銀魂小編   作:佐倉シキ

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ラストファンタジー編 5

 

 

 

『お前かよォォォ!!!』

 

新八は驚愕と共にその叫びを上げ、画面の前で手を握りしめた。目の前の妖艶な女のアバターが、予想だにしなかった顔をしてにっこりと微笑んでいるのを見て、頭の中が一気に混乱していった。

 

『あれ、ひょっとして銀ちゃん達アルか? もう集合時間だっけ?』

 

彼女のその無邪気な言い回しに、新八は顔を真っ赤にして言葉を失った。信じられない、こんなところで彼女と再会するなんて…

 

『何をしてんだお前は! 何がパランギーナだ! 何がレーヴァテインだ! お前また盗んだのか!?』

『盗んでないアルよ、自分で手に入れたもんネ』

『お前引きこもって何してんのかと思ったらずっとゲームしてたのか?』

『そうアル。魔王ヴィゾーヴニルを巡る辛く険しい戦いの中でカーグラー・ドレヴァンツは最強の女戦士へと進化したネ』 

『何だカーグラー・ドレヴァンツって! 何なんですかその名前、神楽ちゃんの趣味!? というか、神楽ちゃんそのアバターは何なの!? 原型なさすぎるでしょ!!』

 

思わず頭を抱えてツッコミを入れてしまう。どんな顔でゲーム内で過ごしていたのか、想像がつかない。

 

『原型どころか性別まで変わってる奴ら侍らせてる奴に言われたくないネ、それにお前もちょっとカッコつけてるじゃねーか』

 

その一言に、新八は言葉に詰まってしまう。確かにその通りだからだ。性別が変わってるネカマ二人は論外としても、自分も確かにかっこいいと思うアバターを作成した。

 

『また男キャラにしようと思ったけど今回は情報収集の依頼アルからな。マンネリだし。まじめにキャラメイクしたアル。男は皆巨乳が好きヨ。閃乱カ○ラばりに盛ってやったアル。どうネこれ』

 

その言葉と共に、神楽のアバターが少しだけ態とらしくクネクネと動いた。豊満な胸を見せつけるようにして、その仕草に新八は心の中で冷や汗をかいた。

 

『どうもこうも中身がちんちくりんな事知ってる俺らからすりゃ何の感情も湧かないけどな』

 

神楽はアバターのスタイルに自信満々と言った様子だが、銀時は無感情にそう言った。

 

『んだよチクショー、今はちんちくりんはお前だろうが』

『何だとコラ! 幼女の恐ろしさ叩き込んでやろうか! PTA舐めんなよコラァ!!』

『ちょっともうやめて下さいよ』

 

新八はすっかり呆れてしまって、もう何も言う気にならなかった。これでは本当に何も進まないのだ。

とりあえず話を進めなければ、そう考えて二木に問いかける。

 

『二木さん、これからどうします?』

『とりまクエストっスかね、フィールドに出れば他パーティーとも出会ったりするんで。大体はそこで出てくるレイドボスが出会いのきっかけになってるっぽいっス』

 

二木はどこか冷静に話しながら、その言葉に少しの期待を込めた様子を見せた。

 

『レイドボスって何?』

 

銀時は初めてその言葉を耳にした。

 

『たくさんのパーティーがいないと倒せない強いボスっス。そこで適当に思想が攘夷寄りっぽい発言しときましょ。目に付けば食いついてくるかも』

 

二木は説明を続けた。

 

『んじゃま、とりあえずはそれで行くか』

 

銀時が一歩踏み出した瞬間、新八の心はますます不安に駆られる。ゲームの中でも、もう彼らのせいで振り回されている感じがしてならなかった。

 

──このバカ3人とでちゃんとできるかな…

 

新八はそう考えながらも、二木が言った通りにレイドボスを倒すことを目指し、彼らと共に進んでいった。

神楽が圧倒的なレベル差を持っていることは確かだ。その強さに頼らなければ進むことができないという事実に、新八はますます不安になっていた。

対して二木は少ししかやっていない様だが、この中で一番ゲーム慣れしている。新八と銀時は初心者だ。

 

