〇 夜 人魚の結界内
傷だらけになり満身創痍の人魚の魔女。
魔女の攻撃をかわしながら攻撃を続けるさやか、マミ。
なぎさは魔女形態になり人魚の魔女を攪乱している。
マミ「あっ!」
人魚の魔女の使い魔の奇襲を受けるマミ。
崩れ落ちたマミに刀を振り下ろす人魚の魔女。
さやか舌打ちをすると人魚の魔女の腕を切り落とす。
悲鳴をあげうろたえる人魚の魔女。
さやか「目を覚ませよ! あんたはかつてあたしの一部だったんだ! 悪魔の手先になんかなってな さけなくないのかよ」
さやかにパンチを繰り出す人魚の魔女。
壁に叩きつけられるさやか。
倒れるさやかを鷲掴みする人魚の魔女。
さやか「……うぐぐぐ」
ぎりぎりと締め付ける人魚の魔女。
マミ「……さやかさん」
絶望の表情で締め付けられるさやかを見るマミ。
なぎさ「ゼッケンドルフ! さやかを離さないとこうなのです!」
人魚の魔女の首に絡みつくお菓子の魔女。
人魚の魔女「……ぐおおおおお」
苦しさのあまりさやかを投げ捨てる人魚の魔女。
人魚の魔女、お菓子の魔女の体を掴んで振り回し壁に激突させる。
お菓子の魔女「もべっ!」
小さな悲鳴を上げると百江なぎさの姿に変えるお菓子の魔女。
さやか「……畜生」
自分自身にトドメをさしに迫ってくる人魚の魔女を絶望の表情で見るさやか。
突然ぴたりと歩みを止める人魚の魔女。
宙をみたり、頭を傾げたりと落ち着かない様子の人魚の魔女。悪魔が死亡したので支配下から 逃れられた。
自分の主たる美樹さやかを発見すると手を下げ黙礼をする人魚の魔女。
〇 夜 ほむらの家
凄まじい呪いを発する悪魔。
悪魔、笑みを浮かべたまま自ら発した呪いの中に吸い込まれる。
部屋の使い魔たちも次々とその呪いの中に吸い込まれていく。
渦巻く呪いのオーラから逃れようとするまどか。
まどか「ひいいっ!」
部屋から出ようとするがドアには鍵が掛かって開かない。
まどか「誰か助けて!」
徐々に勢力を増していく呪いのオーラ。
部屋の中を逃げ回るまどか。
部屋の壁に穴が空き巨大な手に掴まれるまどか。
まどか「きゃあ!」
さやか「まどか大丈夫! わたしだよ」
脳裏に響く声を聞くまどか。さやかの声。
まどか「さやかちゃん」
さやかの声に安堵するまどか。
人魚の魔女の手が引っ込みほむらの部屋から脱出するまどか。
そのさまをわずかに残った意識の中でみている悪魔。
〇 朝 学校(ほむらの回想)
教室内、さやか、杏子ほか友人たちに囲まれているまどかを見て笑みを浮かべるほむら。
まどかの首筋には悪魔のくちづけが付けられている(さやか他魔法少女たちにも見えない)。
さやか「放課後にパーティをしようよ。まどかに紹介したい人がいるんだ」
佐倉杏子「おーそれいいな」
この時間軸では杏子は佐倉杏子。人間関係が歪んでいない。
さやか「いや、あんたも出せよ」
この時間軸ではさやかと杏子は姉妹ではない。
仁美「まどかさん、可愛らしいリボンをつけていらっしゃいますわね。とても似合っていますわ」
まどかの髪を束ねている可愛らしいピンクリボンを見ていう仁美。
まどか「う、うんそうかな」
昨日のほむらとの出来事を思い出すまどか。
ほむら「本当ね、とても可愛らしいわ」
背後から割り込んでくるほむら。怪訝な目で見るさやか、杏子。
ほむら「おはよう、まどか」
まどか「お、おはよう」
仁美「おはようございます」
仁美だけ、ほむらにあいさつをする。
さやか「あんたが人に興味を示すなんて珍しいな」
敵愾心を抱いた攻撃的な口調のさやか。ほむらになぜか嫌悪感を抱いている。
ほむら「鹿目さんは特別だから」
ほむら、まどかを見ながら言う。
ほむらの冷たい目を怖がるまどか。
さやか「だからって、人の話に割り込んでくるのは気に入らないな。みんな屋上で話そう」
さやか、まどかたちを引き連れ教室を出て行く。
〇 放課後 屋上
向かい合い対峙するさやかとほむら。さやかの手にはピンク色のリボンが握られている。まど かの物。
さやか「あんた何を企んでるの?」
ほむら「企んでいるって、どういうことかしら」
さやか「とぼけるな! まどかに抱きついてこれを渡して敵対宣言するって何がしたいのよ」
リボンをほむらの前に掲げるさやか。まどかの遺物にさやかが触れていることにいらだちを隠 せないほむら。
