Another days -case of Emma-   作:瑠和

6 / 10
昨日今日とAqoursのライブですね。実は5thのみいったことがあります。劇場版で感動してセイントスノーのbelieveagainの部分のコールやりたかっただけなんですが。サンシャインだと聖良姉さまが一番の押しです。


第六話 想いを賭けて、願いを託して

「えぇぇぇぇぇ!じゃあ、あの人は全くの別人で、先輩が本物の高咲侑先輩なんですかぁぁぁ!?」

 

同好会復活の少し前、瑠和に言われた場所に来たかすみの前に現れたのは一人の少女。名前を聞くと瑠和が偽った名前の高咲侑であることが判明した。

 

だがかすみにとっての侑は瑠和だったので詳しく聞くと侑が本物の高咲侑であることが判明した。

 

「じゃあ、かすみんの前に現れた侑先輩はいったい誰なんでしょう……?」

 

「ねぇ、その人ってどんな人だったの?」

 

「え?えーと背はかすみんより高くて、ピンク色でツンツンしてる感じのセミロングの髪で……目の色がちょっと赤みがかかったオレンジって感じでした」

 

「それって!」

 

そこまで言われれば当てはまる人物は一人しかいない。そもそも同好会復活の手助けをしている時点でなんとなく察しはついていたのである意味予想通りではあった。

 

「うん、わかった。とりあえず何があったか教えて?きっとかすみちゃんが会った「高咲侑」は私に託すつもりでかすみちゃんを来させたんだと思うから」

 

「はい……」

 

大体のことを把握した侑の隣でエマは瑠和のことを心配していた。

 

「瑠和君………どうして」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は新たな形でスタートすることができたのだが、同好会の一部にはまだどこか暗い影があった。理由は瑠和のことだ。

 

「そっか、じゃあ瑠和君があんなこと言い出したのは、エマさんが理由だったんですね」

 

「うん……」

 

たまたま歩夢と話し合っていたところに通りかかったエマ。二人と出会ったことで侑も同好会復活のための元メンバー集めに苦労しなかった。しかし、エマも侑もかすみも、瑠和のことが気がかりで仕方なかった。

 

「……暗い、空気になっちゃったね。私、何か飲み物買ってくるよ」

 

エマはそう言っていったん部室を離れる。みんなのためといったが半分は嘘だ。少しだけ一人で考える時間が欲しかったのだ。部室を出て自販機まで歩いていると、中庭に見知った相手がいるのが分かった。

 

「璃奈ちゃん……」

 

「………エマさん」

 

璃奈もエマに気づいた。

 

二人は少し座って話せる場所に移動した。

 

「ごめんね、どうにかするって言ってだいぶ時間が経っちゃった」

 

「………気にしないで。この間、少しだけ、会えたから……」

 

「そうなの?どうだった?」

 

「すぐ逃げられちゃったけど………でも、会えたから……」

 

璃奈は瑠和のことは何とも思っていないことは以前聞いていた。そんな璃奈は、瑠和に会えただけで満足だったのだ。

 

「私ね、スクールアイドルをやってるんだ。まだ、始めたばかりだけど」

 

「スクール………アイドル…?」

 

聞きなれない単語を聞き、璃奈は疑問符を浮かべた。

 

「昔、日本のアイドルの動画を見たことがあって、心がポカポカってなったんだ。だから………瑠和君の心をポカポカにてあげたくて」

 

「エマさん………」

 

「だから、ね。もしよかったら、璃奈ちゃんも一緒にやってみない?」

 

エマの予想外の提案に璃奈は驚きを隠せなかった。だが、不思議と心はその提案を否定していない。むしろ受け入れようとしている。

 

「…………この間の、屋上でのライブ、私も見た」

 

「屋上の……せつ菜ちゃんの?」

 

「あのライブを見て、私も、心が、ポカポカ………高揚した。私も、あんなふうに、みんなと……お兄ちゃんと心をつなげたい。変わりたい!」

 

