銀魂小編   作:佐倉シキ

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ラストファンタジー編 終

 

 

 

銀時の後ろを必死に追いながら、新八は声を張り上げた。

 

「銀さん! 二木さん1人で大丈夫なんですか!?」

 

走りながら新八の頭には先ほどの二木の姿が浮かんでいた。自らの腹を刺して覚悟を見せたあの姿。それでも、あの傷は相当に痛むはずだ。致命傷を避けているとはいえ、相手は大勢のローブの男たちだ。一人で何とかできるような状況ではない。

 

「アイツがやるっつったんだ、任せるしかあるめぇよ!」

 

銀時の返事はあくまで平静を装っていたが、その声にはどこか苛立ちのようなものが混じっていた。

 

「さっさとあの教祖ぶっ倒して戻ってやればいい話アル!」

 

神楽の言葉には、自分たちの役目を全うする意志が込められていた。その一言で新八はようやく気持ちを切り替えることができた。

 

「……それもそうですね!」

 

新八は自らを納得させるように深く息を吸い込み、足を速めた。振り返ってみても、今の自分にできることは何もない。ならば一刻も早く目の前の敵を倒し、二木のもとに戻るほかない。

 

走り続けること10分ほどで、彼らは電波塔に辿り着いた。塔の入り口の扉は無理やりこじ開けられており、その乱雑な状態が天大師党の急ぎ具合を物語っている。この塔はただの電波塔ではない。観光施設としても建設された高い建物だ。その構造ゆえに、駆け上がるのに時間がかかるのは明らかだった。

 

銀時は言葉を発する暇もなく塔の内部へと駆け込んだ。だが、その瞬間、隠れていたローブの男たちが待ち伏せしていたかのように一斉に襲い掛かる。

 

銀時は迫る刃を紙一重で避けると、間髪入れずに近くの男の腕を掴み、別の男へと投げ飛ばす。さらに近くに積まれていた木箱を蹴り飛ばし、迫り来る敵を牽制した。その間にも木刀を一振り一振り正確に叩き込み、ローブの男たちを次々と沈めていく。

 

「どけぇぇッ!」

 

怒声をあげながら銀時は階段を駆け上がった。新八と神楽もその後に続く。途中で現れる敵を神楽は蹴り飛ばし、新八もまた必死に戦いながら進む。

 

3分の1ほど階段を駆け上がったところで、一行は広間にたどり着いた。広々とした空間には多数の天大師党のメンバーが待ち構えており、彼らの視線が一斉にこちらに注がれる。その殺気立った様子に一瞬息を呑むものの、広間の奥にはエレベーターが見える。

 

──この連中を全て倒していては間に合わない。

 

銀時が瞬時に判断を下そうとしたそのとき、横にいた神楽が突然行動を起こした。彼女は側に置いてあった大きなテーブルを両手で掴むと、そのまま渾身の力で投げ飛ばした。

 

「どぉりゃあぁぁッ!」

 

重い木製のテーブルは天大師党の男たちを巻き込みながら広間を転がり、最後には大きな音を立てて大破した。その予想外の攻撃に連中が慌てて道を避けたおかげで、エレベーターまでの進路が一気に開けた。

 

「今のうちに行くアル! 銀ちゃん!」

「ここは僕たちが引き受けます!」

 

新八が力強く宣言する。

 

「任せたぞ」

 

短くそう言い残すと、銀時は迷いなくエレベーターへと駆け込んだ。止めようとした数人のローブの男たちも一緒に乗り込んできたが、銀時の表情には一切の動揺がなかった。

 

エレベーターの扉が閉まり、新八と神楽はその前に立ちはだかる。

 

「お前も一緒に行って良かったんだゾ」

 

神楽が新八に声をかけるが、新八は笑って問題ないだろうと答える。

 

「向こうはきっと銀さん1人でも事足りるでしょう」

「そうアルな、こっちもさっさと終わらせるアル!」

 

それぞれが武器を構えたローブの男たちに囲まれた。次の瞬間、彼らは一斉に襲い掛かってきた。

 

 

 

 

*  *  *

 

 

 

 

軽やかな電子音が響き、エレベーターの扉が開いた。

 

