にじか・ざ・えんどれす! 作:虹夏曇らせ概念
三大欲求と呼ばれるものが本当に三大欲求であるのかと言う話は別にして、睡眠欲求という欲求がある事は紛れもない事実だ。
睡眠を取らないことは不健康に繋がり、それが結果的に寿命を短くもするし、頭も上手く働かなくなる。ドーパミンドバドバでも隠しきれない短絡的な思考、行動。楽しいのはその時だけ、あとから迫り来る羞恥心。身悶えるだけ。何より肌に悪い。
何となくで言ってみただけだけど、なんかそれっぽい。だから多分正しい。
第一、人生の三分の一を占めるらしい睡眠を疎かにしていいわけない。
だから私がこうやって惰眠を貪るのも、何らおかしな話ではないと思うのだ。
私はベッドの上に寝転びながら天井に手を伸ばし、その手の甲をじっと見つめている。
ただぼんやりと眺めていて、特に変わりのない、何の変哲もない普通の手。私の手。
だけどそんな見慣れた筈の手が、如何してとても奇妙なもののように見える。
どうかしてしまったのだろうか……少し疲れているのだろうか。……いや、そうなんだろうな。
……ええ、碌に頭が回っていない。寝不足なのだろうか。……そんな訳ない。
ただ何をするにも気力が足りない。
意味も無く拳を握ったり開いたりしながら、私は今日の出来事を思い返していた───。
◇
───何が起こった?
『君は最高のギタリストだ!』
その言葉を、頭の中で反芻する。
何度も言いかけて、結局伝えられることの無かったこの言葉。
それは何でか。なんて、言わずもがなだろう。
ぼっちちゃんがヘタクソだったから。
この言葉に尽きる。
もちろん、彼女の実力はまだ発揮しきれていないようなきらいが有るのは分かっている。
だけどこの時のぼっちちゃんは……あまりにも下手くそで、擁護のしようがなかった。
筈だった。
だけど、今回は。
「案外、上手い」
「あっ、ありがとうございます。……う、上手いって言われちゃった……うへ、うへへっ」
手放しで褒め称えるほどでは無いけれど……少なくとも人に聞かせれる程度には弾けていた。
いつものぼっちちゃんとは雲泥の差。
何故だ?
この世界線は、やはりおかしい。
何かがズレている。
それは───、
と、そこまで考えたときに。
「……虹夏、どうだった?」
と、リョウが話しかけてきた。
「あ、う、うん。そうだね」
そこで私は閃いた。
これはチャンスじゃ無いか? と。
ついに、ついに言えるんじゃ無いか。
あの言葉を。
(……よし!)
「ぼっ……、ひとりちゃん!」
「はっ、はい?!」
言ってやる!
「───君は最高のギタリストだ!」
……決まった。
そう思ったのに、二人の反応は何だか微妙で。
「あ、ありがとうございます?」
「急、急」
何だか死にたくなったのはご愛嬌だ。
/
「そう言えば、ひとりちゃんってあだ名とかって……」
「が、学校では、『あの〜』とか『おい』って」
「それあだ名じゃなくない?」
「ひとり……ぼっちとか?」
「流石に……それは……」
「ぼぼぼぼぼっちです!」
「……いいんだ」
「あの……バンド名とかって」
「結束バンド」
「えっ……あ、はい……」
「虹夏が考えた」
「……え!?」
「ちょっと!」
◇
その後は何事も無く……ぼっちちゃんのマンゴー仮面事件なんかはあったけど……ライブは終わった。
そこまではまだ良かった。
家に帰って、このベッドの上でスマホをいじっていた。
突然だった。
その時、ロインに一件、メッセージが来たのだ。
特に相手が誰かを確認することなく、殆ど反射で開いたら。
血の気が引いた。
相手は喜多ちゃんだった。
ライブをバックれた後、喜多ちゃんからロインが来たことなんて、一度も無かった筈だ。
訝しんで、それに頭の処理が追いついていない中、ロインのメッセージを見ると。
『先輩、明日会えますか?』
送られてきたのは謝罪でもなく、言い訳でもなく、その一文だけ。
何だかとても嫌な予感がした。
原作薄め過ぎてそろそろ水だけになりそうだったので話進めました。
なのにうっすい……何で……