日付変わってないからセーフですよね。(本来は不定期投稿だった事を自分でも忘れてる……)
冒険者ギルド・スツルタ支部の支部長室(執務室)でストリクタは事務仕事を熟していた。
いや、熟してはいなかった。机には向かっているのだが何処か憔悴した表情で机上を見詰めるばかりで、時々深い溜息を
理由は単純だった。朝起きると隣で寝ていたはずのシンの姿がどこにも無かったからだ。
前夜の事を思い出してストリクタは独り言ちる。
「いきなり居なくなりやがって、シンの奴……。見送り位させろってんだよ」
シンの残り香が僅かに漂う執務室、その空気を大きく鼻から吸い込むと、彼は今度は盛大な溜息を
「はぁあ〜、今頃はダンジョンに着いて、中に籠もってんだろな……」
朝からこの調子である。筋骨逞しい長身の身体に、剃髪した頭で太い眉に鋭い眼光の厳つい顔立ち。そして一応の手入れはしているが濃くて硬い髭が鼻の下と顎を繋いで揉み上げまで覆うその容貌は、はっきり言って山賊か野盗の
そんな男が朝から憔悴した憂い顔で溜息ばかり吐いていた。もし、このギルドに他の人員が居たならば鬱陶しがらてれいたに違いない。
「もう昼時かよ……。腹減ってねぇんだよなぁ」
机に肘を突いて手で額を支える様にして項垂れるストリクタ。その耳に廊下を小走りしていると思われる軽い音が聞こえて来た。
足音は執務室の前で止まると、今度はドアが
「ストル、居るの?」
「ヤバい。幻聴が聞こえるとか俺も焼きが回ったか」
ストリクタは念の為だと席を立ち、ドアに向かおうとした、その時ドアが勢い良く開いた。
開いたドアのそこには、いつものローブを着込んで喜色満面の笑みを湛えたシンの姿が在った。
「ストル!」
シンは叫ぶ様にストリクタの名を呼ぶと、彼の胸に飛び込んで来てしがみ付き、ストリクタの筋肉で盛り上がった逞しい胸に頭をぐりぐりと押し付けて来た。
「おい、シン。なんで……。ダンジョンに籠もったんじゃねえのか」
ストリクタはシンの背中に手を回して抱き締めると、シンの頭に顔を付けて髪の匂いを嗅いだ。
(ああ、ホントに柔らかくて良い匂いさせやがって)
暫く抱き合ってお互いを堪能しているとシンが口を開いた。
「ストル、あのね、あのね。私ね、ストルの子供を孕めるって分かったんだよ」
それを聞いたストリクタはシンの肩を掴んで顔を上げて彼女の顔を覗き込む。
「……マジか? マジでそうなのか?」
「うん! ダンマスは子供を作れないって、私が思い込んでいたせいなんだ。だからね、思い込みが無くなって、……その、生理が来るようになったら、いつでもストルの子供を孕めるし産めるんだよ」
「それを言いに、お前はわざわざ戻って来たのかよ。お前、明け方に出て行って門番に何か言われなかったか?」
「飛んで行ったから大丈夫だよ? あ、今来た時も飛んで来たんだ。隠蔽も使ったから誰にも見られてないし、凄いでしょ?」
シンはストリクタを見上げて首を傾げ、そんなのは朝飯前だと事も無げに言う。
「ホントに規格外だな、お前は」
そう言ってストリクタは微笑む。子供がそれを見たら確実に泣き叫ぶだろう。そんな彼の笑顔にシンは笑み深めて返し、背伸びをすると彼の唇に音を発てて軽く口付けた。
「でもなぁ……。お前は不老不死なんだろ? お前と一緒の時間を過ごせても、お前を残して俺は先におっ死んじまうんだよな。お前に寂しい思いをさせちまう」
それを聞き、シンは一瞬だけへにゃりと笑うと真剣な表情になった。
その表情にストリクタはこれからシンが重要な事を言うのを察した。
「ストル、貴男は定命の生を棄てる覚悟はある?」
シンのその声は真剣で、しかしその目はストリクタに拒絶されるのを恐れて怯えているようだった。
(なんて顔しやがるんだよ。好いた女が覚悟を決めて自分の秘密を打ち明けてくれてたのに、添い遂げられないからと何もしないで嘆いていただけの俺はとんだ腰抜のタマ無し野郎だぜ。ストリクタ、男の見せどころだ。覚悟を決めろ!)
