Another days -case of Emma-   作:瑠和

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お久しぶりです。仕事が佳境を迎えたのとちょっと展開に悩んで遅くなってしまいました。あと一話くらいです。
にじよんあにめーしょん彼方さん回よかったですね。オフィーリアとぼーっとしてたり海風に揺れる髪を抑えてたシーンも見れただけであの回をやった価値がある。
遥ちゃんもかわいかった。

そして昨日今日はDDのライブですね。Q4のは見切れですが一日目当たりました!やったぜ


第七話 逃走リードアウト、向き合う覚悟

「璃奈」

 

寂しさに震え、涙がこぼれたとき、優しい声と、小さくも温かい手が自分を包んでくれた。それはいつだって自分を優先して考えてくれた兄だった。

 

学校から帰ってくると、必ず友達と遊びに行ってしまったが、必ず決まった時間に帰ってきて、遊んだ先で出されたりしたお菓子をお土産にしたり、新しく知った遊びを教えてくれた。

 

不器用ながら、それが瑠和なりの愛情なのだと璃奈は理解していた。

 

そんな兄にいつか恩返しがしたい。そんな風に思ってはいた。だが、璃奈が大きくなり何か一つだけでも一人でできそうになってきた小学三年生のある日、事件は起きた。

 

「もう!あんたらに振り回されるのはうんざりなんだよ!!」

 

父の仕事の都合で、引っ越しが決まった。兄が初めて両親に全力で叫んでいるのを見た。だが、不思議と少し喜んでいる自分がいたのは驚きだった。それは、ずっと自分を優先し続けてくれた兄が、初めて自分の気持ちに素直になってくれた気がしたから。

 

六年という時間が過ぎ、久しぶりに再会し、一番変わってしまったのは兄でも、両親でもなく、自分だった。

 

きっと、兄が家族と仲直りできなかったのは自分の責任だ。家族が話しているとき、兄の前に出る勇気を持てなかった自分の。

 

「お兄ちゃん……」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

計画していた自主退学計画は朝香果林が瑠和に成功報酬を求めたことで少し先延ばしになってしまった。正直それはどうでもよかった。このまま璃奈の周りに「楽しい」があふれればいつかきっと瑠和のことを忘れ、自分の幸せを見つけてくれる。そう考えた………いや、願っていた。

 

「………暇だな」

 

家にずっといるとやることもなく暇になってくる。

 

今後どうするかの見通しは立ててない。璃奈が虹ヶ咲に入ると知ったときから、いや、それよりも前から自立を考えていた瑠和は親からの仕送りをケチりにケチりまくって結構金はためた。高校中退じゃ雇ってくれるところも少ないだろうが瑠和にとっては大した問題ではない。

 

これ以上親に甘えることも、家族にかかわることも何もしたくなったのだ。

 

「なんかバイトでもするか………」

 

あまりいいものも食べていない。瑠和は少しでも時間をつぶし、使える金を増やす手段としてバイトでも始めようかと考えた。ネットで近場のバイト先を探していると、部屋のインターフォンが鳴った。

 

「………だれだ?」

 

気配を消しながら動き、ドアの前まで来て覗き穴からドアの先を見る。そこにいたのは侑だった。

 

「高咲………?」

 

「瑠和君、いる?これ、歩夢と一緒に行ったお店でおいしかったから…瑠和君にも持ってきたんだ。どうかな?」

 

彼女の手にはケーキか何かのお菓子が入っている箱がもたれている。

 

「…………」

 

少し考える。侑がそんな理由だけで瑠和の部屋を訪れるとは考えにくい。考えられるのは以前依頼した同好会のことに関することだろうか。しかし、ここで璃奈のいる同好会とかかわりのある彼女に接触するのははばかられるところだ。

 

しかし…

 

「………入れよ」

 

瑠和は侑を部屋に入れた。理由は瑠和にもよくわからなかった。璃奈のことを知りたかった?同好会にちゃんと果林や愛は来ているか知りたかった?全部かもしれないし、全く関係ない理由かもしれない。

 

「意外と片付いてるね」

 

