にじか・ざ・えんどれす! 作:虹夏曇らせ概念
昨日のことを思い返す。
いつものようにぼっちちゃんと出会う日にまで巻き戻ってしまった私だったけれど、今回に限ってはその
ぼっちちゃんは何故か私の名前を知っていたし、割り合いギターも上手だった。
昨日の時点ではあまり気にしていなかったけれど、思い返してみれば、リョウの様子にも翳りが見えていたような気がする。
そして何より───喜多ちゃんの、あのロイン。
昨日の夜、喜多ちゃんにロインで突然、『会いませんか』と伝えられた私は、頭が真っ白なままやり取りを繰り返し、取り敢えず喜多ちゃんと会う事にした。
そうして今は、喜多ちゃんに指定された待ち合わせ場所へと向かっている最中だ。
あまりにも出来過ぎなタイミングでのそのロインのせいで、昨日は碌に寝ることが出来なかった。
そのせいで目の下にはクマがくっきりと浮かんでしまっている。ぴえん。
……いけないいけない。テンションがおかしい。これからの喜多ちゃんとの話次第では、何かこのループにも進展が生まれるかもしれないというのに、気を引き締めないと。
しっかり気を、引き締めないと。
◻︎◾︎◼︎
喜多ちゃんに指定された待ち合わせ場所は、何の変哲も無いようなカフェだった。
如何にも喜多ちゃんが好きそうというか、何となくお洒落ではあったけれど。
「ご注文はお決まりでしょうかー」
「じゃあ、アイスコーヒーを一つお願いします」
「アイスコーヒーですねー、畏まりました。少々お待ちください」
「お願いします」
そう言って店員に会釈をして、私はこの後の事について想いを巡らせる事にした。
焦りだとか、興奮だとか、色々な感情が頭の中を交錯していて、とても碌な思考ができる状態では無いけれど。
それでもどうにか、思考の整理をする事にした。
先ず喜多ちゃんとの会話で確認しておかなければならない事は、喜多ちゃんも「
今までのループであれば、喜多ちゃんがあのライブをバックれた後から再び彼女に接触できる機会は、ぼっちちゃんが喜多ちゃんをスターリーに連れてくるまで無かった筈だ。
しかも偶然会ってしまった、とかの受動的なものでは無く、明らかに喜多ちゃん自身の意思で能動的にこちらに接触してきている。
一応、何かの歯車がズレているだけで、喜多ちゃんが「そう」では無くて、ただ単にバックれた謝罪をしに来ただけの可能性もあるけれど……。
もしそうだとしても、リョウじゃあるまいし、あの喜多ちゃんが目的も言わない、こんな強引な誘いをするだろうか。喜多ちゃんならせめて、ロインで一言謝罪をしてからまた再度、と言う感じじゃ無いだろうか。
だから、普通に考えてみれば喜多ちゃんも「そう」だと言えるのだけれど……。
そこまで考えておきながら、どうしても先のぼっちちゃんのことが脳裏をよぎる。
ぼっちちゃんのあの不可解な一言。
ぼっちちゃんは明らかに「そう」では無さそうだと言うのに。
だからもしかしたら喜多ちゃんも違うのかも……。
………。
……あ゛ぁあ゛ああ、ダメだ。
思考が全然上手く纏まらない。
よし、一旦この思考を止めよう。
どうせ今会話デッキ考えてたって、相手はお人形では無く、人なのだから。
そう上手く自分の思う通りの展開になるわけ無い。
現実世界に最強無敵デッキはそう存在しえないのだよ……。
そうしてある意味吹っ切れたその直後、先程注文していたアイスコーヒーを店員が持って来た。
「ご注文のアイスコーヒーです」
「ありがとうございますー」
「それと、あちらのお客様はお連れ様でしょうか……」
そう言った店員の視線の先を見ると、喜多ちゃんが入口の方からこちらの方を見ていた。
……来ちゃったか。
「ええ、そうですよ」
「そうですか!では、お連れ様をご案内してきますねー」
「宜しくお願いします」
…怖いな。
「伊地知先輩、こんにちは」
「こんにちは、喜多ちゃん。それで今日は何の用事かな?」
◻︎◾︎◼︎
「伊地知先輩」
喜多ちゃんは私の向かいの方の座席に座ると、先ずは深々と頭を下げてきた。
それはもう深々と、勢い余ってテーブルに頭をかなりの衝撃でぶつけるくらいには。
「まずはこの前ライブをバックれてしまって、本ッ当にすみませんでしたっ!」
「そ、それより頭大丈夫? 痛くない?」
「ご心配ありがとうございます! でも大丈夫です!」
「そ、そっか……」
私たちに向けられる周りからの視線が痛い痛い。
軽く頭を下げて周りに謝って、もう一度喜多ちゃんの方を向く。
……なんかテンションいつもと違くないか?
そう思って、彼女に問いかける。
「その……喜多ちゃんのテンション、そんなのだっけ? もうちょっと落ち着いていたような……」
すると喜多ちゃんは気不味そうに視線を横にしながら、こう答えた。
「え、えっと、実は昨日寝れなくて……」
すみません、と言いながらしゅんとしている彼女の目元を見てみると、メイクで上手く隠されてはいるが、確かに薄っすらとクマのようなものが見える。
「あはは、喜多ちゃんもそうなんだ。実は私も寝れてなくて……」
「そ、そうなんですか、伊地知先輩も……」
そうして沈黙が流れる。
物凄く気不味い。
……つまりは二人とも寝不足な訳か。
これ、マトモな会話になるのかなあ……。
そうして互いに無言な時間が少しだけ流れると、遂に喜多ちゃんがその沈黙を破った。
「え、えっと、今日伊地知先輩を呼んだのは、勿論この前のライブのことを謝るためでもあるんですけど……」
そう言いながら彼女は下の方を向き、少し逡巡するような素振りを見せながら、何やらゴニョゴニョと口篭ってしまった。だけれど意を決したのか、がばっ、と再び顔を上げて。
「……じ、実は私、先輩たちとのライブをサボったのは2回目かもしれないんです……」
……あぁ、やっと。
「───続けて?」
本当に遅筆で申し訳ないんですけど、雰囲気だけでも感じ取ってくれたら嬉しいです……はい……すみません…
モチベは……まだ伸び代がある!……かもしれない