使命を帯びたTSダンマスは引き籠もる   作:片玉宗叱

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 新章突入です。


第二章 覚醒
12 明かされるシンの事実


 夜明け前にスツルタから消えたシンは自分のダンジョンの入口まで戻っていた。ストリクタに激しく愛された感触はまだ彼女の中に残っている。

 愛おしそうに自身の下腹部をシンは撫でる。彼女はストリクタの子を孕む事は出来ないが、そこには確かにストリクタに愛された証が残っている。

 

「なんでダンマスは子作りできないのかなぁ……」

 

 切なげに呟くシンの目から一滴(ひとしずく)の涙が零れ落ちた。彼女はそれを振り払う様に拭い取るとコアルームへと転移した。

 

「ただいま、イリザ」

 

『おかえりなさい、マスター』

 

「ダンジョンの運営方針を決めたよ。一つは人が死なない事。もう一つは他では手に入らない素材が出る事。大枠はこの二つだね」

 

 早速シンは普段着(エロ衣装)に着替えながら、ダンジョンコアのイリザへと話し掛ける。

 

『マスター。ダンジョンは女神の恵みではありますが、それをヒト種が得るには、それ相応の対価を支払う必要があります。他で手に入らない素材となれば相当の物を要求する事になります。それはお渡しした知識でご存知のはずです』

 

「そうなんだけどねぇ。珍しけど、その辺に在る物質から出来ている物だからね、命を賭けさせてまでのコストは掛からないよ。下手すると入場者から漏れる精神エネルギー(魔力)だけで賄えるんじゃないかな? それとイリザ、確かサブコアを使って子ダンジョンみたいなのを生成は可能だよね」

 

『はい、但し単純構造で且つ本ダンジョンと物理的に繋がっている必要があります。また、配備出来るモンスターにも制限が掛かります』

 

「素材の制限とかは……。ああ、私の考えてたヤツはサブコアでは無理っぽいなぁ。確か前世でも自然産出しなかったし。製造にもやたらとエネルギー使うんだよね」

 

 そう言いながらシンは脱いだショーツを何とはなしに指先でクルクルと回しながら悩み始めた。

 

『マスター。男性を誘惑して来ましたね? 下着からマスター以外の生物のオスの体液が検出されています』

 

「ゆ、誘惑なんかしてないよ? ほら、淫魔種の本能でついうっかりと」

 

『マスターの胎内(たいない)にも存在していますね。この量だと相当な回数の交尾を複数のオスと行なった事が推測できます』

 

「交尾言うなし! 複数とかそんなんじゃ無いんから! 私が身体を許したのはストルだけなんだからぁ……」

 

 シンは顔を真っ赤にして怒るが、ストリクタの名を出すとすぐにシュンとして項垂れてしまった。

 

『……特定のオスとの交尾だけで、これだけの量をですか?』

 

「だって……、だってさぁ。好きになっちゃったんだよ。ストルのこと……」

 

経緯(いきさつ)をお聞きしても?』

 

 顔を赤らめたまま恥ずかしそうに身悶えながら、シンはイリザへスツルタでの出来事を話して行く。

 

『そうですか。そのヒト種のオスを(つがい)として認識してしまったと』

 

「うん……。私って変かな? でも私の心がね、彼と愛し合う様になってから、どんどん女性化して来てるのか分かんないけど、彼が好きでどうしようも無くて求める気持ちが止められないんだよ。これってさ、淫魔種の本能とは関係無いよね?」

 

 切ない思いを込めてシンは溜息を一つ()いた。

 

『……マスター。転生の際に女神様から何か聞いていませんか?』

 

「使命の事以外は何も? あ、肉体は特殊で不老の種族とか言われたような気もする。それって淫魔種のダンマスだけど外見はヒト種と変わらないって事だよね? 貰った知識と照らし合わせてそう理解してるんだけど」

 

