使命を帯びたTSダンマスは引き籠もる   作:片玉宗叱

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 活動報告の予告通りに投稿出来ました。
 日付変わる前なので⊂(^ω^)⊃セフセフ


22 来た道、寄り道、帰り道

 シヨリノからのお願いは、使用するダイヤモンドの現物とアクセサリーとしての(しつら)えはフューダが手配し、ダイヤモンドのカットのみを『冒険者ギルドを通してのシンへの指名依頼』となった。

 (しつら)えやダイヤモンドの調達をフューダ側で行うのは、デザインの打ち合わせや細かい調整変更等で、その度にシンを呼び出すのを申し訳なく思ったフューダから提案された。それを聞いたシヨリノは、シンに会う為の口実が無くなる、と不服そうにしていた。なにやら気に入られた様である。

 ダイヤモンドに関してだが、フューダが一ヶ月以内に入手出来なかった場合は次の社交の季節に間に合わなくなるので、その時はシンの方でダイヤモンドも作って欲しいと、ギルドを通さずにシンに対しての個人的な依頼としてお願いされてしまった。

 

 一通りの話が終わり、フューダの子供達が談話室に連れて来られて、シン達に紹介された。

 長男のプレヤガ(十一歳)はハキハキとしたしっかり者。シヨリノに似て柔和な顔立ちである。

 次男のデュア(九歳)はフューダ似の活発なやんちゃ坊主。紹介された時にシンの杖に触りたがって駄々を捏ねていたが。

 三男のトゥリア(六歳)はシヨリノの陰に隠れながらチラチラとシンを見ていた人見知りをする子。フューダとシヨリノの良いとこ取りの美ショタである。

 長女のウヌア(四歳)は元気一杯のおしゃまさん。お目々くりくりで天使のような笑顔の美幼女である。

 

 そしてシンは何故か速攻で子供達に懐かれた。

 特に長女のウヌアは特にシンに懐いて、何かとシンにお話をせがんだり抱っこを要求、帰り際にはシンのスカートを握って放さなず「おねえちゃま、かえっちゃやだ」と涙目で訴えたくらいである。

 困ったシンは、結局また会いに来る約束をさせられてしまったのだ。

 尚、ストリクタはには次男のデュアしか近付かなかった。デュアはキラキラした目でストリクタの武勇伝を聞きたがり、ストリクタも笑顔で彼に語って聞かせていた。この強面の男は案外と子供好きらしい。

 

 

 伯爵家でのそんな一幕があったが、グランダルボで粗方の用事を済ませたシン達はスツルタへと戻る事にし。

 帰ったら早速スツルタでのシンの拠点作りとなる。

 土地借用の手続きも恙無く終わり、棚ぼた的に貴族の後ろ盾も得られた。

 また、スツルタに帰るならと、冒険者ギルド・グランダルボ支部長のマヌゲラからスツルタで留守番を請け負ってくれているプリゾントへ手紙を渡して欲しいと頼まれている。

 少しだけ厄介事に首を突っ込んでしまった気はするがシン的には前途洋々である。

 

「ストル、スツルタに帰る前に私のダンジョンに寄って行くけど良いかな」

 

「ああ良いぞ。帰ってから急ぎで片付け事も無いからな。何かダンジョンでやる事でもあるのか?」

 

「スツルタの拠点とダンジョンを繋げる準備をしたいんだよね。行き来が楽になるから」

 

 シンはダンジョン内転移が使えるので、拠点とダンジョンが繋がれば、飛行での移動を目撃されるようなリスクが無くなる。

 シンとストリクタは二人連れ立って街道を逸れてシンのダンジョンへと向ったのだった。

 

 街道から外れて少しだけ森の奥に入った所に、シンのダンジョンの入口である祠があった。

 飛行による移動を少なくする為と、将来的にダンジョンを公開した時の為に入口を移動させたのだ。

 

「なんだ、随分とショボい入口だな」

 

 到着して開口一番でストリクタの言った言葉である。

 見窄らしい祠の外観を持つシンのダンジョンの入口は狭い。ストリクタが体を縮こまれせてやっと通れる位の大きさしかないのだ。

 

「そりゃあ最奥のコアルームから出入りするだけの間に合せの出入り口だからね。イリザ、ただいま」

 

