魔法少女まどか☆マギカ 焔の物語   作:かばお

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Ⅷからの続きです。 これで簡潔です。


焔の物語Ⅸ 完結

 

魔女「ぐおおおおおおおおおおお!」

   浮かぶ半月に咆哮する魔女。

   見滝原地区上空を哨戒していた航空自衛隊のF十五Jがホーミングミサイルを魔女に発射す    る。

   人間の兵器の攻撃など相手もせずにどこかへふらふら歩いていく魔女。

 

 

〇 夜 高台にある公園

   暴れる魔女を呆然と見るさやか、まどか、マミ、なぎさ、人魚の魔女。

   特に悔しそうな表情のさやか。

マミ「……わたしたちの街が……」

   魔女の暴虐を絶望の表情で眺めるマミ。

キュウべぇ「これでこの星はおしまいだ」

   他人事のように呟くキュウべぇ。

マミ「なんでそんな他人事みたいに言えるのよ。暁美さんをどうにかする方法はないの?」

キュウべぇ「ないね。君たちとこの星の魔法少女全てがかかっても暁美ほむらをどうにも

 することはできないだろう。一日も経たないうちにこの星を呪いで満たし全ての生命が

 互いに淘汰を始めこの星の生命体は絶滅するだろう」

まどか「そんな! それにあっちにはパパとママがいるんだよ」

   魔女が歩む方向にはまどかの家がある。

マミ「あなたたちはどうしてそんな態度をとれるの。わたしはあなたに助けを請われて悪

 魔と戦ったのよ。それなのに悪魔がこんな状態になったら見捨てるの」

 キュウべぇ「助けてくれと頼んだ覚えはあるけど、何かを君たち人類の生存を約束した覚

 えはないな。君は見返りを期待していたのかい」

マミ「この状況になることを見越した上でわたしに接近したの」

キュウべぇ「そうだよ、僕の本当の目的はこの星と人類の絶滅さ」

なぎさ「な、なんなんですかそれ」

   キュウべぇの凶悪な目的に戦慄するなぎさ。

キュウべぇ「まず、僕は悪魔のソウルジェムに溜まった異様な呪いの量に着目し、それ人

 類絶滅の兵器に転用することにした。まず関係者である君たちに接近し、巴マミを軸と

 して仲間割れを起こすように仕向けた。僕の動きに悪魔はまんまと警戒してくれた。悪

 魔はさっそく仲間につけた佐倉杏子とともに君を倒しにかかってきた。ここで君は残量

 魔力とグリーフシードを失い戦力外になった。おまけに悪魔には俗に言う良心の呵責と

 いうものが残っていたみたいで勝手に呪いを貯めてくれた」

マミ「ッッ!」

   杏子にリンチされたとき自分から顔を背けていたほむらの姿を思い出すマミ。むしろ操られていたのは自分だと知る。

キュウべぇ「佐倉杏子が消滅した後、無理に君をせかしかたのは戦力を裂くためさ、本当

 はあの時消滅してくれたほうが都合良かったんだけど、まさか動きを制していたはずの

 百江なぎさが助太刀に入るとは思わなかったね。だけど結果的に悪魔は人間関係に翻弄

 され呪いを貯めるに至った。まあ、僕たちにも予想外の事態はあったけど結果オーライ

 だね」

   非情な計画をたんたんと語るキュウべぇ言葉を失う一同。

まどか「その話全部嘘だよね……」

   割り込んでくるまどか

まどか「あんな恐ろしい怪物がほむらちゃんな訳ないよ、きっと今に駆けつけてあの怪物

 をやっつけてくれるよ。本当は悪魔なんてだって嘘だよ、ほむらちゃんは正義の魔法少

 女なんだよ……わたしのヒーローなんだよ」

   まるで自分に言い聞かせるように喋るまどか。

キュウべぇ「人間の逃避思考ってやつだね」

さやか「まどか……あんたも見たはずだろ。あれはかつて暁美ほむらだったもの紛れもな

 い……完成した魔女……」

まどか「嘘だよッ!」

   頭を抱えてうずくまるまどか。

   ×   ×   ×

   市街地では自衛隊が防衛ラインを築き、未確認武装兵器の迎撃及び一般市民の避難に当たって   いる。

    進撃する魔女に対する攻撃を強める自衛隊。F十五J戦闘機の他にアパッチ戦闘ヘリとコブ   ラ戦闘ヘリが飛び交いミサイル攻撃で空からの攻撃を強める。

   市街地では十式戦車が乗り入れ魔女に向かって砲撃を開始する。

   見滝原地区郊外では地対空兵器の数々が魔女に向かってミサイル攻撃を開始する。

魔女「ぐああああああああああああ!」

   魔女に直撃する砲弾、ミサイル。圧倒的な火力を前に流石に怯む魔女。

 

 

〇 公民館

   戦火が迫りつつある公民館の庭避難民が順番に自衛隊の輸送トラックに乗り込んでいく。鹿目   家の詢子、知久、タツヤの姿もある。

   トラックの荷台に乗り込まないと抵抗する詢子

詢子「離せ! まどかが見つかるまであたし乗らないぞ!」

   スーツ姿の詢子。必死の形相。

知久「まどかは自衛隊の人に任せるんだ、僕たちは先にまどかを待たないと」

   詢子を必死に説得する知久。

詢子「あたしの娘だぞ! 無事を確認するまであたしはどこにも行かないぞ」

   周囲の人たちに押さえ込まれる詢子。     

知久「詢子、ここにいたら死んでしまう。君が死んだらタツヤはどうするんだ! まどかだって悲し むぞ、だから先に安全な所までいってまどかを待つんだ」

詢子「知久ァ! あんた男かよ! 娘が行方不明なんだぞ! まどかは女の子なんだぞ! きっと今頃泣いて待ってるに決まってる。あたしが行かなきゃ……」

   日頃の威厳が崩れ去り半泣き状態になる詢子。

知久「君らしくもない! 自分にできないこととできることをわきまえるんだ! まどかは他の人に 任せろ! あの子は一人前の大人だ、子供じゃない。きっと無事でいてくれる。僕にはタツヤのた めに生き残る責任がるし君にもある、この子の為にも勝手な行動はできないんだ……残念だけどま どかを信じるしかない」

   詢子に厳しい言葉を投げかける知久。しかし、顔は悲痛な表情。

 

 

〇 夜 高台の公園

   うずくまり泣くまどか。そのまどかを悲痛な表情で見るマミとなぎさとさやか。

キュウべぇ「そんなに泣かれてもどうしようもないんだけどな」

   まどかを見下ろし呟くキュウべぇ。

まどか「……そうだ……キュウべぇ……あなたはわたしに秘められた力があるって言ってたよね。その力 を開放すればみんなを助けられるって……どうすればいいか教えてよ」

キュウべぇ「残念だけど、もう無理だね。さっき君と会った時に悪魔の口づけの呪いの強化をさせて もらった。その呪いは今の君の神力じゃ解除できないだろう」

まどか「……どうして」

   キュウべぇの裏切りに呆然とするまどか。

さやか「お前、そこまでしてまであたしたちを殺したいのか」 

   微かに残っていた希望さえ潰されたことを知り怒り狂うさやか。

まどか「キュウべぇ、呪いを解いてよ。じゃないとこの星もほむらちゃんも死んじゃう」

キュウべぇ「まどか、さっき言ったじゃないか僕たちの目的はこの星の破壊と人類の絶滅だって。何 故今更君の封印を解かなくちゃならないんだい」

まどか「お願い、こんなの嫌だよ」

キュウべぇ「わかってくれないか、僕たちも理由がなくてこんなことをしているんじゃない。僕たち インキュベーターは暁美ほむらというオーバーテクノロジーを処理する責務があるんだ、彼女が  たった一人でどれだけの熱エネルギーを消費し、宇宙の法則を捻じ曲げ負担をかけたと思うかい。 それでどれだけ宇宙の寿命が縮まったと思う。宇宙内の物資と生物を守るためには君たちを切り捨 てるしかないんだ」