『眷属に使命だけ与えて説明も無しで放り出すとか一体何を考えているのでしょうかね……』

 

 イリザの声色には何処か呆れが含まれているようにシンは感じた。

 

「どういう事? って私って女神様の眷属だったんだ……。ええ? 神の眷属ってさ、私の前世だと神様の使いって事で神様として扱わる事が多かったんだけど。お稲荷さんのお狐さまとかさ」

 

『その理解で殆ど正解です。より正確に言えばマスターは受肉した神の使いですね。故に本能よる欲求があるのです。そしてマスターの肉体は特殊な(・・・)淫魔種として創造されています。順を追って説明致します』

 

「はい、お願いします」

 

 シンは神妙な表情でイリザを設置してある台座の前でイリザに向かい正座した。

 

『そもそもマスターは何故そのオスの事を話す時に悲しい顔をされるのですか?』

 

「……それは、ストルの子を生むことが出来ないし、定命の彼と不老の私じゃ添い遂げることも無理だし……」

 

 そこまで言うとシンの目は涙で溢れんばかりになる。

 

『まず一つ目のマスターの思い込みを訂正しましょう。マスターは普通のダンジョンマスターとは根本的に違います。マスターへ渡した知識でお分かりかと思いますが、ダンジョンマスターになると(・・・)ダンジョン運営には不要な生物の持つ食欲、性欲、睡眠欲等の本能的な欲求は無くなります。それと共に種族スキルも消えてしまいます。翻ってマスター、貴女はどうですか? 淫魔種としての本能や能力は無くなっていませんよね』

 

「あ、うん。そう言えば眠らないでいられるけど、この一ヶ月半くらいはストルと一緒に眠ってたっけ。あと食事も美味しく食べてたし、それにオシッ、んん!排泄もしてたし。……あれ?」

 

『そうです。普通の(・・・)ダンジョンマスターは、そもそも眠ろうとしたり食べようとしたりしません。マスターは淫魔種の持つ全ての(・・・)能力が使えますね。ステータスにスキルが表示されているのがその証拠です。繰り返しになりますが普通はダンジョンマスターになった時点で種族スキルが消えて無くなり、ダンジョンマスターと言う種族になるのです』

 

「え、って事は私ってストルの子を孕めるの?」

 

 そう言ったシンの表情はとても明るい物だった。

 

『……マスター。その話は後で説明しますから。続けますよ。マスターの種族欄にはダンジョンマスターと淫魔種の二つが表示されていると思いますが、それは該当する種族が無い為にそうなっているに過ぎないのです。女神様直々に創造された肉体に受肉した眷属はマスターが初めてなのですから』

 

「それなら何で淫魔種ベースなのさ」

 

『女神マルクレラ様の司る権能は愛に関する事全てですから何とも言えません』

 

「慈愛、情愛、親愛、恋愛、親子愛に母性愛とか、大きなところだと人間愛とか人類愛、神の愛(アガペー)とか。……ああ、性愛なんてのが有ったねぇ……」

 

 そう言えばギリシャ神話だかにエロスって神様が居たよなぁとシンは思わず遠い目をした。*1

 ただ、淫魔種の想いを寄せた異性に対しての振る舞いは性愛以上に情愛や親愛が強いのではないかと思われる。

 

「今となっては女神様に聞くことも出来ないしなぁ。一方的に言うだけ言って、私が質問しようとしたら、いきなり転生だったから」

 

『ここまでは宜しいでしょうか? 話を続けます。マスターは番と認めたオスの子を孕めない事を嘆いていましたが、それは間違いです。マスターはダンジョンマスターでも淫魔種でもない、新しい種族なのです。マスターは孕めないのではありません。自ら孕まないようにしているのです』

 

「なんで? 私はそんな事を考えてもいなかったけど」

 

