悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第十話

「柊!話を聞いてくれ!」

 

慎一郎は鍔迫り合いをする白音に声を上げる。

 

「・・・っ、慎一郎さんは黙っていてください」

 

白音は慎一郎の言葉に一瞬息を詰まらせるも、すぐにモノに目を向き直す。

 

「ボクを見るのはいいけど、そっちの趣味はないぜ?」

 

余裕綽々と言わんばりの反応をするモノに対し、白音はさらに強く馬上槍を深く押し込む。

それと同時に、氷もモノが持つカットラスに纏わりつき始めた。

 

「・・・と、これ以上は駄目か」

 

「・・・ぐっ!?」

 

これ以上の鍔迫り合いは不利だと悟ったモノは白音の脇腹を蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた白音は鈍い呻き声を上げ、蹴り飛ばされた脇腹を庇うように抑えながらも、モノを睨みつけていた。

だがモノ自身も無傷とまではいかず、カットラスを握っていた右手が酷く凍傷しており、彼女自身もかなりのダメージを負っているのは確かだった。

 

「モノ!無事か!?」

 

「うん?まあ、平気と言えば平気。でもまあ、暫くは右手使えないかな。少し至近距離にいただけでこれだから、上位の奴にはあんまり喧嘩を売りたくはないね」

 

慎一郎の心配する声も、モノは心配させないように軽い口調で答える。

だが、それを見ていて快く思わない人物が一人いた。

 

「・・・どうして」

 

白音は自分よりもモノに心配する慎一郎に声を投げる。

 

「どうしてなんですか・・・慎一郎さん。どうして・・・ボクを心配してくれないんですか。彼女はあの悪名高い組織の人なんですよ?なのに・・・なんでボクよりも彼女を心配するんですか!!」

 

そう叫ぶ白音に慎一郎は彼女に向き合うと、重々しい口調で白音に言った。

 

「柊・・・俺がその組織のボスだって言ったら・・・お前はどうする」

 

「・・・・・ぇ?」

 

慎一郎のその言葉に白音は表情を強張らせる。

そして何かの聞き間違いだという表情で白音は首を左右に振りながら、震えた声で慎一郎に言う。

 

「う・・・嘘・・・ですよね?慎一郎さん。慎一郎さんが・・・組織のトップだなんて・・・冗談ですよね?」

 

白音は信じたくなかった。

慎一郎が、組織の人のトップだと言うことに。もしそれが本当なのだとしたら、自分は彼にとって敵だと言うことになる。

 

「・・・俺が冗談を言うと思うか?」

 

「そん・・・な・・・」

 

慎一郎の口から出た言葉に、白音はその場に座り込む。

〈組織〉の人間は倒すべき敵と魔法少女として生きることになった時から白音はそう教え込まれてきた。

だが白音は自身の心を殺してまで自分の心の氷を溶かしてくれた人を手に掛けることなど出来る筈がなかった。

 

「・・・・・」

 

白音は座り込んだまま頭を垂れる。

もうこれ以上戦う意味など白音にはなかった。

慎一郎が敵だと分かった以上、白音はモノを倒して慎一郎を助け出す計画も全てが水の泡となった。

ここで自分が逃げた所で、一般人を巻き込んで敵を倒せなかった自分は魔女狩り部隊に処分されるだけだ。

たとえ生き残ったとしても自分の帰る場所なんてないのだ。なら、死んだ方がマシである。

そんな白音に慎一郎は心を痛めながらも言葉をかけた。

 

「・・・白音」

 

「・・・なんですか?慎一郎さん・・・」

 

心ここにあらずといった様子の白音は顔を慎一郎に向ける。

慎一郎に向けられた目は、かつて喫茶店で一緒に働いていた幸せに溢れていた目ではなくなり、何もかも全てを諦めた暗い目だった。

そんな目をした白音は慎一郎にまるで自身を自虐するように言葉を漏らした。

 

「・・・本当にボクはただの道化師でしたね・・・。初恋の人を取られたくなくて・・・勝手に嫉妬して、関係のない周りの人を自分の力で殺してまで盲目になって、真実を知って勝手に絶望する。それでボクの最後は魔女狩りに殺されて、ボクはずっと魔女として呼ばれ続ける・・・ホント自業自得過ぎて笑えますよね?」

 

乾ききった笑みを浮かべながら白音は笑う。

いや、もう笑うしかなかったのだろう。

生真面だったらからこそ、たった少しの理由で彼女は壊れてしまった。

壊れた人形のように笑みを浮かべる彼女に、慎一郎は言った。

 

「・・・なら、うちに来るか?」

 

「・・・・え?」

 

壊れた笑みから一変し、困惑した表情を浮かべる白音に慎一郎は言葉を続ける。

 

「〈組織〉に入らないか?俺と一緒にこの世界を変えよう。それでまた喫茶店で一緒に働こう。・・・な?」

 

「・・・・・」

 

慎一郎の言葉に白音は黙ったままだった。

だが少しだけ考える仕草をした後、その閉じたままだった唇を開ける。

 

「・・・何にも残ってないボクに・・・慎一郎さんは本当に優しいですよね」

 

そう言う白音は慎一郎に笑みを浮かべると、慎一郎の後ろに視線を向ける。

慎一郎も振り向くと、そこには黒髪の少女がいた。

 

「・・・話は終わりましたかね」

 

機械的な長弓と長刀を握り、黒い着物と甲冑を纏った少女。

魔女狩り部隊の副隊長───M4が立っていた。

 

「やれやれ・・・兄様がいるとマスターの話を聞いて、急いで来てみれば本当にいるとは思いませんでした。・・・で?どうします?私はここで彼女を殺してもいいですよ。なんならそれが仕事ですし。兄様が彼女を連れて逃げるならどうぞご自由に。私は見なかったことにしますので」

 

「だ、そうだ。白音、どうする?」

 

魔女狩りの副隊長の言葉を聞いて白音は呆然と、慎一郎を見る。

 

「慎一郎さん・・・貴方は本当に一体・・・?」

 

そう言う白音に慎一郎は言った。

 

「───俺はただの喫茶店の店主だよ。ちょっと特別な力と頼もしい仲間や悪党のボスって肩書きを持つ──な」

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