ロンメルの本気   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1勝から始まる進撃
ロンメル クラシック以上1勝クラス芝2500メートル


 12月第三週の日曜日

 

 朝から気合いの入ったウマ娘が居た

 

 ロンメルである

 

 ロンメルは移動前に最終確認とターフで6ハロンだけ走っていた

 

 筋肉の付きかたは前より良く、インフルエンザで49キロまで落ちた体重は62キロまで増えた

 

 全て筋肉である

 

『ピピ前3ハロン34.5、後3ハロン35.3』

 

「よし上がってきた」

 

『ロンメルさんこれなら勝てますよ』

 

「ああ、律、今度こそ勝たなければならないからね。持っているスキル全て使って勝つよ」

 

『頑張ってください! 応援してます!』

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グッズ詰め込み終わりました」

 

「じゃあトラックのおじさんお願いします」

 

「あいよ!」

 

 中山レース場はトレセンから近いので朝6時に出発すれば7時には到着できる

 

 今日は借りた大型バスに専属契約した運転手のおっちゃんと息子さんの2人とチームの全員が乗り込む

 

 バスの中ではロンメルは爆睡する

 

 皆ロンメルが寝ている姿を見るのが初めてだった故に新鮮そうだったがいびきもなく、ただ全集中の呼吸を繰り返す姿を見て、あぁこれが常中と呼ばれる呼吸なのかと納得する

 

 ミッションタイマーがバスタオルをロンメルの体にかける

 

 それでもロンメルは起きなかった

 

 普通のロンメルにはあり得ないことである

 

 

 

 

 

 

 

 

 中山に到着してタコ部屋の控え室に移動してもロンメルは眠り続けた

 

 ロンメルの体の中では壊れた細胞が急速に回復しており、壊れる前よりも大きく、丈夫に再生する

 

 超回復である

 

 タコ部屋なのでそこそこ煩いのだが、ロンメルは起きること無く眠り続ける

 

 ロンメルが起きたのはメインの11レースが終わった時だった

 

「それでは第12レースの皆さんお願いします」

 

 トントンと軽くジャンプをして体をグリグリと回す

 

「異常無し」

 

 パドックに向かって歩き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ選手がパドックに入場です』

 

「「「おお!」」」

 

 パドックから歓声があがる

 

 髪やしっぽ、肌の艶が明らかに1人だけずば抜けているウマ娘が居た

 

 ロンメルである

 

 全身がピカピカに光っているかのようで素晴らしい仕上がりである

 

「体重は前回より少し増えてるが成長分だろ」

 

「距離長くなったが長距離的な体つきをしているから買いだな」

 

「見事な仕上がりだ」

 

 ロンメルのオッズがみるみる下がる

 

『7番 学生連合 ロンメル 5番人気』

 

 ロンメルはジャージの上着を投げ捨て、軽くステップを踏んだあとジャンプをしてからジャージを拾い袖裏に戻っていく

 

「なんて跳躍力だ。2メートルは出てたぞ」

 

「ウマ娘の脚力でも2メートルの垂直跳びが出来る子はそうそういないぞ」

 

「緊張も無さそうだ。買いだな」

 

 更にオッズが下がる

 

 結局15人中3番人気まで下がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺気は内包できたかな……さてでは気配を消そう」

 

 ロンメルは静かに気配を消した

 

 風景に溶け込むようにスゥーと

 

 

 

 

 

 

 ゲート前に到着した

 

 誰も私に注目していない

 

 よーく柔軟してゲートに入る

 

 ゲートイン完了……スタートだ

 

「よーい」ガゴン

 

 まずまずのスタート悪いが最初から全力だ

 

 ……よし、気配を消していたから私の大逃げに気がついていない

 

 後ろで牽制していろ、その間に私は先に行く

 

 中山2500特有のすぐに始まるコーナーを上手く使い内ラチにビタっとつける

 

 それこそ体が擦れるくらいギリギリをロスが無いように走る

 

 一歩いや、半歩間違えれば転倒するような危険な走り方であるが、そんなリスクを支払ってでも内ラチギリギリにできている最終レースでも誰も走っていない綺麗な芝の上を走ることが出来る

 

 足跡が無いだけで走りやすさは段違いである

 

 コーナーが終われば直線であるが、中山名物の急坂が待ち受ける

 

 ロンメル更に体勢を低くする

 

 ナンバとストライドの双方を組み合わせた走り方で直線をまるで飛んでいる様に走る

 

