ロンメルの本気   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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ドバイワールドカップデー 終盤戦 スカイプラザ

 美しい物を見た

 

 スプリームや過去の学生連合を知らない人にはわからないが、うちらは全員がベストエンジェルの頑張りやマスターハリアーの献身は見てきた

 

 腐っていた時は手を貸そうなどという思いは湧いてこなかったが、それでも2人が報われたのは1個人としてはとても嬉しい

 

「さて、スカイプラザ先輩、後輩達は皆全てを出しきりましたよ。後はスカイプラザ先輩が結果を見せるだけです」

 

「わかってるってロンメル……後輩がこんなに頑張ったんだ、本命がコケるわけにはいかないっしょ」

 

 うちはいつものように軽い口調でロンメルに返す

 

 時間だ……控え室を出てターフに向かう

 

 ターフでは選手達がポツポツと居る

 

 [来ましたね! 遅いじゃないですかスカイプラザ]

 

 [貴女が早すぎるのですよサジタリウスさん]

 

 [楽しみですねぇやはり強い者と戦うのは血が滾ります]

 

 [……貴女の領域でうちを魅せてくださいサジタリウスさん]

 

 [あなたも領域は使えるのね! ならこのレースは楽しい人がいっぱいですね! ブループラネットも領域に入りかけていますし……]

 

 [なるほど、なら大丈夫ですね]

 

 [なにが? ]

 

 [いや、うちの勝ちが揺るがないと確信しました]

 

 [徹底マークしてあげるよ]

 

 アメリカのG1を10個も勝っているのにサウスカロライナさんは神域のきっかけすら掴んでいないように聞こえた

 

 なるほど、確かに神域を見せてもらえないとどんなに強くてもわからないのか

 

 いや、強いから先を求める必要がないのか? 

 

 どちらにせよサジタリウスさんは停滞してしまっている

 

 速さに、強さが

 

 ならうちが魅せてあげよう

 

 世界を

 

 

 

 

 

 

 

 私サジタリウスはスタートと同時に日本のスカイプラザの後ろにマークをした

 

 彼女は既に領域に入っているのか私の圧力や威圧感を軽く受け流す

 

 大抵の子はこれで萎縮するんだけどなぁ

 

 私も入りますか

 

 レース序盤から領域に入るなんてとんでもなくクレイジーだけど、勝つためにはそうしないとねぇ

 

 ブループラネットも離されないように着いてきている

 

 他の子は様子見ねぇ

 

 スカイプラザにそんな猶予は無いのにおめでたいこと

 

Sagittarius(神の矢)

 

 さぁスカイプラザ戦おう

 

 ……? 

 

 なんだ? 

 

 差がどんどん開いていく? 

 

 まてまて、こっちはトップスピードだぞまだ上がるのか!? 

 

 ブループラネットが1000メートル通過時点で脱落した

 

 嘘だ……アメリカの王者の私でも追い付くのがやっと……だと

 

 

 

 

 

 

『スタートしました! 全員まずまずのスタート、やはり前に行くのはスカイプラザ! 飛ばして行きますが、アメリカの絶対王者サジタリウスが追走、後ろにブループラネットと続きます』

 

『内枠の有利を目一杯使いスタートを成功させたスカイプラザ! 最初のコーナまでは300メートル! 隊列が決まっていきます』

 

『大逃げです! スカイプラザ大逃げをしようとしていますがぴったりとサジタリウスが着いていきます』

 

『今までのレースでは追走できるウマ娘は居ませんでしたが、絶対王者サジタリウスにドバイの覇者ブループラネットが着いていきます』

 

『先団と後続に6バ身、7バ身と差がどんどん広がっていきます。スカイプラザサウジカップの再来なるのか……コーナーが終わり直線に入りますが、スカイプラザ逃げ続けています。1000メートルを通過』

 

『ブループラネット後退していきます! このハイペースに着いていけないか! 例年に比べて1000メートル通過タイムが2秒も早い! 異常な時計が出ています』

 

『サジタリウスと徐々に差ができています。サジタリウスが後退しているわけではありません! スカイプラザが更に速くなっているのです! 信じられません!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 肉体に異常は無い

 

 領域と透き通る世界に入っているし、神域にも入っている

 

 やっぱり見える世界が違う

 

 後続の位置が頭にすっと入ってくる

 

 サジタリウスが4バ身後ろ、ブループラネットが7バ身、他が15バ身差か

 

 風になろう

 

 風の呼吸で肉体を風と一体化させる

 

 飛ぶように、美しく走ろう

 

 そうすれば自ずと世界が見えてくる

 

 神域【天上の調律者】

 

 ああ、最高の絶景がそこにある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が負ける? 

