核の世代の破壊
それが僕に与えられたミッションだ
僕の名前はヤクルトガッツ……近親や血縁に凄い強いウマ娘が居るようなウマ娘でもなければ、名門みたいな強い一族でも無い
母子家庭のただの弱いウマ娘でしかなかった
母子家庭……ウマ娘だと多いんだよね
理由としてはウマ娘は単為生殖が可能性なんだよねぇ
ウマ娘は種族上の特徴として雌しか居ない
だから人間の雄と交わることが出きるんだけど、なーぜかウマ娘は単為生殖が可能……これはもうそういう生き物だとしか言いようがないんだよね
一定の年齢になれば皆孕む可能性がある
だからウマ娘は学生のうちからレースで稼ごうとするし、トレセン外でも闇レースが行われている
学生でのバイトが寛容なのもなるべく早くから社会に馴染めるようにならなければいけないというのかもしれない
まぁそんな歴史が有るから日本だと歴史の権力者はウマ娘と交わることは例外でしかなく、なるべく人間の女性と交わったから人類の友ではあるが平等の権利を得れたのは明治維新後になる
……まぁそんな歴史なんて今はどうでも良くてだ
僕は弱っちかったけどロンメルのお陰でG1の舞台に立つことができた
お母さんも僕をトレセンに入れるために親戚から借金までしてくれたし、僕もロンメルが来るまではバイト漬けでご飯もまともに食べられなかったけど
今は違う
ロンメルが食事を支援してくれたことでたくさん食べる僕でもお腹いっぱいになれたし、そうなると活力も沸いてくる
あれよあれよと重賞も勝って……
皆も言うけどきっかけは全てロンメルだ
弱い僕をG1の舞台まで上げてくれたし、勝てる作戦も立ててくれた
天気は大荒れ、バ場も泥んこ
「良い舞台になりましたねぇ」
「こんなバ場僕も経験したこと無いんだけど」
「ええ、誰もが未知です。ヤクルトガッツ先輩、ツアーリボンバーさんのペースが遅くなりそうなら後ろから突っついてください。強制的にスタミナ勝負にしますよ……そしてこれを付けましょう」
「蹄鉄? 少し形が違うけど」
「この田んぼのようなバ場を少しでも走りやすく改造した蹄鉄です。蹄鉄は素材がアルミニウム合金であり、蹄鉄と認知できる形であれば選手によって多少の改良は認めるとルールに記述があるのでねぇ……まぁ国際ウマ娘レース機構のルールなので世界共通なので問題はありません」
「少し分厚い? それと爪の部分が少し長いかな?」
「私はこれを水掻きと呼んでますが、泥に脚を取られないようにするための工夫です……今打ちますのでシューズを貸してください」
「はーい」
トントントンとトンカチで蹄鉄を打ち込んでいく
「ねぇロンメル僕勝てるかな?」
「勝てます。私は今回のレースは確信してます。というより晴れていてもあなたが勝ったでしょう」
「僕不良バ場の鬼とかでもないよ?」
「知っていますよ。でもねぇ……」
コン
「あなたの脚は世界に通用します。マイル中距離のエースはベストエンジェル先輩でもマスターハリアー先輩でもなくあなたです。ヤクルトガッツ先輩」
「……エヘヘ、そう言われるとやる気出てくるな」
「勝ったら焼き肉クイーンで最高級コース食べ放題です」
「なおさら勝たないとね」
「頑張ってください」
「おー!」
「メルトどうだい調子は」
「絶好調だよトレーナー」
待合室にてトレーナーの細田はメルトダウンに声をかけた
「皐月賞の借りを返す機会がようやく訪れたな」
「ああ!」
メルトダウン……現在中等部3年生でシニア1年目の彼女は昨年のURA特別賞を獲得した凄いウマ娘であり、ダービーウマ娘でもある
ただツアーリボンバーに皐月賞で負けたことにより世代2番手のイメージが強く、G1数はリトルボーイと同じ4勝だが、メルトダウンは世代戦を3つ、シニアクラスは有馬記念しか勝っていない
対するリトルボーイはG1全てがシニア混合戦であり、ダービーは別としても格だけで言えばどっこいかやや相手が上、ツアーリボンバーに至っては既にG1を6勝もしているウマ娘である
「メルト、この大雨はお前にとっては味方だと思う。阪神の2000メートルでこの大雨でバ場は不良バ場だ。スタミナが問われることになる」
「おう! となるとリトルよりも前、皇帝様の後ろがベストポジションか?」
「いや、ツアーリボンバーの前に付けろ。今までと同じやり方だとツアーリボンバーの残した脚に持ってかれる可能性が高い。だから今までと違い先頭を取ってこい」