ほむら「ただの友情の証よ」
さやか「これがただのスキンシップってあんたおかしいんじゃないの? まどか怖がってたんだよ」
ほむら「それはあなたが触れていいものじゃないの、まどかに返してくれないかしら」
さやか「まどかにはこれをあんたに返してって頼まれて来てんだよ。あんたに何かされるんじゃない かと怖かったから仕方なくつけてきたんだって」
流石に何も言い返せないほむら。
さやか「ほら、これ返すよ」
リボンをほむらに差し出すさやか。
素直に受け取るほむら。
さやか「二度とまどかに近寄らないで、間違っても今回みたいに度の過ぎたスキンシップをするよう だったら許さないから」
踵を返し立ち去ろうとするさやか。
ほむら「待ちなさい、わたしも要求があるわ。あの子を魔法少女に巻き込まないで」
ほむらの発言に驚いて振り向くさやか。
さやか「あんたなんでそのことを知っている……」
ほむら「わたしもそうだからよ」
爪の紋様を見せるほむら。
さやか「ッッ!」
要注意人物が魔法少女であるという事実に驚き、さらに警戒心を強めるさやか。
ほむら「鹿目まどかは魔法少女とは無縁の普通の女の子よ、巻き込んで傷つけるような真似は絶対に しないで。条件はそれだけよ」
さやか「……あんたに言われなくても、巻き込まないわよ」
足早に立ち去るさやかとそれを見送るほむら。
〇 夜 立体駐車場
月明かりの照らす立体駐車場。
杏子、マミ、なぎさ、魔法少女たちの遺体が散らばっている。
剣を構えるさやかと人魚の魔女。
九㎜機関けん銃を構える悪魔。お互いに殺意をむき出しにし、睨み合っている。
ほむら「あなたが約束を破ったからこうなるのよ」
さやか「あんたみたいな奴を相手に約束もクソもないでしょう。まどかをかつてあったものに帰すそ れのなにが悪いんだ」
悪魔「この世界で幸せに生きるのがあの子の本音であり、わたしの願いなのよ。」
さやか「こんな歪んだ世界認めてたまるか。まどかもわたしも望んでいない」
まどか「さやかちゃん!」
突如、姿を現すまどか。キュゥべえが足元に立っている。
駐車所の惨状に一瞬、顔を背けるまどか。
悪魔「まどか、こっちに来ちゃダメ」
銃でさやかの動きを牽制しながらまどかに叫ぶ悪魔。
まどか、さやか前まで走ってきて両手を広げる。
まどか「わたしの親友に酷いことをしないでください」
凛とした強い瞳でほむらを睨むまどか。
まどか「あなたがしたことは全てキュゥべえに聞きました。わたしにかけた呪いを解き、降伏してく ださい」
この時間軸のまどかにかけられた呪いはキュウべぇでも解除できない強力なもの。
悪魔「そんなことはわたしが許さないわ」
まどか「あなたに決定権はありません」
悪魔「あなたは普通の女の子として生きるべきなの。あなたは知らないでしょうけどそれの本当の望 みなの」
まどか「こんなの望んでなんかないよ……さやかちゃんやみんなに酷いことをしていい理由になって ない……あなたが殺したわたしの友達を返してよ!」
無残に散らばった魔法少女たちの屍を見て涙ながらに訴えるまどか。
まどかの涙を見て感情を揺り動かされ震え始めるほむら。
さやか、まどかを突き飛ばし、隙を見せた悪魔に斬りかかる。
虚を突かれた悪魔、ワンテンポ遅れさやかにサブマシンガンを掃射する。
ソウルジェムもろとも体に被弾し絶命するさやかと人魚の魔女。
流れ弾が体に当たり倒れるまどか。
ほむら「まどかああああああ!!」
地面に横たわるまどかに駆け寄るほむら。
腹部と心臓に被弾し絶命したまどか。
悪魔の後ろで無表情で眺めているキュウべぇ。
ほむら「ああああああああああ!」
まどかの遺骸を抱きしめ絶叫するほむら。
突然、動かないはずの盾が作動し、過去へとタイムループするほむら。
〇 朝 教室
突然覚醒するほむら。自分が教室の自分の席に座っている事に気付く。
和子「……はい、あとそれから、今日は皆さんに転校生を紹介します。鹿目さんいらっしゃーい」
教室に入ってくる鹿目まどか。
一瞬自分の目を疑うほむら。
まどか「えっと……初めまして、鹿目まどかです」
ほむら「まどか!」
まどかの名前を叫んで立ち上がるほむら。
まどか「ヒッ!」
あまりの声量と必死の形相を見て飛び上がるまどかと和子。
