ロンメルの本気   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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生徒会選挙2

 トリューニヒトというウマ娘がいる

 

 サポート科で年齢は18歳

 

 中堅6チームを兼任しながら会計としてサポートするという常人離れした計算能力と調整能力を持っていた

 

 彼女はとても強かである

 

 まず選挙が近々あると分かると名家と呼ばれる家々に接触した

 

 サトノ、サクラ、インパクト、メイショウ、ニシノ、コパノ、テイエム等々……

 

 各家を一軒一軒巡り、支援を求めた

 

 自らを売り込むために

 

 まず彼女のやろうとしていることはラインハルトと共同のレース賞金の5%を生徒会にプールさせ、そこから全生徒の食品を当てることによる学食の無料化

 

 他にはサポート科を纏めてチームを作り、複数のレースチームと契約することでサポート科を下に見る風潮の破壊とサポート科の立場の強化による労働組合化させて賃金交渉や働き方の改革をできるようにする

 

 サポート科をチームにすることによるサポートのパフォーマンスの向上

 

 名家や推薦選手優遇はそのままに、導入をする予定のチームドラフトに逆指名の権利を名家には付与

 

 ドラフト指名選手の契約金制度の導入

 

 等々、この逆指名の権利と契約金制度は他の候補者は出していない名家救済の案であり、これにより少なからずの裏金がチームから名家に入る

 

 支援金により経営が傾く家も多く合った故に逆指名の権利は支援金が多かった15の家に付与とし、契約金でそれを還元する

 

 支援金が多ければ学園の施設拡張や改良、生徒会の資金調達が容易になるためこの法案を通せれば生徒会の影響力が大幅に拡大する

 

 ディープインパクト政権の理事会も名家出身者が過半数を超えているのでこの法案を出せば可決されるだろう

 

 サポート科の法案も一見サポート科優遇に見えるが、中堅チームにとってサポート科の生徒を1人取っても業務が目に見えて改善はされない

 

 ただチームとして纏めれば業務も効率化されるし、上位陣が多く抱え込んでいるサポート科を少しでも下に恩恵を与えることができる

 

「それに、ラインハルトとツアーリボンバーとは既に裏取引をしている。私が選挙で負けたとしても何かしらの役職は着けてもらえることになっているし、そもそも5名というのが無理がある。生徒会も7名から10名近くに増やさねばダメだろうに」

 

 利害関係の調整が上手い故に全体を見て行動するトリューニヒト

 

 その友人達も幅広くサポート科を中心として支持者が選挙に協力する

 

 一方ツアーリボンバーは苦戦を強いられていた

 

 実績はG1を7勝をしている現役唯一の存在でもあり、昨年の年度代表ウマ娘でもある

 

 掲げる目標は現状維持及び前生徒会から引き続きウマ娘の世間人気の向上

 

 しかしこれらは既に達成されている側面が強く、第四次ウマ娘ブームの今、現状維持ではこのブームを生かすことができないのが実情である

 

 実績は有る

 

 しかし一流選手が一流の経営者かと言われるとそうではない

 

 ツアーリボンバーは学力は普通であり、名家ではあるものの歴史は浅く、成り上がりと呼ばれるもので基盤が安定していない

 

 どうしようかと悩んでいるツアーリボンバー

 

 先輩達の期待や支持基盤を受け継いでいるゆえにあまり動くこともできなくなっていた

 

 そんな姿を見たガイアスカーレットもまた独自に動き出してしまうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スカイプラザ姉さんツアーリボンバーは駄目そうよ。支持基盤は受け継いでいるけどそれが呪いになってしまっているわ」

 

「ガイアから見てもそうかぁ」

 

 親戚同士のスカイプラザとガイアスカーレット

 

 ガイアスカーレットはスカイプラザを姉さんと呼ぶ

 

 ガイアスカーレットとスカイプラザはガイアスカーレットの行きつけのカフェにて密会を行っていた

 

「そもそも経営学や帝王学も学んでないツアーリボンバー先輩がこの巨大化した学園の運営をできるかと言えば答えはNoよ」

 

「まぁだろうね。地頭は悪い人じゃないと思うけど、視野が狭そうだなぁとは思っていたよ」

 