 祠の目の前でシンはダンジョンコアのイリザに声を掛けた。

 

『おかえりなさい、マスター。そのオスがマスターの(つがい)ですね』

 

「んふふふ。旦那様と言ってよね」

 

「おい、シン。誰と話してるんだ?」

 

 怪訝な顔でストリクタが問う。どうやら彼にはイリザの声は聞こえないらしい。所謂『念話』と言うものである。

 

「ダンジョンコアのイリザだよ。そうか、ストルには聞こえないんだ」

 

『マスター。彼をダンジョンに所属する者として登録すれば可能ですが。まず、マスターの持つサブコアで仮登録を行いますので、彼にサブコアを触れさせて下さい。マスターの転移に便乗させる事も出来るようになりますので、彼を最奥まで連れて来て下さい。』

 

「分かった。ストル、あなたを私のダンジョンに登録するから、ちょっとこのサブコアを握ってもらえるかな」

 

 シンは杖の先端に付いているサブコアをストリクタに差し出す。

 

「握ったぞ。どうすりゃ良いんだ?」

 

「イリザ、これでどうするの?」

 

『サブコア、接続しました。マスターの精神エネルギー(魔力)をサブコアを通して彼に流して下さい』

 

 サブコアってホストにWi−Fi接続される端末みたいだなとシンは思いながら精神エネルギー(魔力)を杖とサブコアを通してストリクタへと流し込む。するとサブコアは薄く明滅し始めた。

 

「お? 光ってるしなんか暖かいな。と言うか熱くなって来たぞ」

 

 ストリクタは驚き手を離そうとしたが、彼の手はサブコアは貼り付いたかの様に開くことは無かった。

 

『次は彼から精神エネルギーをサブコアへと流す様に指示して下さい』

 

「ストル、あなたの魔力(精神エネルギー)をサブコアに注いで。出来るよね?」

 

「お、おう。やってみる」

 

 ストリクタは魔法が得意ではない。寧ろ苦手であるのだが、魔力操作は肉体強化の一環として訓練してきたので何とかサブコアへと自身の魔力(精神エネルギー)を流し込む。

 

『仮登録完了しました。マスター、本登録を行いますから彼を連れて来て下さい』

 

 ダンジョンコアのイリザが告げる。

 

「ストル、もう離してもいいよ」

 

 そう言われたストリクタはサブコアから手を離すと不思議そうに自身の掌を見詰めて、握ったり開いたりを繰り返す。

 

「いきなり熱くなって、なんか吸い取られた感じがしたんだがな」

 

貴男(あなた)の魔力パターンと生体パターンをサブコアに仮登録する時に一部細胞を採取しました。改めまして、ようこそ守護者殿。私、ダンジョンコア・イリザは貴男を歓迎します』

 

 突然、頭の中で聞こえた声に驚いているストリクタに、シンは自分と手を繋ぐように促した。

 

「それじゃ、本登録といきましょう」

 

 ストリクタの手を取ったシンは祠の前でダンジョン内転移を実行すると二人の姿は祠の前から消え失せた。

 

 コアルームに転移すると、早速ストリクタの本登録が行われた。仮登録は済んでいるので、サブコアで読み散った情報をイリザが参照して確認し、それをイリザへ移動するだけである。

 

『登録完了しました。これで守護者殿もダンジョンマスターの権能(スキル)の域内転移が使える様になります』

 

 これでストリクタも総延長五百キロメートルの狭い通路だけのダンジョンを延々と歩き続け無くても一瞬で最奥にあるコアルームへと到る事が出来るようになる。

 それを聞いてストリクタは思わず呟いた。

 

「シンと夫婦(めおと)にならなかったとしたら、ゾッとするな」

 

「直線距離だとそんなに無いんだけど、渦巻き状にしてあるからね。さてと、イリザ。スツルタに土地が確保出来たから、そこまでダンジョンの私の生活スペースから通路を伸ばせる事は出来るかな?」

 

 シンの考えは、彼女のダンジョンからスツルタまで地下二百メートルよりも深い所に通路を作り、そこから垂直の縦穴(・・・・・)で拠点として確保した建物まで繋げてしまおうと言う物だ。