新八の胸に、また一度不安が押し寄せる。レイドボスが本当に倒せるのか、疑問が消えない。

 

そのレイドとやらが碌な事にならない気がしてならなかったのだ。

 

 

 

 

 

*  *  *

 

 

 

 

 

シルバー:魔法使い レベル3

 

新一:騎士     レベル1

 

二葉:巫女     レベル32

 

カーグラー・ドレヴァンツ:騎士 レベル83

 

 

 

新八はパーティーリストを見て、自分の低いレベルに改めて気づく。レベル1という現実が、これからの戦いにおいてどれほど不安を感じさせるか、今更ながらに感じていた。

 

『そういえば二木さん、クエストってどんなのですか?』

 

新八が尋ねると、二木はそれに応じて答えた。

 

『ドラゴン退治っスよ、よくある奴。とはいえ神楽ちゃんが思ったより成長してたんで強めのやつにしました。コイツ倒せれば一発でレイドの参加権利が手に入るんで気張りましょう』

 

その言葉に新八はさらに不安を感じた。

 

『気張れってお前、銀さんのレベルは3だぞ? ファイアボールしか撃てないぞ? メラでドラゴンはキツいだろ。せめてメラゾーマくらい欲しい』

『僕も大した術ないですよ、ちょっと攻撃力上がるやつしか使えませんし』

 

銀時の言葉に、新八も続く。

 

『使えない奴らアルな。どれ、このカーグラー・ドレヴァンツが1人で倒してやるからお前らはそこで黙って見てるがいいネ』

『気に入ってんの? その中二臭い名前』

 

銀時が呆れた顔で言うが、その言葉を放つ間にも地面が震え始めた。

 

『クエスト開始地点に入った見たいっスね』

 

瞬間、大地が隆起したと思えば大きな赤い瞳が此方を覗いてるのが見えた。その竜は大きな丘のようなサイズで、亀のような甲羅を持っていた。鋭い爪が地面をたやすく切り裂く。竜が雄叫びを上げれば空気が震えた。

銀時と新八は無言でその巨体を見上げる。

 

『これが中ボス“タラスク”っす。とりまコイツを倒してレイドボス参加狙う感じで行きましょ』

 

鼻息だけで新八と銀時のアバターは吹き飛ばされた。

 

『で、出来るわけねぇだろぉぉぉ!!!』

 

新八は渾身の叫びを上げる。

 

『何だあれ!? 何だこれ!? コレと戦えってか!? 冗談じゃねえぞ!!』

 

新八の叫び声が、息を呑んだように空気に響いた。その目の前に立つ巨大なドラゴン……いや、ドラゴンという言葉では足りない、あまりにも圧倒的な存在感を放つその化け物を見上げて、新八は心の底から絶望感が湧き上がってくるのを感じていた。

 

『中ボスじゃねえだろこんなん! 魔王じゃねえか! ドラゴンどころか竜王出て来たよ!? メラゾーマどころかメラガイアーが必要だよこんなん!!』

 

銀時が息を呑み、冷や汗をかきながら言葉を絞り出す。彼の顔には、想像を超えた敵を前にした驚愕と恐怖の表情が浮かんでいた。ドラゴンの全身は黒い鱗で覆われ、その目は血のように赤く、まるで深淵を覗き込んでいるかのような不気味さを感じさせた。

 

『泣き言言うなんて失望したわよ小娘、あの時の覚悟は一体どこに行ったのかしら?』

『あの時の覚悟ってどの時の覚悟だ!? 俺がいつお前にそんな話したよ!!?』

 

銀時の言葉に、神楽の表情がひどく冷ややかになった。顔を背け、剣を構える彼女の姿からはまるで冷徹な武士のような気迫を感じる。彼女の言葉には情け容赦はなく、厳しさが滲み出ていた。しかし意味不明であった。当然、銀時は苛立ってツッコむ。が、

 

『黙ってそこで見てなさいな、行くわよ!』

 

そう言うと、神楽は一瞬でその場から駆け出した。次の瞬間、ドラゴンの強大な息吹が彼女の方へと吹きつけてくるが、神楽には当たらない。

空気が震えるほどの圧力がかかるが、神楽はまるでその圧倒的な力を楽しんでいるかのように悠然と笑みを浮かべながら動き続けた。

 

