悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第ニ十六話 リメンズ・オブ・アドミニストレーター

「───一人、ゲームオーバーか」

 

一人、自身が作ったダンジョンで魔法少女が死んだことを慎一郎は感じ取った。

だが、慎一郎はシーが取った不可解な行動に疑問を浮かべた。

 

「なんでシーの奴は一回も攻撃していない雨宮を攻撃したんだ?普通はそんなことなんて───」

 

確かにシーは”他のボスモンスターとは出生が違う”。

だが、今までこんなことはなかった筈なのに。

と、次の瞬間、慎一郎のスマートフォンが鳴った。

 

「だれだ?」

 

慎一郎は首を傾げながら画面を開けると、名前を見てああと納得する。

慎一郎はすぐに電話の通話ボタンを押すと、右耳にスマートフォンを近づけた。

 

「悪い、待たせた」

 

『此方も待っていないですよ、兄様。それより雨宮都についての事を途中経過ですが報告します』

 

「頼む」

 

慎一郎の返答にM4は答えた。

 

『まず雨宮都ですが、彼女は去年、一般人から魔法少女になったみたいですね』

 

「なるほどな。そりゃ過去のリストに無いわけだ」

 

慎一郎は納得した様子で椅子に背を預ける。

 

『そして今回の事件の能力者らしき人物と雨宮都、そして今も行方不明の魔法少女、神城海と関わりがあるらしく───」

 

「おい、ちょっとまて」

 

『どうかしました?兄様?』

 

神城海───確かその魔法少女は───!

 

「神城海って確か“リメンズ”が独断で俺の階層ボスモンスターにした魔法少女だぞ!?」

 

 

もしそれが本当なら───

しかもこの状況を《アイツ》はきっと見ているはずだ。

リメンズ・オブ・ラビリンス第三百三十二層のボスモンスター《リメンズ・オブ・アドミニストレーター》。最後のボスモンスターを除く全てのボスモンスターの生成から操作までラビリンスの中であればなんでも出来る。

それにアイツは前科もある。

何故なら“何人かの魔法少女を主の慎一郎に気づかれぬよう迷宮階層のボスモンスターにしたことがある”のだ。

その一人が“ホワイトライダー”。

 

ホワイトライダーの人だった頃の名前は───

 

 

───“神城海”───

 

 

魔法少女としての自意識は無いと言っていたが、アイツのことはどうも信用できない。

 

「M4」

 

『なんですか?』

 

「今から───こっちに来れるか?」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・ん」

 

ふわふわとした空間に漂う感覚に雨宮都はゆっくりと瞼を開く。

そこは広大な海が広がっていた。

 

「・・・ここは?それに私はあの時───ッ!?」

 

槍に突き刺され死んだ筈と都がそう思った瞬間、周りが一瞬で暗くなった。

 

「な、なに!?」

 

光を通さない暗闇。そんな中、不安になりながら都はあたりを見回すと、奥でモニターらしき光が点滅していた。

 

「・・・ぁ」

 

そのモニターの先には自分を殺した筈のホワイトライダーが大事そうにモニターの光をジッと見つめていた。

都はそんなホワイトライダーに近づいていく。

先ほど殺された恐怖もある。だがそれ以上にホワイトライダーのその姿が都には悲しそうに見えた。

都はモニターに視線を向けると、そこには───

 

「・・・ぇ?」

 

“二度と救われることのない魔法少女の姿”があった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

ねえ、■■■君。

どうしたら私と一緒にいてくれるのかな?

 

この服はどうかな?

この髪型は似合うかな?

この仕草はカワイイと思ってもらえるかな?

 

魔法少女である私は一般人の彼からしてみれば怖がられるのは分かってる。

だけれど、彼と一緒に居られるなら、どんな努力だってする。

 

そう決めた。

 

でも、どうしたら君と一緒に居られるのだろう?

彼は私とは違ってクラスでも人気ものだ。

生半可な努力では一緒には居られない。

学校で一番可愛くなれば君は私を側に置いてくれるのかな?

だから私は毎日、魅力的になるように努力した。

クラスのみんなから私が一番カワイイと称賛してくれた。

けれど、君は私をちゃんと見てはくれない。

 

なんで?どうして?と疑問もあったけれど、私は諦めきれずに彼と毎日会話をした。

少しでも、君と居られるように。

だけど、君は私をちゃんと見てくれない。

もしかしたら人見知りなのかなと思って、私は毎日毎日、彼とお話をした。

 

そしてある時、私は彼に好きな人がいることを知った。

 

どうして?

