「うーむ」
ロンメルは勝手に占有している旧校舎のパソコン室にて律が監視カメラや各トレーナーのパソコンからこっそりデータを抜き取って有力50チームの情報を見るとやはり強いチームは強い理由がそれなりにある
例えば名家と繋がりが太いトレーナーはとにかくコンディションの調整が上手い
育成は名家が敷地内に作ったトレーニング施設で育成を行い、トレセン入学後はトレーナーが細かい調整を行うことで早い時期からそれなりのウマ娘が出てくる
早い時期に勝っていればジュニア重賞やジュニアG1に出れるし、クラシック戦線に参戦できる確率が大きく上がる
名トレーナーと呼ばれる人達は自身の中で信念を持っていたりする
例えば前生徒会長の三冠ウマ娘コントレイルの元トレーナーである福長トレーナーはIDレースの提唱者であり、データと長年の経験を織り混ぜたレースプランの作り方とそこから逆算した練習は無駄が一切無く数多の重賞ウマ娘を輩出してきた
今は引退してしまったが伝説のトレーナー奈瀬トレーナーは【領域】の解析に成功し、科学的アプローチから領域の方法をトレーニングで身に付けさせることに成功した日本のウマ娘水準を引き上げた第一人者である
【領域】……一部のウマ娘が持つ限界に近づくと発動する固有能力みたいな物、天才と呼ばれるウマ娘はだいたいこれを持っており、それを引き出すのが上手かったのが奈瀬トレーナーである
この様に秀才や天才、一流トレーナーと呼ばれる人達はウマ娘を勝たせるトレーニングの方法を知っており、それを最大限生かす為に優先的にターフやコース、坂路、プールを使ってトレーニングをしていく
これを正攻法で倒すのは練習時間が足りていないのでまず不可能である
ロンメルはパソコンの横に置いたトレーナー試験の書類をコーヒーを飲みながら読み込み、これらを倒すための方法を考えていく
その1つが全集中の呼吸である
全集中の呼吸は一時的に身体能力を大きく上げることができる
その効果、律の計測だと1.2倍
1ハロン12秒の間だけでもここぞのタイミングで身体能力を上げ、最高速度を上げられれば勝てる確率はぐっと上がる
「ヌルフフフ、呼吸が完成すれば、あとは使える時間を伸ばしていけば良いのですよ」
『他にはどのウマ娘をマークすれば良いかですね』
「あぁ、マークできれば他のウマ娘に集中力を割かなくて済むからデータによる能力の可視化が必須……律、私も偵察はやるけどなかなか手が回らないと思う。頼むね」
『わかりました!!』
宝塚記念は順当に上位人気のウマ娘が勝つ波乱も何もない無難なレースとなった
で、6月の宝塚記念が終わると1つの区切りであり、期末テストの時期となる
期末テスト……勿論ウマ娘達にも嫌がられるそれは、成績が良ければ良いほど嬉しいものであり、だいたいはサポート科と呼ばれる最初や途中から学業の方に舵を切ったウマ娘達が上位を独占する
で、ここで成績が悪いと夏季補修が夏休みの間行われ、【サマーシリーズ】に影響が出るのである
【サマーシリーズ】……サマースプリント、サマーマイル、サマー2000と呼ばれる夏季開催の重賞やレース達の中で区間ごとに順位で得点が振り分けられており、各部門1位のチームと選手に1000万円の賞金が各々振り込まれるという物だ
サマーシリーズは春に強いウマ娘達が休養期間となるため、今まで日の目を浴びてこなかったウマ娘達がここで賞金や実績、人気を獲得して秋の重賞やG1に殴り込む事ができる言わばステップレースでもある
まぁ学生連合には今年は関係無い
そもそも実力が足りてないのと移動費問題や移動後の調子問題が絡んでくる
サマーシリーズのレース場は北海道開催の函館レース場と札幌レース場、本州の新潟レース場、福島レース場、中京レース場、そして九州の開催である小倉レース場の為、東京のトレセン学園では移動費が一番安い福島なら電車を乗り継いで2時間、数千円でいけるが、新潟でも新幹線で万を越える
何故に安い夜行バスを使わないかというとウマ娘は基本狭い空間が苦手で、夜行バス等の長時間、他人と相席をしながらずっと同じ座席に座り続けるのはよほど図太いか移動慣れしている、車が大好き等の理由がない限り使われない
強いや中堅クラスのチームだとURAが持つウマ娘専用車両という新幹線や特別列車、飛行機を使うことができるが、弱小チームは人数の関係から一般車両に乗るしかない
これでストレスがだいぶ違う
調子を崩しやすくなるので移動は本当に気を付けなければならない