今までにないような強い決意の目。それを見たエマは璃奈の手を両手でつかんだ。

 

「………うん!やろう!璃奈ちゃん!!そうと決まったらさっそく部室に行こう!」

 

「え」

 

案外頑固一徹というか、決めたら一直線な感じのあるエマは璃奈の手を取ってそのままスクールアイドル同好会の部室まで走った。

 

「わわわわ」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「………」

 

部屋に差し込む僅かな日の光に当たりながら瑠和はベッドで横になっていた。近くの机の上には作成した退学届が置かれていた。同好会が復活したことでもう瑠和には未練はなくなった。

 

(大事な人の………俺を心配してくれた人たちの役には立てた。潮時だろう)

 

あとはこれをいつ出しにいくかだけだがまぁ適当でいいだろうと瑠和は思っていた。

 

この先の自分の人生に何が待っているかはわからない。しかし、もう家族に向き合おうという気持ちは彼の中に存在していなかった。

 

そんなことを思いながらふと、いま同好会はどうなっているのだろうと思い、ホームページを開いてみる。定期的に更新が行われているらしい。

 

お知らせ一覧に「新メンバーの自己紹介動画を更新しましたよぉ~!」と書かれているのを発見した。しかも最近だ。誰か新しく入ったのだろうかと書いてあるURLから動画サイトに飛んだ。

 

そして表示されたのは何やら電子空間。その端からかわいらしい猫のキャラクターが飛び出してきた。

 

『にゃーん!初めまして、天王寺璃奈だよ』

 

「………………………………は?」

 

少しばかり思考が止まった。

 

あの、人見知りで、ろくに表情も表に出せなくて、体格も小さく、外遊びもしてこなかったかような妹が、スクールアイドル?

 

悪く言おうと思えばいくらでも出てくる。だが正直そんなことはどうでもよかった。何をしようと勝手にしてくれればいいと思っていたが、なぜ、スクールアイドルなのか。それだけが気がかりだった。

 

いや、いや、重要なのはそこじゃない。重要なのは、そんなあの子に必要なものだ。改めてメンバーの顔を思い出す。

 

かわいいに関しては知識はありそうだが体育会系のせつ菜のしごきに耐えられなかったかすみ、妖艶なイメージではあるもののどこか甘そうな彼方、スイス生まれで歌唱力はよさそうなエマ、演劇部も兼部しているがどこかお嬢様な雰囲気なしずく。まんま根性+体育会系なイメージのせつ菜。

 

「……………………………………」

 

だめだ、思い浮かばない。璃奈をサポートして一人前のスクールアイドルにできそうな人材が。

 

いや、あくまで全部イメージだから本当にそうなのかは置いておくにしても不安は残る。だれかに頼ろうにも瑠和には人脈がない。だが、そんな瑠和の頭に一人の少女の笑顔が浮かんだ。

 

「いた」

 

瑠和は急いで制服に着替えると学校まで走った。

 

 

 

―虹ヶ咲学園―

 

 

 

瑠和は大急ぎで学校にたどり着くとすぐに目的の人物を探し始める。正直璃奈に出くわす可能性が高かったのであまり行きたくなかったのだがもう仕方ない。

 

必死に探し回っていると、何とか璃奈に出くわす前に目的の人物に出会えた。

 

「宮下!」

 

「お、るなりん。どしたん?」

 

ここは情報処理学科の教室前。同じ情報処理学科の璃奈が来る可能性が高く、瑠和は愛の手をつかんですぐに教室から離れた。

 

「ちょちょちょ何々!?」

 

「いいからきてくれ」

 

一方、こちらは情報処理学科の隣のエリアにあるライフデザイン学科付近の廊下。そこには一人の女子生徒がうろうろとしていた。

 

「自販機はどっちだったかしら………」

 