 

 

 

 

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

なんで?

 

 

 

 

どうして───君の隣にいるのは私じゃないの?

 

そして私は気付いた。

私は・・・彼と一緒にいることなど出来ないのだと。

彼は、魔法少女である私には振り向かない。

私では彼の隣には居られない。

 

私は何のためにこんなに努力したのだろう?

 

無意味だった。

 

無意味だった。

 

無意味だった。

 

私は幸せそうに歩く■■■と彼女を見て、自分のその惨めさに絶叫する。

だから私は───

 

 

 

あの人二・・・

 

 

 

「・・・ひっ」

 

都はモニターを見て、顔を強張らせる。

つまり、ホワイトライダーとは───

 

「そう。お前の予想通り、ホワイトライダーは“元魔法少女”だ。全部とは言わないが、この迷宮のボスモンスターのごく一部は元魔法少女ですよ」

 

「・・・ッ!誰!」

 

都が振り返ると、そこにいたのは一人の男性だった。

警戒する都に、男は笑う。

 

「私の名前はリメンズ。慎一郎様からこのダンジョンの管理を任せているまあ、貴方がたで言うAIに近いものです」

 

そう言うリメンズに都は言った。

 

「なんでこんな酷いことをするんですか!?他の魔法少女をこんな───」

 

「化物にしてこんな場所に閉じ込めるだなんてって言いたいんでしょう?貴女は」

 

「───っ」

 

その言葉に都は言葉を詰まらせる。

そんな都に、リメンズは口元を笑みで歪めた。

 

「言いたいことが丸分かりです。貴女は感情を表に出し過ぎなんですよ」

 

リメンズはカツカツと靴を鳴らしながら都に視線を向けた。

 

「貴女は幸せですよねぇ?無知で何も知らない。貴女方が戦っていたホワイトライダー・・・彼女はね、貴女の“被害者”なんですよ?」

 

「・・・ぇ?」

 

都はリメンズの言ったその言葉に呆然とする。

 

「ほら、モニターを見ました?ホワイトライダーの元になった魔法少女。貴女の記憶をちょっとだけ拝見させてもらいましたけど、“一致するんですよね”。彼女の記憶と」

 

彼女と言うのは恐らくホワイトライダーのこと。だが、一致するとは?得もしれない強烈な不快感が都の背筋を這い登る。

 

「ホワイトライダーが言っていた彼女・・・それ、貴女のことなんですよね。貴女が彼女が好きだった彼の告白を断ってその後、魔法少女になったのに、彼女は“魔法少女だったから”彼に見向きされなかった」

 

「ぁ・・・ぁ、ぁぁ・・・」

 

リメンズの言葉が胸を抉る。

 

「いい加減、現実を見ろよ。お前は周りを助けたいという善意で魔法少女になったんだろうが、お前のその善意が人を救えるとは限らねぇんだよ。慎一郎様の世界は“そんな希望なんてない”」

 

希望なんてない。───そんなの、聞きたくない!!

 

だが、都のそんな思いは目の前の男には届かない。

 

「貴女も、そこにいる彼女みたいに“全て諦めてしまえば”楽ですよ?」

 

リメンズは都の頭を掴むと、その顔をモニターへと向ける。

 

 

そこに一人の少女がいた。

 

 

癖っ毛のある黒髪を肩まで伸ばし、赤い瞳の少女。

だが、そんな彼女は膝を抱えた状態で彼女の目には光が灯っていなかった。

 

「彼女が“ホワイトライダー”ですよ。なーんの反応もなくてつまらなかったですけど、今はいい玩具が出来たので彼女には満足してます」

 

「ぁ・・・ぁぁ、ぁぁぁ・・・」

 

私があの子を───

 

「ああ、そうそう。貴女にイイコトを教えてあげます。最近話題の能力者。まだ慎一郎様は気付いていないようですけれど、アレ、貴女に告白して振った彼らしいですよ?今は薬で情緒が不安定なんだとか。あーあ、“お前のせいで無関係な奴”が死んでるなぁ」

 

そしてリメンズは都に───彼女にとって最悪の言葉を投げた。

 

 

 

 

「“お前は───疫病神───だな”」

 

 

 

 

『“この───疫病神”!!』

 

 

 

自殺した母が彼女に遺した呪いの言葉だった。

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