ロンメルの本気   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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お正月 挿し絵あり

 学生連合がG1を勝ったことは瞬く間にトレーナーや生徒達の間で話題になった

 

 勿論冬休み期間中なので帰省しているウマ娘が多いが、年末なんて関係ないトレーナー達の間ではロンメルという大型トレーナーの出現に情報収集が始まる

 

 まずはロンメルが前に所属していたチームのトレーナーが同僚達に色々と聞かれるが、そのトレーナーにとってロンメルはどこにでも居る出来損ないでしかなく、そんなに凄いのなら教えて欲しかったわと同僚達に漏らした

 

 事実ロンメルが居たチームは弱小と中堅を行ったり来たりしているようなチームであり、今ではロンメルのいる学生連合の方が圧倒的に上の立場となった

 

 謎に包まれるロンメルの指導

 

 勿論ロンメルも情報統制及び防諜には気を使っており、というかパソコン関連は世界最強のセキュリティである律が管理しているため1個人やチームが太刀打ちは不可能であった

 

 ただ過去の発言から領域を理解していること、効率的に領域へ踏み込ませられることができると上位のトレーナー達は理解し、その手腕はもしかしたら伝説のトレーナー福長の父親に匹敵するのではないかとまことしやかに囁かれ始めた

 

『今後中堅チームによる妨害等も行われると思いますが? 既にハッキングを3件ほど検出しましたが』

 

「軽く報復して、警告だけで十分だろう。こちらがバックボーンが無いからって何もしないとは大間違いだ」

 

『どの様な報復にしますか?』

 

「流石にネットで晒すのは可愛そうだからデータの削除くらいだね。しっかし昨日の今日か……ずいぶんと動きが速いようで……ちっ! まぁいいや、どうせ雑魚だし……はぁ、金に目が眩むとどうしても手段を選ばないのが出てくるな。まぁトレーナー間のいざこざなんて日常茶飯事だし、暴力沙汰なんかにならなければ基本的にURAも動かないからなぁ」

 

『そういえばご実家には戻らないのですか?』

 

「バカコンビの金杯が有るからその準備で当分帰れないよ……まぁ3日に親戚一同が集まるから出席してくるけど」

 

『中山と中京の2レース場両方ですか? 出店はどうするのですか?』

 

「一応グッズは作ってあるからそれを売る全く、私はプラモ屋じゃないんだぞ」

 

『でもその割には楽しんでますよね』

 

「まーね……さてと正直ここまで順調にこれたのは律のお陰だ。本当にありがとう」

 

『これからも頑張りましょうね!』

 

「あぁ……」

 

『そういえばヤクルトガッツさんの勝負服が届きましたよね』

 

「写真で送ってくれたよ。ほら」

 

 

【挿絵表示】

 

 

『似合ってますね』

 

「勝負服組はプラモもできてるし、バカコンビも勝てば……ってあの2人胸が本体だから勝負服がパッツンパッツンになるだろうな」

 

『凄い肉体してますからね彼女達……』

 

「正直うらやましい」

 

『まぁロンメルさんはこのままいくと大胸筋になりますからね』

 

「強さと引き換えに柔らかさを失う……まぁ絶壁じゃないだけましかな」

 

『あ、私年末にVTuberで学力テストのテスト問題作成と解説を依頼されてたのでそろそろその作業に取りかかりますね』

 

「ほいほーい、律がんばれー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 大晦日

 

 ロンメルは旧校舎の大掃除をしていた

 

「ヌルフフフ、今日はもう私以外誰も居ませんから自由に掃除ができますねぇ」

 

 今年1年というか半年は滅茶苦茶濃い時間を過ごした

 

 最初は嫌々従っていた学生連合も今ではちゃんと絆がある

 

 皆魅力的な生徒だ

 

「よし、掃除終わり、後は廃校の方の掃除ですかね」

 

 ロンメルが廃校の方に向かうと、廃校のグラウンドで練習する生徒が居た

 

 スリームーンだ

 

「スリームーンさん、大晦日なのに頑張りますねぇ」

 

「ああ、神じゃなかったロンメル先生」

 

「自主連ですか」

 

「はい!」

 

 スリームーン……ロンメルが三冠を取れると豪語する次世代のウマ娘である

 

 そもそも本格化前に本格化した選手並みのタイムが既に出せているのも凄いし、ロンメルが徹底的に柔軟やスタミナ、速くなるのではなく頑丈に、壊れにくくなるように鍛えながら、呼吸による領域を使いこなして素晴らしいタイムを連発していた

 

「ロンメル先生、私は本当に三冠ウマ娘になれるかな?」

 

「かな? ではありませんよ……なるのです……まだあと1年有るのですから身に付けた全集中の呼吸・常中を使いこなして体の筋肉を更に変化させましょう。既にスカイプラザ先輩はやってますよ」

 

「……負けられない……呼吸を鍛えるのはやっぱり走り込みが一番なのでしょうか」

 

「いや、これが一番です」

 