~閑話休題~
夏季補修を受けない為には赤点(35点以下)を取らなければ大丈夫なのだが……怪しいのが2名いる
ベストエンジェル先輩とマスターハリアー先輩である
この2人成績が悪すぎて留年したためチームから追い出された過去があり、頭の栄養が全部胸に行ったんじゃないかってくらい両者胸がでかいのが特徴の先輩方である
ただバカなのである
このままでは水商売待った無しである
というかバカだからそれでも悪い客や店に騙されそうである
「ということで全員学力強化特訓の時間です! トレーニングよりもまずはテストで高得点を取れるようにしましょう」
「あら? でもそれよりもトレーニングした方が良いんじゃないかしら?」
「そーだそーだ」
「爆乳バカ2人トレーニングを言い訳にサボろうとしない! わかってるの? お二人が今一番危ないんだよ!」
「でも今回はいける気がするわ! 漢字の50問テスト15点も取れたし」
「そのテスト普通なら45点以上取れるすごい簡単なテストなんですけどベストエンジェル先輩!!」
「大丈夫! 今回は秘密兵器の鉛筆サイコロ作ってきたから!」
「堂々とバカのお約束を使おうとしないマスターハリアー先輩」
このやり取りを見て中等部の2人すらあまりのバカさにドン引きである
「さて、ドン引き組にもちらほらというか安全圏で高みの見物できるのミッションタイマー先輩位しか居ないからね皆さんの学力だと……ということで」
『VTuberの律とで』
「『特別強化学習を行います』」
それこそ基礎からやり直しであり
「今回のテスト全員が全科目75点以上を目指します」
「「むりー」」
「バカ2人もやるんですよ! 頭に綿でも詰まってる状態からちゃんと脳ミソにしますからね! というかここまでバカだとレースプランも全然理解できてないからお二人は逃げしかできないんですよ!」
ということでテスト2週間前から始まった特別強化学習
ロンメルは触手を器用に使い、旧校舎の音楽室で勉強を教えるのだった
「ロンメル先生! 見てください! テスト先生と律先生のおかげ小テスト100点取れた!!」
「よく頑張りましたスリームーンさん」
「エヘヘ」
こちらは家庭教師をしているスリームーンさんのお宅
始めは実績の無い高等部で、足も速くないからと親御さんから疑問視されていたが、いざロンメルの授業が始まると僅か1ヶ月でスリームーンさんはメキメキと学力は高く、走りは速くなっていた
「スリームーンさんはペースを自分で作ることが得意なので先行逃げタイプでしょう」
「はい!」
「まずは特殊な呼吸をしっかり体で覚える、次にいっぱいレースを見て展開を頭に詰め込みましょう! スリームーンさんは要領は悪いですが、頭が良いのでコツさえ掴めばすぐに覚えられますよ!」
「はい! 先生!」
スリームーンは学校で友達にもロンメルの話をして追加で3人ほど家庭教師希望の子が出てきたので、ロンメルはスリームーンの家が不動産なので空き物件の部屋を格安で借りてその子達を集めて勉強を教えることにした
スリームーンを含め、その子達は皆中学2年生で再来年にトレセンに受験したいようなので、ロンメルは学生連合の皆みたいに仕込んでいく
彼女らの名前はサンライズ、アンラッキー、スノーアイランドの3名
サンライズは帰国子女のアメリカでレースを学んできたというウマ娘で、スリームーンがメキメキと力を伸ばしているのを見て強さの秘訣を知りたくなって、根が優しいスリームーンはロンメルの事を紹介して生徒になる
アンラッキーはスリームーンの親友で、名前に反してとにかく運が良いらしい
カードゲームのパックを引けばレアキャラが出るのは当たり前、宝くじで100万円を当てたこともあるらしい
が、家は母子家庭で貧乏なので100万円は将来の学費として貯金しているとのこと
スリームーンがどうにかしてほしいと相談してきたのでアンラッキーの親御さんと相談して家庭教師の費用はトレセンに入学後にレースで勝った時にまとめて支払いでトレセン学園に入学がそもそもできなかったら支払わなくて良いと提案した
友人がいれば勉強やトレーニングのモチベーションが上がるという打算的な物もあったが、アンラッキーはロンメルの事に凄まじい恩を感じて死にものぐるいで頑張る超努力家なウマ娘となる
スノーアイランドは食品メーカーの部長の末っ子で、料理が大好きなウマ娘で、元々トレセン学園ではなく高校は調理科があるところに進学しようとしていたが、スリームーン達が一緒に勉強しようと誘った為ロンメルの元に来た
