悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

5 / 40
第五話

「・・・どうすりゃいいんだよ」

 

───朝。

慎一郎は一人、駅のホームで立ち尽くしていた。

ラインハルトの言葉が未だに頭の中を渦巻く。

 

『魔法少女の一人がお前に“恋心”と言うものを抱いているのだろう?なら、お前がそこにつけ込めばいい。私やモノがソイツに現実を突きつけてやるから、お前やモノの得意分野である人心掌握でそいつを此方へ引き込め』

 

恋心

それを利用してあの三人のうち、誰かを此方側へ引き込めとラインハルトは言うのだ。

その子が抱いた思いを踏み躙って悪の道へと落とせと。

そんなことは正直したくない。

だが、この世界を変える為にはやるしかないのだ。

今日の夜、その作戦を実行する。

モノやラインハルトの期待を裏切ることなど、慎一郎は出来はしないのだ。

慎一郎は一度長く息を吐き歩きだそうとすると、そんな彼に後ろから声をかけられた。

 

「あれ?慎一郎さん?」

 

「!」

 

慎一郎は声がかけられた方向へ顔を向ける。

 

「珍しいですね。慎一郎さんがこんな所にいるなんて」

 

そこにいたのは柊白音だった。

カッターシャツの上にパーカーとブレザー、スカートもしっかりと着こなし、マフラーを首もとに巻いた彼女は慎一郎の姿を見て、驚いた表情を作る。

 

「・・・おお、柊か。学校にしては早いな?」

 

そう言う慎一郎に、白音は少しだけ笑みを浮かべながら唇を開いた。

 

「ボクは今日委員会の当番ですから。なので、他の人よりも今日は早いんです」

 

「・・・そうか。大変そうだな」

 

「別にそうでもないですよ?」

 

そう言いながら慎一郎の横へ白音は並ぶ。

 

「そういえば慎一郎さんは今からお出かけですか?」

 

「ああ・・・まあな」

 

白音の質問にそう答える慎一郎。

 

「なあ、柊・・・」

 

「・・・?何ですか?」

 

「柊は・・・今が“幸せ”かい?」

 

慎一郎の質問に白音は目を閉じて答える。

 

「幸せです。家族がいて〈シリウス〉の皆がいて慎一郎さんがいて──ボクは一番幸せです」

 

「・・・そうか」

 

そう言う白音に慎一郎はそれ以上、何も言えなかった。

と、電車が駅のホームに到着する。

 

「では、慎一郎さん。また明日お願いします」

 

「・・・ああ、またな。柊」

 

白音が乗った電車の扉が閉じる。

小さく笑みを浮かべながら、白音は慎一郎に手を振った。

慎一郎も彼女に手を振り返すと、電車が動き出す。

そして彼女がいなくなったホームで慎一郎は一人、ホームの屋根から覗く空を見上げ、ポツリとこの場にいない彼女に向けて言った。

 

「ごめんな・・・柊。俺は──アイツらと約束したんだ。この世界を変えるってさ。俺を恨んでくれてもいい・・・だから、俺達の目的の為に──絶望してくれ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。