まどか「あなたの言ってることはよくわからないけど、わたしがどうにかするよ。あなたたちのやら ないといけないことはみんなわたしが代わってあげるし、解決するよ。だからお願い」

キュウべぇ「そんなこと信じると思っているのかい」

まどか「キュウべぇ!」

さやか「まどか、何言っても無駄だよ。そいつはこういう生き物なんだから」

まどか「……」

さやか「あんたの言いたいことはよくわかったよ、そういう生き物だよね。あんたたち」

キュウべぇ「さやか、君たち人類の件は僕たちにも落ち度があったよ、魔法少女システムは君たちに は危険すぎた。僕たちにも悪意があってこの力を授けたわけではないとわかって欲しい。今回の  データを分析して二度と無駄な犠牲は出さないように努力する。だから……」

さやか「御託はそこまででいい。あんたらの言い訳なんか聞きたくないから」

キュウべぇ「……」

マミ「そうよ、あなたの顔なんて見たくもない。早くどこかに行ってしまうといいわ」

   軽蔑した目でキュウべぇを睨むマミ。

キュウべぇ「そうかい、まぁ頑張ってくれ……さようなら……魔法少女たち」

   姿を消すキュウべぇ。

   キュウべぇが撤退した後重い空気の漂う一同。

まどか「さやかちゃんたちどうするの……」

さやか「戦うしかないよ」

まどか「やっぱり戦うの。あの怪物はほむらちゃんなんだよ」

   現実をようやく受け止める気になったまどか。

さやか「わたしたちは魔法少女なんだよ」

マミ「そうよ、この街を、みんなを守らなきゃ」

なぎさ「魔女には負けないのです」

   街で暴れる魔女を見つめ決心を固める魔法少女たち。

なぎさ「まどか、あなたは逃げるのです、こんな事態になってしまっては、あなたは一般人です。巻 き込むわけにはいかないのです」

まどか「……それはいや、あなたたちを見捨てたくない」

マミ「ダメよ! あなたは逃げなさい。今のあなたは足でまといにしかならないの」

まどか「ついていきたいんです! わたしに力があるとわかったから、もう逃げたくないほむらちゃ んを助けたいんです」

なぎさ「円環の理の人間部であるあなたが死んでしまっては、円環の理が救済の力を失ってしまうの です。せめてもの救いとしてあなたには生きていて欲しいのです」

まどか「……わたし、もう友達をうしないたくない。杏子ちゃんが死んじゃった時も何もできなかっ た自分が悔しくて腹立たしかった。もうそんな無力感を味わいたくない、ほむらちゃんの友達とし てできることをしたいんです」

なぎさ「……まどか」

まどか「さやかちゃん、お願い。わたしも連れて行って」

さやか「本当についてくるの? ほむらのやつを助けたいの」

なぎさ「さやか、無茶です」

まどか「うん、助けたい。だから……」

さやか「……だったらついておいで、あんたは一度世界を変えた神様だったんだ。ひょっとしたらも う奇跡が起こってほむらの奴が目を覚ますかも知れない。大好きなあんただったら呼びかけに応え るかもしれない。やれるだけのことはやってみればいいと思うんだ」

   まどかに清々しいさっぱりとした笑顔をみせるさやか。

まどか「さやかちゃん!」

   嬉しそうに顔を輝かせるまどか。

×   ×   ×

   進撃を阻まれ自衛隊に反撃を開始する舞台女優の魔女。三つ編みにした髪を振り回し戦闘ヘリ   や戦闘機を次々に撃墜する。

   飛んできたミサイルを掴み。自衛隊の戦闘車両に投げつける。

   大爆発炎上する自衛隊の戦闘車両。魔女の反撃で戦力を大幅に失う自衛隊。

   舞台女優の魔女に接近を試みるさやかと人魚の魔女、お菓子の魔女。まどかは人魚の魔女の手   のひらに乗っかり、マミはお菓子の魔女の頭に乗っている。

まどか「ほむらちゃん、わたしだよ! こんなことはやめて」

   舞台女優の魔女の眼球が人魚の魔女の手のひらに乗ったまどかの姿を捉える。

舞台女優の魔女「ああああああああああああ!」 

まどか「ほむらちゃん、目を覚ましてあなたは正義の味方なんでしょ、こんなこと本当はしたくない はずだよ」

さやか「まどか、もっと呼びかけるんだ!」

   咆哮する魔女。まどかの乗った人魚の魔女を追いかけ始める。     

さやか「ついてきた、このまま人気のない所まで引き寄せるんだ」

   旋回し、人気のない河岸地帯へ誘導する人魚の魔女。

   まどかを求め建物を破壊しながらよたよたと歩く舞台女優の魔女。

舞台女優の魔女「きえええええええええええええ!」

   髪を振り回し人魚の魔女を撃墜しようとする舞台女優の魔女。

まどか「ほむらちゃんやめて! そんなことされたら落ちちゃうよ!」

   舞台女優の魔女の攻撃に流石に恐れをなして叫ぶまどか。

   舞台女優の魔女の顔に絡みつき目隠しをするお菓子の魔女。

マミ「悪いけど、そのお行儀の悪い髪の毛は切り取らせてもらうわよ」

   お菓子の魔女の体から飛び降りると舞台女優の肩に乗っかるマミ。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