『さあ、地獄の業火に抱かれて消えなさい!』

 

そう呟くと同時に、彼女は一気に距離を詰めて、力強く刀を振るった。その刃はまるで炎のように紅く輝き、ドラゴンの皮膚を切り裂く音が響いた。その瞬間、ドラゴンが痛みを感じたのか、悲鳴を上げながら後ろに大きく倒れ込む。

 

次第にドラゴンのHPゲージが目に見えて減っていく。そして、ついにはゼロになった。

 

『ふ、弱いわね。準備運動にもならなかったわ』

 

その言葉を残し、神楽は冷たく微笑んだ。その姿に、銀時と新八はただ呆然と見つめるしかなかった。

 

──つ、強くなりすぎているぅぅ!!!

 

新八の心の中でその言葉が何度も反響する。それは、言葉では言い表せないほどの衝撃だった。

 

『何なのあの子。もう全部アイツ1人でよくね? 俺帰って寝ていい?』

 

銀時は目を細め、疲れ切った様子でつぶやく。その顔には諦めと面倒臭さが滲んでいる。

 

『ダメですよ銀さん。お金貰っちゃってるんで、オフ会までは続けないと』

 

新八は何とか無理にでも頑張ろうとしたが、心の中ではどこか逃げ出したい気持ちが渦巻いていた。そんな時、二木が画面を見つめながら言葉を続けた。

 

『よし、コレでレイド参加できるっスね』

 

その一言で、レイドの参加が可能になったことが確定した。二木は満足げに言いながらも、すぐに次のステップを考えているようだ。

 

『そう、じゃあ1番近いのに参加しましょう。こういうのはサクサク進めていかないとね』

『丁度よく近くでレイド発生してるっスね、コレに参加しましょう』

『ふふ、血湧き肉躍るわ』

 

二人のその言葉に、新八と銀時はまたしても無言で目を合わせた。いや、目を合わせることすらなかった。彼らの目は完全に死んだ魚の目だったからだ。

 

『敵は魔神バアルっス。とりま攘夷っぽい感じでよろしくお願いするっスよ』

 

新八は頭の中でその言葉を反芻しながら、ただただ茫然としていた。攘夷っぽい感じ? 何それ? もうどうにでもなれ。そう考えながら歩き続ける。

 

レイドの場所に辿り着くと、そこは焦げた大地が広がっていた。血のような赤い空が垂れ込め、気味の悪い紫色の巨人が暴れ回っていた。その周囲にはすでに、いくつかのパーティが集まり、戦闘が繰り広げられていたのであろう痕跡が伺えた。そんな中、銀時が声を出す。

 

『や、やだ〜。あのジジイ、こないだの天人に似ててキモ〜イ。マジ天誅なんだけど〜』

 

新八は目を見開き、銀時のその言葉に反応する。

 

──ぎ、銀さん! やる気なのか!?

 

『ほ、本当ですね! ほんと天誅です!』

 

新八はすぐさま銀時に合わせた。安全圏からセリフを言いつつ魔神に目を向ければ誰かが1人で襲われているのが見える。誰かがその場で必死に戦っているのを見えた。レイドバトルでたった一人しかいないと言うことは恐らく、パーティメンバーは全滅してしまったのだろう。

 

『とりあえず助けましょう! 神楽ちゃん!』

『任せるネ!』

『バフ盛るっスよ!』

『感謝アル!』

 

その一瞬のやり取りの後、神楽は戦場の中央で、あの魔神バアルに立ち向かい始めた。何もかもが一瞬で加速し、目を回す暇もないほどだ。神楽が力強く魔神を翻弄し、瞬く間にその魔神のHPが削り取られていく。

その後、戦闘はあっという間に終息を迎え、バアルは倒れた。

 

『お、すげぇレベル上がった』

 

銀時の声に反応して、新八もやっと戦闘が終わったことに気づき、無意識に胸を撫で下ろした。その時、新八はふと視線を下に向け、戦場から起き上がる人物を目にした。

 

『あの、大丈夫ですか?』

 