「シィィィィィ」

 

 バチンとロンメルの中でスイッチが入る

 

 透き通る世界である

 

 またの名を領域

 

 ロンメルは領域にまだ2000メートルある状態で入る

 

 普通のウマ娘であれば長時間領域に入ると言うのは脳をフル回転させていることと同意義なため、脳が酸欠を起こしてしまう

 

 が、ロンメルの身体は違う

 

 まず全集中の呼吸により酸素を取り込める量が普通の呼吸よりも多く、更にそんな呼吸を常時続けているため肺の大きさが普通のウマ娘よりも1.5倍近く大きい

 

 更に肺の細胞は再生しないと言われているが、ロンメルは全集中の呼吸を極めているため細胞1つ1つに刺激を与えて復活させる

 

 それでも寿命で再生しない細胞は全身に張り巡らされた万能細胞である触手細胞が代用する

 

 ロンメルは常に100%の肺の活用をできる唯一の存在ということである

 

 ナンバストライド走法は軸が通常の1軸から2軸へと変わるため体力の消費が少ない

 

 がこの走法の欠点は脚の筋力が足りないと速度が出ないという大きな欠点があったのだが、それも2ヶ月の食事量のアップと徹底的なハードトレーニングである程度緩和された

 

 頭への大量の酸素供与

 

 改善されたスピード

 

 疲れにくい走り方

 

 更に踏み込む

 

 坂をまるで飛ぶように駆け上がる

 

 そのまま滑空飛行のように次のカーブに入る

 

 後続とは7から8バ身ついている

 

 ここまで差が開き、気配を限りなく消していれば気がつかれない

 

 後は自分のスタミナ勝負だが……スタミナに関しては今生きている全てのウマ娘で一番あると断言できるほどのスタミナお化けであるある私がバテる事など無い! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中山レース場第12レースクラシック以上1勝クラス芝2500メートル、実況は私佐藤政木がお送りします。解説は同じ距離、同じ舞台の有馬記念を制覇しているエフフォーリアさんです。よろしくお願いします」

 

「エフエフ、よろしくお願いします……いやー、今日も可愛いウマ娘ちゃんがいっぱいですね」

 

「エフフォーリアさんが注目するウマ娘は誰でしょうか」

 

「ロンメル選手ですね」

 

「ほお、断言ですか、現役ウマ娘初、最年少トレーナーのロンメルさんですが断言するまででしょうか」

 

「既に彼女は駆け引きに勝っています。カメラさん、ロンメル選手を撮してみてください」

 

「……どうしましたかカメラさん?」

 

「ほらね、私もそうだけどもう既にターフにいる筈のロンメル選手を認知できない」

 

「な、なんですか!? そんなことができるのですか」

 

「昔アストンマーチャン先輩が無意識にその領域に入ってしまい忘れ去られてしまうという事が過去の事例でありましたが……もし、それがロンメル選手は故意にできるとしたら……どうでしょう」

 

「そんなことが本当に可能なのでしょうか」

 

「現に彼女はできてしまっている。さらに恐ろしいのはもし彼女が逃げの戦法をした場合誰もマークせずに自由に逃げれるってことです。エフエフ、カメラさん、ゲート前を撮してください」

 

「……あ、居ましたロンメル選手です」

 

「カメラさんもカメラごしなら見えると思います。見失ったらもうわからないので今回は彼女だけを1台は撮し続けてください」

 

「とんでもないウマ娘ですね」

 

「エフエフ、まぁ可愛いウマ娘ちゃんには変わりありませんよ……ファンファーレだね」

 

 ♪ ~♪ ~

 

 

 

 

 

「ゲートイン完了、スタートしました」

 

「全員まずまずのスタート、逃げるはやっぱりロンメル選手だね」

 

「んん!? 一瞬ロンメル選手によれたウマ娘が接触したようにも見えましたが」

 

「いや、全く当たってない。ロンメル選手の方が前に居るね」

 

「じわりじわりとロンメル選手がリードを広げていきます。カーブに現在入っております」

 

「カーブを抜けた……もう既に5バ身以上の差があるね」

 

「直線に入りますが中山名物の急坂が待ち構えます」

 

「お、おお! 凄い滑空しているみたいなフォーム……まるで飛んでいるみたいだ」

 

「独特なフォームですね」

 

「あれはナンバ走りですね、エフエフ……飛脚達が疲れない走り方として使われていた走りですが、人間の短距離でも似たような走り方がされることがありますよ、ロンメル選手はそれを更に現代版にアレンジしているようにも見えます」