同時に、締め落とされた男たちが床に投げ出される。その光景の向こう側に、仮面の男が立っていた。

 

「よぉ、そんなとこに突っ立ってどうした? なんかいいモンでも見えんのか?」

 

銀時が一歩前に踏み出し、木刀を肩に担いだまま仮面の男を睨む。仮面の男は手に持っていた携帯から目を離し、静かに振り返った。その足元には例の絡繰が無造作に置かれている。

 

「面倒な事になりました。まさかアレを凌いでくるとは」

「あんなもん、足止めにだってなりゃしねぇよ」

「何故邪魔をするのです? 全てを見捨てて逃げれば良かったものを」

 

仮面の男はため息を吐くように言いながら、腰の剣をゆっくりと抜いた。

 

「逃げる? 馬鹿言っちゃいけねぇ。そりゃ逃げんのが1番賢い選択だろうよ。何もかんも見て見ぬ振りして生きていれば良い。痛い目に合わず、苦しい目にも合わず、それが一番楽だろうさ」

「そこまで分かっていて何故立ち塞がるのです?」

「簡単な話さ、俺が馬鹿だからだよ。催眠系やら洗脳系やらは好きじゃないんでね。悪いが止めさせてもらうぜ」

「愚か者が。正義の味方のつもりかッ!」

 

仮面の男の鋭い声が響くと同時に、剣が一閃される。

 

銀時は木刀を力いっぱい振り上げ、その刃を受け止めた。金属音が激しく響き渡る中、二人の戦いが幕を開けた。

 

「はッ! 正義の味方だ? 俺ァそんな高尚なモンの為に生きてるんじゃねえ!」

 

押し返し、そのまま振り払い投げ飛ばす。

銀時は木刀を握り直し、笑みを浮かべながらそのまま叫ぶ。

 

「ただお前のやり方が気に食わねえからぶっ飛ばすだけだ!」

 

次の瞬間、銀時は全身の力を込めて木刀を振り払い、仮面の男の剣を弾き飛ばした。その勢いで仮面の男を押し払い、さらに木刀の先端で体ごと投げ飛ばす。仮面の男は空中で身を翻し、地面に着地したが、銀時は間髪入れずに攻め立てた。

 

荒々しい木刀の一撃が次々と襲い掛かる。仮面の男は必死に剣で受け止め、かわし、何とか体勢を保とうとするが、銀時の力強い攻撃の波は止まらない。

 

追い詰められた仮面の男は手元の小型絡繰を操作し、何かを放つように電波を飛ばした。しかし、それは銀時に何の影響も与えない。男はわずかに眉をひそめると、絡繰を地面に投げ捨て、完全に剣による防戦に徹した。

 

「お陰様でスポンサーに切られてしまいましたよ!」

 

仮面の男は剣を構えたまま苛立ちを吐き出すように声を張り上げた。

 

「あと少しだったのに、どうしてくれるんです!?」

「そいつはすまねえな!」

 

銀時は木刀を勢いよく振り下ろし、仮面の男の剣とぶつかり合う。その衝撃で火花が散った。

 

「だが安心しな、今日からお前のバックにはもっとおっかねぇ奴らが就くからよ!」

 

銀時の言葉に、仮面の男は目を細めた。

 

「真選組っつーチンピラ共がな!」

「ご勘弁願いたいものですッ!」

 

互いの剣戟が再び夜空に響く。冷たい風が吹き抜ける中、銀時の攻撃はさらに鋭さを増していく。押しているのは圧倒的に銀時だった。もともと実力差は歴然であり、仮面の男がここまで粘っているのが不思議なくらいだ。

 

ついに、銀時の力強い一撃が男の身体を捉えた。男は大きく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。その衝撃で仮面が真っ二つに割れ、下から天人特有の顔が露わになった。

 

「……天人が何で攘夷活動なんかする?」

 

銀時は木刀を肩に担ぎながら男を見下ろし、問いかけた。

 

「攘夷活動の、振りをしていた…だけですよ」

 

倒れたままの男は薄く笑い、息も絶え絶えに答えた。

 

