悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件 作:鉄血
「あああああああああッ!!」
ホワイトライダーの足元で倒れ伏していた都からドス黒い魔力が溢れ出る。
普段の雨宮都の魔力とは桁違いの魔力と魔力量に、白音は一歩足を引いた。
「・・・一体何が起こってるの!?」
見たことのない光景を前に、白音は純粋な疑問と恐怖を隠せない。
そんな白音に、答えたのはモノだった。
「───“堕天化”だよ」
「堕天化・・・?それは一体なんですか!?みゃーこは無事なの!?」
堕天化とは一体なんなのか?だが、そんなことよりも白音は都のことが一番の心配だった。
一度死んで、あんな風になるのは普通じゃない。
そんな都の心配をする白音に、モノは言う。
「無事かって言われたら、ソレはNO。“堕天化”した魔法少女は“二度と元に戻らないし”、魔女狩りの最優先討伐対象なんだ。だから殺すしかないんだよ」
「───ッ!?そんなのッ!?」
殺すしかないと言い切ったモノに白音は噛みつこうとするが、それを見越すようにモノは話を続ける。
「元に戻せるかもしれないだろうって?そんなの出来はしないんだよ。シンだって、何度も堕天化した魔法少女を救おうとした。でも出来なかった。分かれよ───堕天化は、ボク達魔法少女について回る“呪い”なんだ。誰だってトラウマを持ってるだろ?堕天化はね、負の感情で発源するものなんだよ。だから、何かしらの事情を抱えているボク達魔法少女はふとしたきっかけで堕ちるだなんてザラだ。そうなったら、堕天化した本人が自意識を取り戻しても、魔女狩りの抹殺対象対象だ。この世界にいちゃいけない存在───それが“魔女”なんだよ」
白音が魔法少女になった日───政府の一人の男が言っていたことを思い出す。
『魔女は世界を───他者を無差別に傷付ける。それは力の制御を出来ぬ今のお前達も同じだ。お前達が魔女と言う存在になれば、それは世界を破壊する破壊者になると言う事。お前達が魔女と言う忌まわしき存在にならぬよう、日々努力をし、この国を守る者という誇りがあるということに胸を張るがいい』
魔女になるというのは“世界の破壊者”になるということ。
そうならないように───
「───ッ!?違う!」
一体自分は何を考えていたのだろうか。
都を助けるためにと考えていたはずが、何時の間にか“自分もそうならないように”と思考が変換していた。
「何が違うのかは知らないけど、今は“アレ”を何とかするのが先だろ」
二人の視線の先────“ホワイトライダーを倒した”雨宮都が虚ろな瞳で此方を見ていた。
だが、彼女のその姿は“魔法少女”としての面影はない。
今の彼女は学校の制服ではなく、漆黒のドレスを纏っており、彼女の周りには髑髏や骨でできた楽器達が彼女を囲むようにクルクルと回っている。
「・・・みゃーこなの?」
あまりにも普段の彼女と纏う雰囲気が違い過ぎて都をよく知る白音ですら、別人かと思うくらいに変貌していた。
「堕天した奴とは何回か戦ったことがあるけど───正直これは勝てるかな?」
「みゃーこ・・・絶対に助けるからね」
二人はカットラスと馬上槍を構え、都のもとへ全力で駆け抜けた。
振りかぶられる剣と槍。
かたや急所をもうかたやは脚を狙った攻撃に、都は虚ろな瞳のまま口を開いた。
彼女の周りに浮遊する髑髏達も都に合わせるようにその口を開けた。
そして───
「People and towns that can't be saved.poor rivers and forests.A world without happiness.destroy all」
【救えない人も街も、出来損ないの川や森も、幸せの無い世界も、一つ残らず破壊する】
「クソッ!!」
「きゃっ!?」
その詩と共に、二人は髑髏から発生する音の衝撃波で彼女達は吹き飛ばされる。
それと同時に、彼女達にも異変が起こり始めた。
「・・・ッ!?」
「・・・くっ・・・な、なに!?」
突如として息が苦しくなる。破壊しろ───破滅しろ───死ね───一つ残らず───
彼女達の内側から蝕むそれは破壊の衝動。
それと同時に自身の魔力が増大し、周囲にばら撒かれようとしている。
「無意識な破壊衝動や殺人衝動の活性化と洗脳って言ったところかな───このボクをその程度で操れると思うなよ」
モノは自身の魔力を無差別に放出し、周囲を破壊しているが、誰かに縛られることが一番嫌いなモノは彼女に従えという命令はモノのプライドが許さない。
虚ろな瞳の都をモノは叛逆の意志を滾らせながら鋭い視線で睨み返す。
(そうだ。──ボクもまだみゃーこを助けられてない!!)
都も同じように自分の内側から蝕んでいく破壊衝動を抑えながら立ち上がった。
「・・・へぇ、中々やるじゃん。少しは見直したよ」
「ボクだってやらなきゃならないことがあるから───」
「ふーん。ちょっとは気に入ったよ」
「あなたに気に入られたくない」
感心するモノに白音は言い返すと、覚悟を決め、槍の尖端を都へと向けたその時だった。
『はいはいはーい!!ではでは皆さんにラッキーなお知らせがありまーす!』
ダンジョンにやたらテンションが高い男の声が響き渡る。
モノと白音は顔を上げると、そこには青白いモニターが映し出されていた。
画面に映る男はニヤニヤとした気味の悪い笑みを浮かべながら、その口を開く。
『慎一郎様がそちらへと向かわれました!今から慎一郎様が到着するまでの間、ボスモンスターと共に彼女の足止めをしてもらいまーす!!さあこいよ。the fortress full Cancer!!』
男のその言葉と同時に上空に光のゲートが開かれる。
そしてその中から───
“ズルリ”と巨大な鋏がゲートの中から這い出てきた。
「──────」
二人は這い出てくるそれに目が離せない。
何故なら這い出てきたそれは彼女達の世界でもいる蟹なのだが、その甲羅の上に“巨大な城”がとにかく目にいく。
デカい。ただ、ただデカい。
ボス部屋の三分の二をその巨体が埋め尽くし、部屋の天井部分が城の頭頂部に擦れている。
ガリガリと天井の石が削れる嫌な音をたてながら、巨大なカニはその鈍色に光る巨大な鋏を掲げた。
『ギシャャアアアアアアアアアアアアッ!!!』
複数のHPバーが表示され、そしてその空にその蟹モンスターの名前が刻まれた。
【the fortress full Cancer】
ザ・フォートレスフルキャンサー
50階層のボスモンスターが雨宮都の足止めの為、顕現した。