ただの迷子の朝香果林だった。果林が自販機を探して彷徨っていると前方からかなり早歩きで歩いてくる人物とそれに引っ張られてる女子生徒を目にした。

 

「あれって確か天王寺………」

 

「来てくれ」

 

「え?」

 

すれ違いざま、果林も手をつかまれ、そのまま引っ張られていった。

 

「な、なんなのよぉ~!」

 

瑠和はしばらく二人を引っ張りまわし、どこへ来るのかと思えば多目的トイレの前で止まった。

 

「トイレ……?」

 

「……」

 

瑠和はトイレのドアを開け、二人を無理やり押し込む。そして瑠和も入り込み、カギを閉めた。

 

「ちょっと!こんなところに連れ込んで何するつも…………り……?」

 

急に人気のない遮蔽空間に閉じ込められ、いったい何をされるのかと思った果林が振り向きざまに文句を言おうとしたがすぐにそれはためらわれた。

 

理由は簡単でトイレに入った瑠和はすぐ様腰を90度に曲げ、頭を下げたからだ。

 

「……まずは、こんなところに連れ込んですまない。周りにあまり聞かれたい話じゃないし、顔見知りに会いたくなかった」

 

「………」

 

「………」

 

愛と果林は顔を見合わせる。お互い初対面だったが瑠和と面識がある、いわゆる友達の友達っていう感じではあったが何かしら目的があって連れ込まれたのだろうと察する。

 

「で?この子と私、連れてきたのはなんで?」

 

「とりあえずこれを見てくれ」

 

瑠和は璃奈の自己紹介動画を見せる。

 

『にゃーん!初めまして!天王寺璃奈だよ!』

 

「え?天王寺って………」

 

「俺の妹だ」

 

「妹さん……?ああ…」

 

少し前に果林が瑠和と話したときに、妹という単語が一瞬上がったことを思い出す。

 

「俺の妹は、表情が表に出ない。運動だって多分苦手だ。コミュニケーションだって………だから、宮下。お前のその明るさと壁を感じさせない性格で、妹のそばにいてやってほしい。果林さん。あんたモデルなんだろ?だったら、体つくりとか、身体の見せ方とか、いろいろ知ってるだろ!?同好会の助っ人としてでいい!璃奈のサポートをしてやってくれないか!?あんたと仲良くしてるエマさんだっているんだ!同好会全体の役に立てるなら、あんただって悪い気はしないだろ!?頼む!!」

 

「るなりん……」

 

どうしたものかと果林が考えていると瑠和の持ってきたカバンに目が行く。チャックがたまたま開いていたカバンの中から覗かれた紙に目が行った。

 

「………で?それを仮に引き受けたとして、あなたは私たちに何かできるのかしら?」

 

「え?」

 

「確かに私としてもエマの助けになれるなら悪い気はしないわ。だけど、それってあくまであなたの勝手な考えよね?私たちには大したメリットもない。あなたは代わりに何を差し出せるのかしら?」

 

「ちょ、ちょっと……」

 

「あなたも、なんか簡単に受けようとしていたけど、それでいいの?」

 

愛はそもそもの性格と一応はんぺんの面倒を見てもらっていた手前もあり、あまり断ろうという気にはなっていなかった。

 

「…………俺から二人にできることはなにもない」

 

「……」

 

「だけど………だったら、俺にできることはなんだって言ってくれ!なんでもする!!だから頼む!!」

 

瑠和は必死に頭を下げる。果林はため息をつく。

 

「まぁ、引き受けてあげてもいいわ。だけど、そうね、そのあなたの妹、璃奈ちゃんの初ライブが成功するまで。成功報酬は必ずもらうわ。今何かしてほしいわけじゃないけど、必ず何かしてもらう。それまで逃げないって約束してくれる?