和子「暁美さん、鹿目さんと知り合いなの」
ほむら「えっと……その……」
しどろもどろになるほむら。
ほむらに集中するクラスメイトの奇異な視線。
ほむら「ええ……っと。は、はい」
まどかをちらりと見るほむら。
まどか「……」
怯え顔でほむらをみているまどか。
和子「久しぶりに再開できたのは嬉しいでしょうけど、突然大声は出さないようにしましょうね」
興奮したほむらをたしなめる和子。
ほむら「……はい」
ほむらの額に冷や汗が一筋流れる。
〇 朝 教室
まどかの席の周りに群がるさやか、杏子、仁美。
さやか「まどかー初登校の感想はどうだ」
幼馴染に早速声をかけるさやか。
まどか「うん、アメリカの学校より綺麗だし、先生も面白いしいいとこだよ」
仁美「まどかさんがこのクラスに転入してくれて良かったですわ」
まどか「うん、元見滝原小のみんなもいるしね」
佐倉杏子「にししし、ところで暁美さんとはどういう関係だよ」
空気を読まずにまどかに聞く杏子。
まどか「……ええっと……な、なんなんだろう……ね」
自分を知っている見知らぬ少女を思い出そうとするまどか。全時間軸の記憶を知る訳もなく、ましては円環の理の記憶もない。
そそくさとまどかたちグループに合流するほむら。
ほむら「……ひ、ひさしぶりね……まど……鹿目さん」
平静を装っているがどう見ても挙動不審なほむら。
それを胡散臭そうな目で見るさやか。少し警戒した様子の杏子。
まどか「……おはようございます、ええっと」
ほむら「……暁美ほむらよ」
まどか「あっ……はい、暁美さん……」
さやか「ねぇ、あんたどうしてまどかのことを知ってるの? 小学校同じだったけ?」
少し警戒した様子で聞くさやか。
ほむら「えっと、その……それは……」
気の利いた言い訳を考えられずにしどろもどろになるほむら。
杏子「へぇ意外だな、あんたホントはそんなキャラなんだ」
ほむらの性根を見抜く杏子。
まどか「ごめんね、暁美さんのこと覚えていないんだ。だけど、わたしを名前で呼ぶってことは昔仲 が良かったんだよね」
たじたじのほむらを見かねてフォローを出すまどか。
ほむら「……うん」
まどか「これからもよろしくね、ほむらちゃん。早くあなたのこと思い出せるように頑張るから」
ニッコリと笑うまどか。
意外にも警戒されなかったことに内心驚くほむら。
杏子「全く、突然『まどかッ!』なんて叫ぶんだからビビっちまったよ」
さやか「こら、あまり暁美さんをからかわないの」
杏子をたしなめるさやか。
こっそりと杏子とさやかの指をチラ見するほむら。
さやかと杏子の手の爪には魔法少女の紋様がない。
〇 放課後 街路
夕暮れの街を並んで歩くまどか、ほむら、さやか、杏子の四人。手にはクレープが握られてい る。
さやか「それで、杏子ったら。あたしがあんまり下手だから後ろでゲラゲラ笑ってて、お前どれだけ リズム音痴なんだってツッこまれてさ」
さやかの失敗談を聞いて笑うまどかとほむら。
ほむらM『大丈夫、きっとこの世界は大丈夫。絶対に前のような悲劇は繰り返さない』
向かい側から歩いてくるマミとなぎさ。ソウルジェム片手に魔獣を探査している。まどかたち とは認識がないので素通りする。
ほむらM『この世界はわたしが守ってみせる。どんなことをしても絶対に……あなたを死なせたりし ない』
路地裏をチラ見するほむら。
薔薇の魔女の使い魔(造園)に生きたまま捕食されているキュウべぇ。
〇 夜 立体駐車場
駐車場内に貼られていた魔獣の結界が破れ元の風景に戻る。
魔法少女姿のマミとほむらが立っている。
ほむら「やったわね、お疲れ様。マミさん」
マミ「ええ、今日のやつはなかなかやっかいだったわね」
辺りに小さなグリーフシードがバラバラと散らばる。
杏子「へへへっ、お二人ともご苦労さん」
杏子、物陰から現れるとグリーフシードを拾い始める。結局キュウべぇと契約したので魔法少女になった。
マミ「泥棒猫がまた現れたわね、それはわたしたちの獲物よ」
険しい顔をして杏子を睨みつけるマミ。
杏子「とったもん勝ちだろ、悔しかったら自分で取り返しな」
ほむら「それを返してもらえないかしら。グリーフシードは魔獣を倒したものが得られる報酬よ」
説得で済まそうとするほむら。