『原因の一つは転生直後に元男性の精神を引き摺っていた事。そして二つ目はお渡しした知識によるマスターの思い込みです。女神様の受肉した眷属なのですから、その精神の肉体に対する影響は普通の生き物の比ではありません。マスターの肉体は既に成熟した形で創られていますから、女性としての機能が発現していてもおかしくはなかったのです。マスターは転生してから今までに月経が無かった事を不思議に思わなかったのですか?』

 

「いや、ダンマスってそう言うモノだと思ってたから」

 

『繰り返し交尾を行った時に女性機能は正常に働いたと思いますが、どうでした?』

 

 そう改まって聞かれるとシンは物凄い羞恥に襲われた。穴があったら入りたいの心境である。

 

「正常と言うか異常と言うか過剰と言うか……」

 

『ご自分が女性である事を受け入れたのですね』

 

「うん、少なくともストルの前では女でありたいなぁ。『最高の良い女で嫁だ』っていわれちゃったし……」

 

 シンは真っ赤な顔で両手で頬を挟んで『私をお嫁さんだなんて』と呟きながら恥ずかしがる。

 

『それなら近い内に女性機能全てが正常に機能する様になるでしょう』

 

 それを聞いてシンは飛び上がらんばかりに喜んだ、がしかしすぐに消沈する。

 

「でも、ストルは定命なのよね。私の時間だとすぐにお別れの時が来ると思うと……」

 

『マスター。そのオスとは体液交換は行いましたか?』

 

「たいえきこうかん」

 

『具体的にはお互いの体液を摂取し合う事です。血液、唾液と何でも良いのですが、一番効果的なのは交尾時に分泌される体液です』

 

 シンはそれを聞いて色々と飲んだり飲まされたり舐めたり舐めさせられたり舐められたり舐めさせたり飲まれたり飲ませたりした事を思い出す。

 

「それをすると、どうなるの、かな?」

 

『一種の契約となります。マスターは女神様の眷属なので相手が引き上げられる形ではありますが』

 

「具体的には?」

 

『もし添い遂げるとお互いが誓えば……』

 

 思わずシンは唾を飲み込んだ。

 

『マスターが死なない限り相手は死ぬ事はありません。勿論、老化する事も無くなります。ある種の呪いと言えなくは無いですね』

 

 前夜のストリクタとに遣り取りを思い出してシンの頬を冷や汗が一筋流れた。

 

「が、願望を言っただけじゃ契約にならないよね?」

 

『はい、お互いがお互いの名に賭けて誓い合う必要があります。その際には『女神マルクレラ様の御前にて願い奉ります』と一言を加えると良いでしょう』

 

 それを聞いて、シンは居ても立っても居られなくなった。ストリクタが定命を捨てる事を受け入れてくれるなら、それこそ永遠に彼と居られるし、彼の子を孕んで産み育てる事も出来るのだから。

 

「イリザ、帰って来たばかりで申し訳無いんだけど、またちょっとスツルタまで出掛けて来る! ああ! ストルと一緒に居られるかも知れないなんて!」

 

 そう言うとシンはそのままローブを羽織り杖を持つとダンジョンの出入り口へと転移して行った。

 

『マスター、ご武運を。……女神マルクレラ様、これで良いんですね。貴女様の御子であらせられる女神の卵は愛を知り伴侶を得ようとしています。きっといつしか無事に新たな女神として孵化するでしょう。その時まで私は見守り続けましょう』

 

 ダンジョンコアのイリザの独り言を聞いている者は誰も居なかった。

 

*1
余談だが恋と性愛の神エロス(エロース)の母親のアプロディーテは愛と美と性の女神である。ついでに生殖と豊穣の女神でもある。




 エロ衣装でお出掛けする痴女ダンマス。

※R-18に淫魔種の性(さが)の加筆修正版その1を投稿してあります。興味のある方は次のリンクからどうぞ。
【R-18番外編】使命を帯びたTSダンマスは引き籠もる【完全不定期投稿】
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