「バレれば逃げれば良いとね。私は天人なので疑われませんから。この組織を乗っ取り、研究を利用していただけ。それだけの話です」

「……研究?」

 

銀時が眉を寄せると、男は続ける。

 

「これが完成すれば、たやすく他者を思う通りに動かせる訳ですから」

 

その言葉に、銀時の目が冷たく光る。

 

「素晴らしいじゃないですか」

 

男は嘲笑を浮かべながら続ける。

 

「私は神にも等しい……存在になると言っても、過言じゃない……」

 

銀時は鼻で笑うように顔をしかめた。要するに、目の前の男はただのマッドサイエンティストだったのだ。攘夷浪士でも理想家でも何でもない、ただ自分のためだけに全てを利用してきた男。

 

「ふふふ、私は」

 

男が何かを言いかけたその瞬間、銃声が響いた。

 

一発の銃弾が男の額を正確に捉え、男は声を上げる間もなくその場に倒れた。銀時は驚きとともに反射的に物陰に隠れる。狙撃だ。

 

──追撃はない。

 

銀時は慎重に身を乗り出し、狙撃があった方向を窺った。下からの角度で放たれた見事な一撃だ。目を凝らしてみると、狙撃地点には布を纏った人影が一瞬だけ見えた。

 

──まだ居る。

 

銀時はその瞬間、猛然と走り出した。階段を駆け下り、猛烈な勢いで先を目指す。途中、戦闘を終えた神楽と新八の姿も視界に入ったが、銀時は一切構わず通り過ぎた。驚いた二人も慌てて後を追いかける。

 

銀時は狙撃地点に到達するまで息を切らすことなく走り続けたが、そこに人影はなかった。見渡しても、布を纏った人物の姿はどこにもない。

 

やがて新八と神楽も追いつき、息を整えながら声をかけた。

 

「銀ちゃん、どうしたアルか?」

「敵さんの大将が狙撃された。口封じだろうさ」

 

銀時は苛立ちを隠さず、舌打ちをする。

 

「戻るぞ」

 

銀時が短くそう告げると、神楽と新八は同時に頷いた。

 

「おう!」

「はい!」

 

三人はその場を後にし、再び夜の中へと駆け出した。冷たい風が彼らの背中を押し、夜空の月が静かに彼らの行く先を見守っているようだった。

 

 

 

 

*  *  *

 

 

 

 

 

ぼたり、ぼたりと、大粒の血液が地面に滴り落ちる音が静かな夜の空気に響く。

 

「流石に、しんどッ」

 

二木は乱れた息を吐きながら肩で呼吸を繰り返し、傷ついた身体を支えるように膝に手を置いた。戦いが始まってどれほど経ったのか。敵の剣を幾度も避け、かわし、拳銃で受け流してきたが、斬られることも避けきれず、体中にいくつもの傷が刻まれている。熱を持った傷口が痛みを訴え、滴る血液は痛々しいほど赤い。

 

元々ホテルの一室で始まった戦闘は、いつしか屋外へと移っていた。敵の数が多すぎる。二木は次々と押し寄せてくる連中を抑えることができず、追い詰められるように屋外へと追い出された。

 

再び襲いかかってきた一人の男を拳銃で撃ち殺す。引き金を引くたびに反動が手に伝わり、音が耳に響く。しかし、撃つたびに敵の数が減っていく気配はない。二木は弾を詰め替えようと袖に手を突っ込んだが、予備の弾丸はどこにもなかった。

 

「弾切れかよ……」

 

呟きながら拳銃を地面に捨て、代わりに腰に差していた刀を抜き放つ。

 

「これ、あんま得意じゃないんだけど……」

 

そう言いながらも鋒を敵に向け、再び身構える。

 

敵は殺しても殺しても減らない。もともと大きなホテルだとは知っていたが、これほどの数が潜伏しているとは思わなかった。中には洗脳されただけの人間も混じっているのだろう。しかし、敵として向かってくる以上、容赦するつもりもなかった。そんな余裕はないし、そもそも見分けがつかない。

 

剣を握り直し、再び向かってきた男たちに剣を振る。避け、斬り、受け止め、再び斬る。それでも次々と襲い来る敵に押し負け、肩を斬られ、背中を斬られ、足を斬られる。

 