杏子「そんなこと知ったことかい」
ほむらとマミに向かってベロを出す杏子。
マミ「暁美さん、その子に何を言っても無駄よ。いい加減お灸をすえる必要があるわね」
マスケット銃を生成するマミ。
さやか「マミさん」
物陰から現れる魔法少女姿のさやかとなぎさ。
二人の姿を見るとさらに顔が険しくなるマミ。
マミ「なにかしら?」
冷たい声で聞くマミ。
なぎさ「お願いしますもう一度わたしの話を聞いてください」
マミ「あなたたちのくだらない作り話に貸す耳はないわ」
激しい拒否反応を示すマミ。
ほむら「そうよ、誹謗中傷はよしてもらえないかしら」
さやか「そいつは本当に悪魔なんです」
マミ「黙りなさい! 悪魔はあなたの方よ、わたしのクインテットを壊して、杏子ちゃんとも仲違い させて、一体何を企んでるの? わたしの満ち足りた生活を壊しておいてなにが楽しいのよ? こ れ以上わたしのたった一人の友達を貶めるならと許さないから」
怒りの表情でマスケット銃を向けるマミ。
杏子「いいぞ、いいぞ、潰し合え、潰しあえ」
うまい棒を食べ愉快そうな顔で見物している杏子。
マミの反応を見て寂しそうな顔をするさやか。
さやか「マミさん、ごめんなさい。今日は証拠がありますこれを見てくれたらあなたも納得すると思 います」
なぎさ「心を強く持って見て欲しいのです」
さやかの足元に現れるキュウべぇ。
監視下に置いていたはずのキュウべぇがさやかと一緒にいるのを見て驚きで目を見開くほむ ら。
キュウべぇ「残念だったね、暁美ほむら。関係者全員揃ったところだしネタばらしをさせてもらうよ」
目が輝き、駐車場内にいる全員に幻覚を見せるキュウべぇ。
× × ×
一瞬の出来事に呆然とするマミ、杏子。
マスケット銃を落とすマミ。
辛そうな顔をしてマミを見ているさやかとなぎさ。
絶望の表情のほむら。
マミ「……そんな、こ、これが真実だなんて」
杏子「……馬鹿な……手品だ……トリックに決まってる」
衝撃を受けながらもまだ見たものを信じられない杏子。
マミ「この幸せな世界が偽物だなんて……悪魔が作ったものだなんて……暁美さんが騙してたなん て……」
ブツブツと一人呟くマミ。あまりの衝撃に弱っていたメンタルがさらに傷つけられた。
さやか「マミさん、落ち着いてください」
あまりのショックを受けたマミを落ち着かせようと近寄るさやか。
マミ「嘘だっ! 認めないっ! この世界を怖そうだなんて! 認めないっ!」
マミ、ガトリング砲を生成するとさやかに向かって乱射する。
体ごとソウルジェムを撃ち抜かれ即死するさやか。
杏子「うわっ!」
杏子、逃走しようとするがすぐにマミのガトリング砲の餌食になり死亡。
なぎさ「ひやああああああああ!」
さやかと杏子が撃たれた隙に逃走するなぎさ。
車の影に隠れるなぎさ。
泣きながら視界に入る障害物を撃ちまくるマミ。
巻き沿いをくらい蜂の巣になるキュウべぇ。
マミの銃撃で駐車場内の乗用車が次々と爆発しあたり一面火の海になる。
マミ「ほら、なぎさちゃん何もしないから早く出てきなさい」
弾切れになったガトリング砲を捨てなぎさに呼びかけるマミ。
マミ「許してあげるって言ってるのよ」
爆発した車が音を立てて燃えるだけの駐車場。なぎさが現れる気配はない。
マミ「早く出てきなさいッ! わたしを怒らせないうちにッ!」
声を張り上げてなぎさに呼びかけるマミ。
炎の中から恐る恐る出てくるなぎさ。怯えきり目に涙を浮かべて出てくる。
なぎさ「マ……マミ」
許しをこうような弱々しい目でマミを見るなぎさ。
憎悪に満ちた冷たい目でなぎさを見るマミ。
マミ、巨大大砲を生成しなぎさに向け発射する。
なぎさ「ひっ!」
逃げる間もなく爆音、閃光と共に消滅するなぎさ。崩壊する立体駐車場。
自分の砲撃で半壊した駐車場を見るマミ。
炎に照らされるマミの後ろ姿を呆然と見るほむら。
マミ「うううっ……ううううう……」
声をあげて泣くマミ。
精神の壊れたマミの惨状を見かねてマミのソウルジェムを拳銃で撃ち抜くほむら。
次の策を練ろうと頭を抱えるほむら。だが事態を対処しきれず頭は混乱しきっている。
人の気配を感じて振り向くほむら。
後ろに立っているまどか。制服姿だが髪が異常に長く神力によってたなびいている。
