悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

7 / 40
第七話 永久凍土の騎士

「白音ちゃん。今日、アルバイト無くなっちゃったけどどうする?一緒に遊ぶ?」

 

同じアイドルグループであり、学校の同級生でもあるコウハが席に座る白音にそう言う。

 

「ごめんねコウハちゃん。ボク、帰り、お母さんに買い物頼まれてるから・・・」

 

申し訳なさそうにコウハの提案を断る白音に、コウハは苦笑いを作る。

 

「そっか、白音ちゃん忙しいそうだもんね。ゴメンね?忙しいのに誘っちゃって」

 

謝るコウハに、白音は首を横に振った。

 

「ううん。ボクも行けなくてごめん。また、次の休みに行こう?」

 

「だね!」

 

白音とコウハはお互いに頷くとコウハは席から立ち上がり、白音に手を振りながら笑みを返す。

 

「じゃあね、白音ちゃん!また明日!」

 

「うん。また明日」

 

教室から出ていくコウハに白音は手を振り返すと、白音も自分の席から立ち上がった。

 

 

──────

 

「・・・・いっぱい買いすぎちゃった」

 

パンパンに膨らんだ買い物袋を手にしながら、白音は夜の街道を歩いていく。

学校帰りとはいえ、時刻はもう六時半を過ぎようとしていた。学生の自分がこのままいると警察のお世話になってしまう。

 

「早く帰らなくちゃ」

 

急ぎ足で足を進めていると、ふと白音の視界に見覚えのある姿が目に入った。

バイト先の店長であり、自身が始めて好きになった人。

この時に、柊白音はそのまま帰っておけば“狂わない“でいたのかもしれない。

 

「あ・・・慎一郎さ──」

 

白音は自然に笑みを浮かべながら慎一郎がいる方へ足を運び始めた時───彼の姿を見て、彼女の身体は固まった。

水色の髪の女性と“キス”をする慎一郎の姿。

 

「───し・・・」

 

ボクは知っていたんだ。初恋は片想いは───叶わないことが多いと、誰かが言っていた。

最初はそんな事を信じていなかったけれど、初めて恋をして初めての片想いを彼に向けて───勝手に幸せな気持ちになっていた。

そして全てがヒビ割れた。

 

 

「あー・・・・」

 

白音は手にした鞄や買い物袋を地面へと落とし、左手を慎一郎の左側にいる女へと突き出し、ギリッと彼女を握り潰すように左手を握りしめた。

握りしめた左手の皮膚が破れ、血が流れ出るが白音はその左手を虚ろな目でジッと見つめる。

いつからだっただろうか。ボクが、家族や友人の事よりも慎一郎さんを優先するようになったのは。

いつからだっただろうか。ボクが───彼に愛して欲しいと自分を見て欲しいと思ったのは。

アナタはボクだけの慎一郎さんじゃない。

けれど、ボクはそれでも貴方が欲しかった。

冷たく凍ったボクの心を溶かしてくれた──貴方を。

 

「───Dauerfrost Ritter───」

 

彼女が虚ろな瞳でそう言葉を紡ぐ。

白音を中心に冷気が収束し、その周辺が凍てつき始める。

そして───

 

彼女の立つ半径百メートル以内の“人間を含む全て“が一瞬にして凍りつき、何者も近づくことの出来ない大地と化した。

その真ん中で、白音はボソリと呟く。

 

「──慎一郎さん。すぐに目を覚まさせてあげますから」

 

身体は凍ったように冷たいのに、その胸は猛る炎に熱い熱を持ちながら。

序列第三位───柊白音は愛しい彼のもとへ足を進めた。

 

その全てを氷の中へ閉じ込めながら───

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。