 例え通路が見付かったとしても出入り口は深さ二百メートルの縦穴である。ダンジョンの仕様としてヒカリゴケが壁面に生えるのだが、よしんば底まで見えたとしても、そこを降りては行こうとする者は殆ど居ないだろう。しかもシンはそこに罠を設置して侵入者を排除するつもりである。

 

『可能です。但しサブコアをマーカーとしてマスターの精神エネルギー(魔力)で地脈を通して誘導して頂く必要があります』

 

「それじゃあ、特にダンジョンで作業する必要は無いね。開通したらいつでもイリザと連絡が取れる様になるね」

 

 通路の開通は拠点として使う物件の手入れをしてからになる。事前に確認はしているがストリクタの言う『ボロ屋』は控え目な表現だった。現物はいつ倒壊してもおかしく無い程に傷んでおり、建替えするしかないとシンは結論付けた。

 一応、フューダの所でディレクデの伝手を使わせて貰う事の了承は得ているので、スツルタに戻ったら早速発注をかける予定だ。

 

「建物が出来るまでは今まで通りギルドに住むけど良いよね?」

 

「今更だな」

 

 聞いてきたシンに、そう言ってストリクタは笑って応える。

 

「そう言えばシンはここに六年も籠もってたのか」

 

「そうだねぇ」

 

 浮かない顔でシンが応える。これ以上は聞くなオーラが出ているが勇者ストリクタはグイグイと突っ込んだ。

 

「今更聞くのもあれだが、六年も籠もって何やってたんだ?」

 

「服作り」

 

 ぶっきら棒にシンは答える。

 

「え?」

 

 斜め上の答えにストリクタは絶句する。

 

「だって転生してすぐなんてね、裸だよ裸! 身体を覆う布一つありゃしない! 女神様からの使命を受けた身としては、外で活動しなけりゃならないし、流石に裸じゃ外には出られないでしょうに。だから作りましたとも、ええ。材料から試行錯誤しながら最終的には化学繊維に行き着いて、そこから機織り機とか編み機を作って、縫製を勉強して手縫いじゃアレだからって思ったからミシンまで作ってしまったんだよ! もうね、外に出るだけでなんでこんな迂遠な事をって思いながら引き籠もって機械作ったり布を織ったり縫い物したりしてましたよ!」

 

 そう一気に捲し立て「うがー!」と吠えるシンにストリクタはドン引きである。

 

「ま、まあ、そのお陰で俺はシンに会えて、夫婦(めおと)になれたんだよな」

 

 ぽりぽりと顎を人差し指で掻きながらストリクタが言うと、それまで発狂していたシンはその顔に満面の笑みを湛えて彼に抱き着いた。

 

「だよね。タイミングが早くても遅くても、ストルに会えなかったかも知れないんだよね」

 

「それで、お前が作ったりキカイ? 絡繰仕掛けの事だとは思うんだが、どこあるんだ?」

 

「あ、それはこっちの奥にあるよ。見る?」

 

 自慢した()なシンの表情を見て、ストリクタは「あ、これ長くなるやつだな」と思った。

 

「いや、今はいい。落ち着いたらゆっくり見せてもらおう。まずはスツルタに戻らねえとな。プリゾントさんも待ち草臥れているだろうよ」

 

「それもそうか。通路が開通したらいつでも来られるもんね」

 

「そう言うこった。しかし戻ったらやる事が山積みだな」

 

「主に私がね」

 

「大工の手配は俺がやるよ。お前はのんびり飯でも作っててくれ」

 

「私は御三どん(おさんどん)かぁ〜」

 

 グランダルボ滞在が長引いて、シンの作る食事が恋しくなったストリクタであった。

 そんな彼の言に文句を言いつつシンは満更でもない様子である。

 

「帰ったらストルの為に、久しぶりに料理の腕を振るいますか。じゃあ行こうか。ストル、域内転移のやり方、分かるようになってるはずだから、やってみる?」

 

「ああ、なんか知らんが分かる。けどよ、何かおっかねえから来た時と同じ様にシンが連れて行ってくれ」

 

「意外とヘタレなんだねえ。いいよ、そのうち短距離で練習しようね」

 

 そう言ってシンはストリクタと所謂『恋人繋ぎ』で手を繋ぐとダンジョンの入口へと転移したのだった。

 




 次回予告。拠点完成までキング・クリムゾンする予定です。
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