悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第三十一話

「・・・・・」

 

何も見えない闇の部屋。

慎一郎は目の前に蹲りながら泣いているであろう少女に慎一郎はしゃがみながら視線を合わせた。

 

「・・・よう、雨宮。こんな所で蹲ってどうした?こんななんにもない暗い場所で一人で居て。柊達が待ってるぞ」

 

「・・・・・」

 

反応はない。だが、慎一郎はそんな都の後ろに背を合わせながらその場に座り込む。

 

「どうしたんだ、雨宮。なにか思い出したくないことでもあったのか」

 

慎一郎のその言葉に、蹲ったままの都は小さく言葉を漏らす。

 

「・・・私は、疫病神・・・なんです。お母さんやあの子や、翔君を皆傷つけて・・・だから、ここにいちゃ・・・」

 

ほとんど聞こえないような掠れた小さな声だった。

 

「なるほどな」

 

雨宮にとって自分のせいで皆を不幸にしていくと思っている。だからこそ、心優しい雨宮は耐えられないのだろう。

自分のせいで皆が苦しむ姿が。

 

蹲りながら泣いている彼女に、慎一郎は言った。

 

「疫病神・・・か。俺は雨宮のことをそうは思わないけどな。確かに少ししか接点はないし、軽く話すくらいだから詳しい事は良くは知らない。けどな、柊から良く雨宮の事を聞くんだよ。雨宮は優しくて、友達思いだってさ」

 

「・・・・・」

 

小さく都の身体が揺れる。だが、彼女は顔をあげようとはしない。

そんな都に慎一郎は更に語る。

 

「それにな、人の不幸だなんて人の幸せの数だけある。雨宮は自分が不幸になれば皆が幸せになると思っているのか?そうじゃないだろ。誰だって知人が不幸な目にあったら心配になるし、助けたくなる。だから雨宮、これくらいで自分を攻めるんじゃない。雨宮が言ったあの子って神城海って娘だよな?あの子はな、自分でこの道を選んだんだ。これ以上傷つきたくないって俺やリメンズに言ってな。だから、気にするな」

 

慎一郎はそう言いながら、口を更に開く。

 

「雨宮。お前は疫病神なんかじゃない。柊や雨宮の友達の朱羽だったか?・・・お前のことを必要としている。たとえ他の奴が雨宮を否定したとしても、柊や朱羽は雨宮を絶対見捨てたりはしないさ。・・・勿論、俺もな」

 

慎一郎のその言葉に都は小さく唇を開く。

 

「・・・どう、して?」

 

「ん?」

 

「・・・どうして、そこまで・・・私を救おうと、するんですか。私は・・・もう、皆の場所には帰れない、のに」

 

自分が堕天化して帰る場所がないと言う都に、慎一郎は言った。

 

「帰る場所がない、か。あるだろ?雨宮には帰る場所が」

 

「・・・ぇ?」

 

慎一郎のその言葉に、都は顔を上げた。

 

「みゃーこ!!」

 

都が顔を上げたと同時に、白音が何処からともなく現れる。

そして蹲る都を白音はその胸に抱きしめた。

 

「・・・・はく、ね・・・ちゃん?」

 

白音に抱きしめられた都は、その虚ろな瞳に少しだけ光を灯させる。

 

「・・・・ごめんねみゃーこ。気づいてあげられなくて。みゃーこがそんなに思い詰めてるなんてボク知らなかった。もっと早く気付いてれば・・・ごめんね」

 

「・・・ぁ」

 

白音のその言葉を聞き、都は瞼に涙を浮かべた。

 

「白音、ちゃん。慎一郎、さん」

 

 

都は二人の名を呼ぶ。

 

「私・・・生きていていいの?私、これからもいっぱい、いっぱい迷惑、かけるかもしれ、ないの・・・に」

 

「うん、いいよ。ボクだってみゃーこにいっぱい迷惑かけたから。今度はボクだってみゃーこの力になるから」

 

「雨宮。今のうちに大人に迷惑や我が儘を言っとけ。雨宮や柊はまだまだ子供なんだ。我が儘や迷惑をかけて許されるのはお前等子供の特権だからな」

 

二人のその言葉に都の感情の防壁が決壊した。

 

「う、ぁ・・・ぁぁぁぁッ!!」

 

二人のその言葉に耐えきれなくなった都は嗚咽を漏らしながら白音の胸内で泣き腫らす。

 

「ごめんなさい・・・!ごめんなさい・・・!」

 

「・・・みゃーこ」

 

そんな都に白音も泣きそうな表情になりながら、都の背中に手を回して抱きしめる。

 

「・・・全く」

 

慎一郎はそんな二人を見て小さく息を吐いた。

だが、慎一郎にはまだやることがある。

 

「雨宮。そのままでいい、少し聞いてくれ」

 

「・・・・?」

 

慎一郎のその一言に、都は涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げる。

 

「今、雨宮の現実の身体は堕天化した身体だ。このまま現実世界に帰れば魔女狩りに真っ先に狙われる。だから今からこの腕輪を付けてくれないか?まだ試作品だから結構ゴツいがそれでもコイツがあれば魔女狩りや他の魔法少女からも狙われないですむ筈だ」

 

「・・・いいん、ですか?」

 

「良かったねみゃーこ!これで狙われなくてすむよ!」

 

「う、うん」

 

自分のことのように喜ぶ白音に、都は小さく頷いた。

 

「───さて」

 

そんな二人に慎一郎は立ち上がる。

険しい表情を作ったまま、慎一郎は口を開いた。

 

「おいリメンズ。話を聞いているんだろ。さっさと来い」

 

「お呼びですか?慎一郎様」

 

「・・・・っ!?」

 

都は現れたリメンズに、息を詰まらせる。

 

「おやおや?随分と怖がられたみたいですねぇ?」

 

「そんな事はどうでもいい。リメンズ───答えろ。お前は何を隠している?」

 

慎一郎のその言葉に、リメンズは笑みを浮かべたまま答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回の件のこと全て───ですよ」

 

 


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