   大砲を生成し三つ編みにした後ろ髪を撃ち抜く。

   銃弾に撃ち抜かれ引きちぎれる三つ編み。

舞台女優の魔女「ぐがぁあああああああああああ!」

   髪の毛にも痛覚が走っているのか、悶絶する舞台女優の魔女。

   上半身をゆすり肩に引っ付いた異物を振り落とそうとする。

マミ「いやああああああああああああ!」

   魔女の肩から転がり落ちていくマミ

まどか「マミさん!」

   落ちていくマミを絶望的な表情で見下ろすまどか。

   お菓子の魔女が颯爽と駆けつけマミの体を拾う。

   逃走を図るお菓子の魔女。

舞台女優の魔女「ぐわあああああああああああああ!」

   残り一つの三つ編みで周囲の建物を破壊する舞台女優の魔女。

   お菓子の魔女とマミ、倒壊した建物に押しつぶされる。

さやか「マミさん!」

まどか「さやかちゃん! 下りて!」

   マミとお菓子の魔女の消失した辺りに降り立つ人魚の魔女とまどか、さやか。

   地面に降り立つ。

まどか「マミさん! なぎさちゃん!」

   倒壊した建物の間を走り回るまどか。

   瓦礫の下敷きになりもがいているお菓子の魔女とマミ。

マミ「鹿目さん、さやかさん……この鉄筋をどかしてくれないかしら」

   苦しそうに言うマミ。

さやか「まどか、そっちの方を持って」

   鉄筋を持ち上げようとするさやかとまどか。

   お菓子の魔女するりと鉄筋の間から擦りぬける。

さやか「あ……」

まどか「ひっ!」

   鉄筋の隙間から覗いたマミの体を見て絶句する二人。

マミ「なに……一体どうしたの?」  

  体をのけぞらせるマミ。下半身に違和感を感じ見下ろす。

マミ「っっ!」

   自分の下半身の有様を見てしまうマミ。体を痙攣させると目を見開いたまま動かなくなる。黒   く染まったソウルジェム。

まどか「ううう……どうして……」

   マミの亡骸を抱きしめ泣きながら己の無力さを痛感するまどか。

まどか「どうして変えられないの……わたしにはみんなを救える力があるんじゃなかったの……だったら、どうして……」

   自分に対し訴えかけるまどか。

   その様子を悲しい顔をして見守るさやかとお菓子の魔女。

まどか「もう誰も死なせたくない……もう何かが壊れるのなんて見たくない。みんなを救いたい……わ たしに力を……あるんだったら目覚めて……」

   神力を宿していたまどかのリボンがまばゆい光を放ちだす。キュウべぇのかけた呪いが閃光を   発して消滅する。

   宇宙の果てから戦死した巴マミの魂を回収にするために現れる円環の理。

   天空から突然現れた異形の者に驚くまどか。

   宇宙から降り立った円環の理と鹿目まどかが溶け合い再び一体となる。

   神力を手に入れ巨大化するまどか。

   ×   ×   ×

   安全地帯に避難する輸送トラック内。行方不明の愛娘の姿を意外な形で発見し、我が目を疑う   鹿目夫妻。

タツヤ「ねぇちゃ……ねぇちゃ」

   嬉しそうに手を振るタツヤ。

   ×  ×  ×

舞台女優の魔女「ギギギ!」

   徐々に巨大化する円環の理に驚き、後方三回転宙返りをして距離を取る舞台女優の魔女。

   向かい合う舞台女優の魔女と円環の理。

   魔獣たちが円環の理の存在に気づき襲いかかるが近寄ることすらできず神力によって消滅させ   られる。

円環の理「あなたを迎えにきたんだよ……行こうみんなと一緒に」

   優しい口調で舞台女優の魔女に呼びかけるまどか。

舞台女優の魔女「グギギ……」

   舞台女優の魔女、手のひらから暗黒物質を発生させると、凶暴化した巨大な使い魔を何体も召   喚する。

使い魔A「ぐげげげ!」

使い魔B「げげげげ!」

   円環の理に襲いかかる使い魔たち。

円環の理「はああああっ!」

   正拳突きや巴投げなど近接拳法で全て撃破する円環の理。

円環の理「怯えないで……あなたをこれ以上苦しめない、だからわたしを信じて」

   円環の理の説得にも応じようとせず自ら突進してくる舞台女優の魔女。

   つかみ合い取っ組み合いになる円環の理と舞台女優の魔女。

円環の理「わたしはあなたの絶望を知ってる。わたしのせいだもんね。わたしがあなたを置き去りに しちゃったからあなたがどんなに悲しんでどんなに寂しかったのかわかってるの……だから、今度 は本当にほむらちゃんを救いたいの。あなたは……」

   これ以上言わせるかとばかりに三つ編みで円環の理の首を締め上げる舞台女優の魔   

   女。

   苦しさで呻く円環の理。

   背後から忍び寄っていた人魚の魔女、絡みついた三つ編みを切り落とす。

さやか「バカ野郎! 目を覚ませ! まどかに手をあげてなにを考えてるのさ」

   人魚の魔女の頭に乗りほむらに叫ぶさやか。

舞台女優の魔女「グギャアアアアアア!」

   円環の理の手を離し、悶絶する舞台女優の魔女。

   裏拳で人魚の魔女に反撃をする舞台女優の魔女。

さやか「あっ!」

   凄まじい打撃で吹き飛ばされるさやかと人魚の魔女。

円環の理「ほむらちゃん、ダメだよ」

   八つ当たりをするかのように円環の理に殴りかかる舞台女優の魔女。

   反撃もせずに一方的に殴られる円環の理。

舞台女優の魔女「ぐぎぎぎ……」

円環の理「絶対に絶望させない、あなたの悲しみも怒りも受け止める。だから目を覚まして」

   無意識の内にバリアを張る円環の理。バリアに弾き飛ばされる舞台女優の魔女。

   素早く起き上がるが、突然頭を抱え苦しみ始める舞台女優の魔女。      

舞台女優の魔女「……まどか…………」

円環の理「ほむらちゃん!」

   ほむらの声が円環の理の中に響く。

   突然、舞台女優の魔女の体が炎に包まれ火だるまになる。痛みを感じないのか棒のように突っ   立ったまま。

   舞台女優の魔女の体を焼き尽くし徐々に巨大化していく炎。

円環の理「これは……なんて凄まじい呪いなの」

    魔女を焼き焦がす炎の正体はほむらの溜め込んだ凄まじい量の呪い。

さやか「まどか、ほむらの奴はもうあきらめよう。もうあんたの力で呪いそのものを浄化

するしかない」

  凄まじい呪いの炎に危機感を抱くさやか。

円環の理「でも、そんなことをしたらほむらちゃんあの凄まじい呪いと一緒に永遠に消滅

 しちゃうんだよ」   

さやか「……あいつは行くところまで行ってしまったんだ。このままだとわたしたちまで

 呪いに飲み込まれてしまう。そうなったら一環のおしまいだ……もうあきらめてあれを

 倒すしかないよ」

円環の理「それは嫌、わたしは全ての魔法少女を救うって決めたんだ。わたしをずっと救

 おうとした子を見捨てたくないよ」

   呪いの炎に近づく円環の理。

さやか「あれはもうほむらじゃない! ただの呪いの塊なんだ! あんなものに近づいた

 らあんたでも消えてしまうよ」

   必死にまどかを引き止めようとするさやか。

まどか「それはできないよ、わたしは全ての魔法少女を救う、呪いを受け止めるって願っ

 て神様になったんだよ。今更その使命に背きたくない。きっとほむらちゃんはわたしを

 待っていてくれる、必ず戻ってくるから待ってて」

   さやかに笑顔を見せると呪いの炎の中に飛び込む円環の理。

さやか「まどか! いくな! まどかあああああああ!」

   炎の中に消えていったまどかに向かって叫ぶさやか。

 

 

〇 ? ほむらの結界内

   一面暗黒の空間に一人立っているまどか。

   その前に三つ編みが絡み合って出来た巨大な楕円形の繭がある。

まどか「ほむらちゃん、その中にいるの?」

   返事をするかのように繭の端の毛先や毛の表面がヒクヒクと痙攣する。

まどか「……もう、大丈夫だよ、あなたを苦しめるものは何もないんだよ」

   ほむらの返事はなく、相変わらず繭は気味の悪いうねりをみせるだけ。

まどか「ほむらちゃん、返事をして。その中にいるのはあなたなんだよね」

   まどかの声に呼応したのかさらに動きが活発になる繭。

ほむら「……うううう……」

   繭の中から苦しそうなほむらのうめき声が聞こえる。

まどか「ほむらちゃん、やっぱりあなたなんだね、わたしに手を伸ばして。ここから救い出してあげる」

ほむら「……まどか……本当にまどかなの?」

まどか「そうだよ、あなたを追ってここまできたんだよ」

   繭に目玉が出現しまどかを目視するとすぐにぐるりと裏返る。

悪魔「ああ、嬉しい……本当にあなたなんだ……こんな所まで来てくれたんだ」

まどか「ほむらちゃん! ここから出よう」

   繭に向かって手を伸ばすまどか。

悪魔「……来てくれると信じてた…………大好きな魔法少女の先輩……わたしの最高の友達……」

まどか「そうだよ、わたしがあなたを見捨てるわけがないじゃない。わたしもあなたのことが大好き なんだよ」

   繭がわれ中から巨大な手が出現する。まどかに向かって伸びていくほむらの腕。

まどか「そうだよ、ほむらちゃん手を伸ばして。わたしの手を握って」

悪魔「……あと少し……もう少し……」

   まどかに触れそうになるほむらの手。

まどか「今度こそわたしと一緒に行こう。わたしと一緒になろう」

   ほむらの魂を救済できたと確信し目元に涙を浮かべるまどか。

悪魔「そうね、これからはずっと一緒。まどか」

   突然、繭の三つ編みが解けまどかの体を縛り始める。

まどか「ほむらちゃん! きゃあ!」

   繭から伸びた巨大な手がまどかを鷲掴みにする。

 

 

〇 ? 宇宙空間

   宇宙を移動中の一匹のキュウべぇが凄まじい量のエネルギーを感知し身震いをする。

キュウべぇ「なんだ、この異常な高エネルギー反応は」

   巨大な手に鷲掴みにされるキュウべぇ。

悪魔「逃がさないわよ、インキュベータ」

   キュウべぇを睨みつける巨大な三つ編みメガネの暁美ほむら

キュウべぇ「君は……悪魔か……どうやってあの莫大な量の呪いをどう処理したんだ」

   キュウべぇの見当はずれの答えを嘲笑う悪魔。

悪魔「分からないのね、私自身が呪いになったのよ」

   禍々しい笑みを浮かべる悪魔。

まどか「ううう……どうして……ほむらちゃん!」

   三つ編みの先っぽに捉えられているまどか。

   円環の理こと鹿目まどかの捕らえられた姿を見て言葉を失うキュウべぇ。

悪魔「……ふふふふ」

キュウべぇ「何がどうなっているのか、さっぱりわからない」

悪魔「呪いの力で円環の理を補足し、捕獲したのよ」

キュウべぇ「呪いの力で?」

悪魔「そうよ、わたしが貯めた呪いとあなたが最後に押し付けた呪い、全てわたしが受け止め自分の 魔力に変換したのよ。そして円環の理と鹿目まどかをわたしの結界内に招き入れ全権を掌握した」