「でしょうね」

 

 ガイアスカーレットは紅茶を、スカイプラザは抹茶ラテを飲む

 

「まぁ私は3人全員から末席をなぜか押し付けられたから完全中立で居ようと思うけど」

 

「甘いわね。他の生徒は同じチームのラインハルトを勝たせようとしているんじゃないか、例えラインハルトが負けても学生連合の影響力を生徒会に残したいからあえて中立でいるともっぱらの噂よ」

 

「まぁロンメルから影響力確保はしないと不味いって言ってたけど、ラインハルトの生徒会立候補は完全にロンメルにとっても想定外だったらしいわよ」

 

「あの何考えてるかわからない奴が? 裏で糸引いてるのはロンメルって噂もあるけど」

 

「トレーナー、選手、グッズ作製、他調整事項多数……いくら超人のロンメルでもそんなに大量にやることを増やしたらパンクするよ……パンクするよね?」

 

「何で姉さんが自身のトレーナーの能力を把握してないのよ」

 

「だって超人過ぎて凡人の私には理解できないもの」

 

「姉さんが凡人だったら他のウマ娘はゴミよゴミ! 姉さんは昔の落ちこぼれではなく日本ダート最強、歴史的な名ウマ娘なの……私が昔憧れてたお姉さんなの……」

 

「んん……こそばゆいね。はぁ全く、ガイアは私に何をさせたいの?」

 

「私は正直言うとツアーリ先輩を切ったわ。選手としては超一流なのは認めるけど何かの長をするには無能すぎるわ。良くて30人を纏めるのが適正かしら……普段は真面目でそつなくこなすし、実力が有るから余裕があるけど、余裕が無くなったとたんに無能だわ。メルトダウンとリトルボーイも手伝ってはいるけど余裕の無いツアーリボンバーを見て色々内心複雑そうよ」

 

「まぁでも2人は離反できない……そうだろ」

 

「ええ、前生徒会メンバーに頼まれたこと、自分達が進んでツアーリボンバーに会長職を譲ったからここでの離反は友情にも亀裂が入るわ。それはできないでしょうね」

 

「そーんな先輩方から真っ先に役員の就任要請が来ていたのにガイアは他の候補者にすり寄ってずいぶんとコウモリじゃないかな」

 

「生徒会選挙なんだけど対立候補が居てなおかつどの候補者も得票率が50%未満の場合上位2名による決選投票が行われるわ」

 

「だね、うちも知ってる」

 

「ただ投票には支持の他に棄権や無効票があるわ。棄権や無効票が30%を超えた場合選挙のやり直しに発展する。そしてその次の投票は最高支持率を獲得した候補者が自動的に会長になる仕組みだわ」

 

「そうだね。ガイアはどの今回の選挙が流れると?」

 

「ツアーリは無能、トリューニヒト、ラインハルトは実績が無くかつ言い方悪いけど左派よ。ラインハルトに至っては極左とも言える超改革派第四次ウマ娘ブームが姉さんの活躍で始まった今、改革派は実権を握るのは良いわ」

 

「私達だガイア、私だけではない。皆のお陰だ」

 

「その皆は学生連合? それとも活躍した選手達?」

 

「勿論後者だよ。うちはそこまで驕り高ぶってないわ」

 

「神童と言われていた頃の姉さんならいざ知らず、今の姉さんならそう言うと思ったわ」

 

「で、ガイアは何をしようとしているのかな?」

 

「ここでタキオン一族の影響力を確固たるものにする」

 

「タキオンさんはそう言うの嫌がりそうだけど?」

 

「あのね姉さん、タキオン一族は現状久方ぶりに有力ウマ娘が2人も出たのよ。私は無敗ティアラ二冠、姉さんはダート世界最強、今こそタキオン一族ここに有りと影響力確保に動くわ」

 

「……アグネスフレームか、お前を焚き付けたのは」

 

「ええ、フレームは私達の一族がいかに危ないか本家筋だからよーく分かっているわ。分家の私達は本家を支える……いや、この際乗っ取っても良いわね」

 

