悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第三十話 

フォートレスフルキャンサーが咆哮と共に、巨大な鋏を都めがけて降り下ろす。

 

「──────ッ!!」

 

片方の鋏だけで電車の一両分以上の大きさを誇るその鋏を都は声と同調するスピーカーの衝撃波で吹き飛ばした。

その衝撃波にフォートレスフルキャンサーは少しだけ体勢を崩すが“それだけだった”。

 

「───!!」

 

HPバーが数ミリしか減少していない。

 

「マジで言ってる?───それ・・・」

 

攻撃型ではないとはいえ、堕天化した魔法少女の攻撃を蚊にでも刺されたようにほとんど効いていない。

 

「そりゃあそうですよ。フォートレスフルキャンサーはダンジョンの中でも“最硬”ですからね。たかが、堕天化して闇堕ちした魔法少女の攻撃なんざコイツを倒すだけで何週間かかるか・・・ヒヒヒ、慎一郎様と葵様のタイムアタックを越せるかな?」

 

モノの考えていたことを唐突に現れた男が口にした。

 

「・・・!お前は───」

 

隣に現れたその男。その男はスクリーンに一度写っていた男だった。

 

「リメンズ・オブ・アドミニストレーター。以後、お見知りおきを」

 

ニヤリと笑みを浮かべたまま、リメンズは堕天化した雨宮都に視線を向ける。

 

「前に慎一郎様が救おうとした魔法少女とは違うタイプのようだ。敵の弱体化、サポート型の魔法少女が堕天化すると性質が逆になるみたいですねぇ」

 

リメンズはフォートレスフルキャンサーと戦闘を行っている都を見て、そう呟く。

 

「ハァッ!!」 

 

白音のその声と共に、槍を突きだした。

 

「─────────ッ!!」

 

突き出されたその槍を都は叫び声と共に、周囲に浮かぶスピーカーが口を開け、爆音が白音とフォートレスフルキャンサーを襲うが、白音はその爆音を氷の障壁で防ぐ。

 

「───ッ」

 

爆音を防いだ氷の障壁はその一撃で粉々に粉砕されるが、白音はそのまますぐに掌を石畳に触れ、都の足もとを氷で凍らせた。

都の動きを止めた白音はそのまま一気に距離を詰める。

だが───

 

「ああああああああああああああッ!!」

 

都のその歌にもなっていない絶叫のような叫びに、スピーカーから爆音と衝撃波が撒き散らされ、彼女の動きを止めていた氷が粉々に砕け散った。

 

「・・・やっぱり」

 

普段づかいの力では彼女を押し込めることは出来ない。

なら、もう一段階出力を上げるしかない。

 

「Dauerfrost Ritter!!【ɡʊstaf】!!」

 

白音のその言葉と共に、巨大な氷の砲塔が現れる。

凍土の騎士───という彼女の力に似合わず、巨大な氷の砲塔が都に狙いを定める。

そして───

 

「発射!!」

 

白音が叫ぶと、巨大な砲塔から氷塊の弾丸が発射された。

氷塊の弾丸は放射状に孤を描きながら都目掛けて飛んでいく。

そしてその氷塊が都に直撃するその時だった。

 

「───それをやったら彼女が死に戻りしますよ」

 

その言葉と同時に、“氷塊の弾丸が切断された”。

 

「なっ!?」

 

「・・・っ!」

 

「おや?」

 

その場にいた三人はそれぞれの反応を示しながら切断された弾丸は地面へと着弾し、都の辺りを一瞬にして氷の大地と化する。

そして、都と白音達の間に、一人の少女と男が降り立った。

 

「ギリセーフ・・・と言ったところか」

 

「堕天化した彼女を追い詰めるとは流石は第二位ですねー。でもまあ、“その程度”です」

 

少女はそう言って右手に握った機械仕掛けの刀を振り払い、都に顔と視線を向ける。

 

「それで兄様。どうします?」

 

「“俺が彼女を呼び戻す”。来てそうそう悪いが、四人とも一旦“死んでくれ”」

 

生き返るとはいえ、この命令はしたくない。

 

「シン?」

 

「慎一郎さん?それはどういう───」

 

「あーあ。生き返るとはいえ、こうなるんですかぁ」

 

男───慎一郎はそう言って、パンッ!と手を叩く。

 

叩かれた掌と同時、小さな黒い竜が慎一郎のフードから顔を出す。

 

「───バルギル。やれ」

 

慎一郎のその言葉と同時に、バルギルは小さな身体から一気に巨大な身体になる。

 

「グオオオオォォォォッ!!」

 

咆哮と共にバルギルは空に飛翔する。

そしてバルギルの口から青白いブレスがフォートレスフルキャンサーと、六人がいる部屋に一気に拡がった。

 

「ぅ・・・ぁ・・・」

 

「・・・・・ッ!!」

 

「腕の人工皮膚が溶けていますよ。まあ、ゲームで本当に良かったです」

 

灼ける。熱い。苦しい。息ができない。

だがそれは炎ではなく、純粋なエネルギーの塊を放出する前の余波。

そしてその余波が十数秒続いたその時、バルギルの口から集束した蒼白い光が地へと落ちていく。

エネルギーの余波で灼かれた彼女達が朧気になった意識の中で見たその蒼い光はとても幻想的だった。

 

まるで集束した星の最後のように輝く光。

 

強く輝くその光が地面に触れたら最後、自分達は死ぬだろうという生命的な本能が訴えている。が、彼女達は動けない。

そしてその光の最後を見ようと白音は目を見開いた。

地に着弾した光が一気に拡散する。

それはまるで星の最後を見ているように幻想的で───

 

そこで白音達の意識は途絶えた。

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