悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第三十八話

「ウェンって確か───」

 

ウェンと名乗った動物顔の老人に白音と都は聞き覚えがあった。能力者を束ねる統一者。慎一郎の《組織》とはまた違う意味で有名な名前。

 

「ほう?儂の事を知っておるのか。いや、それも当然か。あの”件“はあのクソガキにとっても痛手じゃろうて」

 

笑うウェンに慎一郎は小さくため息をつく。

 

「そりゃそうだろうが。先代第一位の魔法少女を完封した上で腕力だけで叩きのめすなんて化け物しかねえだろ。俺でも出来ねえよそんなこと。それにクズとはいえ、現大統領をクソガキ扱いするのは爺くらいだぞ」

 

現時点で分かっている最強の能力者。老王ウェン。

三年前に先代第一位の魔法少女を”金の彫像“にした男。

 

「カカカッ。ちゃんと生かして帰してやっただろうに」

 

「“金属化“させて送り返した時点でほぼ死んでいるって言ってもいい状態じゃねえか。爺の”物質変換能力”は俺でも手を焼くぞ」

 

「貴様も大概だろうに。その能力の本質・・・未だに尻尾を掴めんわ」

 

凶暴そうに笑みを浮かべるウェンに二人は慎一郎の背中に隠れた。───この男はヤバい。

人間の───動物としての本能がそう訴えていた。

実際この男に挑んだ魔法少女は尽く敗北している。

そして敗北した魔法少女達は恐怖や絶望に歪んだ顔で石にされ、金属にされ、送り返されているのだ。

そんな男と世間話をする感覚でいる慎一郎もどれほどの怪物なのかが分かる。

そんな二人を見てか、老王は獰猛に牙を見せながら慎一郎を見て笑う。

 

「───それで?あの湿気臭い小娘ではなく、別の小娘ら二人を連れて今日は何のようだ?お主のことだ。”こっちに来た”ということは向こうで何かあったのだろう?」

 

「さっきも言っただろ。情報屋に会いに来たって。能力者がこっちで事件を起こしたからソイツの情報を知っていたら聞きたいんだよ」

 

慎一郎のその要件に老王は答えた。

 

「あやつは今はここには居らんよ」

 

「・・・なに?」

 

老王の予想な返答に慎一郎は眉を寄せる。そしてそんな慎一郎に老王は言った。

 

「別用件を切り上げさせ今、あやつはそっちに行っていての。向こうで手を出した能力者の動向を探っておる」

 

「流石、爺。動かすのも早いな」

 

「お前達みたいな新参組織とは訳が違うわい」

 

流石長年このスラムの王座に座っている訳では無い。

早急に対応すべき事件を対処するその能力は慎一郎よりも遥かに上だ。見習う所もある。

 

「じゃあ、しばらく帰ってこないな」

 

「───ああ。だが、その前に一つ貴様にやってもらうことがある」

 

「・・・げ。なんだよ」

 

本当は聞く必要はないのだがこの爺にそれは通用しない。

嫌そうにする慎一郎に老王は言った。

 

「最近、このスラム街に《アルケミスト》が仲間と共に”外”からやってくる怪物共を相手しておっての。前に交戦した場所に住んでいた住人どもが被害にあったと訴えがあった。一度使いを出したが、聞くつもりはないと突っぱねられたから儂自ら行こうとしたのだが・・・丁度いい。時間潰しがてら貴様等が行け」

 

「《アルケミスト》って第八位の・・・どうしてそんな」

 

都がそう呟くと、白音は眼鏡の奥で苦々しい顔する。

 

「《アルケミスト》は基本的に自分の能力実験で作った作品しか興味が無いの。何度もボクと揉めたこともあったから───分かるよ」

 

そう言う白音の話を聞いて慎一郎はため息をついた。

 

「つまりは第八位をスラム街から追い出せってことか。”外”の怪物はどうするつもりだ?」

 

「兵に任せる。最近は弛んでいるからな。しばらくは相手をさせてやるわい。ついでにあやつには今日中に情報を持ってくるように言わせるわい」

 

「あっそ。なら、俺一人で行くわ」

 

「慎一郎さん!!」

 

「それは危険です!」

 

都と白音は一人で行くと言った慎一郎の手を取りながら言う。

 

「一人で行くつもりならボク達も連れていって!」

 

「そうですよ!いくら慎一郎さんでも私達と同じ魔法少女を複数人を相手なんて!」

 

そう言う二人に慎一郎は今日何度目かわからないため息をついた。

 

「駄目だ。柊や雨宮は名前が知れ渡っている魔法少女だろうが。もし、俺といたら二人が目をつけられる。それに雨宮の場合は今、力を使えばバレるだろうが」

 

「でもッ!」

 

正論を並べても食い下がる二人に、慎一郎はどうしたものかと考えていると、老王が言う。

 

「連れていってやれ。影から見守るくらいなら問題はあるまい。そして見せてやればいい。自分なら小娘に相手に劣らぬという実力をな」

 

「・・・分かったよ」

 

「「・・・・!」」

 

どうせ後をついてくるであろう雰囲気を放つ二人と、ウェンの言葉に慎一郎は折れた。

 

「ただし!絶対に手は出すなよ?一応殺さないようにはするが、万が一が死にそうになっても絶対に飛び出すなよ?」

 

「「・・・はいっ!」」

 

「はぁ・・・」

 

面倒事になったものだと慎一郎はもう一度ため息を付いた。

 

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