現地のキング・アブドゥルアズィーズレース広場での練習が始まった
スカイプラザ先輩は絶好調で確かにタイムは落ちているが1秒程とバ場に適応している
サクセスも戸惑ってはいるが数日有れば慣れるだろう
後は芝組であるが、高低差が全く無い為坂の下りで息を入れることができないこと、上り坂がないのでペースが一定となるのでペース配分が鍵となる
ミッションタイマー先輩は自分のペースが作れているので大丈夫
フェンリルも距離が短いので大丈夫なのだが、問題はバカコンビである
マスターハリアーがバカ逃げをし、ベストエンジェルがまくりの戦法をするのだが、何度言ってもベストエンジェルはペース配分がぐちゃぐちゃだし、マスターハリアーは練習なのにバカ逃げするし……2人だけだと練習にならないので連れてきた皆と私も含めて試走を繰り返す
マスターハリアーの逃げに私は追い付くように走り、短距離が得意な面々もマスターハリアーについていく
コアランタンは追い込みなのでベストエンジェルが後ろに行きすぎないように注意をしながら走る
その様子を見ていたクロロ王女は一通り練習をしたロンメルに声をかける
「ずいぶんと練習方法を工夫してらっしゃいますが……集団試走はレースを見据えてですか?」
「いや、ネオムターフカップに出るベストエンジェルとマスターハリアーがバカなので調整方法が皆で押さえたりせっついたりするしかできなくて」
「ロンメルトレーナーも走るのですね。しかもマスターハリアー選手に匹敵するくらい速いじゃないですか」
「まぁ……現役なので」
「え!? 現役なのですか」
「はい、まぁ2勝クラスの選手達より低いランクで戦っていますが……時期に抜かしますよ彼女達を」
「随分な野心家のようで……普通なら引退してからトレーナーをするものでしょうに……しかもウマ娘のトレーナーは大成しないと言われてませんか」
「ええ、ですがそれを覆しますよ。私にはその能力がありますからねぇヌルフフフ」
「しかし速いですねぇ地元のウマ娘達がスカイプラザ選手の走りを見て目を丸くしていますよ……あれが一流のウマ娘なのでしょうね」
「31戦5勝……重賞2つとG1を1つ……私がチームの指揮を取る前は腐っていた選手ですよ。一流なんてものではない……血縁関係に一流選手は居ましたがそれもだいぶ薄まっています。才能はありましたがあれレベルは日本のトレセンにはゴロゴロ居ますよ」
「そ、そうなのですか!? 日本人特有のお世辞とかではなく」
「どれ、少しライバルのレベルを上げましょうか……少し着いてきてください」
ロンメルはクロロ王女を連れてコースに戻るとコースで練習しているウマ娘とトレーナーに声をかけた
[失礼、少し気になったもので声をかけさせてもらったが話しても良いかな]
[あ、ああ、日本のウマ娘かい? ]
[一応トレーナーなのだがね]
[おお! ウマ娘のトレーナーなのかい! 俺のババレルは速いだろ]
[ええ、しっかり鍛えられてますねぇ……ただババレルさんでよろしいですか? 親指を握るように拳を握り、気持ち大げさに腕を振るってみてください。そうすれば更に速くなりますよ]
[おいおい敵チームに妨害工作は無しだぜ。堂々正面から来たことと王女様に免じて許してやるが]
[マザノトレーナー、王女として命令です。ババレルさんにこの日本のトレーナーの言われるままにやらせてみてください。少しぐらいなら良いでしょ]
[……王女様に言われちゃ敵わないな。ババレル、少し言われた走り方で走ってみろ]
[はいトレーナー]
ババレルは言われた通りに走ると目に見えて速くなった
[おいおい嘘だろ]
[今までの走り方では少し窮屈なのですよ。ダートだからストライドを狭くして回転数を上げるのが定石ですがババレルさんの力なら多少広くしたところで問題ない。動きの無駄が少なくなり速度が出ます]
[一瞬見ただけでそこまでわかるのか]
[ええ、色々見えるのでね……例えばあの子は足のバランスが悪いですが……ちょっと良いですか]
ロンメルは近くを通りかかった地元のウマ娘を呼び止めて足を触り筋肉の歪みをほぐしていく
[歩きやすくありませんか? ]
[うそ! 凄い足が軽い]
[足を伸ばした状態で太ももを奥に押し込む様にマッサージすればこれぐらいの歪みなら治りますよ]
ロンメルの周りに現地のウマ娘達が集まり始める
それにロンメルは1人1人補正していく
「ロンメルトレーナー、なぜここまでしてくださるのですか?」
「ん? クロロ王女様、なに少しのお節介ですよ……ヌルフフフ強い相手の方がより選手は輝きますからね」
「……コアランタン先輩! ファッションカラー先輩! カラスマーチ先輩少しこっちに来てください」
「「「はいはーい」」」
3人をクロロ王女様に紹介する
「3人は予後不良の診断をされていたウマ娘です」
「え? 先ほど普通に走ってませんでしたか?」
「ええ、私が治しました。脳の障害以外であれば私は治せます。ウマ娘の脚はガラスと例えられますが、しっかり鍛え、食事を工夫すればガラスではなく合金のように固くなります」
ロンメルは近くにあった消火器を借りると自身の脚を思いっきり叩いた
消火器がベコっと凹んだがロンメルの足は青アザにもならずぴんぴんしている
その光景に王女様はもちろん集まっていたウマ娘や先ほどのトレーナーもドン引きである
[ヌルフフフ、ただ皆さん無理はしてはいけませんよ。普通のトレーニングもちゃんと意味があるのでね]
クロロ王女は思った
