なぜ私が律の配信で話した様に組閣について熱心に取り組んでいるかというと、恐らく来年からは自身の野望のために全世界を飛び回らなければならない
そうなると留守を誰かに任せる必要がある
選手兼トレーナーなんてやっているためナンバー2がどうしても必要となる
既存のトレーナーやサブトレーナー達では裏に名門だのというバックボーンが茶々を入れてくるため私が留守の間に技術だけ引き抜かれかねない
呼吸法等は完璧に覚えた者が指導者にならねば肺が破裂しかねない危険な技法でもあるので、私が太鼓判を押すくらい完璧に覚えたという者以外に扱わせたくない
領域もそうだが下手に扱えばウマ娘は簡単に壊れてしまうためしっかりとした指導者とサポート体制が構築されないと危険である
まずロンメルの組閣イメージはスカウトを1名、情報収集する者を2名、経理担当1名、整体やそれに通じる物を持つ者が1名、それにサブトレーナーが最低でも3名は欲しいし、これらをロンメル不在に束ねるナンバー2……トレーナー代行が1名の9名が確実に欲しい
ロンメル的にはミッションタイマー先輩が来年がピークなため、再来年からまとめ役をやって欲しいのだが、再来年も走ることを考えて組閣しなければならない
とりあえず新入生の青田買いを行い、外部からもスタッフを集めるしか方法が無い
というかここで発生する人件費を見越して賞金の半額をチームでプールする事になっているのだが……
「どこかに良い人材は居ないかねぇ……」
ロンメルは新聞を広げると中国にてなにやら事件が有ったらしくそれが有馬記念の結果の隅っこに書かれていた
「……うーん、海外か……海外ねぇ……レース先進国ではなく後進国から人材を引き抜くか? 別に私が教えれば良いし……でもコネが無いな……あ、サウジアラビアに来年いくじゃん。中東にウマ娘がトレーナーやサブトレーナーになる文化が無いもんな……有ってアドバイザーだし……燻ってるの居るかもな……律」
『はい』
「ちょっとサウジアラビアのネットでトレーナーやサブトレーナーをやってみたいって方を募集してみてくれない」
『わかりましたすぐに取りかかります』
「頼んだ」
ロンメルは律に頼んだあとふとなぜここまでの弱肉強食政策をURAが推奨しているのか思い調べることにした
今自分達は流れに乗れたが、チームの部室も与えられない、施設も使えないでは正直話しにならない
というかまともに施設が使えるのが上位150チームというのもおかしな話だ
前理事長の秋川元理事長は夢を与えることを是としていた
人々に夢を与えることを目指しながらも【唯一抜きん出て並ぶ者なし】というエクリプスの言葉をスクールもっとうに掲げ生徒の自主性を重んじる教育方針で2代目理事長としてその職務を全うしていた
後継者もその意思を継ぎつつも徹底管理主義を掲げ、一時期は理事長代理もこなした樫本理事が後継者筆頭であったが、クーデターにより現理事長が就任する
大金理事長……現役の名前をディープインパクトと呼ばれたウマ娘がクーデターにより権力を掌握した
自由な校風を表向き維持しつつ、弱肉強食のチームでの競争を煽り、世界に通用するウマ娘の育成を邁進した
結果できたのが今の学園体制である
確かに強いウマ娘は多数誕生したし、自身のネームバリューと第三次ウマ娘ブームを起こした実績により当面の間は問題ないだろうが、理事会の中でも色々とあるらしい
「ヌルフフフ、今は問題ありませんがこの歪んだ弱肉強食主義はディープインパクト時代に1強時代を作ってしまったが故にですかね……歯向かえたのはハーツクライくらいだが、彼は1足早く世界に向かい、世界の壁に跳ね返された。自身も3着と世界に負けてしまった……それが心に闇でも生んだのですかねぇ……それが過度の弱肉強食主義となり、強者は全てを手に入れ、その下に多くの夢が残骸となり散らばっている……良くない……これはよろしくない」
と言っても1トレーナーの身分の自身に何かできるというわけでもない
でも気になる報告が律から耳にしている
この過度な弱肉強食政策をなんとかするためにドラフト制度を導入させようと言うものだった
ただ参加資格が上位50チームのみということも聞いている
これでは更に弱肉強食主義を助長するのではないか?
