銀魂小編   作:佐倉シキ

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ラストファンタジー編 3

 

 

 

 

 

「あ、ありがとうございました」

「いえいえ、此方こそ。是非またご依頼下さい」

 

新八は頭を下げて去っていく男性を見送り、万事屋の戸を閉めた。

ここ最近、万事屋銀ちゃんには久々に依頼が立て続けに舞い込んでいた。部屋のテーブルには、満足そうに依頼を終えた客たちからの代金が山積みにされている。今回の依頼内容は、弁天堂の最新ゲーム機「sbitch」を手に入れてほしいというものだった。人気商品で入手困難だが、それを万事屋に頼んでくるとはなかなかの信頼を寄せられている証拠だろう。とはいえ、銀時はその信頼に対し微塵の感慨も抱いていなかった。

 

「やっと終わったか。ったく、いい歳した大人がゲームに夢中って、世も末だねぇ」

 

銀時は溜息をつきながらソファに寝そべり、ジャンプを開いた。新八は依頼者を見送った後、玄関を閉めて振り返る。

 

「やっぱゲームってすごいですね! owee以来の行列でしたよ」

「何がそんなに楽しいんだかねぇ。ゲームなんてガキの遊びだろ。おままごとレベルじゃねえか」

 

銀時は鼻を鳴らしながらページをめくる。

 

「いやいや、並んでたのはほとんど大人でしたよ。桂さんとか真選組の皆さんもいましたし」

「ヅラに至ってはお前、ゲームボーイ買いに来たって……。アイツいつの時代に生きてんの? 1人だけ30年以上前に生きてない?」

 

「あはは」と新八は乾いた愛想笑いで誤魔化した。桂はとても特殊な例である。「病院の裏でずっとスタンバってました」と言う彼の事を銀時は蹴り飛ばしていた。まあ、いつもの事だ。

 

そんな時、押し入れに座ってパンフレットを眺めていた神楽が、口を尖らせながら話に割り込んだ。

 

「でも良いなぁ。私もゲームしたいアル」

「ウチにそんなお金はありません、若者は大人しく公園でも走り回ってなさい」

「昨今はうるさい言われて若者は公園で遊べないネ。公園もダメ、ゲームもダメ。何をしても怒られる、理不尽な世の中アル」

「いいか、神楽。理不尽を乗り越えて人は強くなるんだよ」

「良い感じの言葉で誤魔化そうとすんなよ」

 

神楽はむすっと銀時を睨みつけ、手元のパンフレットをめくりながら呟く。どうも神楽の友人達も皆ゲームをやって遊んでいるようなので、1人だけ話題についていけずに寂しいのだろう。新八の子供の頃の遊びなんて缶蹴りや鬼ごっこだったが、これも時代の流れかとなんとも言えない気持ちになった。

 

「マリオ、ゼルダ、ドラクエ、ポケモン、スプラトゥーン、どうぶつの森……どれも楽しそうネ」

「いくら眺めても買わねえからな」

「良いなぁ、良いなぁ、良いなぁ……」

 

ソファで寝そべっていた銀時はだんだんと顔を歪ませていく。

 

「その『良いなぁ』をあと一回言ったらブン殴るぞクソガキ」

 

ちょうどその時、玄関のチャイムが鳴った。

 

「あれ? まだゲーム渡してない人いましたっけ?」

 

新八が首をかしげながら立ち上がる。

 

「は? そんな訳ねえだろ。ちゃんと全員分渡したはずだ」

「じゃあ誰だろ」

 

新八は「はーい」と返事をしながら玄関へ向かった。扉を開けると、そこに立っていたのは派手な見た目の男だった。背は新八よりも20センチは高く、金髪の髪にシャツの襟から除くタトゥー。その威圧感に新八は思わず後ずさった。

 

「……や、輩だ……!」

 

男はニッと笑い、「あれ、ひょっと君が新八くんっスか?」と軽い口調で話しかけてきた。

 

「え? ええ、まあ、そうですけど……」

「あは! マジで局長の言った通りじゃん! 素朴な眼鏡君は義弟だから優しくしろって言われたんだけど、印象ドンピシャだわ」

「え、素朴な眼鏡くん? ……ていうか誰が義弟だ!! アイツ部下に何嘘教えてやがる!!!」

 