やがて膝をついた二木は、ここが自分の死に場所かと覚悟を決めた。

 

その時、目の前の一人が言った。

 

「愚かな事です」

 

二木は顔を上げる。

 

「何が?」

「何故そうまでして抗う、二木二郎。貴方の事は知っています。真選組に裏切りを疑われ居心地の悪い思いをしている事でしょう」

 

男の言葉に二木は薄く笑う。

 

「詳しいね、俺っちの事好きなの?」

 

挑発じみた軽口を叩くが、男の表情は変わらない。

 

「此方に従いてはどうですか?」

「……は?」

 

予想外の言葉に二木は言葉を失った。

 

「我々は貴方を歓迎しますよ。貴方の情報や技術には価値がある。我々は貴方を尊重します」

 

男は二木に手を差し伸べた。

 

「不自由な思いはさせません。信じてくれない仲間などさっさと捨てて逃げればよろしい。殺されるくらいなら我らの手を取りなさい、二木二郎」

 

差し出された手を見下ろし、二木は黙ったままじっと見つめていた。やがてフッと笑い、立ち上がると一歩、その男へと歩み寄る。

 

次の瞬間、二木の刀が男の腕を切り落とした。

 

「ハッ! 冗談キツイね!」

 

男は悲鳴を上げ、その場にのたうち回る。それを見た奥に控えていた他の者たちが刀を構え、一斉に二木へと躙り寄ってきた。

 

「俺はもう二度と不誠実な真似はしねぇって決めてんだ!」

 

二木は血を吐きながら啖呵を切る。

 

「あの人はこんな俺にもチャンスをくれた! それなのにその面に泥塗るような真似は出来ねぇよ! 確かに疑われてる現状だ。大変なのは間違いねぇよ? 下手したらもう真選組を名乗れねぇかもしれねぇし……。

それでも、俺はまだ真選組だ! 裏切りなんてありえねぇ!! いいか! 俺は真選組九番隊隊長、二木二郎なんだよッ!!」

 

その時だった。

 

「よく言った」

 

聞こえるはずのない低いテノールの声が耳に届いた。

 

直後、閃光とともに爆発が天大師党の者たちを襲った。突如の事態に二木は思わず目を覆う。

 

──振り返る。

 

「何で……」

 

「御用改めである。真選組だァァ!!!」

 

夜の闇を裂くような声が響く。そこには土方、近藤を先頭に、一番隊、二番隊、八番隊、そして二木の九番隊の隊士たちが立っていた。

 

土方が二木に向けて上着を投げる。

 

「桂追っかけてたらこんなとこまで来ちまった。随分と派手な事やってんじゃねえか。俺達も混ぜろよ」

「桂が……」

 

まさかあの男が?そう思って思わず呟き、しかしそんなはずないと頭を振る。

 

「二郎、すまなかったな。そんなボロボロになるまで気づいてやれなくて」

 

近藤の声が柔らかく響く。

 

「近藤さん……」

「だがお前の気概は見せてもらったぞ。だから俺は、お前をし──」

「御用改めじゃオラァァァ!! 行くぞ八番隊ィっ!!!」

 

突然の叫び声に二木は振り返る。顔に傷のある金茶色の髪の青年が刀を振り上げ、好戦的な笑みを浮かべて敵に突っ込んでいってしまったのだ。

 

凹助(おうすけ)!? 俺今喋ってたよね!!? 俺今すっごい良い事言おうとしてたんだけど!!!」

「あららぁ、流石は魁先生だ。空気を読む気が微塵もねぇ猪突猛進っぷり。こりゃ俺らも張り切らねぇと手柄全部取られちまいますぜ新七兄さん」

 

沖田が涼しげに溜息を吐き、横を見た。しかし話しかけたはずの人物の姿はそこにはなかった。

 

「総悟、新七ならさっさと奴ら斬りに行ったぞ」

「……相も変わらずつれないお人だぃ」

 

沖田はため息をつき、自らの部隊を振り返る。

 

「一番隊! 俺達も行くぞォ!」

 