ストリクタは自身を叱咤し奮い立たせる。
「おうよ! 願ったり叶ったりだ。好いたお前と、シンとこの世の終るまでずっと一緒に生きられるなんて男冥利に尽きるじゃねえか」
「本当に良いの? 私が死なない限り、貴男は絶対に死ねなくなるの。ある意味、呪いに近いものなんだよ?」
「そりゃあ良いや。お前を守り切れりゃあ、どんな事があっても二人とも無事で生きて行けるって事だろ?」
そう言ってストリクタは男臭い笑みを返してシンの髪をその節くれた指で梳くと、シンはうっとりとして微笑んだ。
「ストル、大好きだよ」
そう言ってシンはストリクタの分厚い胸板へと自分の頭を押し付ける。
「ああ、知ってるさ。お前に負けない位に俺もシンが好いている。それで、お前と同じに生きるのに俺は何をしたら良いんだ?」
「お互いが自分の名に懸けて女神様に誓えば良いだけだよ」
「それだけか? 何か拍子抜けだな」
「ううん、他に体液を交換している必要があるんだけど、私達は、その、ね? たっぷり交換してるよね……」
そう言ってシンは頬を赤く染めて横を向いた。
「念の為に今から
そう言ってストリクタはシンの唇を喋むと、シンは真っ赤に染まった。
「ストルのバカ……。私は良いけど、まだ昼間だよ?」
「確かに。客が来たらシャレになんねえな」
ギルドの支部長室に二人の明るい笑い声が響いた。
その日の昼下り、閑散とした町中を連れ立って歩く二人の姿があった。
「シンをこの世界に連れてきたのが、その女神マルクレラ様って方なんだな」
「うん、お顔はよく覚えてないんだけどね。それで、その祠まではまだあるの?」
シンの話を聞き、ストリクタはスツルタの町外れに、女神像と思しき物が祀られた祠の事を思い出して彼女に話した。
その事を聞いたシンは興味を示し、それでは二人で行ってみようという事になったのだ。
「もう少しだ。ほら、見えて来たぜ」
ストリクタの指差す方の城壁の傍に、その祠はひっそりと建っていた。
石造りで
祠に近づくにつれて、シンは転生前のあの空間で感じた気配がするのに気が付いた。
祠の中にはA3用紙程の大きさの一枚の大理石が安置されており、そこには風化して浅くなってしまっているが女性と分かるレリーフが彫られている。
「ここがそうだな。おい、シンどうした?」
シンはレリーフの前に跪くと女性の顔であろう部分へと掌を当てて目を瞑っていた。
「……間違いないよ。ストル、ここは女神マルクレラ様を祀った祠だよ。ここでお互いが誓い合えば確実に
「そうか。文言はどうなんだ?」
シンは立ち上がると、ストリクタの手を取って真剣な眼差しで彼に問う。
「ストル、本当に良いんだね? 永劫の未来まで私から離れる事が出来なくなるんだよ」
「男に二言はねえ。何度でも言うぞ。世の終わりまで俺はお前と一緒に居る。そしてお前を守らせてくれ」
その言葉にシンはストリクタを見上げて、ふにゃりとした笑顔になる。彼女は嬉しさに涙が目に溜まり溢れそうになる。
「じゃあ、ストル。私の後に続けて言ってね。名前を言う時は、その意味を強く思うこと。絶対に強く思ってね」
「おう、任された」
女神のレリーフの前で手を取り合って二人向き合って見つめ合う。
「女神マルクレラ様の御前にて願い奉ります」
「女神マルクレラ様、の、お、御前にて願い奉ります」
清廉な鈴の鳴る様な声でシンが言うと、ストリクタの野太い声が神妙にそれに続く。
「我が名
「我が名
その瞬間、お互いの名の意味が理解出来てしまった。
ストリクタのディアマントは名字・姓ではなく所謂『諱』や『真名』と呼ばれるものであり、スツルタを含めてこの周辺では、親が願いを込めて名と共に子に与えるものだ。
「
「
「苦楽を共にし喜びも悲しみも分かち合い世の果てるその時まで共に生きる事を」
「苦楽を共にし喜びも悲しみも分かち合い世の果てるその時まで共に生きる事を」
「御前にて誓わせて頂き、誓いが成就されん事を」
「御前にて誓わせて頂き、誓いが成就されん事を」
「伏して御願い申し上げ奉ります」
「伏して御願い申し上げ奉ります」
シンは右手をストリクタの左手と繋いだままで、彼を促すと女神のレリーフの前で二人で跪き平伏した。
『ここに我が眷属と其の守護者の
突然、二人の中で厳かな女性の声が響いた。そして二人の繋いだ手から、どこから送られて来るのかシンを通してストリクタへと膨大なエネルギー、神気とも言うべきものが流れ込む。
「うぐっ……」
思わずストリクタは苦悶の呻き声を上げる。
「ストル! 大丈夫?」
心配するシンを、ストリクタは開いた方の手で制して脂汗を流しながらもニヤリと笑う。
「へへっ、俺はお前の守護者だってよ。守護者なら、この位でへばってらんねえだろ。うらぁ! 根性入れるぜ!」
ふん、と気合を入れて体内で荒れ狂う神気にストリクタは耐える。
どれほどの時が過ぎただろうか。シンから流れ込んでいたモノが途絶えた時には、ストリクタは息が上がって荒い呼吸を繰り返し、大量の汗を流していた。
「へっ、屁でもねぇぜ……」
そんな無理して強がるストリクタの姿もシンは愛おしいと感じる。
「ストル、無理しないで。それでどう? 何か変わった?」
仰向けに寝転んでぜえぜえと呼吸を荒くしているストリクタを膝枕しようと、シンは敷物代わりに地面に敷こうとしてローブをはだけてするりと脱いだ。
そこに現れたのはゴシック調でフリルが贅沢に使われた露出過多な普段着姿のシンだった。*2
「シン! おまっ! なんて格好をしてんだよ!」
思わず叫んで飛び起きるストリクタ。
「え? 膝枕しようと思ったんだけどストルは嬉しくないの?」
ズレた事を言うシンに思わずストリクタがツッコミを入れる。
「そう言うことじゃねえよ! 俺以外に見られたらどうすんだよ!」
「ふーん、そっか、そうだよね。私はストルだけのお嫁さんだもんね。そーかそーか、うんうん」
によによクネクネしながらシンは脱いだローブをまた着込んで行く。
「俺の嫁さん、脇が甘すぎる……」
なんだかんだで、この二人は結ばれるべくして結ばれたのかも知れない。
自分で書いてて砂糖吐きそうになるとは……。
一応イメージ画は線画が終わって現在下塗り中です。線画を単純に塗った物は番外編の後書きに挿絵のテストとして貼ってあります。ブランク長いと腕は落ちますねぇ……。
取り敢えず今はこれが性オッパ……精一杯です。ウム、昭和の絵だわこれ。
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