 

「速い速い! 坂をあっという間に駆け抜けて後続とは既に10バ身以上の差がついています」

 

「恐らく後続は気がついていませんね」

 

「さぁもしや我々は今伝説になるレースを見ているのかもしれません、1000メートルの通過タイムは58.4、58.4です」

 

「これは素晴らしいタイムが出るかもしれませんよ……しかし、コーナリングも上手いですね」

 

「まるでラチの横にビタりと横付けですものね、ここまでラチとの差が無いと危なくないですか?」

 

「いや、たぶんラチギリギリの芝が綺麗な場所を走っていますよ。速度を落とさないでラチギリギリを走れる器用さも素晴らしい」

 

「後続の紹介に移ります6番、3番、1番、2番が団子になっていますね」

 

「牽制しあってますがそこが先頭ではありません」

 

「さぁ7番ロンメル選手既に最終コーナーに入っている!?」

 

「2000メートル通過タイムは1分57秒9! 例年の皐月賞なら勝てるタイムが出ています」

 

「エフエフ、最終コーナーも最内ビタり! 最後の直線」

 

「後続とはとんでもない差! 垂れない垂れない! 後続は後ろはまだ最終コーナー入ったところ! セーフティリードだぁぁぁ!」

 

「いやー、伝説のレースを我々は見てしまいましたね」

 

「さぁ最後の上り坂! スピードが全く落ちてない! どんなスタミナだ! どんなスタミナをしているんだ! ……今ゴールイン!!」

 

「これは普通ならタイムオーバーかな? いや、レコードだから適応されないか」

 

「遅れながらゴールしています! しかし5秒以上の差が確実に付いております」

 

「……電光掲示板にご注目ください」

 

【2.27.9 R】

 

「2分27秒9! 2分27秒9! 中山ではこれ以上のタイムは出ないと言われたゼンノロブロイの2分29秒5や伝説の目黒記念のルックトゥワイスの2分28秒2よりも0.3秒速い時計が出ました」

 

「勿論世界レコードです」

 

「いやー、エフフォーリアさんは出せますかこのタイムは」

 

「最盛期かつ、絶好調、東京レース場で後の競争生活を考えなければ出せるかも……くらいのタイムですね。普通なら間違いなく壊れます」

 

「しかしロンメル選手をズームしてください……汗一つかいていませんよ」

 

「とんでもないスタミナお化けですね」

 

「いやー、素晴らしい選手がまた1人誕生しました」

 

「これでロンメル選手は現役続行なので、来年も選手兼トレーナーを続けるでしょう……生徒会としてもレースを盛り上げてくれる存在はありがたい」

 

「勝利ウマ娘インタビューに入ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝利ウマ娘インタビューです! ロンメル選手見事な逃走劇でした」

 

「ありがとうございます」

 

「しかしレース前から気配が全くありませんでしたが何か特殊な事を?」

 

「1つの技術です。ほら」

 

 スッとロンメルの体が消える

 

「「「おぉ~!」」」

 

「よっと、気配を操るのはとてもとても重要なことです。例えば威圧感を出せれば後続とのペースを狂わせることも、今回のように消せばマークされない利点があります」

 

「なるほど、しかし見事なコーナリングでした」

 

「はい、僅かですがラチのギリギリの芝状態が良いとわかっていたのでそこを突きました。芝を自分の思い通りに蹴れたので力強く走れました」

 

「今回の世界レコードですがどのように感じますか」

 

「まずレコードが出たというより、やるべき事を全てやった結果このタイムだと思っているのでタイムよりもまずは1勝を喜びたいです。またこのタイムが最高ではなく更に上を目指してがんばります」

 

「ロンメル選手……いや、ロンメルトレーナーとして質問です。次はどのレースを目指しますか」

 

「1月中のできれば同じコースの中山で2000メートル以上の2勝クラス以上を予定しております。チームとの兼ね合いもありますがもしかしたらダートを走るかもしれません」

 

「ダートも走れるのですか」

 

「はい、ダートの方が走りやすい時もあります」

 

「なるほどでは来年の目標レースは」

 

「ダートですとチャンピオンズカップを、芝は有馬記念を目標としたいと思います」

 

「芝ダートの二刀流……いや、トレーナー業も含めての三刀流に期待しております! ロンメル選手でした!」

 

 

 

 




週間134位ありがとうございます!

また日間に載れるようにがんばります
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