自分の使命を思い出し本来の自分を取り戻しつつあるまどか。ほむらはこの世界ではまどかに 呪いをかけていなかったので覚醒した。
まどか「そうだった、ほむらちゃん。わたし全部思い出したよ」
神力を取り戻したまどかを見て焦るほむら。
円環の理「あなたはわたしの救済を拒んだ。わたしの気持ちを踏みにじったんだったね」
ほむらに睨みをきかせ静かに語りかけるまどか。
ほむら「そんな……違う……本当の自分を取り戻して。あなたは鹿目まどか。普通の女の子だったの よ、優しい家族に囲まれて仲のいい友達と平凡な学校生活を送って、それがあなたの人生なのよ、 あなただけが辛い目に遭う必要なんてないのよ」
円環の理「そんなこと知らないよ。わたしの使命は魔法少女たちの呪いを受け止めて浄化させわたし の一部に取り込むこと。わたしと人間部とは別の機構だからそれはわたしの望みではないんだよ」
ほむら「今のあなたは偽物よ、あまりに辛い目にあったせいできっと心が壊れてしまったんだわ」
円環の理「……黙って。この期に及んでまだ、そんなことを言うの? あなたは自分の犯した罪を見 つめようとしていない、あなたのせいでどれだけの呪いや憎しみを野放しにしたのかわかっている の? あなたがこんなことをしなければマミさん達はこんな最後を遂げなくて済んだんだよ。」
姿も思考も完全に円環の理に戻りきっていているまどか。
ほむら「わたしだってこんな最後望んでいなかった……頑張ったのに……みんな幸せに生きていけるよ うにって、巴マミとも美樹さやかとも関係を改善しようと務めたのに」
円環の理「ご挨拶だね、暁美ほむら。あなたは自分の罪の反省を全くしようとしていない。もう救い ようがないよ」
きっぱりとほむらの弁解を切り捨てる円環の理。
神力を全開放す円環の理。衝撃波で一瞬にして崩壊する立体駐車場。
悪魔「うああああああっ!」
悪魔に変形すると空に飛び立つほむら。
悪魔「まどか! やめて! 目を覚まして」
弓を構え迫って来るまどかに叫ぶ悪魔。
円環の理、空に矢を放ち魔法陣を描くと悪魔に向けて大量の矢を掃射する。
悪魔「きゃああああああ!」
大量の矢を浴びて一瞬にしてズタボロになる悪魔。
流れた矢が見滝原市内の建物に直撃し大爆発を起こす。
悪魔「ああっ!」
一瞬にして半壊した市内を見下ろし悲鳴を上げる悪魔。
悪魔「まどか! こんなことやめて! この世界を壊さないで」
悪魔の言葉に耳を貸そうとはせずに次の矢をつがえる円環の理。
やむ得なしと判断した悪魔。盾から自分の弓矢を取り出す。
悪魔「あなたがその気なら! わたしがあなたを倒してまどかを解放するわ!」
矢を同時に放つ悪魔と円環の理。
空中でぶつかった矢が大爆発を起こす。凄まじい衝撃波が辺りを襲う。
一瞬にして壊滅する見滝原地区。
悪魔「ああああああああああああああ!」
絶叫しながら弓で円環の理に殴りかかる悪魔。
× × ×
悪魔と円環の理の戦闘で全壊した見滝原地区。あたり一面瓦礫の山と化している。
瓦礫に寄りかかっている悪魔。ボロボロになり半死半生の状態。
円環の理、悪魔の前に立ちふさがり矢を引く。円環の理もドレスがボロボロになり長い髪も乱 れている。
悪魔、ソウルジェムを円環の理の前に差し出す。
悪魔「……早く殺して」
虫の鳴くような弱々しい声で円環の理に懇願する悪魔。
生き物のものではない威厳のある瞳が悪魔を見下す。
悪魔「ねぇ、最後に聞かせてわたしの望みってあなたにとってはそんなに罪深いものだったの?」
ほむらの虫の鳴くような弱々しい声に眉一つ動かさない円環の理。
悪魔「わたしはあなたの思いを踏みにじって、この世界を作った。だけど、その願いはあなたの怒り に触れるほど罪深いものだったのかしら。ここまで執拗に破壊してまで否定されなければならない ものだったの?」
破壊され尽くされた街の空を見上げながら言うほむら。
円環の理「……わたしは鹿目まどかという存在じゃない……」
悪魔「この前まで鹿目まどかとして、この世界で楽しそうに生きてたのにね」
円環の理「あれはただのかつて鹿目まどかという存在だった過去の記憶よ。あなたに都合のいい記憶 を植えつけられて平凡な第二次性徴期の少女として当然の生存行動をとっていただけのこと」