 そう言ってロンメルが取り出したのは2Lのペットボトルだった

 

「これを息を吹き込んで破裂させてみましょう。いまのスリームーンさんなら難しいですが不可能じゃ無いハズですよ」

 

 ロンメルはペットボトルをスリームーンに渡し、自分用を取り出すと息をかるーく吹き込んだ

 

 パンっとペットボトルが裂けた

 

「コツは全集中の呼吸をいつもの延長線上でやること、無理に力んだりしても上手くはいかないよ」

 

 スリームーンは息を吹き込んだ

 

 ボコボコボコ

 

 ペットボトルは膨らめどなかなか破裂しない

 

「はぁはぁ」

 

「一旦呼吸を吸って吐いて……深呼吸をしながら肺の細胞を意識して……ゆっくり吸って……吐いて」

 

「スゥー……ハァー……」

 

「2分間呼吸を繰り返したらもう一度チャレンジ、これを繰り返すよ」

 

 ロンメルはその場で自重を使った筋トレを始める

 

 この呼吸のレベルを一気に上げるトレーニングだが、肺を痛める可能性が高いので常中ができるようになった人にしかやらせたくない

 

 というか呼吸のやり方を知っていて、走っていれば常中まではいけることが過去の経験で知っているので……

 

 スリームーンは繰り返すこと2時間でペットボトルが破裂した

 

「ゼーハーゼーハー」

 

「はいお疲れ」

 

「つ、辛いですね」

 

「1回割れるようになれば後は簡単だし、今度小さいペットボトルでなら練習しても良いことにするよ。他の皆はまだ常中の域に達してるか怪しいから教えないでね。危ないから」

 

「はい!」

 

「じゃあグラウンドを走ってみな、呼吸が軽くなってるから」

 

「はい!」

 

 スリームーンがグランドを5周(2000メートル)全力で走ると驚いた表情で帰ってきた

 

「凄いです! 全然疲れません」

 

「でしょ、これが呼吸の成長だよ。後は自然と筋肉が変化していくから良く食べて良く呼吸して柔軟して寝る! 無理なトレーニングは脚を壊すから私の居ないところとではやらない」

 

「はい!」

 

「来年からは家庭教師の時間でしかトレーニングを見れないと思うから居ない間に本当に無理しないでね」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新年となり、ロンメルは東京に残っている学生連合の皆と家庭教師組と待ち合わせをして初詣を行う

 

 皆それぞれ考えているのだろう

 

 勝ちたい

 

 成長したい

 

 強くなりたい

 

 G1制覇

 

 勝負服着たい

 

 役にたちたい

 

 お腹空いた、甘酒でもいいから飲みたい……

 

「ヤクルトガッツ先輩口に出てますよ」

 

「あ、失敬失敬、お腹空いちゃって」

 

「はー、全く……皆もお昼にしますか?」

 

「「「やったー!」」」

 

 初詣も終わり、家庭教師組用に借りている家に移動してパパッと料理を作っていく

 

「はい、揚げ餅入りの澄まし汁に焼き餅は醤油、砂糖醤油、きなこ餅、あんこ、ずんだと何付けても美味しいように色々種類をだし、鮭とホッケも焼いて机に並べた」

 

「いただきます」

 

「「「いただきます!」」」

 

 お餅を食べているとスリームーンのご両親がやって来て明けましておめでとうと皆に挨拶した

 

 いつも学生連合の皆さんには娘が良くしてもらってるからと言ってお菓子を出してくれた

 

「すみませんわざわざ、こちらからうかがわなければいけないのに」

 

「ロンメル先生には娘が大変お世話になっていますのでこれくらい……ロンメル先生、娘はトレセンでも先生のチームで預かってはもらえませんでしょうか」

 

「ええ、スリームーンさん程の選手がこちらに来ていただければとても心強い戦力になりますよ! 責任を持って預からせていただきます」

 

「「よろしくお願いします」」

 

「さーて! 中等部組と家庭教師組には先輩からお年玉だ!」

 

 ロンメルはドンと透明な箱を置いた

 

 箱の中にじゃらじゃらと100円と500円硬貨を入れていく

 

「お年玉は掴み取りだ! 片手を入れて横の皿に乗っけられた分だけあげるよ」

 

 お年玉の掴み取りチャレンジである

 

 これには会場大盛り上がり

 

 最初のチャレンジャーはフェンリル

 

 勢い良く掴んでお皿に置いた

 

 結構飛び散ったが……

 

「記録8600円……勢いつけすぎましたね」

 

 続いてサクセス

 

 中で何度も掴み直すとこれと思って引き上げた

 

「出ました1万200円!」

 

 良しとサクセスガッツポーズ

 

 スリームーン、サンライズはそれぞれ9800円と9700円

 

 僅かな差だがスリームーンが勝ち、サンライズは地団駄を踏んだ

 

「スノーアイランド先にいく?」

 

「じゃあ私から」

 

 スノーアイランドは掴むではなく掬うみたいにしたが、取り出し口に引っ掛かる

 