新八が叫ぶのを、男は愉快そうに眺めている。その瞬間、新八の頭に疑問が浮かぶ。

 

「……部下?」

 

改めて男を見直すとだいぶ着崩してはいるものの、その服装は間違いなく真選組の隊服だった。

 

「え? 真選組の方ですか?」

「そうそう。俺っち九番隊の隊長、二木二郎って言います。よろしくネ!」

 

二木は親しげに手を差し出し、満面の笑顔を見せた。その軽い態度に、新八は少し警戒心を緩めた。彼は案外悪い人ではないのかもしれないと新八は思った。

 

 

 

 

*  *  *

 

 

 

 

 

「ええ、ゲーム?」

 

銀時が資料を手に取ると、眉間に皺を寄せる。

 

「そっスよ、ちょっとパーティーメンバー探しててね。万事屋さん丁度3人だし手伝って貰えないかなって思って」

「手伝ってって、オタク真選組でしょ? それがゲームって、いいんですかそれ? 税金そんな事に使っていいんですか?」

「いやいや、さすがに税金じゃなくて自腹っスよ。これ以上やばいことやるとガチで切腹なんで」

「これ以上って何? もうなんかやらかしてんの?」

「ま、いろいろとね」

「ちょっと勘弁してくれる? 面倒ごとはゴメンだぜウチは」

「面倒事は全部俺負担なんでそこは気にしないで平気っス」

 

そういうと二木は資料を出す。

 

「一応依頼内容纏めてきたんスけど」

「見た目に似合わず真面目だねぇ」

 

銀時は二木の返答に驚きつつも、資料をパラパラとめくる。しかしすぐに「う、持病の活字アレルギーが」と呻きながら「新八ぃ、読んどいて」とそのまま資料を新八に渡した。

「なんで僕が…また丸投げして……」と文句を言いながらも新八は資料を読み始める。

 

「30文字以内で説明してくれ」

 

銀時は二木を見上げて問いかけた。

 

「ゲームでカルトしてる攘夷浪士を釣り上げたいので手伝って下さい」

 

攘夷浪士という言葉に銀時の目が鋭くなった。と、その時である。

 

「なあ、オイ、ゲームって、何のゲームアルか?」

 

先ほどから拗ねて定春を撫でていた神楽が話に割り込んできた。何かを期待するかのような瞳で3人の様子を伺う。

 

「スヴィッチのラストファンタジーってゲームっスよ、結構有名な奴っス」

 

そう二木が答えると、興奮を隠しきれない様子で声をあげた。

 

「スヴィッチアルか!? 銀ちゃん、私やりたいネ!」

 

神楽はすぐにでもゲーム機を手に入れるつもりで、食い気味に言った。

 

「やりたいって……俺らスヴィッチ持ってないだろうが。いい加減諦めなさい、しつけぇぞ」

 

銀時はそう言いながら、背もたれにグッと背中を預ける。すると、二木はそんな彼らの様子を眺めた後、すっと鞄から新品のスヴィッチを三つ取り出し、テーブルの上に並べた。

 

「ほれ、俺っちが貸すっスよ」

「え、二木さんこんなにスヴィッチ持ってるんですか?」

 

それを見た神楽の目が一気に輝いた。「きゃっほぉーい!! 私のスヴィッチネ!!」と、まるで子供のように一つを奪い取った。その喜びように、銀時は改めて心の中でため息をつく。

 

「ちょっと神楽ちゃん! まだ依頼受けるとは決めてないでしょ!」

 

新八の咎めるようなセリフに神楽は構わず、「いやネ! もうこれは私のアル!」と手に取ったスヴィッチを抱えて、部屋の中でくるくると回り始めた。その楽しそうな姿を見る限り、もうこの依頼を断る理由はほとんど無いだろうと銀時は感じた。

 

新八は溜息をつき、申し訳なさそうに二木を見た。

 

「すみません二木さん、神楽ちゃんが一個持ってちゃって。それにしてもよく3個も持ってこれましたね。僕達いろんな人に手伝ってもらって6個が限界でしたよ」

「転売目的で大量購入してた奴がいたんでね。古物営業法違反と迷惑防止条例違反に、チケットもやってたんで最近施行されたチケット不正転売禁止法も併せてしょっぴきました。んで余ったこれらは合法的に譲って貰ったんスよ」