声をかけると、その人物はゆっくりと立ち上がり、ほっとした表情を見せた。

 

『ああ、すいません。パーティー壊滅しちゃって、ゲームオーバーになるところでした(笑)』

 

『いやー、助かりました。強いですね(笑)』そう言いながらもこちらへやってくると銀時と新八を見る。その人物は、猫耳のついた女性のアバターをしていた。メイド服を着て、ツインテールの髪を揺らす彼女は、見た目の可愛さとは裏腹に落ち着いた態度を見せていた。

 

『そういえば、先程天誅という言葉が聞こえたが君隊は攘夷志士なのか?』

『違いますぅ。私達ぃ、このゲームに超すごい人がいるって聞いてぇ憧れて会いたくて来ちゃったんですぅ』

『超すごい人物? それは気になるな、どんな人物なのだ?……ああ、申し遅れたな。私はトロピカルパンチという者だ』

 

トロピカルパンチ。変わった名に思えるが、ポップな色合いのそのアバターによく似合ってる気がする。相手が名乗ったので銀時達も名乗った。全員の名前を頷きながら復唱するとトロピカルパンチは会話を続ける。

 

『良ければ私も共に行ってもいいか? ご覧の通りパーティーは壊滅状態でな、再びレイドへと挑めば今度こそゲームオーバーだ』

『構わないっスよ。トロピカルパンチさんレベル高そうだしね』

『トロピカルパンチじゃない、桂だ』

 

その名前に、誰もが一瞬凍りついた。

 

 

──なッ!!!?!?

 

 

「……な、何をしてんだテメェはぁぁぁ!!!」

 

白目を剥きながら絶叫する新八の声が道場に響く。

 

「何でお前がここにいるんだよ!? 何してんだよ!! 暇なのか!? やっぱり暇なのか革命家の癖に!!」

 

その視線の先にいるのは、猫耳付きのメイド服を纏ったアバター。だがその中身は万事屋3人のよく知る人物だ。

桂小太郎。危険な攘夷志士として指名手配されている人物。それがよりにもよってお前、誰に名乗ってんだ。真選組だぞ、その人は真選組だ。思わず新八は机にヘドバンした。

 

「つーか何でお前もネカマだ!? 何で猫耳メイド服だ!!? 趣味か!? 趣味なのか!?」

 

感情の爆発に身を任せ、新八はデスクに頭を何度も叩きつける。その痛みすら、この状況の不条理を打ち消すには足りないほどだった。何なんだ、この流れ。ネカマが流行っているのか? いや、そうだとしてもこれは酷い。桂は3人目だ。ネカマ3人目。どいつもこいつも同じようなネタで攻めてくるのはどういう了見だ。新八は必死に頭を振り続ける。思考が混乱して収拾がつかない。

 

『え? 桂? 何スか?』

「待て二木さん! それを聞くのはやめてくれ!」

 

トロピカルパンチ、桂は相変わらず腕を組みながら悠然とした態度を崩さない。むしろその余裕が腹立たしいほどだ。

 

『ああ、すまない。つい癖でな。知り合いが毎回妙なあだ名で呼んでくるものだから、訂正するのが癖になっていた』

『へぇ〜』

 

二木はあまり興味がなかったのか素直な声を上げる。そんな二人を見て新八は全力で頭を抱えた。

 

「やべぇ、真選組相手に何言ってんだこの人! 話を逸らさないと!」

 

必死で桂から話を逸らすべく、新八は唐突に話題を切り替えた。

 

『あの、トロピカルパンチさんは何でこのゲーム始めたんですか?』

 

桂がこのゲームにいる理由。それを探れば、もしかしたら何か攘夷活動に関連した情報が得られるかもしれない。そんな微かな希望を抱いた問いだったが、返ってきた答えはその期待を粉々に打ち砕くものだった。

 

『ああ。何でも、このゲームボーイは素晴らしいものらしくてな。沢山の肉球達と戯れる事ができるらしい。私はこう見えて多忙な身ゆえ、偶には何か癒しが欲しいと思ってな』

 

猫カフェにでも行けよこのバカ、と心の中で毒づく新八。もはや呆れることすら疲れるほどだった。

 