悪魔「難しい言葉を使ってもあなたには合わないわね」
円環の理「いいかげん黙りなさい! くだらない無駄口を使って同情を引こうたってそうはいかない の!」
威厳のある態度で悪魔に一喝する円環の理。
悪魔「無理をしないで……あなたに葬られるなら、せめて鹿目まどかとしてわたしを罰して欲しい の」
円環の理の鉄仮面が剥がれ、悲しみで顔が歪んでくる。弓を引く手も震えている。
円環の理「……ほむらちゃん、やめて……わたしだって好きでこんなことをしているんじゃないの……この期におよんでまでそんなことを言うのはやめて……」
悪魔「嘘を言うのね。あなたはやっぱりまどかだわ。わたしの大好きな魔法少女の先輩。最高の友達」
円環の理が鹿目まどかであることを確信し笑顔を浮かべるほむら。
円環の理、引き絞った弓矢を投げ捨てる。
悪魔の顔を平手で殴る円環の理。
衝撃でダークオーブを落とすほむら。
まどか「なんでこんなことをしちゃったの! いつか世界が壊れるってわかってたのに。敵同士に なって争うってわかってたのに、どうして間違った方法でわたしを守ろうと思ったの? こんなこ とをして喜ぶわけないのに!」
ほむら「……あなたのそばにずっと側にいたかった。どんな方法を使っても、普通の女の子として、 あなたを呼び戻しもう一度優しくして欲しかった。たとえわたしはアクに落ち切ったとしても普通 の女の子として友達になりたかった」
まどか「……うううう」
抱きしめ涙を流すまどか。その姿に円環の理としての威厳はない。
ほむら「そうよ、あなたを守るためになんてただの口実にすぎないのよ……全部自分自身のためだっ たのあなたの言う通り罪を償うに値する罪なの」
まどか「でも、嫌だよ。こんな最後。ずっとわたしを思ってくれた人とこんな形でお別れしなきゃい けないなんて……」
ほむら「……あなたのためから始まった戦いを日々をあなた自身に終わらせて欲しいの。それでわた しは安らかに消滅できるし、安心できる……」
まどか「ごめんね、ほむらちゃん……わたしがあなたを一人ぼっちにしなければこんなことにはなら なかったのに……こんな思いをさせなくてすんだのに……」
ほむら「今になっては、仕方ないことだわ」
ほむらの体をさらに強く抱きしめ悲痛な泣き声で号泣するまどか。
不思議な安らぎを感じて微笑むほむら。
ほむら「まどか……ためらわないでやりなさい。わたしを殺せばあなたの力でこの世界も存在しな かったことにできる。そしたら、佐倉杏子も巴マミもあなたの両親もクラスのみんなも死なかった ことになる。みんなを救うためにもわたしの消滅は必要なの」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「……ダメよ、振り向いては」
地面に落ちたダークオーブを拾い上げ手のひらに乗せ掲げるほむら。
ほむらもまどかも気付かないがダークオーブが呪いを貯め始める。
まどか「ううっ……」
立ち上がり泣きながら弓を構えるまどか。顔を伏せ、ほむらを正視していない。
まどか「……ごめんなさい……ほむらちゃん」
安心して目を瞑るほむら。
震える手でダークオーブに矢を放つまどか。
鋭い音をたてダークオーブがまどかの放った矢を跳ね返す。
まどか「うっ!」
まどかの小さな悲鳴。ほむら驚いて目を開ける。
まどか、胸に矢が刺さり倒れている。
ほむら「あああ……」
だんだん透明になり消滅するまどかの姿。
突然暗雲が立ち込める空。
宇宙の彼方から円環の理が現れ、地球に生きる全ての生き物を救済しはじめる。
ほむら「……まさか……こんなことって」
円環の理の人間部が消滅したことにより、円環の断りが暴走して地球上の生物の命を奪い始め た。
空を見上げるほむら。後ろでキュウべぇが無表情でほむらを見ている。
自動的に盾が作動し時間遡行を始めるほむら。
〇 朝 教室
ほむら、いつの間にか自分が教室にて自分の席についていることに気づく
和子「はい、あとそれから、今日は転校生を紹介しまーす。鹿目さんいらっしゃーい」
いつも通りの教室。いつも通り教室に入ってくるまどか。
まどか「えっと……はじめまして鹿目まどかです。」
