タキオン製薬モニター室
「会長おめでとうございます」
「会長の後継者がサウジカップ圧勝お見事でした」
「……捨て子は育つというが私が見向きもしなくなって腐ったと思った子がまさか私を超えるとは」
アグネスタキオンは驚いていた
領域に到達していたことは東京大賞典を観ていればわかったが、次の次元を現役時代ずっと探し続け、ジャングルポケットやマンハッタンカフェにさんざん協力してもらってなお到達することができなかった次のステージをあの子が見つけるとは……
「スカーレット君……いや娘のガイア君の方が可能性があると思っていたがこっちか……うーむ、掌返しみたいで嫌だがスカイプラザ君に連絡をしてみるか」
「でしたら私が」
「いや、私自身が電話するのが筋だとは思わないかね」
「失礼しました会長」
「まぁ今日連絡するのは疲れていると思うから明日にするよ」
サウジアラビアにて色んな人に捕まっていたスカイプラザに電話が鳴り響く
[あ、皆さん少し失礼します]
電話番号は……見覚えが有るような無いような……登録はしてないな
「はい、スカイプラザです。どちら様でしょうか?」
『クックックッ一族の長の事をお忘れかい? スカイプラザ』
「その声は……アグネスタキオンさん!?」
『正月の親族会ぶりだねぇ……もっともその時は周りが煩くて声をかけられなかったが』
「い、いえ……うちに何か用でしょうか」
『まずはおめでとうとね。領域の次のステージに入った事をね。どうだい? やっぱり気持ちいいのかい?』
「……タキオンさんは領域をずっと研究していたのですよね。その時のデータはまだ保管してありますか」
『勿論だ。でも君には必要ないだろう』
「いえ、私のトレーナーがそのデータが必要だと思いましてね。タキオンさんは他のウマ娘達みたいな派閥争いが嫌いだと聞いていますが」
『まぁ私自身が異端児だったからねぇ……しがらみを嫌って自分の家を立ち上げて、そしたらまたしがらみができてしまって全く厄介極まりないよ』
「正直どこまで話して良いかわかりませんので帰国したらすぐにそちらに伺ってもよろしいでしょうか」
『……会社だとまずい、家においで。トレーナー君と一緒にね。美味しい紅茶を用意しておこう』
「ありがとうございます」
「という電話があったのロンメル」
「アグネスタキオンさんですか……ヌルフフフ一度お話は聞いてみたいと思っていました」
「それじゃあ」
「ええ、帰国後すぐに伺いましょう……というかスカイプラザ先輩、またプレゼント攻撃されましたね」
「こんな綺麗な布やらブランドバッグ、ポーチ、靴なんか貰ってもうちには似合わないのにね」
「形から入るというのもアリですよ……ヌルフフフ、いやしかしこれでスカイプラザ先輩は一流ウマ娘から歴史的なウマ娘になりましたね」
「歴史的って大袈裟な」
「いえ、大袈裟でも何でもありませんよ。そもそも透き通る世界に入れたのは私以外だと初めてですし……今も見えますか透き通る世界は」
「ええ、なんだろう、頭の中にあるスイッチみたいなのを押すと……ほらこの通り透けるよ……ねぇ、透けて見えるとさ、ロンメル心臓2つあるの? しかも私と比べても両方ともかなり大きいけど」
「ええ、そうですよ。片方は触手のコアで副心臓と呼んでます。まぁどちらも心臓の役割は同じですがね」
「血液ポンプが2個あるとかズルくない?」
「まぁそれは許してくださいな。こういう身体なんだと」
「しっかしロンメルの体は普通の人間やウマ娘と大きく違うね……心臓もそうだし、触手? で良いのかな、それが大動脈みたいなのが身体中に張り巡らされてるし、臓器が全体的にデカイ。ギチギチじゃん体内……よくその体型で居られるよね」
「まぁ鍛えてますから」
そんなことを話しながら飛行機に乗り込み日本に向かうのだった
「ロンメルさん勝ちましたよ! 阪急杯」
「お疲れ様ですロンメルトレーナー、阪急杯ユランさんが逃げきり勝ちでした!」
「久しぶりの遠征で疲れました」
「ユラン先輩ナイスです! マンシュタインと武内サブトレーナーもありがとうございます」
「これでユランもドバイ行けるよね」
「ええ、計画通りドバイ遠征をしますよ」
「よしよしよしし!」
「はい、皆さんにお土産」
「これは宝石にこんな綺麗なスーツ良いんですか」
「わぁ綺麗です」
「サウジの富豪がお土産に悩んでたら買ってくれてねぇ……まぁそれは良いや、新しいサポートメンバーが増えます……サウジのクロロ王女と護衛のブルチさんです」
「初めましてスタッフの皆さん。紹介に頂きましたクロロです。少しでもここで学びたいと思っていますのでよろしくお願いします」
「ブルチです。日本語まだ覚え途中、頑張ります」
「「「ええー!?」」」
「ロンメルトレーナー! 王族も抱き込むんですか!?」
「マンシュタインそのつもりだけど」
「いや、その同僚ってことになるのでしょうか」