『完全に別件だよ。バカがバカな理由でバカしに来ただけだったよ。帰れヅラ! 帰れ! しっしっしっしっしっ!!』

『ヅラじゃないトロピカルパンチだ』

 

桂はいつもの調子で腕を組み、堂々と訂正を繰り返す。その様子にさらに苛立つ新八の怒りが沸点に近づく。

 

『話を戻すが、先程君たちはやれ天人がどうとか、やれ天誅がどうとか言っていたな。ひょっとして攘夷活動に興味があるのか?』

『おい、なんか別のめんどくせぇのが釣れちゃったよ。何なんだよコイツ、帰ってくんない? お願い、300円あげるから』

 

銀時が軽くぼやくが、その間も二木は真剣な表情で答えた。

 

『そうなんです。私達結構現状に思うところがあって……。幕府は天人に諛うばかり、真選組や見廻組も権力を振り翳して横暴で乱暴。このままじゃきっと良くないと思ってて』

『おーい二木、コイツ違うから。コイツ天大師党に一切関係ねえから。ただのバカだから』

『素晴らしい心意義だな。このような年若い少女すら幕府の現状を慮っているのか。感動したぞ』

『おい何かもうめんどくせぇよ。何なんだよコレ、どういう状況なんだよコレ』

 

話は一向に要点をつかまない。そして、ついには彼が提案する。

 

『どうだろう、オフで会わないか? 君達のような者達ともっと議論を交わしてみたいものだ』

『何でお前とオフで会わなきゃいけねえんだよ、冗談じゃねえよ』

 

銀時は心底嫌そうな顔をして断固拒否の意を示す。そのやり取りを見ていた神楽が唐突に話題を変える。

 

『ヅラお前天大師党って知らないアルか? 私達そいつら探してるアル』

『ヅラじゃない桂だ。あ、間違えたトロピカルパンチだ』

 

桂は少し間を置いてから静かに言葉を発した。

 

『天大師党か、聞いたことがあるぞ』

『本当アルか!? 教えてヨ!』

 

桂は顎に手を当て、考え込むような仕草を見せる。

 

『確かかなり危険な攘夷志士だ。オンラインゲームのオフ会や出会い系アプリ、セミナー、SNS等で一般人を呼び出し攘夷の思想を押し付けると言う過激な連中の名だ』

『ヅラお前、知ってんのか?』

『一時期話題になったからな。今は洗脳なんかをやっているとか。どのような手口かは知らんが洗脳とは卑劣な事を』

 

桂が不快そうな顔をして溜息を吐く。二木が何かを話しかけようとしたところで神楽が『あ』と声を上げた。

 

『ニッキー、何か新しいレイドやってるみたいネ。飛び入り参加するアルか?』

『そうっスね、とりあえず今日はそれで最後にしましょうか』

『む、レイドか? 私も手伝うぞ』

 

そして話の流れで、レイド戦への参加が決まる。そうと決まればマップを使って目的地へと移動する。何チームかが魔神と戦っているのが見えた。

 

『こんなかに目的の奴らがいるのか?』

『さあ? そればっかりは戦ってみないと分かんないっスね』

『とりあえず行くアル』

『おう』

 

いつの間にか桂も参加し、銀時たちと共にフィールドを駆け抜けていく。

 

戦闘が激化する中、銀時と新八の活躍はあくまで被弾を避けることに専念するばかり。やがて激しい戦闘が終わり、フィールドには桂と銀時たちのチーム、そしてもう一つのチームが残るだけとなっていた。

 

『ま、初日なんてこんなもんかね』

 

銀時が肩を軽く回しながら呟いた。場の空気はレイド後の静けさに包まれている。周囲に散らばっていた戦闘の痕跡は、ゲームらしく少しずつ消え始めていた。どこか物寂しさを感じる空間だが、それ以上に安堵感が漂っている。

 

『そうですね』

 

新八も疲れ切った声で答える。レイド戦に参加したとはいえ、彼らにできたことはほんの僅かだった。

 

少し離れた場所にいた神楽、二木、そして桂が歩いて近づいてくる。その足取りからも、それぞれが満足感や達成感を胸に秘めていることが窺えた。

 