早乙女先生と並び自己紹介をするまどかを絶望的な表情で見るほむら。やっと自分の選んでしまった運命を理解する。
まどかを見、目一杯に涙を貯めるほむら。頭を抱えて机にうつ伏し、
ほむら「ごめんなさい……まどか……」
誰にも聞こえない声でつぶやくほむら。
ほむらM『思えばこの運命を選んだ時から定められていたのかもしれない。呪われた者に課せられる 罪は報い』
〇 ? 風雲ほむら城(魔改造したほむらの家)
一面黒白市松模様の迷路空間。手に手錠をかけられ必死に走っているまどか。首筋には強力な 魔力の悪魔の口づけの呪いがかけられている。
悪魔「まどか、待ってまどか! わたしの元から逃げてはダメよ!」
悪魔の姿をさらけだしまどかを追うほむら。策尽き果てまどかを自宅監禁していたが逃走され た。
悪魔を追う、さやか、なぎさ円環の戦士と魔法少女のマミ、杏子。
さやか「この悪魔! まどかを返せっ!」
剣を投げたり銃で撃ったりとほむらを追撃する魔法少女たち。
ほむらM『争う運命から逃れられない』
どこからか現れまどかの横を併走するキュウべぇ。
キュウべぇ「もう安心だ、僕がさやかたちを呼んできたんだ。もうじきここから出られるよ」
まどか「本当に」
ほむら「まどか、そいつの話を聞いちゃダメよ」
通路の行き止まりに行き着くまどかとキュウべぇ。低い柵が塞いでいるだけで下はかなりの高さがある崖。
崖下を見てたじろぐまどか
キュウべぇ「まどか、ここから飛び降りるんだ。僕たちが君を受け止める」
ほむらM『欺かれる運命から逃れられない』
まどか「本当に?」
本当に受け止めてくれるか心配そうなまどか。
キュウべぇ「ああ、僕を信じてくれ」
キュウべぇの目を見て信じるまどか。
ほむら「ダメよ! そいつの言うことを信じないで!」
必死で叫ぶ悪魔の声を無視し、柵を飛び越えるまどか。
ほむら「ダメええええええええええええ!」
まどかの体は重力にしたがい下まで落ちていく。
崖まで行き着くほむら。下を見下ろすとまどかがうつ伏せで倒れている。
ほむら「うううううう……」
崩れるように倒れこみ、柵にしがみついて泣き喚くほむら。
ほむらM『大切な人を失う運命から逃れられない』
後ろで無表情でほむらを見つめているキュウべぇ。
ほむらM『逃れられない……愛という呪いで得たものを失うのは得るよりも簡単なことだった。この 運命の中で何度もあなたを殺し、この運命の中で何度も別れを告げる。わたしがあがこうとすれば するほどあなたの心は離れ、遠いものにする。呪われた人間を誰も信じない。かつての仲間たち も……あなたさえも……だったらわたしは……』
キュウべぇ「ふぅん、なるほどね」
ほむらの脳内に突然キュウべぇの声が割り込む。
ほむら、見上げると巨大なキュウべぇが見下ろしている。
〇 ? 白い部屋
壁も天井も何もない一面白い空間にうずくまっているほむら。ほむらの前に鎮座し見下ろして いる巨大キュウべぇ。
キュウべぇ「消滅しつつある、君の最後の意識にコネクトしているんだよ」
恨めしそうな死んだ目でキュウべぇを見上げるほむら。
キュウべぇ「皮肉で数奇な運命じゃないか。まさか、時間遡行の能力を持っていた君がま
た再び同じ能力を手に入れ、自分の望む世界を探す旅に出かけるなんて。君のソウルジ
ェムに溜まっていた異様な呪いの量も頷ける」
ほむら「お前が散々妨害されたせいよ」
弱々しい目でキュウべぇを睨みつけるほむら。
キュウべぇ「鹿目まどかとの安息の日々を手に入れられず望むものを失い、呪いを貯める
羽目になった君は宇宙世紀史上最悪の魔女となり、この銀河系を滅ぼすだろう。ここま
で呪いを溜め込んだ君を円環の理は救済できない」
ほむら「……わたしは最初からあの子に殺されるつもりよ、もう救済なんて必要ない。わ
たしが死ねばまどかにかけていた呪いが消え覚醒するようになっているの。自分を失い
暴走したわたしをあきらめてくれる」
キュウべぇ「なるほど、あの悪魔のくちづけは君自身が消滅した時に解けるようにわざと
魔力を軽減していたのか」
ほむら「まどかを生かしておくための策よ、わたしが死んでもこの世界を無かったことに
して作り変えることができる。お前がまた円環の理システムを利用しないように睨みを
効かせていられる。お前にまどかも円環の理も好きにさせない」