「うちをお前さん達の策謀の神輿に使うのはやめて欲しいな」

 

「甘いわね姉さん、砂糖を煮込んだざらめよりも甘々よ! タキオンさんがそういうことに興味が無かったから後から出てきたディープインパクトなんかに主要な役職や権力を握られて、私達は主流から外されたのよ。今こそ一族で一致団結して取り戻すわよ」

 

「……はぁ、もしかしてラインハルトをけしかけたのフレームかな?」

 

「違うわ、フレームはトリューニヒト先輩を口説き落としたわよ。トリューニヒト先輩が生徒会長になればフレームとスカイプラザ姉さんが役員に、ラインハルトが勝てば姉さんと私が役員に各々なれるわ」

 

「どこまで裏工作が進んでるのやら」

 

「でももし3人とも共倒れするようであれば……4人目を出すわ」

 

「そんなのが居るのかい?」

 

「マザーハーロット……私に常に負けているけども阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞、オークス全てが2着、そして私のシンパでもあるわ」

 

「可愛い妹分がずいぶんと策略家に成長したものだよ全く」

 

「私のお母さんみたいにバカだったらどんなに楽か……頭が良く産まれてきたのだからそれを使わなければもったいないじゃない……姉さんが期待はずれの烙印を押されてから親族の期待は私が一身に受けたわ。色々学んだわ、次世代へ繋げるためにも色々と……」

 

「ほどほどにしとかないと身を滅ぼすことになるし、ガイアが思ってるほどトレセンの闇は浅くは無いよ。ヤバくなったらロンメルを頼ると良いよ。なんだかんだ頼み込めば手伝ってくれるからさ」

 

「……わかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、なかなか面白いじゃないか」

 

 ロンメルはすぐさま情報収集を開始した

 

 生徒会選挙など自身には関係ないとたかをくくっていたら、まさか自分のチームで暗躍している者が多数出るとは

 

「で、アグネスフレーム、何か弁明は有るかい? いや、怒っている訳じゃない。あなたが縁故主義者であることは知っていたし、今回が勢力を拡大する絶好の機会だってのもわかる。生徒会選挙なんてメンバーがドリームクラスに移動すれば何年も変わらない事がざらだからね」

 

 椅子に座らされているアグネスフレームは恐怖で顔がひきつっている

 

「いやね、何でスカイプラザに相談しないでそんなことをしたのかなって……まずチームに所属しているのだからチームの都合を考えて欲しいってのはトレーナーのエゴなのかな?」

 

「い、いえ、そのようなことは」

 

「まず私に報告しなかった事は別に良いよ。そこまで管理しようと思わないし、各員の思考の自由まで奪いたくないからね。やるなら堂々とやれ。裏でこそこそと動くのが気に食わねぇなぁ。スカイプラザは堂々と全陣営に中立及びダートの地域向上の為に動いている。ラインハルトとジークアイスは選挙に参加を表明するやいなや律も巻き込んで自身の政策を皆に伝えようと努力している」

 

「ツアーリボンバーには私の監視が行き届いて無かったと謝罪したが、簡単に水に流してくれるし、正々堂々と戦いましょうと器の広さ、誠実さを感じることができた。対してアグネスフレーム、君はどうだ? 裏でこそこそと動き、トリューニヒトの支援をしつつもどの陣営が勝っても特をするように保険をかけて……まるでコウモリだな」

 

「旗色を明確にしろ、そして自身が口説いたトリューニヒト候補を全力で支援しろ、やるなら徹底的にだ。策略家気取りも大概にせーよ、自らもリスクを背負わず、労力もかけない策略家など3流以下だバカ野郎! とっととラインハルトやスカイプラザに頭を下げてラインハルトには敵対宣告してきやがれ!」

 

「すみませんでした」

 

 アグネスフレームは逃げるように部屋を出ていった

 

「全く、コウモリをやるならそれも徹底的にやらなければダメだろうに……保険をかけるのは結構だが、小物はダメだ。うちのチームは全員大物にしたいからねぇヌルフフフ」

 

 選挙活動は更に混迷を極めていく




ウマ娘楽しいなり~

追記

左と右間違えました

正しくは左です
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