悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第三十九話 スラムの闇

ガヤガヤと賑わいを見せる街の中で慎一郎達はお互い、逸れないように固まって移動する。

 

「あんまり離れるなよ?お前等の場合、少し離れると面倒事に巻き込まれる可能性が高いからな」

 

「は、はい」

 

───スラム街と聞いてヤクザやら荒れた雰囲気を予想していた白音と都だったが、周りの雰囲気を見る限り、普通の街並みに少しだけ気が抜けてしまう。

 

「あ、あの・・・普通の街・・・なんですね」

 

「そりゃあな。ここは地下とは違って売っているヤツにヤバい物が混じっている以外には普通の街と言っても過言じゃない。まあ、路地裏はそうでもないんだが」

 

「・・・路地裏?」

 

「ああ。密売人がいるんだ。たまにモノが使って気分良さげにしているんだがな」

 

辞めておけって言ってんだけどなぁとボヤく慎一郎の反応に、白音はそれが何なのかある程度理解してしまった。

 

「あの、それって・・・もしかして」

 

「お前の想像する通りだと思うぞ。アイツ、そういう系には身体を弄られまくられたせいでめっぽう強いから」

 

「・・・絶対に縁を切った方がいいですよ」

 

思ったよりヤバい事をしているあの青髪の彼女を思い出し、白音は顔を引き攣らせながら慎一郎に言うが、慎一郎は肩を竦めるだけだ。

 

「縁を切ろうとしたらアイツは俺を監禁する気満々だから無理。俺、能力なかったらただの一般人だから。ゴリラみたいに力強いアイツに逆らえない。オーケー?」

 

そう言った瞬間、慎一郎のポケットからRingの着信音がピコンと鳴る。

 

「誰だ?」

 

慎一郎はポケットからスマートフォンを取り出すとRingの画面に切り替える。差出人はモノからだ。

内容はと言うと───

 

 

『帰ったら覚悟しろよ(⁠´⁠ε⁠`⁠ ⁠)』

 

 

と、短く打ち込まれていた。

 

(あ、やべ。俺死んだ)

 

文字と顔文字の感情表現の違いに慎一郎の表情が死んだ。

温度差のある顔文字をアイツが使うということはブチギレている証拠である。

 

「慎一郎さん・・・?」

 

「ああ、ダイジョーブ。ダイジョーブダヨ」

 

覗き込むように見上げてくる白音に、慎一郎は乾いた笑顔を浮かべた。もう後の祭りである。気にしちゃいけない。

 

「そう言えば、みゃーこ・・・」

 

白音はずっと静かだった都の方へ振り向くと、そこに都の姿は何処にもなかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「離してッ!離してください!」

 

慎一郎達の後ろを歩いていた都は突然、小柄のフードを被った誰かに凄まじい力で路地裏へと吹き込まれる。

そしてかなりの距離を走らされた所でフードを被った人物が唐突に足を止めた。

 

「・・・・ッ」

 

都は逃げようとそのフードを被った人物の手を振り払い、来た道を引き返そうとするが、その道をフードを被った人物に防がれ、その人物に都は壁際まで押し込まれ、手首を思いきり掴まれた。

 

「・・・・ひっ」

 

都は小さく悲鳴を溢しながらその手を見ると、枯れ枝のように細く、皺で皮膚が弛んでいるのが分かり別の恐怖が彼女を襲う。

そしてフードの奥からギラギラとした大きな目が都を見ていた。

魔女と言っても過言ではない見た目に都は息を呑む。

そんな都に老婆が口を開いた。

 

「お嬢ちゃんや。コレを買ってはくれないかい?」

 

「・・・えっ?」

 

老婆がポケットから取り出す煙草のようなモノを見て、都は困惑する。

そしてそんな都を押すように老婆が言った。

 

「コレを使うと嫌な事も苦しいことも全部忘れられるよ。───一本どうだい?」

 

「・・・苦しい事を忘れられる?」

 

老婆の言葉を受け、都はそう言うと老婆は頷いた。

 

「ああ。全部が夢のように苦しいことを忘れられる。さあ───使ってみてごらん」

 

都はその言葉に進められるまま手を伸ばし───

 

 

「悪いな婆さん。俺の連れに何かようか?」

 

「・・・・・!」

 

その声に都はその手を止めた。

 

「みゃーこ!!」

 

白音が都の名前を呼ぶ。

 

「あ・・・はく、ね・・・ちゃん」

 

友人の声を聞き、都は冷静さを取り戻すと、白音が都を肩を持つ。

 

「大丈夫!?何もされてない!?」

 

「う、うん・・・」

 

「よ、よかったぁ」

 

都のその返答に白音は安堵を覚えたのか緊迫した雰囲気を解く。

そんな中で、慎一郎は老婆を見ながら言った。

 

「悪いな婆さん。彼女は俺の連れなんだ。勝手なマネはよしてもらおうか?」

 

目を細める慎一郎に老婆は笑う。

 

「ヒヒヒっ。良く見りゃ慎一郎の坊主じゃないかい。良かったらアンタもどうだい?安くしとくよ」

 

「いらん。そんなもんはモノのヤツに売ってやりな」

 

慎一郎がそう切り捨てると、老婆はチッと舌打ちした。

 

「ケッ、相変わらず詰まらない男だね。全く」

 

そう言いながら老婆が路地裏に逃げるように去っていく。

 

「そんなんじゃあ、あの娘にも愛想をつかれるよ!」

 

そんな逃げる悪役のような捨て台詞を吐いて逃げていく老婆を見て、慎一郎は小さく息を吐いた。

 

「・・・ったく。あの婆さんも懲りねえよな。・・・大丈夫か?雨宮。アレを吸ってないだろうな?」

 

「あ・・・はい。ご迷惑・・・かけました」

 

「あの、慎一郎さん。アレは一体なんですか?」

 

そう言う白音に、慎一郎は答える。

 

「あれはお前等も一般的に知っているもんだよ。ただアレを吸ったら最後、彼奴等のように無気力になって最終的にはアレを求めるだけの生きる屍になっちまう」

 

そう言って路地裏の奥に座り込んだり寝転んだりする人達を見て、白音と都は顔を青くした。

アレを吸っていたら最後───自分がああなっていたかもしれないと想像した都は吐いた。

 

「・・・・うっ」

 

「みゃ、みゃーこ!?」

 

「お、おい!?」

 

二人に介護されるように都達は路地裏から出るのだった。

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