悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第三話

「ねえ、白音ちゃん」

 

「うん?なに?」

 

名前を呼ばれた白音は赤い眼鏡のレンズ越しに映るコウハに視線を向ける。

 

「白音ちゃんは、店長さんのこと好きなの?」

 

「・・・な、なんで?」

 

白音は突如、コウハにふられた話に困惑しながらそう返事を返すと、隣に座っていた都が小さく笑っていた。

 

「だって白音ちゃん、さっきからずっと店長さんを見てるんだもん。白音が店長さんの事、多分他のメンバーも知ってるよ?」

 

「み、みゃーこや皆も・・・」

 

白音は頬がかぁと熱くなるのを感じた。

確かにこの店でバイトの掛け持ちを始めた以前に比べれば、あの人に目がいってしまうのは自覚はしていた。

だが、そこまで分かりやすいものだったのだろうか?

 

「で?どうなの?」

 

グイッと身を乗り上げて顔を白音に近づけるコウハに、白音はボソボソと呟く。

 

「・・・好き・・・なんだと思う」

 

そう言って顔を伏せる白音に、コウハと都は「「おおー」」と声を揃えながら白音に言った。

 

「どういった感じで好きになったの!?教えて教えて!」

 

「うん。私も気になる」

 

コウハと都のキラキラした目に、白音は恥ずかしそうに口を開いた。

 

「最初にボクが初めてあの人を好きになったのは、アルバイトし始めて少したった日なんだ」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「えーっと・・・柊白音さん?お前さん、一応学生だよな?アイドル業をしているみたいだけどアルバイトして本当に大丈夫?」

 

「問題ありません」

 

戸惑うような質問に白音は短く答える。

 

「いやまあ、確かにうちは来てくれるだけでもありがたいんだが、何で若いのにバイトを掛け持ちをしようだなんて思ったんだ?」

 

「若いうちに経験を積んで置けば将来的に選択幅が広がると思っただけです」

 

慎一郎は白音の言葉を聞いて小さく息を吐くと、そのまま白音に視線を向けて言った。

 

「まあ、本人がそう言うならいいか・・・。ただ、無茶はするなよ?シフトも無理に詰めさせないからな。今だけなんだぜ?青春楽しめるのなんて」

 

椅子から立ち上がる慎一郎に、白音は口を開く。

 

「じゃあ、ボクは───」

 

「───合格だ。ただし、テスト前なんかはシフト減らすからな。それで成績が下がったら元も子もない」

 

「・・・ありがとうございます」

 

最初は優しい店長さんとしか思っていなかった。

普通の人とは違ってちょっと変わってて、だけど優しい店長さんなんだと。

けど───

 

「店長さん、お疲れ様でした」

 

「おう、お疲れ様。と、柊。少し時間あるか?」

 

「え?ボクは大丈夫ですけど・・・」

 

白音は勤務時間が終わり、店長に挨拶をして帰宅の準備をしようとしたそのとき、店長に呼び止められる。

キョトンとした表情で答える白音に、慎一郎は言った。

 

「ちょいと疲れただろ?コーヒーとケーキ出してやるよ。代金とか気にすんな。俺の店だしな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

好意に甘えて・・・というのもちょっとだけあったのかもしれない。けど、ボクがあの人を意識し始めたのはこの時だったのだと、確信できた。

 

「ほら、召し上がれ」

 

「ありがとうございます」

 

白音の前にコーヒーとケーキが並べられ、その向かい側の椅子に慎一郎はコーヒーカップを片手に座り込む。

白音は差し出されたケーキをフォークで小さく切り取ると、一口サイズにまでカットされたケーキを口の中へと入れた。

 

「あ・・・おいしい」

 

口の中で溶けるクリームと控えめな甘さのケーキに、白音は思わずそう言葉を漏らす。

そしてコーヒーも一緒に飲んでみると、その苦味が絶妙にマッチしてケーキの甘さを中和していた。

そんな白音の反応に、慎一郎は笑う。

 

「・・・だろ?味にうるさいラインハルトのお墨付きだ」

 