とロンメルは思っていた
「ヌルフフフ、どうなろうと知ったことではありません。私は芽を蒔くまで……末期になればいつものように対象を殺すのみです。人ではなく組織をかもしれませんがねぇ……ヌルフフフ」
ロンメルは静に音楽室で笑い続けた
有馬記念は順当にメルトダウンが勝利し、ホープフルステークスは12番人気、16番人気、11番人気とこれでもかというくらい大荒れでウマ券三連単3000万の今年一番の大荒れとなった
ちなみにメルトダウンは5バ身差の完勝であるが、稍重だったこともありタイムはそこまで良くなかったと言っておく
ちなみに学生連合はフェンリルが阪神カップを勝利して学生連合は今季重賞6勝目、勝利数は25となった
フェンリルの末脚が炸裂したレースであり、中盤までしっかり溜めて、領域に入った見事なレース運びであった
さて今年最後の大一番東京大賞典が始まる
相変わらずのタコ部屋だがそれも今日で終わりである
年明けにあるチーム順位の変更により来年からは強豪チームになり、個室待遇となる
スカイプラザとロンメルは大井レース場に来ていた
「他のメンバーも呼べば良かったじゃん。何でレース場に呼ばなかったの?」
「ヌルフフフ、祝勝会の準備をして貰っています。帰ったらすぐに祝勝会ですよ」
「全く……しかし、つい最近初めてタキオン大先輩から連絡が来たよ。期待してるってさ……今まで見向きもしなかったのにね」
「良いじゃないですか認められて……スカイプラザ先輩、ここはあなたにとって試金石です。ここを勝てないようでは世界では絶対に通用しませんよ」
「脅し?」
「こんな戯れ言にビビる様な教育はしてきませんでしたが?」
「いうねぇ~うちがそんなんでビビるわけないっしょ!」
「肩に力が入っていますよ。貴女はいつも通りに走れば勝てる。領域を楽しんできなさい。貴女に緊張は似合わない」
「……はいよ!」
「よし! じゃあパドック行ってきなさい!」
「年の暮れとなり、今年最後の大一番となる東京大賞典が始まります。ここ大井に人々は今年最後の大勝負をしにやって来ます! 実況は堀田正義が」
「解説はトキメキ! ウマドル、スマートファルコンです! ファル子って呼んでね!」
「ウマドルでお馴染みのスマートファルコンさんです……スマートファルコンさん、30後半にもなってウマドルはキツいですよ……いい加減結婚もしてくださいぐは!?」
「えー、何々聞こえないよー! 人が気にしていることは言っちゃいけないんだよ!」
「顔パンはキツいですって! 私と貴女の仲じゃないですか」
「堀田さんとはもう10年以上仕事を共にした仲間だけど言っちゃいけない言葉もあると思うんだ!」
「さて、いつもの漫才もほどほどに、さてスマートファルコンさん、今日の注目ウマ娘は誰でしょうか」
「ファルコ的にはね、やっぱりスカイプラザ選手かな。現役時代の逃げってところに共通点が有るから押したいかな~……芝みたいにバ場状態がどうしても少しでこぼこしちゃうんだけどダートだとそれが無いから逃げや先行が勝ちやすいって言うのが持論なんだよね。もちろん凄い追い込みや差しのウマ娘も居るけどこのメンバーだとスカイプラザ選手の不安要素が無いから勝つんじゃないかな」
「なるほど芝もダートも走った事があるスマートファルコンさんらしい回答ですね。さて全ウマ娘がコースに入ってきました」
「皆がんばれー!」
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「ゲートイン完了……スタートしました」
「スカイプラザ選手抜群のスタート! そのまま先頭に付いたね」
「ペースを引っ張るのは2番スカイプラザ、続いて1番○○○、7番○○○、9番○○○○○と続きます」
「あー、これはスカイプラザ選手が勝ったね」
「なぜでしょうかスマートファルコンさん」
「目が違うもん。私達と同じ世界に入ってるね! 彼女も」
「それはどういう」
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風の呼吸
うちの呼吸はロンメルからそう言われた
風のように自由で素早く、気まぐれな呼吸だと言われた
この呼吸を覚えた当初は辛かったけど、今はこの呼吸をしていないと体が重く感じる
私は風になりきっている
レースの時はそれを更に感じる
更に大井は平坦故に常に同じ風を感じることができる
さぁさぁキタキタ!