「はっ、いかにもな落伍ものの部屋を期待してたか?」

 

「ううん、でも、元気そうでよかった」

 

侑はお菓子を机の上に置いた。

 

「で、これだけじゃねぇだろ、理由はさ」

 

「ん?うーん、わかる?」

 

「まぁな」

 

「なんというか心配だったからかな…………ほら、瑠和君一年のころの衝突から来なくなっちゃたじゃない?ずっと………わたしのせいなんじゃないかって……思ってて」

 

「そんなことはない。お前はよくやってくれたし、あの結果に俺は満足してる。だからこそ今回のことも頼めるって思ったんだ。俺の不登校とお前は関係ないよ」

 

「そっか………………」

 

「…なんか飲み物持ってくるな」

 

瑠和はそう言っていったんキッチンに向かった。そして、飲み物を用意しながらこれまでのことを思い出す。

 

(そうだ、高咲は本質を見抜く力がある。そしてそこへ導くためのプロセスも導き出せて………)

 

 

 

「たすけて」

 

 

 

「え?」

 

「どうしたの?」

 

どこからか声が聞こえた気がした。瑠和はその疑問を声に出して振り返ってしまったがそこには何もなかった。侑も急に声を出した瑠和に驚いている。

 

「いや、何でもない」

 

瑠和は飲み物を入れたコップを持って居間に戻る。そして侑の前にコップを置いた。

 

その後、軽い談笑を交えながら瑠和はそれとなく少しだけ同好会の内情を聞いた。それによればちゃんと果林はエマの手伝いと言う名目で同好会のサポートを、愛に至ってはスクールアイドルそのものになったと聞き、それはさすがに瑠和も驚いた。

 

お菓子も食べ終わり、夕日が沈み始めたころ、侑は帰り支度を始める

 

「じゃあ、またね。今日は話せて楽しかったよ」

 

「ああ………俺も、悪くない気分だった」

 

「また、お菓子持ってくるよ」

 

侑はそのまま帰ろうと席を立とうとした。どうやら本当に瑠和にケーキを持ってきただけのようだと瑠和は少し安心した。しかし、安心と同時に、なにか不安のようなものを感じた。袖を引っ張られる感覚に、侑は振り返る。

 

瑠和は侑の服の袖をつかんでいた。そしてその手は、震えている。

 

「瑠和君…………」

 

「すまん、もう少しだけ………話さないか…」

 

「…」

 

侑は静かに座った。

 

「私でいいの?」

 

「………ああ」

 

 

 

―十数分後―

 

 

 

瑠和の部屋を出た侑は大きく深呼吸をする。

 

「はーびっくりしたぁ」

 

「どうだった?彼?」

 

部屋を出たすぐ横に隠れていたのは果林とエマだった。一番瑠和に警戒されず近づけて、話を聞けそうな侑に瑠和の様子を見てくるように頼んだのだった。

 

「うーん、まぁ元気でしたよ。ただ、どうして学校に来ないのかとか、瑠和君の心の奥までは見通せませんでしたけど………」

 

「いいえ、彼には特定の相手には多少なりとも心を許す。それが分かっただけでも上々」

 

「…………」

 

 

 

―虹ヶ咲学園食堂―

 

 

 

翌日、侑は一人で難しい顔をして食堂にいた。

 

「侑ちゃん?」

 

そこにエマが来た。たまたま通りがかっただけだが侑の妙な顔をみて心配してきたのだ。

 

「どうしたの?」

 

「エマさん…………実は…その……昨日」

 

侑は昨日の話をした。帰ろうとしたとき、袖をつかんできたこと。

 

「そんなことがあったんだ……」

 

「なんだか、瑠和君が分からないよ………家族も含めた周りの人間を突き放しているように見えるのに、人助けはして、昨日みたいに誰かと一緒にいたがったり………」

 

エマは考える。まだあったばかりのころ、瑠和の話を聞こうとしたがエマは強く拒絶された。そんなことは初めてでとてもショックだったこと。そして何より、それがあったことでエマの心により瑠和を放っておけない、助けたいと思う気持ちが強くなった