キュウべぇ「馬鹿な! あれだけの呪いを受け止めて、それでも自我を保っていたというのか! あ のとき確かに暁美ほむらという個は呪いによって消滅したはず、それなのになぜ」

悪魔「わたしは魔なるもの悪魔よ、愛という呪いで変身したわたしはお前たちの机上理論

 では解明できないほど、呪いの変換処理や魔術に特化した存在になっていた。だけどお

 前たちにそれを悟られないように、この時間軸でわざと精神的に疲弊し弱りきった演技

 をして実力の過小評価をしてくれるよう仕向けた。そして仕上げに経験の浅い最初あ

 たりの時間遡行の記憶を意図的に流し込み印象操作した。このわたしの工作活動によっ

 てお前たちはわたしの評価を決定打にして人類を殺戮する役目を与えた」

キュウべぇ「まさか……あれが全て演技……」

悪魔「そうよ、そこまでうまい芝居をした覚えはないけどお前たちはまんまと騙されてく

 れた。円環の理の掌握に妨害を受けたくなかったし、お前たちの出方を知りたかった。

 お前の計画の全容を把握した後に、呪いによって消滅したように見せかけ、実際は呪い

 で築いた自分の結界の中に身を潜め機会を伺っていた。後は円環の理がわたしの築いた

 呪いの結界までやってくるのを待って一気に全ての力を奪ったというわけ」 

キュウべぇ「そんな、信じられない」

悪魔「信じたくないでしょうね、高度の計算技法と科学技術を身につけたあなたたちが出し抜かれる だなんて……だけれども、まどかにかけた呪いを逆手にとって小細工を弄してしたとは流石に計算 外だったわ、時間改変による因果が絡みついたあのリボンの神力が覚醒しなかったら、あの子は死 んでいたかもしれない……今まで散々神殺しに手を染めていたけどやはり今回もまどかに弓を引い たわね!」

   キュウべぇを手離し、今度は三つ編みで縛り上げる悪魔。

悪魔「お前たちのような罪深い生き物には罰が必要よね」

   捕らえたキュウべぇを睨みつけるほむら。

 

 

〇 夜 見滝原市市街地

   呪いの炎周辺を旋回し監視するさやかと人魚の魔女。

   炎の中から何かが現れる。

さやか「……あれは」

   姿を表す暁美ほむら(の姿をした舞台女優の魔女)。その姿は悪魔でも魔法少女衣装でもなくワルプルギスの夜と同じ青いドレス。手には弓を持っている。

   まどかではなく奇妙な姿をした暁美ほむらの姿に目をみはるさやか。

さやか「お前! まどかはどうした! 一体何をしたんだ!」

   返事をせずにのそのそと数歩歩くほむら。

さやか「答えろ! おい、ほむら!」

   興味なさげな目で人魚の魔女とさやかを補足すると、腕で払って弾き飛ばす。

さやか「うわっ!」

   物凄い勢いで地平線のかなたに飛んでいくさやかと人魚の魔女。

なぎさ「……ヒッ」

   地面にヘタれこんでいたなぎさ。さやかが吹き飛ばされる様を目の当たりにし小さな悲鳴を上げる。巨大で圧倒的な敵を目の前にして完全にすくんだ様子。

   ほむら、なぎさを補足すると指でつまみ上げて投げ捨てる。

なぎさ「うわあああああああああああ!」   

   ものすごい勢いで地平線のかなたまで飛んでいくなぎさ。

   全ての邪魔者を排除したほむら、矢を番え天空に向かって矢を掃射する。

 

 