「まぁそうなりますね」
「無礼を働いたら処刑とかないですよね?」
「マンシュタインは王族にどんなイメージを持っているかわからないけどフレンドリーに接してあげてよ。クロロ王女私達の1つ上だし」
「マンシュタインさん、武内さん、ルビーさんよろしくお願いします」
「あ、コラ! ユラン気配消して逃げない」
「あ、バレた!」
「全く……」
「クスクス……面白いところですね」
「本当ですよ……さて、じゃあ選手や関係者にも紹介しても良いでしょうか」
「ええ、よろしくお願いしますわ」
選手達や運転手のおっちゃん兄ちゃん、卒業組にもクロロ王女とブルチさんを紹介する
どうやら私達がサウジに行っている間に例のバスが届いたらしい
「夢のドリームスーパーだ!」
動くホテルの登場にクロロ王女や選手達は大興奮
これで長距離の移動も楽チンである
クロロ王女とブルチさんは日本に来て和食にすっかり魅了され、特に天ぷらにドはまりしている頃
ロンメルとスカイプラザはアグネスタキオンの家に来ていた
そこは豪邸であり、インターホンを鳴らすと入ってくれたまえという声が聞こえると、自動で門が開いた
「やあよく来たね! ささ入ってくれたまえ」
「「お邪魔します」」
中は綺麗に整えられており広々としたリビングに案内された
「ゆっくりしてくれたまえ……紹介するよ私の旦那だ」
「どうもこんにちはロンメルトレーナー、スカイプラザさん」
「本当は娘達も紹介したいが皆研究で忙しくてねぇ……いやしかしスカイプラザ君、サウジでは見事な走りだったねぇ」
「アグネスタキオンさんに観ていただけるなんて光栄です」
「おいおい固くならないでくれよ。もっとフレンドリーにいこうじゃないか」
「いや、しかし、あの……」
「皆さん紅茶でよろしいですか?」
「お願いします。あ、すみません砂糖多めで」
「私はいつもので頼むよモルモット君」
「じゃあタキオンさんと同じので」
「はいわかりました」
雑談をしているとスカイプラザ先輩の緊張も解れてきたのかいつもの口調に戻り始めた
紅茶とお菓子が置かれ、旦那さんも席に座る
「さて、じゃあどうやってスカイプラザ君は領域の先に入れたのかな」
「いきなりズバリと聞きますねぇタキオンさん」
「当たり前だろスカイプラザ君、私は知りたくてしょうがなかった物を掴んだ者が目の前に居るんだ。プレゼントを前にした子供の様な気分だよ」
「……ロンメル」
「構わないよ」
「領域の先……私達は神域と呼んでいます」
「神域か……続けて」
「神域はロンメル曰く2つの方法でアプローチができるらしいです。神域を見た者が再現をして入る方法と人生を何度も繰り返して蓄積された経験から入る方法だと」
「失礼、その他にも方法はある精神と肉体が領域に適合した上で更なる限界を超えた時……だ」
「では3つの方法の前例が居るのかい」
「知っている癖に……私が言った限界を超えた人はサイレンススズカさん、再現はステイゴールドさん、経験値の蓄積は今のところ私含めて歴史上3人しかいない」
「……? ロンメルトレーナーも神域に入れるのかい?」
「ええ、勿論。安定して入れますよ。もっとも肉体がまだついてきていませんがね」
「人生を何度も繰り返すと言ったがまるで転生を繰り返しているようにも聞こえたが?」
「そうですよ。私は何度も死を繰り返している。こんな成りですが既に実年齢は60を超えています。まぁ肉体年齢が15なので精神も引っ張られてますがねぇ」
「おかしな話だ。じゃあロンメルトレーナーは異世界にでもいたのかい?」
「ええ、3つほど世界を巡りましてねぇ。例えば」
ロンメルは気配を消した
アグネスタキオンさんの首裏に指を置いた
その瞬間までタキオンさんはロンメルが後ろに居ることに気がつかなかった
「……!? なんだ今のは!?」
「暗殺術の1つですよ。気配を消す、安心感を与える。一番リラックスしたタイミングで指をそっと添える」
スカイプラザ先輩と旦那さんもロンメルが移動したことに今気がついた
「まぁあとはこれでしょうかわかりやすいのは」
髪から触手を生やす
「異世界で生きるために色々ありましてねぇ。触手を生やすはめになったのですよ。便利なので良いですが、代わりに私が死んだときに死体は液体としか残らず骨も無いでしょうね」
「……え? ロンメル聞いてないんだけどそんなこと」
「今初めて言いました。もっとも何事もなければ90歳までは生きられるので安心してください」
「ロンメル君が異世界に言ったことはわかったけど、それが神域と同繋がるんだい?」
「神域に入るためにはステップがあります。領域に入る、自身の魂と触れ合う、自身の限界を超える事を恐れない……私は強烈な殺意を向けることにより魂を活性化させて無理やり魂と触れ合う事をできる教育ができます。臨死体験ですね。これを乗り越えれば限界を越えることに恐れる者も誰も居なくなります」
