使命を帯びたTSダンマスは引き籠もる   作:片玉宗叱

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 お待たせしました。但し今回はエロ無しです。宜しくお願いします。


9 魔法使いのお仕事?

 シンが城壁補修箇所の洗浄(焼却)をした後、現場には足場が組まれ始めた。木を麻紐で縛りながら板を渡して組まれる物だ。

 

 その現場から少し離れた場所でシン達は充填する石化させる母材の検討を行っている。

 母材は石灰と砂、それにその辺で取ってきた土に近くの河原で取れる粘土。それらを組み合わせて充填しやすく且つ強度が出る組み合わせを探すのだが意外に早く見つけられた。

 意外な事にその辺で取ってきた土の中で花崗岩や安山岩が風化して出来た赤土、所謂『敲き土(たたきつち)』が有ったのだ。

 これに『にがり』、つまり塩化マグネシウムを加えれば『三和土(たたき)』と言うコンクリートになる。

 

「この土、石灰と混ぜると魔法を使わないでも石みたいに固まって建材に使えますよ。にがりが必要になるけど」

 

 シンがそう言うとディレクデが興味を示した。

 

「ほう、そりゃ良いことを聞いた。ところでその『にがり』ってのは何だい?」

 

 シンは少し考える振りをしてスキルの図書館で詳細な知識を漁る。

 

「海水から塩を作る時に、塩が出た後に残る苦い水ですけど。グランダルボで塩田とかで塩を作って無いですか?」

 

「海塩か? ありゃあ苦味があって不味くて売りもんにゃならんからな。あんま作られてねえぞ」

 

(海塩が苦いって事は、にがりの除去をやってないのか。将来的に海水から塩の生産とか教えても良いかも。にがりも色々と用途があるし。にがりが無いとなると、確かローマン・コンクリートは海水を直に使ってたと聞いた事があるな)

 

 そうシンは思い出したので、その製法も調べてみた。ローマン・コンクリートは石灰の他の材料に火山灰と火山岩を使う。火山が無いこの近辺では調達は無理であろう。

 

「そうですか。無い物強請(ねだ)りしても仕方無いですね」

 

「後でその『にがり』とやらについて教えてくれ。ちょいと俺の方でも調べてみる。使えるなら俺の仕事に役立つからな」

 

「仕事? 施工管理とか監督じゃなくて?」

 

「おうよ。一応の肩書は建築家ってやつだ。領主様お抱えだが下っ端の下っ端だがな」

 

 そう言って笑うディレクデを驚き呆けた顔で見詰めるシン。そこにストリクタが話に入って来る。

 

「んな事言っちゃいるが、ディレクデは領主様の覚えも目出度くてな。俺の幼馴染の中じゃ一番の出世頭だぞ」

 

「バカ言ってんじゃねえよ。そんな事を言ったらお前だって冒険者ギルドのスツルタ支部長じゃねえか」

 

 どうやらこの二人はかなり気安い関係の様である。

 聞けば今回現場を任されたのは、彼の師匠にあたる人からの指示との事だ。

 

 そんな雑談を交わしながらも作業を進めて行く。

 

敲き土(たたきつち)が有るなら塩化マグネシウムを補って三和土(たたき)にしてしまうのも手だけど……。あれ? 彼処(あそこ)にあるのって滑石(かっせき)*1かな?)

 

 作業員が補修箇所の石に印を付けているの見たシンは早速彼が持つ白っぽい石を分析してみた。

 

(炭酸マグネシウムと炭酸カルシウム! えーと、なになに。苦灰石(くかいせき)か。石灰石と同じ場所からも産出されると。むー、焼いて酸化マグネシウムにしてから酸に溶かして水酸化ナトリウム溶液と反応させて水酸化マグネシウムにして、それから塩酸で中和したら塩化マグネシウムになるけど……。この世界(惑星)の文明レベルだと厳しいか。魔法でなんとかしよう)

 

「ディレクデさん、あの印を付けるのに使ってる石ですけど、量はありますか? あと塩と水があれば魔法で『にがり』を作ってみますから」

 

「おう、いいぞ。すぐ用意する」

 

 考えた末にシンは、炭酸マグネシウム一分子の炭酸イオンと、塩化ナトリウム二分子分の塩素を魔法によって強引に入れ替えて塩化マグネシウム一分子分と、更に水溶性の低い炭酸水素ナトリウム二分子分にすると言う、普通では絶対に出来ない以下の反応を魔法でやってしまおうと決めた。なお二酸化炭素の材料は空気中の物とその辺に生えている草の中の炭素を拝借して生成した。