〇 ? 全ての宇宙空間

   ほむらの放った矢が地球の表面に魔法陣を描き、宇宙空間上全てのキュゥべえに光の矢による   攻撃を加え始める。

   宇宙を移動するキュウべぇ、ありとあらゆる惑星を探査するキュウべぇ。キュウべぇの本星に暮らすキュウべぇ。宇宙空間の全てのキュウべぇに死の制裁が降り注ぐ。

   光の矢がキュウべぇを掃討する様子を笑みを浮かべながら見るほむら。言葉を失い絶句するま   どか。相変わらず無表情で見るキュウべぇ。

   一瞬で破壊し尽くされ死の惑星となるキュウべぇの本星。

ほむら「ほら、これが裁きよ」

   冷めた口調で言うほむら。

まどか「ほむらちゃん! どうしてここまでしなくちゃいけないの! いくらなんでもひ

どすぎるよ」

   一つの種族が絶滅させられた様子を目の当たりにし涙ながらに訴えるまどか。

   がたがたと震え始めるキュウべぇ。他のキュウべぇたちとのリンクが切れ、本当  

   に自分が最後の一匹になってしまったことを実感する。

ほむら「震えているのね、最後の一匹になってしまった感想はどう?」

キュウべぇ「なんというか……不思議な気分だね、今まで一つの生命体の細胞として存在

 していた僕がたった一つの生命体としてこの宇宙の中に生きているんだ、なんだかとて

 も感じが悪くて、心苦しい、生きているって心地が全くしないよ」

ほむら「そうね、今になって教えてあげるけどそれが孤独という感情なのよ。人間の救い

 がたい病の一つ、呪いを育てる温床の一つ」

キュウべぇ「なるほど、これが孤独というやつなのか。この感情が君の原点なんだね」

ほむら「そうよ」

キュウべぇ「確かに、この感覚は怖いね。君がとてつもない量の呪いを生み出したのも理

 解できるような気がするよ」

ほむら「最後に感じたのがこの感情で良かったわ。インキュベーター、これでもあなた一

 人で生きていきたいと思う?」

キュウべぇ「……御免こうむるね、この僕一人じゃ宇宙の寿命をのばすなんて不可能に決

 まっている。我ながら存在する価値なんてないね」

ほむら「あら、そう。こんなことになってまで自分の命よりも存在意義を優先するのね」

キュウべぇ「そうだよ、僕たちはそのために生まれたようなものだからね」

まどか「キュウべぇ……ダメだよ。ほむらちゃんに謝って」

   ほむらの気を変えるようにキュウべぇを説得するまどか。

キュウべぇ「暁美ほむら、世界を何度も改変し、宇宙の摂理を捏造し、たった一人でエン

 トロピーを超越した君ならば、僕らの代わりに宇宙の寿命を延ばし可能性を広げること

 ができるかも知れない。僕たちは安心して消滅し宇宙を君に受け渡すよ、頑張って欲し

 い」

ほむら「相変わらず可愛げが奴らね、まぁ、地球の魔法少女たちのために宇宙を作り変える必要があ るわね。さよならインキュベータ」

まどか「ほむらちゃん! だめ! 待ってぇ!」

   キュウべぇの体を三つ編みで締め付けるほむら。頭部が膨張し破裂するキュウべぇ。

まどか「だめえええええええええええ!」

   絶叫するまどか。

   静かになった宇宙空間。まどかと向かい合うほむら、キュウべぇ本星から漏れ出た熱エネル   ギーを吸収しはじめる

ほむら「さて……やっと二人きりになれたわね、まどか」

   三つ編みを解いてまどかを解放し手のひらに包み込むほむら

まどか「ほむらちゃん……キュウべぇたちを絶滅させるなんて、どうしてここまでしなき

 ゃいけないの!」

   惨たらしい虐殺の様子を見せつけられ、さすがに怒るまどか。

ほむら「あいつらをやらなかったら、わたしたち人類が滅亡させられていたわ。仮に逃が

 しておいたとしても懲りる奴らじゃない、また、作戦を整えて襲って来るわ」

まどか「でも、ほむらちゃんはキュウべぇたちよりもとても強いじゃない! 押さえてお

 く方法はいくらでもあったはずだよ」

ほむら「他に方法がなかったから、こうしたのよ。あいつは宇宙の法則を捻じ曲げ、寿命

 を減らす可能性があったら必ずそれを根本から潰しにかかるような奴らよ。それに見た

 でしょうあれは人類の倫理が通用する種族じゃない、わたしたちにとってはどうやって

 も有害にしかならないのよ」

まどか「……そんなことないよ……有害だなんて……」

ほむら「あいつはあなたを殺そうと呪いをかけていたわ。あなたは殺そうとした相手を許

 すの?」

まどか「……当たり前じゃない……人を憎んじゃダメって言ったのに……」   

   まどかの確固たる意思に閉口するほむら。

まどか「ねぇ、キュウべぇに演技をしてたっていってたけど嘘に決まってるよね。心も体

 もあんなにボロボロになって……演技に見えなかったもん」

ほむら「本当よ、インキュベーターと美樹さやかたちを油断させるためには必要なことだ

 ったの、とことんまで精神的に疲弊した姿を見せないと油断しない。演技に見えなくて

 当然よ、わたしが試しに目的を話してもさやかは聞き流したくらいだし」

まどか「だったら、そのためにみんなをひどい目に合わせたの……杏子ちゃんを絶望させ

 て、マミさんを殺して、仁美ちゃんを自己嫌悪に陥らせて。みんなの絶望もあなたの考

 えた筋書き通りのことだったの」

ほむら「……そうよ、ここ数ヶ月の出来事はみんなわたしが仕込んだ舞台でわたしの考え

た筋書き通りに進んだこと、インキュベーターも美樹さやかたちもみんなわたしの読ん

 だ通りに動いてくれた、おかげでこうしてインキュベーターを殲滅し、あなたをわたし

 の支配下に置くことができた。あの子たちには感謝してもしきれないわ」

まどか「そんなことで感謝しないでよ!」

   ほむらを怒鳴りつけるまどか。

まどか「みんなを利用して、キュウべぇを殺して、それで正しいことをしたと思っている

 の? どうして方法を間違えちゃったの? あなただけは呪いに負けて欲しくなかっ

 たのに……憎しみで行動して欲しくなかったのに……わたしのしたことは一体何だっ

 たの……ここまで来てもあなたを救えなかっただなんて……」

ほむら「わたしは救われたわ、まどか。どんなに汚れてもあなたを救えたから。美樹さや

 かたちは私の力を使ってどんなことをしてでも償う、だからこれでよかったの」

まどか「……行き着くところまで来ちゃったんだね、ほむらちゃん……こんなの全然良く

 ないよ。みんな必死になって自分の状況をどうにかしようとあがいて、その気持ちを利

 用したんだよ、どんな目的でもしちゃいけないことをしちゃったのに……それ位酷いこ

 とをしたのに償えばいいっておかしいよ」

   気持ちの伝わらないことに憤り唇を噛むほむら。

まどか「ねぇ、昔の気持ちを思い出して……みんなと仲良くしてたあの優しいほむらちゃ

んに戻って……」

   まどかの一言に激高しまどかを締め付けるほむら。

ほむら「あなたにわからなくても無理はないわ、ええ、もうわたしは自分さえも見失っち

 ゃたんだから……」

まどか「……うう」

   体を圧迫させられて呻くまどか。

ほむら「あなたはどうして、ちゃんとわたしを見てくれないの? わたしは優しくなんか

 ない! 他の人間なんてなんとも思っていないの。全部あなたの為だけを思ってやった

 ことなの。そうよ! あなただけが大好きなのよ、鹿目まどか!」

   最後の思いをまどかにぶつけるほむら。

まどか「……えっ……」

   自分の愛情が途方もない狂気を生んでしまったことを実感するまどか。

ほむら「最初からあなただけしか見てないの……あなたが円環の理になって消えてしまっ

 たあとも佐倉杏子とも巴マミとも誰にも心を開けない、誰にも本当の自分を見せること

 はできない、この気持ちがあなたに分かる? 心の内を開け出せる大切な人がいなくなる気持ち  が……」

  自暴自棄に嗤うほむら。

ほむら「全てをさらけ出して、あなたの全てを手に入れてとても心地がいいの……怖い位

 に、これからどうしようもない罰が降りかかかるんじゃないかって。あなたの心を踏み

 にじって最後の何かが壊れたはずなのに、傷つける場所がないくらいに擦り切ったはず

 なのに清々しいの、嬉しくて、満ち足りていて、もう胸が壊れてしまいそうなの」

   うふふふと笑いながらまどかを締め付けるほむら。

まどか「……ほむらちゃん……でもこのカタチ間違ってるよ……」

   まどかの苦しそうなうめき声を聞いてぱっと手を開くほむら。

   悪魔の手のひらにうずくまり荒い息を吐くまどか。

悪魔「ふふふ、ほら、神様、ごきげんようわたしが悪魔よ、神聖なるあなたを蝕み、侵し、

 とうとう、あなたの全てを奪ってしまった悪魔。よく見なさいあなたが救いたかったモ

 ノはこんなに卑しくて醜いものなのよ」

   妖艶な笑みを浮かべて手のひらの上のまどかを指で撫で回す悪魔。

まどか「ひやっ……ああっ」

   悪魔の手のひらで無理やり踊らされるまどか。

悪魔「こんなわたしを救ってみせなさい、あなたに力があるのなら。わたしの愛に勝って

 みせなさい」

まどか「違うよっ! 自分を取り戻して! ほむらちゃん、あなたは自分を見失ってるの!」

   笑いながら一筋の涙を流す悪魔、まどかを乗せた手のひらを高くに上げる。

まどか「ほむらちゃん! 何をする気?」

悪魔「この世界を一から造り変え、今度こそあなたと永遠の時を過ごすの。これはそのた

 めの最後の儀式よ」

まどか「だめ! そんなことをしたら」

悪魔「まどか、今度こそはあなたに素晴らしい世界を捧げるわ、あなたを傷つけない。憎

 しみも呪いもないそんな素晴らしい世界を……」

   手のひらを斜めに傾けるほむら。

まどか「いやぁ! やめてほむらちゃん」

悪魔「あなたが幸せになることだけを考えるわ……わたしはあなたの盾になるから」

   てのひらを傾けるほむら。傾斜が急になり徐々にずり落ちていくまどか。

まどか「だめえええええええええええええ!」

   絶叫しながら真っ逆さまにほむらの口に落ちていくまどか。

   ほむらまどかを飲み込み、円環の理の最後の力を掌握する。キュゥべえから奪ったエネルギー   と円環の理の力とほむらがためた莫大な呪いの力を使い、宇宙そのものの改変が始める。

  ほむらを中心に黒い邪悪な炎が宇宙を燃やし始める。

  一瞬で太陽を破壊し太陽系の惑星を焼き尽くしかつてあった地球を再現する。

  ×   ×   ×

   星ひとつない宇宙の暗黒空間。裸で漂うほむらと気を失ったまどか。

   ほむら、手にしていたまどかの落書きノートを透明な水晶玉に変えると、それに自らの魂とま   どかの魂を閉じ込める。

 

 