その声に従い、隊士達が先頭に加わっていく。

夜空に響く戦闘の音は、まだ終わりを迎えそうにない。

 

「んじゃ俺は中に残ってる残党共でも始末してくるか」

「トシ、俺はここに残ってあの3人の指揮するよ」

「そうしてくれ。じゃ、九番隊は俺について来い」

 

二木は着流しを脱いで慌てて上着を着た。中に真選組の服を着ておいて良かった。いつもは腰に巻くが、今日はちゃんと袖を通す。刀を鞘に収め、拳銃を取り出す。上着にしまっておいた予備の弾を取り出してすぐに装填した。

 

「お前まだ銃使ってんのか、新七に剣教えて貰ってんだろ?」

「引くほど上達しないんで俺っちはもうずっとこれで良いっス」

「開き直んな。鍛錬が足んねえんだよボケ」

 

「今度は俺が鍛えてやる」と煙草を咥えながら土方は言った。流石に厳しそうなんで嫌だなと苦笑いを浮かべる。ホテルへと足を踏み入れれば残党達がわらわらと近寄って来た。

 

「二木、残りは何人だ?」

 

スマホを開き監視カメラへとアクセスして覗き見る。どうやら残りは此処にいる連中だけのようだ。それを伝えれば「んじゃ1分で終わらせるぞぉ、今日見たいドラマの再放送があるから」と気怠げに言ってくる。

 

「難しい事を言うっスねぇ」

 

笑いながら2丁拳銃を構えた。

 

土方が駆け出せば天大師党の連中も向かってくる。相手の剣を叩き割り切り伏せる。返す刀でもう1人。3人目には受け止められ、もう1人が背後に回る。ソイツを二木が射殺する。

 

斬って、撃って、斬って、撃って。

 

血と硝煙の匂いが空間を満たした頃には生存者は真選組しかいなかった。

 

「九番隊、一応このホテル調べてきて下さい」

「ハッ!」

 

彼らは敬礼をして駆け出していった。統率なんか取れてないと思っていたが意外とそうでもないらしい、二木は首を傾げた。

土方は見向きもせずにさっさと出て行く。外の隊士達の救援だろうか、そう考えて二木も続く。

 

外へ出ればどうやら此方ももう戦いは終わってしまっているようである。沖田、永倉、藤堂3名ともに既に納刀している。戦闘特化の3部隊が全力で殲滅に掛かればそりゃ速攻壊滅するよなと、二木は少しだけ同情した。

 

「それにしても天大師党は都市伝説だと思ってたけどなぁ、実在したとは」

 

近藤が顎に手を当てながらそう言う。

 

「よく見つけたな二郎」

「俺っちも必死でしたからね。偶然の要素も多かったとはいえ、これは中々頑張ったのでは? ねぇ、土方さん?」

 

少しだけ期待を込めて土方を見る。

 

「そうさなぁ、今回ばかりは良くやった。この調子で、次も励めよ」

 

フゥと煙を吐き出す。

それはつまり、切腹は無しととっても良いということだろう。二木は安堵のため息を吐く。と途端に疲労困憊になり、傷も激痛を訴えてきた。

 

「さっさと後始末終わらせて帰るぞ」

「はいっス!」

 

二木は土方に続いて歩く。

その後ろで沖田は「あれってツンデレのつもりですかね? どこに需要があるってんだぃ」と隣を歩く永倉と藤堂にぼやいていた。

 

 

 

 

*  *  *

 

 

 

 

 

「何か、大丈夫そうですね」

 

少し離れた場所から、真選組の姿を見つめていた新八が口を開いた。隣に立つ神楽が微笑みながら言う。

 

「ニッキー嬉しそうアル」

「切腹しないで済みそうですね、良かった」

 

銀時は大きなあくびをしながら、面倒くさそうに耳をほじる。

 

「元々アイツの考えすぎだったんじゃねぇの?」

 

その一言を皮切りに、銀時は背を向けた。

 

「まあいいや、帰るぞテメーら」

 

新八と神楽が元気よく返事をし、三人はその場を後にした。銀時はふと振り返り、真選組の姿をちらりと一瞥した後、再び大きなあくびをしながら帰路についた。

 

 

 

 

 

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