 

MgCO3+2NaCl+H2O+CO2

 →MgCl2+NaHCO3+NaOH+CO2

  →MgCl2+2NaHCO3*2

 

 精神エネルギー節約する為に塩を水に溶かして、その中に砕いた苦灰石を入れる。

 反応が苦灰石の表面で起きる事をイメージでして魔法を行使すると見る見るうちに苦灰石が溶けて行き、残滓として炭酸カルシウムが残る。*3

 これも『にがり』成分であるので炭酸マグネシウムと同様に反応させて塩化カルシウムへと変換して行く。*4

 塩化カルシウムにより凝固点が降下したこの水溶液をシンは魔法で摂氏0度以下まで冷やして炭酸水素ナトリウムを析出させ取り除く。*5

 この段階で元々の塩分はかなり失われているので、残った水溶液はほぼ『にがり』である。

 

「出来たー。これが『にがり』です。あ! ストリクタさん何するんですか!」

 

 シンが出来たと言った途端にストリクタとディレクデが『にがり』を指に付けて舐めてしまった。

 

「うぇええ、なんだこれ。すげえ苦いぞ」

 

「み、水くれ水」

 

「だから苦いって言おうとしたのに……」

 

 苦味に悶絶する男二人に呆れながらもシンは二人に水を出してやる。*6

 

「はい、二人とも口を開けて。器が無いから口に直に注いであげるから」

 

 しゃがんで餌を強請る雛鳥の様に上を向いてシンに向けて口を開ける男が二人を冷ややかな目で見ながら、それぞれの口に向かって水を出す。その水で二人は口を濯いでようやく落ち着いた。

 

「しかしこんな物で石灰とあの土を混ぜたのが固まるのかねぇ」

 

「土の質とか配合で固まるまでの時間は変わりますけどね。取り敢えず石灰とあの土だけでも時間はかかるけど固まるとは思いますけど、そこは色々と試さないと。魔法を使わないだけでもメリットはあると思いますよ」

 

「今回の現場にゃ間に合わないか。シンさん、後で何個か(かめ)と材料を用意するからよ、作ってくれねえか? 勿論、報酬は払うぜ」

 

「おい、ディレクデ。シンは冒険者なんだから依頼ならギルドを通しちゃくんねえか」

 

 それを聞いてギルド支部長の立場のストリクタが口を出した。ギルドとしての手数料収入を得る機会でもあるから、そこは逃さない。

 

「ううむ、俺個人からの依頼になるからなぁ。負けてくれんか?」

 

 ストリクタがちらりとシンの方を見ると、シンは首を傾げている。

 

「よく分かって無いって顔だな。良いかシン、魔法使いへの依頼料ってのはギルドで一律で決まっていてな。駆け出しの魔法使いでも一日拘束すると、それだけで最低でも二千アンバウ、銀貨二十枚*7かかるんだよ。ましてやシンみてえな腕の良い魔法使いなら三千アンバウでも安い位だな」

 

 意外と良いお値段だった。これは確かにディレクデが負けてくれと言うのも分からん事は無い。

 とは言え変換そのもは材料さえ揃っていれば、そんなに手間でも無いの事実である。

 

「工事の合間に片手間で出来るから瓶一つあたり幾らでどうでしょう? それならお安く出来るでしょ? ストリクタ支部長(・・・)

 

 目の笑っていないシンの笑顔に、ドギマギしたストリクタはそっぽを向きながら答える。

 

「……シンが良いならそれで良いんだけどよ。路銀を一気に稼ぐ機会だったんだぞ」

 

「宜しい。金額交渉はお願いしますね。それじゃ配合を決めちゃいましょうか? 私はどれを使っても石化は出来そうなんだけど」

 

「そうだな。俺の方としちゃあ石灰と砂は持ち帰るのもアレなんで優先して使って、出来れば使い切って欲しいんだがな」

 

 石灰と砂は補修用として結構な量が現場に運ばれて来ていた。これを持ち帰るとなれば、また馬車やら置き場所やらの手配をしなくてはならず、予算も別に掛かってしまうのだろう。

 

「それなら、さっきの土を混ぜて使ってみます? その方が魔力の消費が少ない感じがするから少し試してみて良いですか?」

 