〇 朝 通学路

   生徒たちが通学する中をぼんやりと立っているさやかとなぎさ。

さやか「一体……何が」

   舞台女優の魔女に吹き飛ばされ、一瞬にして炎で焼かれたために何が起こったのか分からないさやか。

なぎさ「……」

   得体の知れない不気味さを感じ、さやかの腰にしがみつくなぎさ。

?「さやか、さやか!」

   声がした足元を見るさやか。馬のような生物に乗った謎の怪物がいることに気づく、怪物の声   は紛れもない杏子の声。

さやか「あんた……もしかして杏子なの……」

   姿かたちの変貌した杏子を驚きの目で見るさやか。

キョーコ「そうだよ、一体どうなってるんだ! こりゃぁ」

   自分の姿を見回して焦る杏子。

?「あいつよ! あいつのやったことに決まってるわ」

   なぎさの足元で憤る怪物、紛れもなく巴マミの声。

なぎさ「マミ!」

   ジャンプしてなぎさの頭に乗っかるマミ。

   さやかたちの周囲を残し生徒たちの動きが突然止まる(カナメマドカの時間停止魔術)。

   停止した時間の中で歩み寄ってくる一人の人物。ほかでもない鹿目まどかの姿。

なぎさ「えっ……まどか……」

   姿を認めて絶句するなぎさ。

   さやかたちの前で立ち止まるまどか。

マドカ「ごきげんよう、魔法少女の皆さん」

   姿は鹿目まどかだが声色は暁美ほむらのもの。

さやか「……まどかじゃないな! お前、一体何をしたんだ」

   警戒してまどかならざるものに問いかけるさやか。

マドカ「わからないの? 今、あなたたちのいるこの世界を完全なものに作り替えたのよ、

 前の世界は私の力不足で完全な再現にいたらず、急場しのぎでこしらえた改竄止まりの

 不完全な世界だった。わたしは世界に害を及ぼす存在だったインキュベーターを殲滅し、

 奴らから奪ったエネルギーと円環の理の力を使って法則のねじ曲がった宇宙を再編し

 たの」

さやか「だったら、なんでお前はまどかの姿をしてるんだよ」

マドカ「わたしがなぜまどかであるってこと? それは暁美ほむらという個は消滅し、円

 環の理たる鹿目まどかと融合し、新たなる姿になった。今あなたたちの新たなるカナメ

 マドカは円環の理を解体し、舞い戻りこの世界の唯一神として、魔法少女とこの世界の

 秩序を守ることに決めたの、それがいまあなたたちの目の前にいるカナメマドカの存在

 理由」

さやか「ふざけるな、それは本当のまどかの意志じゃないだろ」

マドカ「これは紛れもなくわたしの意志なのよ、美樹さやか。呪いも憎しみもなくみんな

 が傷つかず幸せに生きれる世界を作った。この世界はまどかの意思そのものなのよ」

マミ「そんなの、わたしたちを騙してこんな姿にしてよくそうぬけぬけと言えるわね」

マドカ「わたしのしたことを恨むなら恨めばいいわ、あなたたちを騙し、操ったことを否

 定しないわ。だけど、それは今に始まったことではないから」

キョーコ「やっぱり前の世界の出来事はみんなお前の計画通りだったっててわけか」

   顔に当たる炎の部分を真っ青にして怒る杏子。

マドカ「そうよ、わたしはあなたたちの行動と思考パターンそれとキュウべぇの戦略パタ

 ーンを熟考したうえで、暁美ほむらが円環の理と融合するまでのシナリオを構築したの、

 あなたと美樹さやかが戸籍上の姉妹だったのもキュウべぇの考察した通り」

キョーコ「やっぱりモモを富野桃子としてあたしの前に現れさせたのも、作戦の内なんだ

 な、それにあんな、最後を迎えさせたのも……」

マドカ「……そうよ、最後の時間軸の舞台もその他人間たちの登場人物もみんなわたしが

 設定したこと」

   眉ひとつ動かさずに頷くマドカ。

キョーコ「……てめえは……人間の血が通っているのかよ」

   怒りで震える使い魔キョーコ、戦闘体系に移行し巨大化する。

さやか「違う、お前は最初から演技なんかしていない」

マドカ「負け惜しみなんてみっともないわよ」

さやか「お前は呪いを助けにきたまどかをまた最後という最後に裏切ったんだ。自分の為

 の世界を守るために、卑怯の限りを尽くして、それも結局、キュウべぇに足元を掬われ

 て、破綻して、それでお前を救いに来たまどかを土壇場でまどかの力を奪った」

マドカ「証拠もないくせに」

さやか「お前に世界改変のコントロールなんてできるもんか。あたしの力が完全に奪われ、

 全員の過去が捏造されていたってことは、何度かあんたは時間遡行をして、世界を改変

 している、だけどそれはあんたにとって予想外のおまけにすぎないから操作できるもの

 ではないはず、それにまず、人格を生成するには不都合な人間が一人いる。あんたがこ

 っちに転校してくる前に両親とともになくなった佐倉モモ……あんたに杏子の妹を生

 成出来るはずない、あんたがモモに接触したことがないから、杏子の記憶の断片から手

 に入れた情報から真似た偽物しかできない、そんなまがい物に杏子が関心を示すはずが

 ない。だけど杏子は富野桃子を実の妹のように可愛がり、本物の妹のように接した。杏

 子の富野桃子の存在が杏子の深層心理に影響したということは確かに杏子の妹に本物

 に近い人物だった。そして、あたしと杏子の関係、あんたは監視をしやすくするためと

 か説明したけど、実際はただの人間のあたしと杏子……あんたの力でまとめて殺そうと

 思えばできるはずだから、こんな設定は重要じゃない」

マドカ「こじつけるにも程があるわ、わたしは悪魔よ、人の記憶を奪って、一人の人間を

 作り出すことぐらい……」

さやか「前の時間軸はお前の宇宙改変の副作用で法則の狂った宇宙が生み出したものだったんだ。本 当は起きたことも全てあんたの予想外のことだった。あたしと杏子と桃子そして、マミさんとキュ ウべぇとなぎさの対応にあんたは振り回されっぱなしだった。あたしはあんたが演技なんてしてい るようには見えなかった、あの疲弊具合、あたしたちに対する人道的な態度と対応、円環の理にい たときにも見れなかった、凄まじい呪いと怨念のこもったソウルジェム。演技できる余裕のある人 間がわざと貯められるものじゃない」

   うっすらと笑みを浮かべるカナメマドカ。

さやか「暁美ほむら、お前は、来るところまで来たんだよ」

マドカ「美樹さやか、あなたは少し考えすぎるところがあるわね、自分が負けたことを信じたくない がために、自分が納得できるようなストーリーを考えたがる、敗北者特有の負け惜しみってやつ、 あなたの推理なんてそんなものにしかなってないわ。それにね……」

   声色が突然まどかの声に変化して、

マドカ「暁美ほむらなんて人間存在しないよ。暁美ほむらはね、膨大な呪いを貯めて、自らの命を円 環の理に吸収させて、この世界の創造するための人柱になったんだよ。暁美ほむらは永遠にカナメ マドカの人格の一部となり、この世界を管理し魔法少女たちを救済する機関になったんだよ」

さやか「まどかの声で話すのはやめろ」

   ほむらがまどかの声色を使って語り始めたことに嫌悪感を抱くさやか。

マドカ「ねぇ、何を怒っているの、わたしはあなたの親友だったじゃない。さやかちゃんこれからも ずっとそうでいようよ、さやかちゃんにはずいぶんと苦労をかけたし。お望みだったらこの全世界 の魔法少女と使い魔の支配権をあなたにあずけてあげてもいいよ。親友のよしみでね」

   怪しげな笑みを浮かべてさやかに歩み寄るまどか。

さやか「お前は狂ってる! お前はもう鹿目まどかでも暁美ほむらでもないただの悪魔だ! わたし たちの敵だ!」

   ソウルジェムをかざし魔法少女に変身しようとするさやか。突然背後のキョーコが

   さやかとなぎさを鷲掴みにする。

マミ「ひやっ!」

   なぎさの頭から転がり落ちるマミ。

地べたに音を立てて落ちるさやかのソウルジェム。

さやか「ちょっと……杏子!」

   不意打ちに驚いて振り返るさやか。キョーコ、マドカに意識を操られ何の反応もしない。

   ニヤリと笑うマドカ。

マドカ「残念だね、さやかちゃん。あなたなら理解してくれると思ってたのに」

なぎさ「うわぁ! 離せなのです」

マミ「暁美さんあなた何をするつもりなの?」

マドカ「この世界を脅かす叛逆の芽は摘み取らないといけないの、それが例えわたしの一番の親友で あってもね」

   地面に落ちた美樹さやかのソウルジェムを拾い上げるマドカ。

さやか「やめろおおおおおおおお!」

   絶叫するさやかの顔に手をかざすマドカ。ブルブルと震えるマドカの手。

マドカ「ほむらちゃん! こんなことはやめてよ!」

   絶叫するマドカ。同時に目が焦点を失い、頭をたらすさやかとなぎさ。

   さやかのソウルジェムになぎさとさやかの記憶を封じ込める。

マドカ「ほら、わかったでしょう。わたしはあなたたちの意識を奪って操ることなんて簡単なことな の」

   無表情のまま淡々とした口調で言うマドカ。だが両目からは目から涙が流れる。

キョーコ「うわっ!」

   意識を取り戻し思わず手を開くキョーコ。

   意識を失いながらも直立しているさやかとなぎさ。

マドカ「おかしな企みを企てて、わたしの中のもう一つの人格を決して怒らせないでね。大切な親友 と最悪な別れ方をしたくないでしょう」

   亡霊のように直立するさやかとなぎさを見下ろすマドカ。

キョーコ「てめぇ……さやかに何をしやがった」

マドカ「美樹さやかと百江なぎさの記憶をさやかのソウルジェムに封じ込め、二人には偽の記憶をダ ウンロードしておいたの」

キョーコ「なんだと!」

マドカ「本当の記憶を手に入れるには美樹さやかのソウルジェムを砕かなければ戻ってこないわ、  もっともそうしても百江なぎさの記憶は元に戻り、美樹さやか自身は死ぬことになるけどね」