「そうなのか……魂と触れ合う……ずいぶんとスピリチュアル的な要素なのだな」
「領域事態がオカルトみたいな物なのですから、それを科学的に証明しようとする方が難しいのですよ。まぁ軽く整理しましょう」
ロンメルは紙にメモしていく
領域に入るためには限界の先の先に到達する必要がある
逆説的に考えれば自身の限界の先の先を強制的に見せれば良い
【臨死体験】+【限界を超えたトレーニング】+【故障しない肉体】=領域
領域+【感情の爆発=精神的昇華】+【肉体的限界を更に超える】+【蓄積された経験値】=神域
「こうなります。正直に言うとスカイプラザ先輩は私の予想していたよりもナルシストで私の計画を半年も短縮して神域に入れました」
「ひどいロンメル!」
「だって私もサウジで入れると思ってませんでしたもん! 正直強力なライバルが居て始めて入れる感じなのですよ……まぁ私なりになぜこのタイミングでスカイプラザ先輩が神域に入れたのかな解析しましたが……」
【異国のストレス】+【私の神域を見ている】+【リミッターを外せた】
「これでしょうね」
「リミッター?」
「あれかい? 火事場のバカ力的な物かい……それだったら何人ものウマ娘がレース中に外していると思うが」
「ただ外しただけでは50%、適切に外せば75%……スカイプラザ先輩は外すのが上手かったとしか言えませんねぇヌルフフフ……肉体の細胞1つ1つを動かす感覚でスカイプラザ先輩は脳のリミッターまで解除できたが故に神域へと到達することができました」
「肉体へのダメージが酷いハズだ。私でも領域に3回入っただけで引退を余儀なくされたが」
「そこは私が徹底的に鍛えました。スカイプラザ先輩、少し柔軟を見せてあげてください」
「え? はいよ」
スカイプラザ先輩は両足を開くとまず180度開脚、そのまま体をグルグル回したり、足をM字(女の子座り)をしてそのまま寝っ転がってブリッジをしたり見せた
「驚異的な柔軟だねぇ。しかしトウカイテイオーみたいに柔軟性は有っても骨折してしまう者だっているが」
「そこは食事ととある技術を教えています。まぁ言ってしまうと特殊な呼吸ですよ」
「特殊な呼吸?」
「詳しくは教えられません。これはチームの根幹に関わるのでねぇ……ただ呼吸ができれば怪我の確率をぐっと抑えることができます」
「なるほど……薬等ではアプローチは無理かな」
「難しいでしょうねぇ」
「……そうか。スカイプラザ君、君はとても良いトレーナーに恵まれたらしい。幸運だったねぇ」
「はい!」
「ロンメルトレーナーはウマ娘全体の幸福には興味は無いのかい?」
「今は特に無いですね。まぁ私の教育が広まれば結果としてウマ娘全体のレベルが上がると思いますが……私は最強になりたいのでまずは自身で強敵を作り上げ、それを倒す。周りが弱い中で勝ってもつまらないですし」
「なるほどねぇ、実に面白い考えだ! その為に現役なのにトレーナーを?」
「まぁ楽しくないですか? 最強チームを率いるトレーナーが世界最強だなんて」
「面白い! 実に面白いよ! ロンメル君! 君が私の現役の時の選手じゃないことが実に惜しい」
「まー、タキオンさんなりに色々動いていたのは記録でわかりますが、領域だけを追い求めても壊れるだけですよ。だからタキオンタイマーなんて言われるんですよ」
「面目無い……親族に私は無理させ過ぎたのは事実だ。だから私は今は選手に関わることはしていないで薬品作りに精を出しているがねぇ……いや、実に興味深い話だった。スカイプラザ君、ロンメルトレーナー君、互いに切磋琢磨して神域をもっと見せてくれたまえ」
「ええ、言われなくても」
「はい! 頑張ります」
「スカイプラザ君はそういえば将来の夢はあるかい?」
「……飛行機のパイロットになりたいです」
「そうか、君の頭脳なら私の後継者になれると思ったのだがねぇ」
「はは、一度バカを経験したので私は会社経営には向いてませんよ。パイロットになって世界中を飛べるように今は勉強しています」
「そうか! 気が変わったらいつでも連絡してくれ、タキオン製薬はいつでも君を待っているよ」
「ありがとうございます」
「ロンメルトレーナーも人材が欲しければいつでも言ってくれたまえ、社会人チームを抱えているから融通はできるが」
「派閥争いになるのでもう少し基盤が安定するまで勘弁を」
「派閥争いはするつもりが無いんだがねぇ」
「無くても今それをやられるとバランスがタキオンさんの一族に偏りますからねぇヌルフフフ」
「わかったわかった手を引こう。実に楽しい時間だったよ」
「こちらも美味しい紅茶をありがとうございます」
ロンメルとタキオンは握手をして今回は解散となった
しかしタキオンの一族とロンメルは長い付き合いになるのだがそれはまた別のお話
日間ランキング74位ありがとうございます
誤字報告本当に助かっています
これからもよろしくお願いします