「それは今の判断? それとも前から考えていたの?」
「今の判断だ。俺の直感が前だと判断した」
「トレーナーは本当に勝負強いからね! 乗った! 私が先頭を取るよ」
「先頭争いになるようなら全力で争え、後ろは気にするな。お前のスタミナなら持つ」
「わかった!」
メルトダウンは逃げを選択した
これがレースにおける大きなターニングポイントとなる
「さぁ嵐の中始まります阪神レース場第11レースG1大阪杯……実況は私赤嶋隼が、解説はキタサンブラックさんにお越しいただいていますよろしくお願いします」
「キタサンブラックです! 皆わっしょーい! G1というお祭りを盛り上げていきましょう!」
「キタサンブラックさん、今回は凄いメンバーが揃いましたね」
「はい、皐月賞で激突した核の世代の3名がまた同じ舞台で戦うのは夢のようですね」
「勝ち逃げとも言われていますが主にマイル戦線で活躍する快速ウマ娘の皇帝ツアーリボンバーさん、クラシッククラスながらシニア混合G1を4勝、G1 2着2回、3着1回と抜群の安定感を誇るリトルボーイさん、ダービーと菊花賞での二冠はウマ娘で、有馬記念を制したG1 4勝ウマ娘のメルトダウンさんそれぞれが核に由来する名前なので核の世代と言われています」
「やはり3人が最有力でしょうか」
「はい、能力的には抜けていると見て良いでしょう」
「人気も3人で集中しており、ツアーリボンバー選手が2.3倍、メルトダウン選手が3.5倍、リトルボーイ選手が5.1倍となっており、次の選手の倍率が25倍と三強となっていますね。キタサンブラックさん今回ペースを作るウマ娘はいったい」
「ズバリツアーリボンバーさんでしょうね。強烈な逃げを今回も見せてくれるでしょう。隊列はツアーリボンバーさん、メルトダウンさん、リトルボーイさん、ヤクルトガッツさんと続いていくでしょう」
「初めての名前が上がりましたがヤクルトガッツさんですか」
「はい、4番人気で最近勢いのある学生連合所属のウマ娘で、中日新聞杯を勝っています。強さは正直のところ未知数です」
「未知数ですか……可能性を感じますね」
「はい!」
「パドックが終わり、レース場にウマ娘達が姿を現しました」
「やっぱり皆さん足元が気になる感じでしょうね。ここまでの嵐の中でのレースはなかなかありませんからね」
「でもそうなりますと人気順に来る可能性は少ないですかね」
「かもしれませんが、重バ場は昨年のダービーを経験しているメルトダウンさんとリトルボーイさんの2名は少し有利かもしれません。あとは○○○○選手と○○○選手も不良バ場での勝利経験がありますね」
「なるほどありがとうございます」
「いえいえ!」
「さー、ゲートインが始まります」
「皆スムーズに入っていきますね。いつも嫌がる○○○○選手ですが、今日はスムーズです」
「2番ツアーリボンバー選手が今入りました」
「4番メルトダウンさん、5番ヤクルトガッツさん、6番リトルボーイさんも入りました」
「ゲートイン完了! スタートします! ……スタートしました」
よし、スタートは成功した
あとはツアーリボンバーの後ろに入り込むように……
僕……ヤクルトガッツは内のツアーリボンバーをマークしようと内に入ろうとすると横のメルトダウンが前に前にと進んでいる
嘘、メルトダウンも逃げ!?
ハイペースは確定かな
僕は3番手は確保しなければならないとリトルボーイと熾烈なポジション争いをするが、前のツアーリボンバーとメルトダウン共に先頭を譲るつもりがない
ここは……一旦後ろに入ろう
リトルボーイとのポジション争いを止めて4番手に入る
真後ろではなくやや外目に
さてさて、僕も領域に入ろうかね
おお! バチバチしてきた!!
視界が青く染まる
「これが僕の領域だよ」
【400の
マイルから2000メートルまでなら僕は負けない
さすが皇帝様だスピード争いだと厳しいものがあるけど、この不良バ場でいつものスピードが出てない
「勝てる!」
領域!
【融合核】
「させないわ」
【皇帝の核】
デッドヒートする先頭争い
……? リトルボーイが来ない?
困った……本当に困った
前には2人は予想通りと言えば予想通りだけどペースが速すぎてスタミナがゴリゴリ削られる
後ろからもなんか来てるし……後ろ?