マミ「本当の自分と魂の在り処を一体にするなんて……本当に酷いことをするのね……あなたは」

マドカ「この世界のためだからね。最も円環の理に近かったこの二人を野放しにできないの」

キョーコ「悪魔め……モモを殺し、さやかの記憶を奪い……これがみんな幸せになれる世界なものか! お前は他人を貶めているって自覚はないのか?」    

マドカ「あなたの妹に関しては安心しなさい、富野桃子は佐倉モモとして転生し両親と一緒に郊外の 家に住んでいるわ。あなたたちを利用した責任としてあなたたちの願いを叶えてある。巴マミ、あ なたの過去の事故も歴史を改変して無かったことにしたわ」

マミ「……って言うことはわたしのお父さんとお母さんは……」

   表情は変わらないがマドカの言葉の意味を噛み締めている様子の使い魔マミ。

キョーコ「そんなこと問題じゃねぇんだよ。あたしはお前と取引をした覚えはないぞ! そ

 れにこの姿! こんな姿で親元に帰れるわけねぇだろ!」

マドカ「その姿ね……あなたたち円環の理に導かれた魔法少女たちには悪いけど、この世

 界に沸いた悪の始末をするにはまだ魔法少女の存在が必要なの。魔法少女を一回リタイ

 アしたあなたたちには魔法少女とわたしを繋ぐアシストとして協力してもらうとこに

 したの。あなたたちのやるべき作業は魔法少女の勧誘、育成、戦闘のサポート、警邏、

 テレパシーの送受信……そしてこの世に沸いた呪いの始末……」

マミ「それって、円環の理に導かれた魂をキュウべぇのかわりにしたっていうことじゃない」

マドカ「そういうことになるわね、絶滅したあいつらの代わりの役目はあなたたちが補ってもらうこ とにしたの、もちろん労働の対価はあなたたちに与えるわ、一定のノルマを達成したら人間か魔法 少女としてまたこの世に転生させてあげる。旧世代の魔法少女を人間に返し、新世代との交代を図 る、これで、地球の魔法少女の増減は解決できるわ。これがわたしの築いた新たなる理。誰も悲し みを生むこともなく、消滅をすることもなく魔法少女としての役目を全うして現世に帰ってこれる のよ、これ以上のシステムがあって? これはあなたたち魔法少女の望んだことであって、わたし が望んだことなの」

キョーコ「……」

   自分の過去の言動を思い出しぐうの値もでない杏子。

マドカ「この世界で自らの力で幸せになれるように努力することね、幸せを手にするのにも努力が必 要なのよ」

   踵を返そうとするマドカ、しかし右足が動かない。

マドカ「早く行きましょう、まどか、先生が待っているわ」

   立ちすくむ右足に向かっていうほむら。

   踵を返しあるき去ろうとするマドカ。

マミ「……だけど、あなたに騙されたってことだけは忘れない、この世界がどんなに心地がよくて都 合がいいものであろうと、この世界の創造主がどんなに残酷な人間で恐ろしい事をしたのか……ど れだけの人の心をもて遊んだのか……どんなに幸福になっても、ほかのみんながわすれても絶対に わたしだけは忘れないから……絶対に忘れないから!」

   マドカの背中に誓いを立てるマミ。

マドカ「二人共早く人間に戻れるように頑張ることね」

   振り返りもせずに歩き始めるマドカ。

   そして再び動き出す時間。通学路の賑やかさが戻る。通学路からはカナメマドカの姿は消えて   いる

   意識を取り戻すと何事もなく歩いていくなぎさ。

なぎさ「ねぇ、マミ。あのお姉さんも使い魔連れてたよ、あの人も魔法少女なのかなぁ」

   キョーコの姿を発見してマミに囁くなぎさ。

さやか「あれ、なんであたしこんなところで突っ立ってなにしてんだろう。寝ぼけてたのかな」

   意識を取り戻すさやか。

キョーコ「さやか!」

   マスコットモードに変体するキョーコ。

さやか「杏子、なんだか頭がボーっとするよ。あたしどうやってここまで来たんだっけ」

   自分の状況に少し不審そうな顔をするさやか。

キョーコ「あーえっとそれは」

   言葉を濁そうとする杏子。後ろからさやかにぶつかってくる仁美。

仁美「あら、わたしとしたことがつまらないものにぶつかりましたわ」

   肩をパンパンと払うとさやかに吐き捨てる仁美。

さやか「あんたなんなのよ、いつもあたしに突っかかってきて。喧嘩でも売ってるの」

   仁美を睨みつけるさやか。さやかを鼻で笑うと歩き去る仁美

   性格の変貌した仁美を見て、虚しさを感じるキョーコ。

恭介「おーい、さやか。待たせちゃったね」

   後方から走ってくる恭介。

キョーコ「えっ、上条?」

   後方を振り返るキョーコ。

さやか「ちょっとぉ、恭介おっそーい。あたし激怒プンプンなんだけど」

恭介「ごめん、ごめん。バイオリンの稽古で遅れちゃって」

さやか「もーたまには、バイオリンよりもわたしを優先してよ。それともっ! バイオリンの方が可 愛いのかよっ?」

   カバンで恭介を叩ボコボコとくさやか。

恭介「うわ、ちょ……痛いよ、やめてよさやか」

中沢「朝からお熱いようで上条君」

男子生徒A「らぶらぶー」

上条「からかわないでくれよ、みんな」

   さやかと恭介のバカップルぶりをからかっていく同級生たち。困り顔の恭介。あきらかに捏造された人間関係。悪魔からさやかへの報酬。

   真実を知る身としてすっかりこの世界に馴染んでいるさやかに哀れみの目線を送る杏子。

モモ「ミチルちゃーん待ったー」

   聞き覚えのある声に思わず反応するキョーコ。

女子児童A「モモちゃーん! おはよーいこうかー」

   さやかと恭介の脇をすり抜け走っていく佐倉モモ。

   元気に走り去っていくモモを無言で見送るキョーコ。

 

 

〇 朝 教室

   クラスメイト全員揃って朝のホームルーム。席についているさやか、仁美。机にか

   けてある手提げ袋の中に身を隠しているキョーコ。

和子「皆さん、先生とトシくんが同棲してもう三ヶ月、そろそろボロが出て彼が出て行く頃だとタカ をくくってません?」

   嬉しさを隠せずニマニマ笑いの和子先生。

さやか「まさか、だめだった?」

   一人ボソリと呟くさやか。

和子「さやかさん、ざーんねん。わたしたちの愛の熱は冷めるどころか高まるばかり。もうわたした ちが離れることなんてもう一生ないのです。この愛のボルテージの高まり高まった先のゴールイン といえば……ハイ、中沢くん」