 

だが、侑はエマとは違った。瑠和に受け入れられたのだ。エマと侑の違いはどこにあったのだろう。瑠和にもわからないであろう答えにエマは天を仰ぐ。

 

「…私………」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「あんまり悩むと、シワふえちゃうわよ?」

 

「ふぇ!?」

 

エマが部室でぼんやり考えこんでいると果林に額を突かれながら注意されてしまった。

 

「どうせ彼のことで悩んでたんでしょ?」

 

「…………うん」

 

「まぁ、そういう性格だっていうのはわかってるけど、あの子一筋縄じゃ行かなそうだし、地道に侑に情報集めてもらいましょ」

 

「だけど…」

 

「るなりんもどうしてかたくなに家族と離れたがるんだろうね」

 

二人の会話に、愛も混ざってきた。愛も瑠和に頼まれて部に入ったメンバーの一人として瑠和のことを心配していた。

 

「…………私、家族と一緒にいる時がとっても幸せだったから。家族を突き放す理由………全然わからなくて……」

 

「まぁ、りなりーから話は聞いてるけど………そんなに強く恨んでるのかな」

 

「え?」

 

「だって、引っ越しの話が出るまで、りなりーの面倒も、家事もしっかりやってたやさしいお兄ちゃんだったらしいし。そりゃ、放っておかれたら悲しかったろうけど………ご両親のこと、理解してないわけじゃないと思うんだよね………」

 

何かエマの中で見えた気がした。だが、見えただけでどう行動に移せばいいかわからない。瑠和を引き留めるのに必要なのはきっと家族との対話であるが、部外者であるエマにどうこうできる問題ではなかったからだ。

 

「あの…………」

 

そこに、璃奈がやってきた。

 

「璃奈ちゃん」

 

「りなりーどったん?」

 

「私…………お兄ちゃんに、伝えたいことがあって………想いを、心をつなげられるかもって………だから、ここに来た」

 

あの日、せつ菜のライブを見たときに感じた。スクールアイドル本人と周りの人と時間を共有したした瞬間、まるで心がつながっている気がした。

 

「私、お兄ちゃんに伝えたいことがある…………それを………きっと、言葉だけじゃ足りないと思うから……歌で、届けたい。だから………もし、愛さんや、果林さんや、みんながよかったら手伝ってほしい」

 

申し訳なさそうな表情で、璃奈は頼んでみた。自分だけではできないと初めからわかっていた。それでも、年上の人に頼むのは少し申し訳なさを感じていた。

 

「りなりー………いいじゃんそれ!」

 

「うん、とっても素敵だと思う!」

 

「いいわよ。それくらい」

 

果林は仕方なしといった態度で賛成したが、もともとそれをサポートするためにここにきている。瑠和との約束を果たす時だと思った。

 

 

 

―数日後―

 

 

 

この日、瑠和は珍しく学校に顔を出していた。あれから数日たったが、まだ誰かがライブをするといった話は聞かない。本当にあの二人は璃奈をサポートし、楽しく過ごさせてくれているのだろうかと疑問に思って偵察に来たのだ。

 

とはいえ朝から学校に来る意味もなく、昼からぶらぶらと校内を歩いていた。こうして校内を何も考えずに歩いているとあまり来たことないような、何なら一度も来たことがないような場所にも出る。

 

新鮮な気持ちで散歩をしていると行く先に誰かがいるのが見えた。

 

エマだ。そしてその膝には彼方が昼寝をしている。

 

「…………」

 

妙な感覚になった。今まで感じたことのない気持ち。瑠和はそれに困惑し、その場で足を止めた。

 

「……っ!瑠和君!?」

 

「え!?」

 

足音に気づいたエマが振り返り、瑠和がいることに驚く。眠っていた彼方も飛び起きた。

 

「そんな驚くことじゃないでしょう」

 

「そ、そうだね………」

 

瑠和は何食わぬ顔でエマの隣に座る。

 

「………ど、どうしたの?」

 

「いえ…………別に。暇なだけなんで」

 