頭がスゥーと冴えて世界から色が消えてくる
この感覚はマジでヤバいほど気持ちいい
更に前には誰も居ない
更に風を感じたい
もっともっともっと!!
【更に先へ!】
ピキピキと視界に亀裂が走る
なんだこれは
手を伸ばすと亀裂は無くなっていた
?
なんだったんだろう
あ、ゴールだ……また1つ風を感じてしまった……
「て事があったんだけどロンメル何かわかんない?」
「勝利インタビューが上の空だったのはそのせいですか」
「気になっちゃって……手を伸ばしたら消えちゃったしさ」
「それ神域の扉ですよ」
「え? 嘘!」
「手を伸ばしても届くはずありませんよ。あれは罅よりも先に行かないと先へは行けませんよ」
「でもでもうち領域状態でトップスピードだったよ! 後続と7バ身も付けたのに?」
「というかあれは1人で入れるのはそれこそ1人では無理ですよ。私でも色々(異世界にて強敵と相討ち)ありましたし……」
「ロンメルもう先に行けるの?」
「ええ、そこに到達すれば領域の比ではないくらいの幸福感を得れますよ」
「マジ!? どうやったら入れるの?」
「ふむ……」
ロンメルはスカイプラザの脚を揉む
「ヌルフフフ、まだ無理ですね、先に脚が壊れます。そう焦らないでくださいな。ちゃーんと私のいう通りに練習すればスカイプラザ先輩なら入れますから……殻を破るような感覚になるでしょうね」
「楽しみだなぁ楽しみだなぁ……神域かぁ!」
「よだれ拭いてください。完全に薬中の顔ですよ」
「おっとっと! にへぇー、でも私がG1ウマ娘かぁ! 映像撮れた?」
「バッチリです」
「にへぇー……勝負服のうち最高に輝いてる!」
「さて、次はサウジアラビアです。14億を手に入れに行きましょう」
「おお!!」
スピー……スピー……
「にへぇー……うち輝いてる……」
帰りの車でスカイプラザ先輩は眠ってしまったが、予想以上の成長である
スカイプラザ先輩は確かにG1を勝てる器だと思っていたが、呼吸ももう常中を扱えているし、肺の大きさも膨らみ始めている
恐らくこれ以降は筋肉の質も次の次元に変わっていくハズだ
「神域の先……いったい何が有るのでしょうね」
領域に入った皆は私が神域という答えを知っているので教えることができるが、神域の先へは私ですら知らない
スカイプラザ先輩は今日……ディープインパクト先輩と同じ
景色を見たハズだ
ディープインパクト先輩の書籍に書いてあった事が本当ならば……だ
「ヌルフフフ、良かったですね、スカイプラザ先輩は1人ではありませんからねぇ……私が側に居ますからね。先にダート最強を取っておいてくださいな、後から私がかっさらいますから」
「……負けないよ」
「寝言ですか……ヌルフフフ、どんな夢を見ているのでしょうね」