   さやかの独り言を聞き逃さない和子。教鞭で中沢を指す。   

中沢「え、はい……」

   突然指名されまごつく中沢。

和子「はい、ざんねーん、時間切れです。それはもちろんハッピーウエディングに決まってるじゃないの」

中沢「……ああ、はい、それはよかったですね」

   和子のハイテンションについていけない中沢君。

   そのやりとりをつまらなそうに鼻で笑う仁美。

和子「女子のみなさーん。赤い糸で結ばれた運命の人は必ずどこかにいますよ、その人を必ず見つけ て幸せになりましょうね!」

   自慢話で話を締める和子先生。

さやか「へいへい、油断するなよーせんせー」

   半ば呆れ顔で呟くさやか。

和子「あっ、そういえば。今日はわたしたちのクラスに新しい仲間が増えます。鹿目さんいらっ しゃーい」

   カバンの口から身を乗り出す杏子。

さやかM『そっちが先でしょうがー』

   先生の天然っぷりを笑うさやか。

   オズオズと教室に入ってくるカナメマドカ。

   小さな可愛らしい少女に思わず歓声をあげるクラスメイトたち。

さやかM『お、なんか小さくて可愛い子じゃん』

マドカ「あの……わたし……鹿目まどかといいます、両親の都合で五歳の時から東京にいたんですけ  ど、ついこの間見滝原に帰ってきました……よろしくお願いします」

和子「はい、ありがとう。みなさんクラスの一員として仲良くしましょうね」

   マドカ、さやかに怪しげな視線を送る。

   目が合いまどかの目線を訝しるさやか。

   自分のおさげ髪をいじる振りをしてさやかに指輪を見せるまどか。

さやかM『えーっ、まさかあの子!』 

   自分から接触を図る気だなと思い警戒する杏子。

   まどかに拍手をするクラスメイトたち。腕組みをし、目を細めてマドカを睨む仁美。

 

 

〇 朝 教室

   ホームルーム後、クラスメイトたちに囲まれるまどか。

女子生徒A「ねぇ、前の高校では部活してたの?」

女子生徒B「鹿目さん、小さくて可愛いね。身長何センチあるの?」

マドカ「あう……えっと」

   矢継ぎ浴びせられる質問に戸惑うまどか。

さやか「ちょっと、みんなー鹿目さん借りていっていいー?」

   クラスメイトたちの輪に入っていくさやか。

女子生徒A「どうかしたの?」

さやか「いや、ちょっと早乙女先生に校内のガイドを頼まれちゃって……鹿目さん時間いいかな」

まどか「あっ……さやかちゃ……あっ……いいよ」

女子生徒B「さやかー鹿目さんを独り占めしないでよ」

さやか「悪い、悪いこの棟だけだから」

   教室から出ていくまどかとさやか。さやかに従って歩く杏子。

 

 

〇 廊下

   さやかの後を、二歩分後を歩くまどか。背が低く嫌でも目立ち周りからの視線を浴びるまど    か。

   馬に乗った状態でさやかの後をついて歩く杏子。

まどか「……」

   さやかに対し後ろめたさを感じてうまく話を切り出せないまどか。

さやか「鹿目さん、よろしくあたしは美樹さやか」

まどか「あの……よろしく……さや……美樹さん」

さやか「さやかって読んでよ、鹿目さん。わたしもまどかって呼ぶからさ」

まどか「あ……うん……さやかちゃん」

さやか「あと、この足元にいる子はわたしの友達の佐倉杏子。今は使い魔になってしまっ

たけど昔は一緒に組んで戦ってたんだ」

まどか「えっ!」

さやか「鹿目さんも魔法少女なんでしょう、隠さなくてもいいんだよ」

   さやか、魔法少女として密談をするためにまどかを連れ出した。

まどか「あ、わかってたんだ……よろしくね、杏子ちゃん」

キョーコ「ああ、よろしくまどか」

さやか「ちょっとー杏子いきなり馴れ馴れしいんじゃない?」

キョーコ「ああ、そうだな」

   今初めて会う他人だったと思うキョーコ。

さやか「こいつ、この前の戦闘で無茶をして、魔力を使い切っちゃってさ。この姿になっ

 たってわけ」

キョーコ「そういうこった、まったく使い勝手の悪い体だぜ」

   なれない手つきで気で馬の手綱を引くキョーコ。

さやか「早く、人間に戻れるように頑張らなきゃね」

キョーコ「早く人間になりたーい」

   古いアニメの真似をしておちゃらける杏子。      

キョーコT『お前、今はまどかなんだな』

   笑うさやかに気付かれないようにテレパシーを送る杏子。

   キョーコを見下ろし頷くまどか。

さやか「ねぇ、まどかあたしたちと組んで邪鬼退治しない? ここいら、邪鬼の数が多く

 て人手がほしいところだったんだ。大きな街だから一人で狩るのが大変なんですわ、一

 人よりも二人の方がやりやすいからまどかにとっても悪い話じゃないと思うんだけど」

   この世界軸では魔獣が消滅し邪鬼と呼ばれる新たなる敵が存在している。

まどか「うん……さやかちゃんの手伝いができるならわたしも嬉しいなって」

さやか「決まりだね、今日からあたしたちコンビだよ。二人でこの見滝原の平和をバリバリ守ろう  ぜ! よろしくね、まどか」

   立ち止まり振り向くさやか。まどかに手を差し出す。

まどか「よろしく……」

   手を握り合うさやかとまどか。

まどか「ねぇ……さやかちゃん」

   突然、声のトーンが少し低くなるまどか(ほむらの人格に入れ替わる)。

まどか「あなたはこの世界が大切? この世界の平和と秩序の為に戦っている?」

   まどかの唐突の質問にキョトンとなるさやか。

   杏子、意識を操られ戦闘モードになりさやかの背後に控えている。

さやか「……当たり前だよ、わたしはこの世界とみんなを守る為に魔法少女になったんだ

 よ。あたしはこの世界が大好きだし、周りにはみんな守るべき人が沢山いる。だから怪

 我をしても、怖い目にあっても戦う価値があると思ってるんだよ」

   心強い笑みを浮かべてまどかの質問にアンサーをだすさやか。

まどか「美樹さんがいい人で安心したわ」

   笑顔を浮かべるまどか。

   マドカの洗脳が解けマスコットモードになるキョーコ。

さやか「まどかはなかなか真に迫ることを聞いてきますなーアハハ」

   笑いながら再び歩き出すさやか。

   マドカの脅しに恐れをなして震え出すキョーコ。

 

 

〇 夜 鹿目家

   靴を脱ぎ家にあがるまどか。リビングや玄関には、まだ開封していないダンボールが置かれて   いる。

まどか「ただいまー」

知久「おかえりなさい」

タツヤ「おかえりー」

詢子「おかえり、まどか」

   まどかを迎える知久、詢子、タツヤ。

   少し居心地の悪さを感じながらも家族全員の顔を見るまどか。

詢子「どうしたんだ? 早く夕飯食べて荷物を整理しないと」

マドカ「うん……なんでもないよ、ちょっとボーッとしただけだから」

   いそいそと歩き出すまどか。

   ×   ×   ×

   中華フルコースの並んだ食卓を囲む鹿目一家。

   ビールを飲みギョーザを食べながらテレビを見る知久。

詢子「タッくん、あーんして」

タツヤ「あー」

タツヤの食事の補助と自分の食事を器用にこなす詢子。

   マドカ、達也が自分の顔を不思議そうにチラチラ見ていることに気づく。

マドカ「たっくん、どうかしたの?」

   タツヤに笑いかけるまどか。

   タツヤ、少し怯えた顔をするとマドカから目を逸らす。明らかに姉の違和感に気付いている様   子。

   ×   ×   ×

   自分の部屋に入るまどか、風呂から上がりパジャマ姿。

   ダンボールが積まれた自分の部屋をぼんやりと見渡すとベッドに横たわり

   ぼんやりと天井を見つめるまどか。当たり前で平凡な幸福を確かに感じている。

                           完




これにてお死舞です、読んでくれた皆様ありがとうございました。
続編を謳いながらも肝心なネタは本家から持ってきてもはやリメイクみたいになってしまいましたが、自分は反逆の物語の続きを書ききったつもりです。


まどマギの本家も地味でもいいので納得できる終わり方(できればまどほむ和解)をしてくれればいいと思っています。
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