そういった瑠和の表情に彼方は違和感を覚えた。以前、自分に話を聞きに来た時とは正反対のような表情。そして、先日エマたちが話していた瑠和の話。

 

彼方は一つ試してみることにした。

 

「…………ふぁ~彼方ちゃん起きちゃった。エマちゃんの膝枕、空いたけど瑠和君使う~?」

 

「え!?」

 

「は!?」

 

その提案に、瑠和もエマも驚いた。

 

「エマちゃんの膝枕、と~っても心地いいんだよ~。だからほら~」

 

彼方は瑠和の背後に回り、肩をつかんでエマに近づかせる。

 

「ほれほれ~」

 

「べ、別に俺は眠くなんて!」

 

「そういう割には、身体は全然抵抗しないのだね~」

 

彼方の言う通り、瑠和は抵抗しようとはしていない。それを指摘された瑠和は顔を赤くした。抵抗しないのは、悲しんでほしくない相手、エマの手前ということが起因しているのか、瑠和にはわからなかった。

 

「う………ま、まぁ普段この時間寝てますし?彼方さんには恩義もありますから?ちょっとくらい乗ってあげなくなくもないですよ?」

 

適当な言い訳を並べてから瑠和はそのまま倒れこむようにエマの膝枕に横になった。

 

「………」

 

「………ど、どうかな?」

 

緊張しつつエマが訪ねる。こうするのは二回目だが、以前と違いなぜか緊張してしまう。そんなことを考えているとエマは自身の膝に生暖かいものが流れる感触を感じた。

 

「え?」

 

瑠和の瞳から、また、涙がこぼれた

 

「瑠和君………」

 

(……そんなに強く恨んでるのかな)

 

昨日の愛の言葉がエマの記憶から蘇った。そして瑠和は自身の流した涙の意味が分からず、だが原因はエマにあるであろうことを本能的に理解しすぐにその場から離れようとした。

 

また、逃げる。何度も、何度も、何度も。

 

だが、瑠和にはその判断しかできなかった。もうほかの判断などできなかった。

 

しかし、その行為は即座に伸ばされた手に阻止される。逃げようとした瑠和の手をエマがつかんだのだ。

 

「はなっ………離してください!!」

 

「離さない!彼方ちゃん!」

 

「はいよ~」

 

彼方は瑠和を後ろからホールドし、捕獲した。

 

「くそっ!離してださい!「これ」は!俺には許されない!!」

 

「…………瑠和君のいう、「これ」が何を意味してるのか………私にはわからない………でも…………瑠和君が自分の気持ちに嘘をついてるのは分かるよ」

 

「…俺は」

 

「ずっと、あなたのことを心配してた。瑠和君が何に悩んでいるのかわからなかったけど………だけど、同好会が行き詰ったとも、初めて会った時も瑠和君が助けてくれた。だから次は私の番」

 

「エマさん…」

 

「私にできるのは、これくらいだけど………」

 

そう言うとエマは胸に手を置き、大きく息を吸う。

 

「こらえた涙、流したいなら溺れるくらい流しきればいい。いつか今日を思い出したなら誰かに優しく、ただなれればいい♪」

 

エマは歌い始めた。同好会を始めてからずっと仲間と協力しながら瑠和のために作り上げていた歌を。衣装などそこに存在していないはずなのに、そこには衣装をまとったエマが瑠和の目には確かに見えていた。

 

「千歳超え、輝く愛を、千里越え、思い込めるから………侘びし度、奏で……包み込みましょう……温もりを伝え誰より傍で唄ってゆこう……♪」

 

エマは必死に唄を奏でる。この歌で瑠和の心を温められるように願いながら。

 

「もしあなたの心この詩で救えているのならば………♪」

 

エマは瑠和の目を見た。

 

「同じように誰かの痛みもいつか導いてほしい………♪」

 

その言葉の意味を、瑠和はすぐに察した。誰かの痛みを導いてほしい。そのだれかの意味を。

 

