悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件 作:鉄血
国の闇へと足を踏み込んだ白音と都は、慎一郎から離れないように九番区の地下街を進んでいく。
路地の端にはホームレスの人達が力無く項垂れていたり、此方を窺うようにジッと見つめてくる姿を見て、二人は普段感じない別の恐怖を覚え、慎一郎の腕にしがみついた。
「おまっ、動きづらいだろ!?」
「・・・だ、だって・・・」
都は顔を真っ青にしながら周りを見回す。
ジッと屍のような目で此方を見る彼等を見て都はそう声を漏らす。それはある程度の恐怖に耐性を持っている白音も同じだったらしい。雨宮と同じとまでは言わないが、血の気が引いたように顔が白くなっていた。
慎一郎はそんな彼女達を見て苦い顔をする。
スラムの入口に入ってそうそうこれなら更に闇が深い所だと動けなくなるんじゃねえかなと思った慎一郎は、両腕から離れない二人に言う。
「こいつ等は隙を見せない限りは大丈夫だ。それにこのスラム街は爺のテリトリーだ。騒ぎなんか起こせばあの爺が出しゃばってくるから、彼奴等にとってそっちの方が怖いんだよ」
「・・・そんな人が、いるんですか?」
「・・・ああ。”貧困窟の王様”がな。昔、モノが荒れていた時期があってな。その時、俺の能力を”力技で破って”モノを半殺しにしたバケモノだ」
二人は慎一郎の口から出たその話に、信じられないといった顔をする。だが、それも無理はない。
慎一郎の能力は周りを強制的に自分のルールに従わせることが出来るのだ。それを力技で破るなど化物でしかない。
そんな怪物のもとに行くと言う慎一郎に、二人はギュッと慎一郎の服の裾を握ったその時───
”ゾクリ”───と
二人の背筋に悪寒が走った。
「───やれやれ。人をバケモノだ怪物だ・・・貴様はこの老いぼれをなんだと思っとるんだ」
「・・・・ッ!?」
「・・・・ッ!?」
「に、逃げろぉ!!巻き込まれるぞぉ!?」
凄まじい寒気が二人を襲う。
そして周りにいた人々は一斉に声が聞こえた反対側へと全速力で逃げ出し始める。
三人の視線の先───そこに”誰か”が立っていた。
「よお爺。ちょっと街中に入らせてくれねえかな。───情報屋に会いたくてよ」
「ふん。だったら其奴等はなんだ?いつも儂に噛みついてくる何時も小娘ではなく闇も知らぬ小娘を連れてきよってからに。そっちの娘は知らんが、もう片方の白い方は知っておるぞ」
白いギャングコートを肩にかけ、杖をカツカツと鳴らしながら鋭い目を白音に向けている。だが、その顔は”人間のモノ”ではなかった。
「な───」
いや、顔だけではない。肌が見えている部分全てが”動物”だ。灰色の毛皮に鋭く長い爪。白い顎髭を長く伸ばしてはいるが、間違いなく───
「あ、アライグマ・・・?」
「・・・フン。まあ、そんな反応をするか」
人間のように二足歩行をしながらつまらなさそうにする鼻を鳴らす老人のことアライグマが二人を見て言った。
「一応名乗って置こうか。儂はこのスラム街を支配しておる老王のウェン。他の奴からは貧困窟の王などと呼ばれておる能力者の爺とでも言っておくか」
この国の闇を支配する老王が三人の前に姿を現した。