 

二木は笑顔を浮かべながら説明した。その言葉に新八は眉をひそめる。

 

「あのすみません、それ大丈夫な奴ですか? 本当に合法ですか?」

「絶対汚職だよ、合法ってわざわざ口に出して言う奴が本当に合法的な手段取ってる事ってないからね」

 

銀時はちょっとした皮肉を交えて答えるが、二木は全く気にする様子もなく、むしろ冗談めかして言った。

 

「まあ何でもいいじゃないっスか。仕事手伝ってくれるんならソフト3個とセットで譲りますよ、ソレ」

「本当アルか!? これ貰ってもいいアルか!!? 本当に本当アルか!!?」

「本当本当超本当」

「きゃっほぉぉおお!!」

 

神楽の顔には興奮と喜びが溢れ、その目は輝いていた。そして喜びのあまり大きな声を上げ、スヴィッチを手に持つとくるくると回る。

 

その姿を見て、銀時は苦笑いを浮かべる。あの喜びっぷりなら、もうこの依頼を断る理由は見当たらない。報酬も悪くなさそうだし、何より神楽が手に入れたスヴィッチのことを考えると、多少の面倒は許容範囲だろう。

 

「銀さん、この仕事受けましょうか? 別に悪い条件じゃありませんよ」

 

新八が少し心配そうに言ったが、銀時は首をかしげながら答える。

 

「そうさな、報酬もちゃんとしてるしな」

 

銀時は二木が渡した封筒を取り出し、中の札をパラパラと数えた。その後、彼は黙ってそれをしまい、目を上げて答えた。

 

「しゃーねぇ、その依頼引き受けてやるよ」

 

二木は満面の笑みを浮かべながら、腰を低くして礼を言った。

 

「マジっスか! 助かるっス!」

「でも僕らゲーム得意じゃないですよ? 大丈夫なんですか?」

 

新八が心配そうに尋ねると、二木は軽く手を振りながら答えた。

 

「平気っス、クリアじゃなくてオフ会に誘われる事が目的なんで。ちなみに分かってる情報はオフ会に誘われた人達が洗脳されるって事だけっス。

ソロプレイヤーは誘われなくて、仲の良い複数人のパーティーだけが声を掛けられてるんスよね。調べてみたんスけど老若男女問わずいろんな人がやられてる」

「そんなにやられてて、まだ逮捕できねぇのかよ?」

 

銀時は疑問を口にするが、二木は肩をすくめる。

 

「絡繰を使った洗脳なんで証拠がねえんスよ。被害者達誰も何も言わないから。それに天大師党は少し前までただの都市伝説だったっスからね」

「なるほど、ようやくその尻尾を掴んだってことか」

 

銀時がうなずくと、新八が昔の記憶をたどりながら言った。

 

「そういえば僕も昔、バイト先で聞いたことありますよ。天大師党。確かその時は、ネット上で神様に会えるって話でしたけど……」

「神様? うっさんくせぇな」

 

銀時は思わず言葉を漏らしたが、二木はあまり気にしていないようだった。

 

「そ、神様が道を教えてくれるって言いつつその教えとやらが攘夷活動らしくて一応捜査はしてたんスよ。下らないってんですぐ打ち切られたけど」

「へぇ、いろんな奴らがいるもんだな」

「本当にね、俺もびっくりっスよ」

 

二木は軽く頷き、再び鞄を開けて“ラストファンタジー”のソフトを3個取り出して並べた。

 

「はいこれ、ラストファンタジーっス。とりあえず今日の夜9時、始まりの広場集合でよろしくお願いします。アバターは自由に作れるけど、釣りが目的だから奇抜すぎないやつにして下さいっス」

「分かりました」

「へいへい」

「分かったアル!」

「じゃ、よろしくっス!」

 

二木はにこりと笑い、軽やかな足取りで部屋を後にした。

 

「とりあえず、また夜な」

 

銀時はソファに寝転がりながら、テレビのリモコンを手に取ったのだった。

 

 

 

 

 

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