 

 相手が強い? 

 

 私は絶対王者サジタリウス様だぞ! 

 

 あいつ領域の更に先に居るな

 

 他のウマ娘にできて私ができないハズは無い! 

 

 肉体の限界を超えろ! 

 

 勝つのは

 

「私だぁぁぁ!!」

 

 ピシ

 

 

 

 

 

 

 

 

 気持ちに肉体が付いてこなかった

 

 よくある話だ

 

 残念ながら適切なトレーニングをしていない状態で領域を越えようとすれば目の前のアメリカの王者のようになるだろう

 

「スカイプラザの勝ちが確定しましたねぇ、後は何バ身つけられるか……歴史との勝負です」

 

 ロンメルは僅か1年も満たないでダート歴代最強クラスに登り詰めたスカイプラザの才能に少し嫉妬した

 

 ロンメルは異世界での経験や、技術により足りていない才能の差を埋めようとしている

 

 本物の天才というのはそんな努力を嘲笑うかのように飛び越えていく

 

「ヌルフフフ、対戦が楽しみですねぇ」

 

 

 

 

 

 

『サジタリウス歩調がおかしい、ゆっくりと後退していきます』

 

『スカイプラザ残り400メートル後続とは15バ身以上に広がっている! もう邪魔する者は無し! セーフティリード!』

 

『差が広がっていく! 我々は30年以上止まっていたホクトベガの時計がようやく動き出します誰もがあの時夢見た圧倒的な勝利を、今、スカイプラザがゴール板を駆け抜けました』

 

『ダート世界最強は私だぁぁぁ!! 右手の拳を上げるスカイプラザ! 完全勝利です!』

 

 オールウェザーでは無く、ダートコースでのドバイでの勝利は今まで日本のウマ娘では出ておらず、一種の悲願であった

 

 スカイプラザ、ここに日本、サウジ、ドバイと3国を跨いでのG1勝利を成功させた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [はぁ、はぁ……スカイプラザ、凄かったよ君は]

 

 [サジタリウスさん]

 

 [おめでとう君が王者だ]

 

 [いやー、負けた負けた、日本のウマ娘強いね……完敗だよ]

 

 [ブループラネットさん]

 

 [掲示板見た? 1.57.9だってよ惜しかったね世界レコードにあと0.01秒だよ、例年よりも3秒も時計が早かったね]

 

 [……サジタリウスさん脚が]

 

 [大したこと無いさ、異常を感じ取ってすぐにレースを辞めたからね]

 

 [いや、折れてますよ]

 

 [え]

 

 [うち領域に入っていると世界が透けて見えるのだけど、脚……しっかり折れてます。これ以上歩かないでください。ブループラネットさん後ろから抑えて、うちが背負いますから]

 

 [やめろ恥ずかしい]

 

 [しかし、歩いてダメージでも入ったら走れなくなりますよ]

 

 [良いんだよ、どちらにせよ今日で引退だ。前々から決めてたんだ]

 

 [……そうだったのですか]

 

 [背負うのは嫌だが、肩を貸してくれじゃあ]

 

 うちとブループラネットは肩を貸す

 

 [へ! ドバイの王者に世界の覇者に支えられて歩くなんてずいぶんな贅沢だね]

 

 3人でコースから出て控え室に戻る

 

 サジタリウスさんは領域の先が見え始めていただけに惜しいが……本人が引退するなら止めることはしない

 

 [スカイプラザ、アメリカには来るのか? ]

 

 [いや、ダートが合わないから行かないよ]

 

 [そうか……残念だ……ドバイには来るよな]

 

 [ええ]

 

 [じゃあ首を洗って待ってな! 他のアメリカ勢がスカイプラザ、あんたを倒すから! ]

 

 [いや、ドバイや中東勢が倒すよ]

 

 [……うちは確かに世界を取ったけど……うちの最大のライバルは日本にいるよ]

 

 [へぇ誰だ? ]

 

 [うちのトレーナー]

 

 [トレーナー? ウマ娘なのかい? ]

 

 [現役のね……今は無名だけど、今年の暮れくらいから凄くなるんじゃないかな。アメリカ行きたいって行ってたし、ペガサスワールドカップでお披露目になるんじゃないのかな]

 

 [そりゃ楽しみだ。今度は観客としてみているよ]

 

 [来年も戦おうねスカイプラザ! このブループラネットがリベンジするから]

 

 [ええ、よろしく]

 

 

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