「侘びし度奏で包み込みましょう温もりを伝え誰より傍で嗚呼………陽だまりのごとき夢を見せましょう。温もりを与え、そのこころへと唄ってゆこう♪」

 

唄い終わったエマは両手を広げた。

 

「…………え?」

 

「瑠和君…………………………………………おいで?」

 

瑠和の意思とは関係なく、自然と足がエマの方に向かう。まるで、助けを求めるように。おぼつかない足取りで手を伸ばしながら歩き、エマに抱きしめられる。瑠和はエマの胸に顔を埋められた。

 

「ずっと、わからなかった…………瑠和君が、家族を突き放す理由…………でも、瑠和君はきっと、家族のことを嫌ってなんかいないんじゃないかな………本当は………こうしてたいんじゃないのかな」

 

「…………ずっと……俺…………一人で」

 

瞳からこぼれる涙が止まらない。エマの制服のシャツを濡らし続ける。エマに言われた言葉の意味が、瑠和の胸に突き刺さっている気がした。

 

話を聞いてもらう。

 

一緒に食事をする。

 

手作りの料理を食べる。

 

膝枕をしてもらう。

 

悲しいとき、胸を借りる。

 

 

 

すべて、家族と一緒にしたかったことだ。

 

 

 

初めて心を許せる相手に甘えた。そのことに心の底から安心しかけたとき、璃奈の顔が脳裏によぎった。

 

「離してください………俺は、これじゃダメなんです………」

 

「…………どうして?」

 

「俺は…………俺は………璃奈を不幸にした。自分勝手な都合で………寂しかったのは璃奈も一緒なのに………。だから、俺は幸せになっちゃいけないんです…………璃奈が不幸だった分、俺も同じくらい不幸にならなきゃダメなんだ………」

 

まるで、自分の胸も締め付けられるくらいの辛そうな声で、振り絞るように瑠和は言った。そしてそれを伝えると同時に瑠和はその場に崩れる。エマも跪く瑠和に合わせて座り、なおのこと強く瑠和を抱きしめた。

 

「幸せになっちゃいけないなんてこと、ないと思うよ?だからさ、いまからでも…璃奈ちゃんと…」

 

「いまさら…?向き合う勇気ももてなくて!こんなの!こんなこと鬼畜にも劣る!いまさら璃奈が許してくれるわけがない!いや!許されていいわけがない!だから………俺は……」

 

次第に弱くなっていく瑠和の声に、エマは瑠和の頭をそっと撫でる。やっと、瑠和が何を思っていたのか聞けることができた。

 

「…………頑張ったね……本当は璃奈ちゃんが、家族のことが大好きなのに。璃奈ちゃんのために強がって」

 

「違う…俺は何も…………璃奈と会うのが怖かっただけだ……きっと璃奈は怒っているから………俺のこと…………だからせめて、俺のことは……嫌な記憶を忘れられる楽しい時間にしてほしくて……………果林さんと愛に…………璃奈のこと、お願いして」

 

「璃奈ちゃんは瑠和君のこと怒ってないよ。むしろ、瑠和君と一緒にいられないことを、悲しんでる」

 

「…………」

 

想像もしていなかった返答だった。その言葉を聞いて、瑠和はようやく涙が止まる。それを感じたエマはそっと瑠和を離し、立ち上がって手を差し伸べた。

 

「何をするのだって遅すぎることはないよ」

 

「……エマさん…」

 

「私も、ずっとスクールアイドルをやりたかったけど、日本に来るのが遅くなっちゃった。でも、今はこんなに楽しい。だから、璃奈ちゃんと仲直りするのだって」

 

「…………俺は……璃奈と笑いあいたい…失った家族の時間を………取り戻したい!」

 

瑠和はエマの手を取った。家族のことだけではない。幼いころから人を、親を頼ることをしなかった瑠和はその孤独にもう耐えきれなかったのだ。

 

人の顔色が見える。そんな小さな違いが彼を一人にし、唯一の家族すら、自らの手で突き放してしまったのだから。

 

だが、もう一人ではなくなった。瑠和の手を掴んでくれる人がようやく現れたのだから。

 

 

 

続く

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