で、走ってみたらそれなりに速いので3人が一緒にトレセン行こう行こうと誘い、本人もその気になって今トレーニングしている
無実績のウマ娘であるロンメルがいきなり生徒4人も抱えられるというのは凄いことである
で、現在は借りた物件で勉強やトレーニングをしつつ、律の時間外サポートも相まってメキメキと実力をつけてきている
一応家庭教師という体なので、これ以上今季は増やす予定は無いが、4人にはトレセンに来て活躍してほしいところである
律の登録者数が2万人を超えた
学生連合の皆や家庭教師の学生メンバーは律がAIだと知っているけど、本物の人間みたいと驚いていた
そんなこんなで7月、期末テストが行われ、爆乳バカ2人組が自己最高の平均55点を取ってまぁ大喜び
というかバカ2人以外は皆平均80点を獲得してめっちゃ喜んでいた
ちなみにロンメルは全教科100点で異世界に行く前の中間テストから伸びまくったので先生からすぐにでもサポート科にクラス変更しないかと進められたがキッパリと断った
で、なんか生徒会に私は目を付けられたらしい
なーぜか生徒会に呼び出しをくらった
「失礼します」
「よく来た。まぁ座りたまえ」
高そうなソファーに腰をかける
現在の生徒会のメンバーは5人
生徒会長のイクイノックス
副会長のエフフォーリアとドウデュース
会計のシャフリヤール
書記のタイトルホルダーである
皆ドリームクラスのウマ娘達であり、トゥインクルシリーズからはもう5年経過している
「素行不良で有名な様だね君は」
「エフエフ……美少女……」
「はーい、エフちゃん仕事モード入ろうね」
「……あの、先輩方というかエフ先輩、頼むから発情しないでください。こっちの威厳みたいなのが完全に消えるので……」
「エフ、少し席外すぞー」
「やだやだ! 金髪美少女と同じ空気吸いたい」
「はーい、変態行動は私にだけにしとかないと滅だよ!」
バタバタとエフフォーリア先輩とシャフリヤール先輩、タイトルホルダー先輩が別室に移動する
ちなみにドウデュース先輩はずっとニンジンパンを制服から出してモグモグしている
「ニュルフフフ、生徒会もなかなか愉快な場所の様で」
「こんな愉快な生徒会は今の世代だけだよ全く……年下だから3バカにも強く言えないし」
「会長の心中御察し致します」
「ありがとう……はぁ、まあ良い、美浦寮長から部屋に帰って来ないウマ娘がいると相談を受けてね、どうするかとりあえず本人の事情聴取をしなければと思い呼んだんだ」
「まぁ結構なことで」
「それで? なぜ寮に戻らない行為を繰り返しているんだ? 正直6月に入るまでは問題行動の1つも出てこない普通のウマ娘だったと皆から聞いているが……やはり学生連合に問題があるのか?」
「まぁ寮は居心地が悪いというのが1つ、同部屋の子とは普通ですが、消灯時間後も色々している身としては邪魔になるので帰りたくないのが1つですかね」
「本来であれば消灯時間後の行動は注意をしなければならない立場なのだが」
「まぁどれだけ自分が追い込まれているか改めて自覚しただけですよ。普通のウマ娘ちゃんでいたら何も残せずに終わるのですこーしだけ問題児になりました。ただそれだけです」
「ふむ……うーん、なるべく問題行動は起こさないで欲しいのだがねぇ……」
「まぁこればっかりは実績で黙らせるしかないのですが、私にはまだ実績がありません。というか7戦0勝の崖っぷちウマ娘でしか無いのでねぇヌルフフフ」
「……はぁ、まぁ良い、こちらも実績の無いウマ娘を相手にするほど時間は無いからな。一応注意はしたという体で書面で書いておく……ドウデュース」
「ほい」
食べながら書いたのか書類が出来上がっていた
「とりあえず反省文5枚提出して終わりだ。今後も続けるというのなら就寝時間外行動計画書を提出しろ」
「ずいぶんと優しいのですね」
「5000人ものウマ娘を管理している生徒会だぞ、暴力沙汰やいじめ問題と色々とある。優しい優しくないのではなく規則に沿った罰を与えているだけだ」
「感謝します」
「別に感謝されることはしていない。用件は以上だ。テストだけでなくレースでの結果が伴うようになることを祈っている」
「失礼しました」
「エフエフ……金髪美少女ちゃんまたね~」
「「……」」
生徒会長のイクイノックスさん胃痛で倒れないことを祈ってるよ……