ロンメルの本気   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

54 / 89
春のファン大感謝祭 後編 フェンリル引退

 些細なトラブル(殺人未遂)はあったものの、ファン大感謝祭は午後の部に移る

 

 午後の部が始まると同時に今まで白い布で覆われていたバ車が露になる

 

「「「おぉ!」」」

 

 歓声があがる

 

 現れたのは近代的なシルバーを基調とした見事な飾りが施された1台のバ車であった

 

 大きさはキャラバンと呼ばれる大型の物になっていたが幌では無く、合金やガラスにより車の様な密閉式になっていた

 

『解説の律です。こちらのバ車はファミリー用に設計されたバ車であり、乗員数6名、電気アシストにより1人でも快適に動かすことができます』

 

 実演で希望者をほど乗せてスカイプラザが引き始める

 

 約40キロの速度でコースを回るが疲れる素振りも無い

 

『鍛えていなくても手軽に動かせますし、車よりも小回りが効きます。車内では冷暖房が完備されており、ふかふかのシートで疲れを軽減、座席を倒せば車よりも広い収納スペースとなっています』

 

『特殊なサスペンションを使用しており電気自動車のように揺れの少ない走りを実現しています』

 

 続いてと次の布が取り外され今度は少し小ぶりのバ車が出てくる

 

『2人乗り、大英帝国時代の四輪バ車をイメージされています。名称はロイヤル。特殊塗料で光沢ある金に見えるように工夫されています。実用性というよりは観賞用になりますがこちらも見えない部分に電動バッテリーとモーターを仕込んでおり、快適な空調システムと移動時のウマ娘の負担を軽減しております』

 

 続いて5台色違いの馬車が現れる

 

『4人乗り業務用ハックニーキャリッジ……要はタクシーです。日本の和をイメージしており外国のお客さんにも楽しんで貰える工夫が沢山あります。木製に見えますが特殊な素材を使っており、耐久力はピカ一です。要望があればこのタイプ増産致します』

 

 ・

 ・

 ・

 

 10台のバ車の紹介が紹介されると実際乗車体験が抽選で始まる

 

『販売は明日の午後13時からとなります。ロイヤルは原価高騰の為予定通り50万、ファミリーは35万、ハックニーキャリッジが25万、農業用が20万、キャンピングが45万、屋台用が30万となっています。また購入者にはオプション選択権利や自宅や指定場所までの輸送手続き等もございますのでよろしくお願いします』

 

 多くのお客さんが見たり触ったりし、大盛況のうちに終わる

 

 

 

 

 

 日曜日は皐月賞が行われるためお客さんの数が少し減ったが大盛況なのには変わり無い

 

 でも来年は土曜日にファン大感謝祭をやって日曜日には中山に行かなければならないと考えると大変だなぁと思う

 

「昨日だけで収益が250万近くになっています! 今日競売にかけられる馬車の収益を合わせれば今日は500万行くかもしれません!」

 

「それは何よりですねぇフレームさん」

 

「はい! お金はあればあるだけ幸せになれますから!」

 

 アグネスフレームはニコニコしながらお金を数える

 

 彼女がエクセルで計算した経費や売り上げ等をあげて貰い、それを律が不備がないか確認してロンメルが最終確認してトレセンに提出する

 

 これだけ売り上げればトレセンのチーム収益トップは固い

 

 トレセンでのファン大感謝祭での成績はチームの評価だけでなくサポート科や選手達の将来にも通じるものがある

 

 今回だってバ車を引いていたファッションカラーが絵になるとのことで雑誌のモデルにならないかと誘われていたし、タクシー会社が外人にも一定の需要があるとの事でハックニーキャリッジをもう10台欲しいとロンメルに希望したし、学生連合の卒業生で是非とも我が社に入社して欲しいとの繋がりを求めるなんて事もあった

 

 学生連合でなくてもウマ娘の雇用拡大はトレセンとしてもありがたいし、そういった積み重ねにより影響力というのができてくる

 

 まぁ就職に対して強ければ他のチームからも紹介してくれと頭を下げられるし、そんなチームに妨害工作はしてこない

 

 出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない

 

 今までは妨害が可能だろうとしてくるバカが居たが、社会との連結した繋がりというのは抑止力となる

 

 現に今回だけで雑誌3社、タクシー会社、バ車を運送するの輸送会社、大量のラーメンの材料を降ろしてくれた食品会社7社(スノーアイランドのお父さんの会社を含む)、CDを作るのに協力してくれた音楽会社や楽器屋、イベント用のスクリーンを貸出し、操作してくれた会社等と繋がりができた

 

 ちなみに雑誌はラーメン、モデル、バ車特集である

 

 こういう細かい繋がりがバカにはできない

 

 その他にもベストエンジェル先輩やマスターハリアー先輩のお陰でテレビ業界や、律のVTuberの会社等もあったりとなんだかんだ影響力が増えてきている

 

 こうしてロンメルの裏の目的であった影響力の確保に成功しファン大感謝祭は大盛況のうちに終了するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファン大感謝祭が終わり、練習を見ていると予想外の事が起きた

 

 というよりは起きていたのだが本格的に表面化した

 

 フェンリルの劣化が急速に始まってしまった

 

 というより二次成長というものが始まってしまった

 

 身長が伸び、全体的に肉付きが良くなる

 

 本格化の後の成長促進なので後期成長と呼ぶこともあるが、全体的にがっちりするため力が上がり、変わりに速度が落ちる

 

 つまり競争者としての寿命が尽きたことになる

 

「……フェンリルさん、残念ですけど引退です。ただ落ちた速度でもオープン戦くらいであれば勝負になると思いますので引退レースを行いますか?」

 

「……俺はまだまだ走りたいって思っていたんだけどなんだろう……選手として燃え尽きちゃったって体がわかるんだ……確かに劣化が始まってたけどこんなに早いものなのか?」

 

「……正直に言いましょう。懐妊していますよフェンリルさん」

 

「へ!?」

 

「ウマ娘特有の単独妊娠ですよ。そのせい……いや言い方が悪かったですね。選手から母に体が変わったと言いましょうか」

 

「そっか……そっかぁ……」

 

 フェンリルは静かに涙を流した

 

「まずはご家族と話し合いましょう。こうなってしまったら毎年懐妊するなんて事もあります。幸いトレセン側も高校までは面倒を見てくれますし、学生連合としても支援はしていきますから」

 

「ロンメル先生……ごめん……今は泣かせて……」

 

「少し席を外しますね」

 

 ロンメルが外に出るとフェンリルはわんわんと涙を流した

 

「昔は力が上がるからここからが本番なんて言われていましたし、武家や農家だとお祝いされてたのですがねぇ……時代ですかねぇ」

 

 単為生殖による子供の誕生問題

 

 ウマ娘に母子家庭が多い元凶であり、ウマ娘特有の性質である

 

 名門だったりしたら今でも喜ばれるが、レースを第一に考えている選手にとっては絶望だろう

 

 誰にでも起こる可能性があり、切り離すことができない問題だ

 

 幸い地方中央問わずトレセンであれば妊娠しても支援を受けられ、高等教育が終わるまでは在籍することが可能である

 

 だいたいは実家からの通信制に切り替えたりするのだが、フェンリルはどうしても学生連合に居たい、友達と離れたくないとの事で、ロンメルと律が全面サポートすることで離ればなれになることはなかったが、フェンリルは強制引退となった

 

 

 




実馬としてのフェンリルは昨年引退してちょうど繁殖入りしていたと考えられ、ウマソウルが連動してしまい体つきが選手から母に変わったと考えられます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。