「残念、広げたままだと取り出せないよ!」

 

 普通に持ち直して記録8900円

 

 欲張らなければもっと取れただろうに……

 

 最後はアンラッキー

 

 まずガシッと掴んだかと思うと中でモゴモゴと手を動かしている1分ほどモゴモゴしていると引き上げるとなんと全て500円硬貨しかないではないか

 

 じゃらじゃらと置くと記録はなんと2万5000円

 

「優勝アンラッキー!」

 

「やったー!」

 

 ちなみにだがこの掴み取り方式はお年玉の準備は大変だが普通にあげるよりも楽しいし、渡す金額も少なくて済む

 

 ロンメルも稼いでいるので今回は500円玉を多くしたが、景気が悪くなれば100円玉の比率を多くすれば良い

 

「両替するかー?」

 

「するする!」

 

「ほいよ!」

 

 楽しい楽しいお年玉タイムも終わり、食事を取ったら全員のんびりタイム

 

 中学生6人は元気に羽根つきや凧上げで遊び始め、ミッションタイマー先輩なんかはどこからか持ってきた酒をコーラで割ってコークハイで飲んでいた

 

 受験組のストリートパス先輩とマジックサンダー先輩は過去問を取り出して勉強、他のメンバーは昼寝をするか人生ゲームをして遊んでいる

 

 ロンメルは律の正月特番を観ながら受験組の勉強を教える

 

 のんびりとした時間が過ぎていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3日の午後、ロンメルは千葉にある実家に異世界のころを合わせると約60年ぶりに帰省した

 

「ロンメルお帰りなさい! 見たよトレーナー試験合格! 凄いじゃない! おめでとう!」

 

「おお! 帰ってきた帰ってきた! まぁ入れ入れ」

 

 久しぶりに会う母親と父親、それは記憶の中で止まっていたそのままの姿だった

 

 特に老けることもなくまだ40代の2人は私の学費のために共働きであり、父親はトラックの運転手を、母親は事務のバイトで稼いでいた

 

 父親は元々ホテルシェフから自身のレストランを経営していたのだが上手くいかずに畳み、料理への情熱が冷めてしまったが働かなければならず、いまの運送業に居る感じだ

 

 母親はホテルでバイトしていたところを父親と出会い結婚した経緯がある

 

 勿論母親はウマ娘である

 

 母親の成績は大井で5戦1勝、脚を怪我して引退と褒められた物ではなく、引退後は海外に留学して勉強もしてきた行動力ある人だ

 

 ただ父親のレストランの経営の悪化等でロンメルには弟や妹が居ない

 

 居ないから逆に中央トレセンに行けたというのもあるのだが……

 

 久しぶりに入った実家も変わってなく、私の部屋も母親が綺麗に片付けてくれていて昔遊んでいたぬいぐるみや漫画等が置かれていた

 

「懐かしいな……」

 

「何言ってるの去年も帰ってきたじゃない」

 

「今年は夏帰ってくるのかと思ったが来なかったしな……正直1勝もできないで引退かなとも思ったが……」

 

「ビックリしたよ。トレーナーになって、更に勝利もしちゃうんだもん」

 

「仕事でテレビでしか観れなかったが、ちゃんと録画してたぜ、今親戚達がその映像を観てるよ」

 

 仏壇と畳みの大きな部屋に置かれたテレビを囲むように親戚達が集まって私のレース映像を観ていた

 

「凄い凄い!」

 

「いやー、強いな」

 

「後ろとこんな差がつくんだべな」

 

 今日来ているのは父親の親戚達のようでウマ娘は居ない

 

 というか親戚に私より下のウマ娘の子は居ない

 

 母親も兄弟は人間の男の子だけで再従姉妹に歳上のウマ娘が居るくらいだ

 

「いやー、凄かったなロンメルちゃんお邪魔してるよ」

 

「おじさんこんにちは、少し太った?」

 

「バレたか……中年太りしちゃったよ」

 

「ロンメルちゃん凄いねぇ、それに比べてうちのバカ息子達は」

 

「よくあんな難関なトレーナー試験合格したよな。ロンメルってそんなに頭よかったんだ」

 

「能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ」

 

「隠しすぎだ!」

 

「もし娘がウマ娘だったらロンメルに娘預けたいわ」

 

「兄貴まず彼女作ってから言えよ!」

 

「実は居るんだよねー」

 

「はぁ!? 聞いてねーぞ」

 

 ロンメルは父親と母親に言う

 

「学費私支払えるようになったから2人は貯金していて良いよ。辛いでしょ」

 

「そんなこと無いさ、賞金は将来の為に貯金しておきなさい。まぁ困れば借りるかもしれないけど」

 

「……無理しないでね」

 

「大丈夫よ」

 

 挨拶と墓参りをしたらロンメルはすぐにトレセンに帰っていった

 

 明後日の金杯に向けての準備が有るから……

 

 両親はそんなロンメルの姿を見て立派になったと喜ぶ反面、少し寂しさを覚えるのだった

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