『それにしても新八』

 

銀時がふと口を開いた。軽く笑みを浮かべつつ、新八のアバターをじっと見つめる。

 

『何ですか?』

 

新八は怪訝そうに銀時の視線を追う。

 

『こうやってみるとお前……』

 

銀時は自分のアバターを一瞥する。そこに映るのはどこからどう見ても愛らしい少女。首をくるりと回して周囲を見渡せば、そこには妖艶な美女の神楽、清楚な美人の二木、そして獣耳がよく似合う佳人、桂の姿があった。

 

『お前ハーレム作品の主人公じゃねえか、両手に花どころか両手両足に花だぞ』

 

その言葉に新八は即座に反論する。

 

『何処に花があるって言うんです? 4分の3ネカマで、後の1人はラフレシアじゃないですか』

『シュレディンガーのネカマだ。相手がネカマと思わない限り、ここにいるのは女だけだろ』

『僕もうその箱開けちゃいましたよ。花とは到底思えないです。ここに花はないです』

『何だとォ! 私は正真正銘花だろうが! ここに居るネカマ3匹とは格が違うネ!』

『新八くん。クサイハナがキレイハナに進化するのと同じさ。極めたネカマは女の子より女の子らしいんだよ。俺っちはネカマに命懸けてるから』

『そんなもんに命懸けるくらいなら仕事に命懸けてもらっていいですか?』

『何だ、お前達男だったのか。実は俺も男だぞ』

『もうとっくに知ってるんで黙ってて貰っていいですか? 話ややこしくなるんで!』

『おい聞けヨ、ここに可憐な花が一輪咲いてるだろうが。咲き誇ってんだろうが』

『黙ってろラフレシア』

 

杜撰な返事をした瞬間、銀時のアバターの顔面に神楽の拳が炸裂する。拳の重さに銀時は抗えず、地面を転がった。

 

『銀さんんんん!!!』

 

容赦なくぶっ飛ばされた銀時のアバターは地面を転げ回り、ようやく止まった。HPバーは真っ赤に染まっている。

 

『言葉遣いには気をつけな小娘、お仕置きよ』

『お仕置きってレベルじゃねえだろ! 死にかけてんじゃねえか!』

『ラフレシアっつーよりカミツルギっスね、攻撃力がずば抜けている』

『言ってる場合か!!』

 

新八は慌てて銀時の蘇生を試みる。しかし、その場で使えるアイテムが足りない。どうしようかと焦りつつ二木の方を振り向こうとしたところで、不意に声がかかった。

 

『良ければコレをお使い下さい』

 

振り向くと、上等な装備をまとった見知らぬキャラクターがアイテムを差し出していた。その姿はどこか洗練されており、只者ではない雰囲気を醸し出している。

 

『え? 良いんですか?』

『構いません、レイドバトルを手伝っていただきましたからね』

 

その言葉に甘えて、アイテムを使用すると銀時のアバターが光を纏い、瞬く間に回復した。

 

『おお、すげぇ』

『ふふふ、随分と仲がよろしいのですね』

『えぇ? コレ仲良しに見える? コレ仲良しに見えたの?』

 

銀時がのっそりと立ち上がりながら問い返す頃には、レイドに参加していた他のメンバーが周囲に集まり始めていた。

 

『え? 何?』

『実は今のボス、とても強くて倒せなくて困っていたんですよ』

『え? そうなの?』

『ええ、助かりました。貴方達の助力のおかげです』

 

そう言われても、銀時と新八はほとんど何もしていない。だが、ここは黙って流すのが得策だと判断した。

 

『どうでしょう、我々オフ会を計画しているのですが貴方達も宜しければ参加しませんか?』

『!』

 

銀時は一瞬だけ二木を見た。二木は小さく頷き、口を開く。

 

『マジっスか? 奢りなら行きます!(笑)』

『ふふふ。勿論、我々が出しますよ』

『奢りアルか!? 焼肉アルか!?』

『ええ、焼肉ですよ』

『やったアル!!!』

 

二木が前に出ると彼方のリーダーと話を進めていく。そうしてしばらく話した後、彼らは解散した。

 

 

 

 

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