなたがここに来るのは初めてね。一緒にお風呂入る?」
再び湯船に体を浸からせるマミ。ぴょんとジャンプしバスタブの縁に乗り上げるキュウべぇ。
キュウべぇ「マミ、僕の声が聞こえるかい」
マミ「えっ! だ……誰か居るの?」
慌ててあちこちを見回すマミ。キュウべぇの声だと気付いてない。
キュウべぇ「マミ! 僕だよ、キュウべぇだ」
マミ「キュウべぇ! あなた喋れるの」
びっくりして思わず大声をあげるマミ。
キュウべぇ「うん、意思疎通のできない振りをしていてすまない」
マミ「いったいなんなの? 何のためにしゃべれない振りをしていたの?」
マミ、キュウべぇが会話できる程度の知的生命体であることに不安を感じ、あわてて腕で豊満 な胸元を隠す。
キュウべぇ「わかってくれないか? そうせざるを得ない状況なんだ、今は」
マミ「どういうことか、説明してくれないかしら」
キュウべぇ「だったら、落ち着いて話を聞いてくれ。混乱した状態で話をこじらせてもこまるから」
マミ「ええ」
深く一息をつくマミ。
キュウべぇ「僕たちは今悪魔に囚われている。魔法少女システムを悪魔に支配され、無理やり働かさ れ常に監視されているんだ」
マミ「悪魔!? それに監視って……あなたと話して大丈夫なのかしら」
あっちこっちを見回すマミ。
キュウべぇ「大丈夫だよ、このバスルームは監視されてはいない。一瞬のすきをついて抜
け出してきたから気づかれていない」
ほっと胸をなでおろすマミ。
マミ「キュウべぇ、その悪魔って何者なの? 魔獣やナイトメアの親玉みたいなモノ?」
キュウべぇ「悪魔はね円環の理という概念の最も人間に近い一部を引き裂いて、この世界
を作り出した主だ、呪いの親玉というよりも発生源というべきかな、どちらも概念と悪
魔が世界を改変した時に発生したものだから」
マミ「わかりにくいわ、どういうことなの」
キュウべぇ「つまりこの世界はね、神の力を奪った悪魔が作り出したんだよ。魔獣はその
時の副産物さ」
マミ「この世界が? 嘘でしょう」
キュウべぇ「本当だよ、元の世界でも君は存在していて魔法少女だった、君は僕が知る中
でもエース級の強さだった。それがこの世界では全ての力を奪われているようだけどね」
マミ「わたしがエース級? あなた知ってるでしょう? わたしはこの契約した素人よ」
キュウべえ「今、君が持っている記憶は改ざんされたものだ。過去の出来事は全て信用し
ないほうがいいよ」
マミ「暁美さんは知っているのかしら? こんな恐ろしいことを」
キュウべぇ「マミ……本末転倒さ、悪魔の正体は暁美ほむらだよ」
マミ「悪魔の正体が暁美さん……ちょ、キュウべぇ暁美さんは命の恩人で魔法少女の先輩
なのよ」
キュウべぇ「本当だ、マミ。この世界は暁美ほむらが創造した世界だ」
マミ「だったら暁美さんは何のためにこんなことをしたの?」
キュウべぇ「円環の理の人格部の鹿目まどか分離するためさ……」
マミ「鹿目さんが元神様?」
キュウべぇ「暁美ほむらは円環の理の構築に大きく貢献した関係者だった。元人間だった鹿目まどか が自分を犠牲にして全ての魔法少女の救済を祈り、神になったんだ、自分の力で宇宙の概念を覆 し、書き換えた。ところが一人全ての記憶を持ち残された暁美ほむらは何を思ったのか自ら呪いを ため自らを悪魔と呼称し、反逆を起こしたのさ、円環の理の人間部……かつて鹿目まどかだった部 位を引き裂き、自分の望む世界を作り出した。それが今ある世界なんだ」
マミ「そんなことにわかに信じられないわ、突然そんなことを言われても証拠は何かないの?」
キュウべぇ「じゃあ、なんで鹿目まどかは僕や使い魔や魔獣の姿を認識できるんだい」
マミ「えっ!?」
キュウべぇ「暁美ほむらは魔法少女の素質のない人間には僕や使い魔は認識できないと説明したはず だよね、なのに鹿目まどかが僕や使い魔たちを認識できるのはおかしくはないかい?」
マミ「確かに……」