誰だ? 後ろって
何で後ろの奴も領域を発動してるのさ!
ああ! もうレースプランが無茶苦茶だ
「私の邪魔をするなぁ!!」
【核爆弾】
「「「着火」」」
【【【
おいおいそこから更に加速するの?
僕は眼中に無いってか
まぁ良いけど
それなら僕はヌルッと勝利をかっさらうだけだよ
意識は3人がそれぞれをマークしたから僕への注意は完全に無い
3人が塊になってくれて助かった
あの塊をマークすれば僕の勝ちだからね
さぁ核を破壊しよう!
「残り800メートル前3人が塊になって走っております」
「良いですね競走本能全開ですよ」
「さぁ3強で決まるのか……進路を大外にし! 1人近づいてくる!! ヤクルトガッツだ! またしても学生連合! 伏兵が本命を倒しに来た残り400!」
「3強は外に気がついてない! ただヤクルトガッツも伸びが怪しい」
「リトルボーイ前に出た! メルトダウン差し返す! ツアーリボンバーも負けてない」
「残り200!」
「内3人か! 外か」
おお! おお! おおお?
クフフ、スカイプラザの言っていた神域ってこれか?
なーんだ、目の前にあるじゃん
入っちゃお
視界の前に広がる穴に僕は飛び込んだ
おお! 透ける透ける! 夏休みのあの感覚だ! そしてなーんだろう? 矢印がいっぱい見えるねぇ
○と×が矢印の先にいっぱいあるねぇ
これ○の矢印の道を進めば良いのかな?
おおお?
全然ぬかるまないじゃん
スカイプラザは綺麗な空間って言ってたけど僕の神域はずいぶんと合理的な世界のようだねぇ
まるで【一天四海】……世界の意とはこの事
ロンメルの神域はどう見えてるんだろう? 少し気になるけど後々戦えば良いか……僕は世界を取るよ
「僅かに外かぁぁぁ! 伏兵ヤクルトガッツ、頂上決戦大阪の陣にてG1初制覇!!」
「お見事です! 2着がメルトダウン、3着がリトルボーイ、4着がツアーリボンバーでしょうか」
「掲示板には5着のメッセージ選手が確定しました……ウマ券は捨てずにお待ちください」
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「出ました5.4.6.2です! 優勝はヤクルトガッツ選手です!」
「ガッツポーズ……いや! 大きく人差し指を掲げています」
「一着ということでしょうか? おめでとうございます」
「勝利ウマ娘インタビューです! ヤクルトガッツ選手大仕事をやってのけました! おめでとうございます」
「ありがとー」
「大外からの強襲は作戦通りだったのでしょうか」
「うん、意識外からの一撃じゃないと彼女達は倒せないと判断したんだぁ」
「なるほど、作戦通りと……大雨の中でのレースはいかがでしたか」
「正直に言って良い?」
「どうぞ」
「二度とやりたくは無いね! 別に僕は雨好きな訳じゃないし、寒いし汚れるからね! 早く暖かいシャワーを浴びたいよ」
「ごもっともです……指を掲げていましたが何に対してのアピールでしょうか」
「これからG1を勝ちまくるから、そしたら指を増やしていこうと思ってね」
「「「おお!」」」
「次はちなみに何のレースに出場予定でしょうか」
「言って良いかな……言っちゃえ、香港のチャンピオンズマイル」
「「「おお!!」」」
「では次は世界と」
「学生連合マイルのエースは僕だからドバイ組に負けないように頑張るねぇー」
「ありがとうございました!!」
「ブイブイ!」
「負けた……」
「お疲れ様メルトダウン」
「ごめんトレーナー負けちゃった」
「いやー、強いのが出てきたね。学生連合か……ツアーリボンバーとリトルボーイばっかりに意識し過ぎたね」
「次は私、天皇賞(春)だけどリベンジできるかな?」
「いやー、キツいでしょ。あの子本質はマイルぽいもん」
「そっかぁ……でも学生連合……あ、ロンメルの所か! 思い出した! 学生選手の」
「お? 面識あり?」
「年度代表の表彰式で挨拶したんだ……そっかぁアイツか……」
「もし戦うとしたら天皇賞(秋)でしょう。それまで勝って勝って勝ちまくろう!」
「おう!」
「しっかし、最後に見たあのひび割れなんだったんだろう?」
誤字報告ありがとうございます!
皆様のお陰でこの作品は成り立っております
良ければお気に入り、評価してくださると幸いです