悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第三十六話

コツン、コツンと足音が嫌に響く。

慎一郎と白音、そして都はこの地下街に入ってからかれこれ三十分以上歩き続けていた。

人混みが多い道から外れ、右へ左へ。迷路のように広がるシャッター通りを慎一郎を先頭に白音と都は彼の後をついていく。

 

「・・・ねぇ、白音ちゃん」

 

「・・・どうしたの?みゃーこ?」

 

白音が振り向くと、都が白音のコート裾を軽く引っ張りながら不安そうな顔をしていた。

 

「本当に大丈夫なのかな?もう私達以外の通行人が見当たらないけど・・・」

 

薄暗い切れかけの蛍光灯がパチパチと点滅する人気のないこのシャッター通りを通り、不安を覚えたのだろう。

そんな都に慎一郎は言った。

 

「ここから先は本当に間違って迷いこんじまった奴か、面白半分で探索をするやつ、もしくは、スラム街から街に向かう違法者くらいしか通らない道だ。十番区がなんて呼ばれているか知っているだろ」

 

「・・・地下迷宮・・・ですよね」

 

そう答えた白音に、慎一郎は頷いた。

 

「そうだ。それでここから先、上に上がる場所が九番区までなくてな。極々偶に此処から”抜け出せない奴”がいるんだよ」

 

「えっ?抜け出せない奴って・・・」

 

都と白音は慎一郎のその言葉に顔を青くする。もしそれが本当なら───

 

「二人の想像通り───”死体が転がってる”んだよ」

 

慎一郎はそう言って足を止めた。

 

「・・・慎一郎さん?」

 

急に足を止める慎一郎に白音は首を傾げると、慎一郎は人気がないシャッター通りの裏道に視線を向けていた。

白音と都はそちらに顔を向けると───

 

「・・・・ッ!?」

 

「ひっ!?」

 

白音は息を詰まらせ、都は小さく悲鳴を上げた。

真っ暗になった隙間道の先──”白い手”が見えていた。いや、白い手ではない。間違いなくあれは───

 

「・・・骨ですよね」

 

「・・・おう。迷いこんで出られなくなった奴の、な」

 

白骨死体。現代の今、普通にあるこの場所は異常だ。そして慎一郎は二人に振り返る。

 

「さて、ここから先は九番区───”俺が五年間”モノと一緒に育った能力者や貧困者達が過ごす場所だ。もうしばらく歩けば地上だ。絶対に俺から離れるなよ?ここじゃあ弱い奴は身包み剥がされたり、”市場”に連れていかれるからな」

 

「市場って・・・なんですか」

 

正直な話聴きたくない。だが、この国がどれだけの闇を持っているのかを二人は知ることとなった。

 

「文字通りだよ。人身売買、臓器提供・・・金がない貧乏人や珍しい能力を持った能力者・・・なんなら”魔法少女”だって売られている胸糞悪い場所だよ」

 

顔を歪めながら吐き捨てる慎一郎の言葉に白音と都は息を詰まらせる。

 

「そん、な・・・」

 

「そんなの、国が許すわけ・・・」

 

そんな非現実的な場所を聞き、二人は無意識にそう呟いていた。だが、それを慎一郎は肯定する。

 

「そうだ、許されねえことだよ。だがここじゃあ国の法律は関係ない。何故なら此処はこの都市の吐き捨て場。国のお偉いさんも見て見ぬフリだ。ごみ箱の中を覗くなんてことをお偉いさん方はしないからな」

 

慎一郎は一息入れ、白音と都の顔を見る。

そして二人に言った。

 

「ようこそ二人とも。───このくそったれな国の闇へ。俺は正直、巻き込みたくはなかったが・・・歓迎するよ」

 

慎一郎が二人を見る目は何処か悲しそうな目だった。

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