そう言う慎一郎は白音を見て、口を開く。

 

「最近、どこか暗そうな表情をしていたが・・・何かあったのか?」

 

慎一郎のその言葉に、白音は少し顔を伏せてからポツポツと言葉を漏らし始める。

 

「・・・最近、両親の仲が良くないんです。だからあまり家に帰りたくなくて」

 

「そうか」

 

不味いものを聞いたと言う表情で、慎一郎はコーヒーカップを机に置く。

 

「・・・もし、辛くなったりしたらバイト以外でも来な。その時はいつでも話し相手になってやるさ。辛いことをずっと溜め込み過ぎると、身体にも心にも悪いのは俺も知っている」

 

「・・・はい」

 

それ以降───この喫茶店に来て、慎一郎さんがちゃんと私と面向きあって相談に付きあってくれることが、ボクの〈シリウス〉のメンバーと一緒にいる以外で唯一の楽しみだったのかも知れない。

 

「まあ、そんなことがあったから・・・かな。ボクがあの人を好きになったのって」

 

「「おおー」」

 

コウハと都は照れながらコーヒーを口にする白音の初恋話に、感化されたのか二人でパチパチと拍手をする。

 

「そんなことがあったんだねー」

 

「白音ちゃんにそんな事があっただなんて知らなかった。もし、良かったら私達にも相談してね?力になるから」

 

「・・・ありがと」

 

白音は都の言葉に短く礼を入れて、壁にかけてある時計を見ると、時刻は五時半を切っていた。

 

「あ、もうこんな時間」

 

「あっという間だったねー」 

 

「私は結構楽しかったかも。白音ちゃんのことが知れて」

 

「あ、それは同感」

 

「コウハにみゃーこも!もう・・・!」

 

そんなやり取りを交わしながら鞄を持ち、レジへと向かう。

 

「おう、会計だな」

 

カウンターで本を読んでいた慎一郎は立ち上がると、そのまま慣れた手付きでレジを打つ。

 

「いつもありがとう。・・・っと、そうだ柊」

 

「あ、はい」

 

白音は唐突に呼び止められた慎一郎に返事を返す。

 

「明日のバイトなんだが、ちょっと俺の方が用事が出来ちまってな。急遽休み入れることになったから、また今度でいいか?」

 

「あ、ボクは構いません。店長さんも用事を優先して貰えれば大丈夫です」

 

「おう、すまんな。後、最近怪物とか組織の連中達が活発になっているって話だし、三人とも気をつけて帰れよ?」

 

「はい!私は大丈夫ですので!」

 

「遅くならないうちにボクも帰ります」

 

「心配してくれてありがとうございます」

 

三人はお礼をしながら喫茶店の扉を開け、店を後にする。

 

「本当にいい人だよねー店長さん。あれは白音も好きになるの間違いないかー」

 

「うん。私も応援してるよ」

 

「あ、ありがとう」

 

三人はそんな会話をしながら帰路へ歩こうとしたとき、駐車場で見慣れない高級そうな黒い車が止まっていた。

 

「・・・?・・・あの車」

 

白音はその車に目をやると、車のバックドアが開かれる。

そこから現れた人は黒のスーツに青いバイザーと黒い金属で出来た鉄仮面をつけた男だった。

 

「ねえ、あれって・・・」

 

「あの人は確か、大企業《カルケル》の社長さんだったはずだけど・・・」

 

「カルケルって確か、私達が使ってるスマートフォンとかアンドロイドとか機械系の商品出してる会社だったよね?」

 

「うん。けど、あの喫茶店に入っていったよね?常連さん・・・なのかな?」

 

「多分、店長さんの知り合いだと思う。確か社長さんの名前ってラインハルトだったから」

 

「はえ〜、凄い人と知り合いなんだね」

 

関心するコウハに二人は頷いた。

 

「あ、私達も早く帰らないと。電車が行っちゃう」

 

「あ、それはマズイ!」

 

「うん」

 

三人は急いで駅へと走っていく。その影を、鉄仮面の男がバイザー越しで静かに見つめていたのを気が付かないまま。

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