 どうせ石灰と砂を使うならば『にがり』による起きる化学反応を魔法で促進させてセメントモドキにした方が、結合による石化よりは精神エネルギーの消費は少ないだろうと考え、シンは提案した。

 

「ああ、それじゃ配合も変えてやってみるか」

 

 どうせなら粉砕して粉にした方が水和物の生成反応もさせ易いのだが、そこまでやると本格的にセメントを作るハメに陥るので割愛させて貰おうとシンは心の中でディレクデに謝る。

 

 シンは精神エネルギーの消費を気にしながら、ディレクデと共に色々と試して最適な配合を探した。勿論スキルを使いまくりである。

 そろそろ夕方になろうと言う時に、十分な強度を持ち精神力消費もまあまあ少ない配合が決まった。

 

「ほおー、こりゃなかなかに硬いもんが出来るんだな」

 

「やってみて分かったんですが、材料を全部焼いてから挽いて粉にして混合出来れば魔法を使わなくても固まるかも知れないですね。そこに砂とか砂利を混ぜるのも良いかもしれませんよ?」

 

 シンはさり気なくセメントやコンクリートへ至るヒントを与えたが、試行錯誤の末に果たしてこれがモノになるかどうかは正に神のみぞ知るである。

 

「もう日も落ちるから今日の作業は止めだな。とにかく足場が組み上げている最中でも現場に来てくれないか? 何か気付いた事があれば遠慮なく言ってくれ」

 

「はい、良いですよ。ストリクタさん、大丈夫ですよね?」

 

「ああ、報酬の件は大丈夫だ。魔法使いが見つかったら別口で支払われる契約になってる」

 

「お手柔らかに頼むぜ。んじゃ俺はあっちに行くからな。今日はご苦労さん」

 

 ディレクデはそう言って片付けの指示を出す為に足場を組んでいる現場へと向かった。

 

「さて、俺たちも帰るか」

 

「そうですね……。って、宿取ってないんですけど?」

 

 そう、シンは朝一番で現場に来てしまった為に宿を取っていなかったのだ。

 

「……悪い、俺もコロッと忘れてたわ」

 

「いえいえ、私が忘れてたんですからストリクタさんが謝る事じゃないですよ。どうしようかなぁ……」

 

 ちらちらとストリクタを上目遣いで見やるシン。前世で飲み屋のお姉さんが「ボトル入れて欲しいな」とお強請りする時の仕草を真似てみたのだが、ストリクタには覿面の効果が有ったようだ。

 

 

「……ギルドの仮眠室を使ってくれ」

 

 

 諦めた様に言うストリクタ。それを聞いたシンは満面の笑みで「ありがとうございます」と返すと、ストリクタにしがみつくように腕を組む。

 

「さ、行きましょうか」

 

 同伴出勤か。いや、同伴帰宅とでも言うのかも知れない。そこまで飲み屋のお姉さんを真似する事もあるまいに。現場から去っていくその姿はディレクデと現場の男達にバッチリと目撃されていた。ノリと勢いでやらかすシンであった。

 

*1
 タルクの事。ろう石とも呼ばれる。ケイ酸塩と水酸化マグネシウムが主な成分。

*2
 現実にこんな反応は起こせません。魔法だから出来るという事にしておいて下さい。

*3
 炭酸カルシウムは水には殆ど溶けない。

*4
 冬になると凍結路面によく撒かれるアレである。

*5
 炭酸水素ナトリウムは摂氏0度で水百グラムに約七グラムしか溶けない。

*6
 実際、塩化マグネシウムだけでは苦い薬を飲んだ時みたいな感じです。硫酸マグネシウムが加わると更に苦くなります。(昔々、化学科の奴にイタズラで舐めさせられた事がありましてね……)

*7
 日本円にして大体の感覚で言うと二万五千円から三万円ほどだろうか。現代日本でも技術を持つ専門職を一日八時間も拘束すると管理費を除いて三万円から五万円かかるから妥当な金額ではないだろうか。




 なんか疑似科学と言うか似非化学と言うか。魔法の事を書いてたつもりが化学式とか、もうね。自分でも訳わかんないです。
 流れだけ考えといて後は思い付きで書いていますからね。仕方ないと言えば仕方ない。

主人公の痴女化について

  • 正直どうでも良い
  • 健全路線にして欲しい
  • 現状維持で
  • いいぞもっとやれ
  • 麻呂はR-18を所望するでおじゃる
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