悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第ニ十八話

「───ッ!?」

 

慎一郎は唐突に走った頭痛に顔を歪める。

 

「リメンズ!!何があった!」

 

慎一郎は頭痛で痛む頭を無視し、ダンジョンの管理者であるリメンズの名を呼ぶと、リメンズ笑いながら姿を現す。

 

「いや、スゴイですよ彼女!!まさかこうも簡単に“堕天化”するとは俺も予想外でした!」

 

「堕天化だと!?」

 

リメンズの言葉に慎一郎は驚愕する。

 

堕天化。

 

それは魔法少女にのみ起こる反転現象。

彼女達は国の兵器でもありながら、感情を持つ一人の人間だ。

人であれば誰だって触れられたくない過去やトラウマを持っている。

極端に負の感情やトラウマが彼女達の中でフラッシュバックした場合、“堕天化”という現象が起こるのだ。

その結果、現れる魔法少女を“魔女”と呼ぶ。

本来、魔女狩り部隊の意味は暴走した魔法少女を殺すというより、こちらの“堕天化した魔法少女”を殺すというのが本来の意味合いなのだ。それが何時しか堕天化した魔法少女を見ることが無くなり、暴走した魔法少女も抹殺対象として彼等は見ることになった。

 

柊の時はまだ“自意識”が残った暴走だったのに対し、雨宮都のソレは“堕天化”だ。

堕天化したら最後、彼女を救い出す方法はない。

ただ、“殺す”だけだ。

 

「────リメンズ」

 

「どうしました?慎一郎様」

 

「第五十層のフォートレスフル・キャンサーを第十二層に送れ。アイツなら“雨宮を殺さずに時間稼ぎ”が出来る」

 

「殺さなくて良いんです?」

 

そう言うリメンズに、慎一郎は口を開いた。

 

「なんなら、今ここで、勝手なことをした“お前を殺してやろうか”?」

 

今の慎一郎は間違いなくキレている。そんな慎一郎に歯向かうことは自身の死でしかないだろう。

リメンズは肩を竦めながら口を開く。

 

「おお怖い怖い。分かりましたよ。ではフォートレスフル・キャンサーを十二階層に送りますが、他にすることはあります?」

 

「“俺と葵も出る”。フィールド全体を破壊不能オブジェクトへ変更してやるから彼女を絶対に逃がすなよ。後はバルギルを連れて行く。万が一の事もある。不確定要素は徹底排除だ」

 

「それはそれは───」

 

彼女も運がない。慎一郎様が出るとなれば一瞬でカタつく。なぜなら彼はあの世界では“王”なのだから。

 

「───お前の処分はその後だ。余計な事をしやがって」

 

慎一郎は後ろに立っているリメンズにそう吐き捨ててから、門を潜った。

その背を見送ったリメンズは笑う。

 

「さて慎一郎様に言われた事ですし、カニを送りましょうかね。硬さは破壊不能オブジェクトの一歩手前の硬さですし、魔法耐性も凄まじいですからあの城壁が突破されるなんて事はないでしょうけど」

 

バルギルも連れて行くと言っていたが、あれは過剰戦力だろう。不確定要素の排除とはいえ、三百層クラスのボスモンスターの中でもトップクラスのステータスを誇るのだ。

堕天化した魔法少女でもまず勝てない。

 

「慎一郎様は彼女を助けるつもりなんでしょうが、どう助けるんでしょうね?」

 

堕天した魔法少女は元に戻らない。主もそれを分かっている筈だ。

 

「まあ、面白ければなんでもいいか」

 

人間ではない自分には彼等のセンチメンタルな感情など分からない。

だが───

 

「───ヒヒヒッ!魔法少女は化物みたいなのに心は人間のままだ。センチメンタルな感情を抱えていちゃあ、兵器として何もかも無価値でしかないのに。これじゃあ慎一郎様の方が一番人間をしているのに───一番の化物だ」

 

この救いようの無い世界を変える。

それがどれだけ難しいと思っているのだろうか?

 

「一番まともそうに見えて一番狂っているのは貴方ですよ。慎一郎様」

 

堕天した魔法少女も救う。

そんなことができるのは“神様”しか出来やしないのに。

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