何がなんでもロンメルトレーナーの技術を学ばなければ彼女の育てた選手に我が国は蹂躙されると……
サウジカップデー当日
第一レースのネオムターフカップが始まる
『実況は律と』
「解説はロンメルが行います」
『皆さんが疑問に思っていることでロンメルトレーナー、最後まで選手の横についていなくて大丈夫でしょうか』
「問題ありません彼女達にやるべきことは全て終わらせています。後は彼女達が精神統一を個々に済ませて終わりです」
『まず枠順ですが1枠にマスターハリアー選手が、ベストエンジェル選手が14枠に入りましたが』
「ベストエンジェル先輩はもう少し内枠の方が良かったけど、まぁどうせ後ろだし有利不利は特に無いかな。マスターハリアー先輩は逃げだから内枠は良いよ」
『左回り2100メートルですがマスターハリアー選手の体力が持つか心配の声もあります。勝ち上がってきたのはどれも1600メートルですので』
「持ちますよ。彼女の適正距離は1200メートルから2500メートルまでですので」
『そんなに長いんですね』
「ええ、ただマスターハリアー先輩は序盤にどれだけリードをつけられるか、ベストエンジェル先輩はマスターハリアー先輩に離されすぎないかが問題です」
『なるほど……他に注意しておく選手は居ますか』
「4番のイギリスの重賞4勝ウマ娘の○○○○、6番フランスの○○○○ですね。彼女達はどちらも先行なのでマスターハリアー先輩の逃げをどれだけマークするかが問題です」
『さて、パドックが始まりました。日本とは違いパドックにてインタビューがあります』
『マスターハリアー選手、今日の意気込みをお願いします』
『逃げる! ただそれだけ!』
『ありがとうございます』
『パドックを見る限り9割ってところでしょうか仕上がりは』
「ええ、環境の変化に戸惑うかと思いましたがそんなことも無く……ただ絶好調には仕上がりきる前にレースとなってしまいましたが、十分なパフォーマンスは発揮できると思います」
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『さぁ最後ベストエンジェル選手のインタビューです』
『ベストエンジェル選手何か一言お願いします』
『必ず勝つので応援お願いします!』
『ありがとうございました!』
「インタビューは普通か、やらかさなくてホットしてるよ」
『2人は何話すかわからないから怖いですよね』
「ええ、仕上がりは上々、ラバンっていう飲み物がよほど気に入ったのかずっと飲んでたけど腹を壊すことはなかったね」
『頑丈な胃袋していますね』
「というか遠征組は全員中東の食文化に適応しました。どの料理も美味しい美味しいと食べていましたからね。逆にダメだったのが一緒に来てるコアランタン先輩で3日目からは皆とは別の私が日本食っぽい料理を作る羽目になりました」
『コアランタン選手は海外遠征は厳しいですかね』
「ええ、次からたぶんお留守番です」
『さてパドックも終わり入場しました』
「ゲートに順次入っていきますね」
『現地のウマ娘はやや緊張しているかもしれません。ただ他のウマ娘は集中できています』
『ネオムターフカップ今スタートしました!』
「マスターハリアー先輩とベストエンジェル先輩好スタート……ゆっくりベストエンジェル先輩は沈んでいくけどマスターハリアー先輩は加速していってます」
『さぁ直線が終わりコーナーに入っていきますね。内回りのコースゆえにカーブが少しキツくなっていますが』
「2人は問題ありません」
『さぁどんどん差を広げようとマスターハリアー選手が逃げようとしますが3番、7番、8番のウマ娘が釣られています』
「ああ、こりゃ3人は無理だ。絶対にバテる」
ペースはマスターハリアーが壊したので超ハイペースが確定した
最後尾まで約20バ身の縦長の展開だ
『ベストエンジェル選手まだ動きません』
「じっと脚を溜めていますね」
『1000メートル通過タイムは58.1これは速いのでしょうか?』
「速いですね。日本のような高速バ場ではなくドバイや香港の芝が近いので時計はそこまで出ないのですが、それで58秒前半は日本だと57秒前半で走っているのと同じです」
『なるほどさぁ残り1000メートルになりました! まだまだマスターハリアー脚を緩めません』
「息をいれないで走り続けるのが特徴のマスターハリアー先輩ですが失速はしないでしょう。ここで進撃を開始しだしたベストエンジェル先輩」
『みるみる差が縮まってきます現在先頭のマスターハリアー選手と10バ身、コーナーに先頭は入っています』
「ああ、マスターハリアー先輩を追いかけていたウマ娘達……いや、全員がバテた。失速し始めた」
『ベストエンジェル選手驚異的な末脚! 残り400メートル、既に2番手』
「マスターハリアー先輩とは残り3バ身」
『並んだ並んだかわさないかわさない並び続けている!』
「マスターハリアー先輩が意地を見せています」
『残り50メートル、ベストエンジェル選手僅かに前に出た所でゴール!』
「いやー、2人のマッチレースでしたね」
『ベストエンジェル選手の勝因は何でしょうか』
「いや、ベストエンジェル先輩の勝因ではなくマスターハリアー先輩の敗因の方がわかりやすい。差をつけるのが甘かった。もっと離さないとダメだった。並んでまだ余力が残っていたのがその証拠だよ」
『なるほど……ではネオムターフカップの勝者はベストエンジェル選手でした!』