キュウべぇ「暁美ほむらは鹿目まどかの神力を抑えきれなかったんだ。鹿目まどかが覚醒するのを防いでいるが、僕たちの姿を認識できる程度の神力は残っている。だから僕の姿が見えるんだ……他に も説明できないことはあるよ、形の変わるほどケタ外れの魔力を秘めた暁美ほむらのソウルジェ ム。発生原因が曖昧なナイトメア。最近異様に濃くなってきた魔獣の瘴気。百江なぎさと美樹さや かの異常な因果値……」
マミ「……嘘よ、こんな楽しくて、やりがいのある充実した日々が偽りだなんて。暁美さんは命の恩 人で優しくて頼れるいい人なのよ。そんな人が悪魔だなんておかしいわ!」
顔を半分お湯に沈め、聞きたくもないといった態度を取るマミ。
キュウべぇ「まだ、僕の話を信じてくれないのかい? 十分な証拠が揃っていると思うが」
マミ顔を浮上させるマミ。
マミ「信じられるわけ無いでしょう」
キュウべぇ「じゃあ直接見せてあげるよ、暁美ほむらがどのようにして世界を改竄したのかを」
キュウべぇの赤い目が光り、マミに記録映像(自分たちに不利な部分を省いた編集済み)を見 せる。広大な砂漠の地帯、円環遮断フィールドを破壊後。円環の理がほむらを迎えに来てい る。
キュウべぇ「ここは、円環の理が力尽きた暁美ほむらを迎えに来たところだ」
マミ「鹿目さん!?……あらっさやかちゃん、杏子ちゃんやなぎさちゃんまでいるわ」
円環の理のサイドの人間と思われないように加工されいる影像。
キュウべぇ「彼女たちもこの世界に巻き込まれたのさ」
円環の理『ほむらちゃん待たせちゃってごめんね、これからはずっと一緒だよ』
ほむら『そうね、この時を待っていた……』
不気味な笑顔を浮かべ円環の理の手を掴む暁美ほむら。凄まじいオーラが辺りを包み込み侵食 する。戸惑う、さやか、マミ、杏子、なぎさ。
ほむら『やっと……捕まえた』
円環の理『だめ……わたしが裂けちゃう』
文字通り裂けるまどかをしっかりと抱きしめるほむら。
キュウべぇ『暁美ほむらは鹿目まどかを分離し、そして宇宙の改変が始まった』
改変される宇宙。
悪魔へと姿をかえる暁美ほむら。
シーンは一気に飛び、逃亡を図るがほむらに鷲づかみにされたキュウべぇの姿が。
悪魔『私たちの世界に沸いた呪いを処理するにはあなたたちの力が必要なの、協力してもらうわよイン キュベーター……』
ほむらの指にうりうりといじられるキュウべぇ。
キュウべぇ「こうして僕たちは暁美ほむらの配下になり、使役させられる毎日が始まった」
半月の月明かりに照らされた野原。踊る暁美ほむらとボロボロになったキュウべぇの姿。
記録映像が終わり現実世界に引き戻されるマミ。風呂の中で水没している事に気付く。
マミ「ゴホッ……ゲホッゴホッ」
飲んだお湯を吐き出し、激しく咳き込むマミ。
キュウべぇ「マミ、これは間違いなく現実で起こった事だよ」
マミ「こんなこと嘘に決まっているわ、何かを企んでいるのね、あなた」
幻覚を見せられくらくらする頭を抑えるマミ。まだ疑いを抱き不審な目でキュウべぇを睨む。 マミの記憶は悪魔に奪われているので自力で取り戻せない
キュウべぇ「マミ……」
マミ「出て行って」
踵を返すキュウべぇ。
キュウべぇ「……あとひとつ気になることがあるんだけどね、美樹さやかと美樹杏子の関
係、何か違和感があるんだ、彼女たちは……」
マミ「出て行って!」
キュウべぇを怒鳴りつけるマミ。
キュウべぇ「また隙をついて会いに来るよ、マミ、ただ一言言っておくよ。世界と僕たち
を救えるのは君だけだ」
言われたとおりに出て行くキュウべぇ。湯船の中で縮こまるマミ。キュウべぇに見せられた映 像に震撼させられた様子。
寒さで震えが止まらず、温度を上げお湯の追い焚きをするマミ。
〇 朝 通学路
仲良く歩きながら登校する。まどか、ほむら、さやか、杏子、仁美、マミ。笑いながら談笑して歩く五人を不安そうな目つきで見るマミ。昨日のできごとがどうしても頭を離れない。