キュウべぇ「……そんな浅はかな計画が君にとっての策だなんてね。君とまどかが合流す
る前に、呪いの上書きをさせてもらったよ」
ほむら「なんですって」
キュウべぇ「円環の理の神力をはるかに凌ぐ呪いさ、君の呪いで神力を封じ込まれた鹿目
まどかがこの呪いを解くことは無理だろう」
息を飲み言葉を失うほむら。
キュウべぇ「鹿目まどかは円環の理に戻れずに死に、この星は一日持たずとして君の呪い
が溢れ消滅するだろう僕たちの任務はこれで達成される。君たち人類の感情は危険だ、
また第二の暁美ほむらが現れ世界を改変しないとも限らない。残念だけど君たち人類は宇宙のため に生かしておくことはできないんだ。だけど、有史以来観察して手に入れたデーターは無駄にしな いよ。宇宙のために絶滅できることを誇りに思ってくれ」
歯噛みをしてキュウべぇを睨みつけるほむら。感情のない目で睨みつけるキュウべぇ。
ほむらを前足で蹴り飛ばすキュウべぇ。
ほむら「ああっ!」
地面を転がるほむら。
キュウべぇ「全く、きみは本当に手に余る魔法少女だったよ。まさか僕たちのテクノロジ
ーを逆利用して、自分の力にしてしまうなんて」
転がる悪魔を追いかけこねくり回すキュウべぇ。
キュウべぇ「君の時間遡行のおまけとして付いてきた世界改変の能力のせいでどれだけ宇
宙の法則が捻られたかわかるかい。君に自覚はないだろうが世界改変にかかる熱エネル
ギーの負荷は太陽を一個生み出すほど莫大なものだったんだよ、君は性懲りもなく自分
の願いの為に宇宙を痛めつけた。その重大性がわかっているのかい」
悪魔を足で踏みにじるキュウべぇ。うめき声すら漏らさずぐったりとした悪魔。
白い空間のどこからか現れる使い魔の群れ(ほむらの溜め込んだ呪いの具現化)
使い魔たち、悪魔に群がるとその肉体を食い荒らし始める。
ほむら「あああああああああああああああああ!」
痛みと苦しみのあまりに絶叫する悪魔。
キュウべぇ、ほむらから発せられた凄まじいエネルギー量に思わず身震いをする。
ほむら「……ぐぐ」
キュウべぇを睨みつける死にかけのほむら。その瞳には凄まじい憎悪が込められている。
キュウべぇ「もう、終わりだね。君の意識を呪いが侵食している。まだ意識があるうちに
僕からの贈り物を受け取ってもらうよ」
白い空間の上空を見上げるキュウべぇ。
上空には大量のキュウべぇが旋回飛行している。
キュウべぇたちが小さなグリーフシードを大量に投下していく。
小さなグリーフシードにうもれていく悪魔。呪いと同化していく。
悪魔「ああ……あああは……あはっ……アハハハハハハハハ!」
グリーフシードの山から恐ろしい笑い声を発する悪魔。
キュウべぇ「すごいよ、今の君から発生しているエネルギー。もはやエントロピーすらも
超越している。暁美ほむら、君は僕たちに新たな方向性を示してくれた。愛から憎悪へ
の相転移。激しすぎる愛から絶望に満ちた憎悪へと変わるプロセスがここまで強力な感情エネル ギーを生み出すなんて、やはり人類を使って長年研究した甲斐があった。いつかこの感情を利用で きるように魔法少女システムを改良していくよ」
新たなテクノロジーの完成に目を輝かせて見るキュウべぇ。
〇 夜 見滝原市
ほむらのアパートを中心として凄まじい呪いを発している。
次々と姿を具現化する魔獣たち。
× × ×
街角、突然現れた魔獣から必死に逃走する中沢。
ところが上から魔獣に服を摘まれ捕まる中沢。
中沢「やっ、やめてくれ! うわああああああああああ!」
中沢を口の中に放り込む魔獣。
× × ×
呪いの発生地から世にも恐ろしい姿をした魔女が現れる。
とんがり帽子の被り物をした厚化粧の女。無駄に後ろ髪は野暮ったい三つ編みにしてある。ボ ロボロの青いベルベット生地のドレスを身にまとい、袖には偽物の赤い宝石が輝いている。そ の姿はかつての暁美ほむらの宿敵だったワルプルギスの夜に酷似している。
かつて魔女を固定していた歯車から解放され逆転したそれは世界を滅ぼす姿。
[舞台女優の魔女]
その性質は演技。自分の役を失い舞台から下ろされた哀れな魔女。三文芝居の哀れなヒロイン と同化し我を失ったまぬけ。自分を救済してくれる主役を探しありとあらゆる場所を彷徨う羽 目になった。