 

「わかった。ありがとう」

 

瑠和は再び深々と頭を下げた。

 

「さ、行くわよ。次の授業始まっちゃうわ」

 

「うん……」

 

頭を下げたままの瑠和を置いて二人は出ていった。

 

トイレから出て各々の教室に戻る途中、愛は果林に話しかけてみた。

 

「ねぇ、るなりんとは……」

 

「まぁ、顔見知り程度よ。私も寮暮らしだからね………あなたこそ、彼とは?」

 

「うん、私もそこまで仲いいわけじゃないけど、猫のお世話頼んでてさ………」

 

「そう………さっき。あの子のカバンになにか紙が入っててね。見間違いじゃなきゃ、あれ退学届けだったわ」

 

「え!?」

 

「少なくとも、あの子がいなくなればエマが悲しむ。だから打てる手は全部打つ。あなたはどうするの?」

 

「愛さんは……るなりんが困ってるなら、るなりんのこと、助けたい!」

 

「そ、まぁ、頑張りなさい」

 

二人はそこで別れた去っていく果林を見送り、愛は部室棟の方を眺めた。

 

「それにね、愛さんるなりんが誘ってくれたから………」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

それから、特に授業を受けるわけでもなく帰るわけでもなく瑠和はなんとなく学校で時間をつぶしていた。考えてみれば確かに自分勝手だった。いい案かと思ったが確かに二人にとってのメリットが何もない。勝手に快く承諾してくれると思っていた。

 

「はぁ………」

 

そんなことを考えていると、唐突に瑠和の腹の虫が鳴った。そういえばもうここ数日まともに食事をしていない。そんなことを思い出すと、最近はんぺんにご飯をあげに行けてないことを思い出した。

 

「………仕方ねぇ」

 

ついでに学食で何か食べようかと思って瑠和は近場のコンビニで買い物をしてはんぺんがいそうな場所を探す。。

 

 

 

―中庭―

 

 

 

「ん」

 

はんぺんに会うためにうろうろしていると次第に人が増えてきた。いつの間にやら昼休みになったらしい。誰かに見つかる前に済まそうと中庭に行くと、はんぺんの前にはすでに先客がいた。しかもはんぺんは何やら豪華と呼べるほどではないが、校章がプリントされた餌皿で食事をしていた。

 

「宮下って人からあなたのこと、聞いてたから。この子のそばにいれば会えるって思ってた」

 

はんぺんの前にいたのはエマだ。瑠和は小さくため息をつく。

 

エマを前にしたとき感じたのは、エマのしつこさに対する面倒の気持ちか、それとも瑠和には感じられてない別の感情か。今の瑠和にはわからなかった。

 

「まだ何か用ですか」

 

「………同好会がね、復活したんだ」

 

「そうだったんですか。よかったですね」

 

「うん。侑ちゃんって子が協力してくれてたの。かすみちゃんの説得もその侑って子がしてくれたんだけど……」

 

瑠和はうまくいったようだと思った。正直そこまでうまくいかせるつもりもなかったのだが、なんだかんだ全部手柄は侑に行ったらしい。

 

「それから、新メンバーに璃奈ちゃんが入ったの」

 

「………そうですか。仲良くしてやってください」

 

「ねぇ、璃奈ちゃんがなんて言って……」

 

瑠和はエマに買ってきたはんぺんの餌が入ったビニール袋を投げた。エマは慌ててよろめきながら受け取る。

 

「わっとと…」

 

「申し訳ないんですけど、そいつに餌やっといてください。この先も」

 

「この先もって……」

 

「近いうちに退学します。それじゃ」

 

「え!?瑠和君それって……」

 

「いつまでも俺のことなんか気にしないで、自分の夢を追いかけてください」

 

瑠和はその場から逃げるように走っていった。エマがビニール袋の中を確認するとかなりの量の餌が入っていた。きっと、最初から誰かに託すつもりだったんだろう。さっきの退学という言葉がこの場から逃げ出すための口実でないことは、それが明らかにしていた。

 

 

続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。