ロンメルは学生連合を国内組とオーストラリア組に分けた
オーストラリアに遠征するのはロンメル、バカコンビとミッションタイマーのみ残りは国内にて調整やレースに出ることが決まっていた
まぁ武内サブトレーナーを中心にロンメルが居なくても学生連合が回るかの実験でもあり、色々不安ではあったものの、オーストラリア遠征を決行
コーフィールドのコーフィールドカップをベストエンジェルが、ムーニーバレーのコックスプレートをマスターハリアーが、フレミントンのメルボルンカップをミッションタイマーが全勝
メルボルン郊外で行われる4つのレース場のうち3つのレース場でG1を立て続けに制覇したことで現地新聞にはヤクルトガッツの活躍を含め日本のウマ娘の大躍進と各社で新聞が出回った
一方でオーストラリア国内のウマ娘が不甲斐ないと書いた新聞社もおり、その記事は賛否が別れる結果となる
そんな中、ロンメル達はホテルで祝勝会を開催していた
「「「「乾杯」」」」
テーブルには巨大なステーキやミートパイ、シーフードサラダや焼き魚の料理が並ぶ
「ミッションタイマー先輩G1制覇お疲れ様でした」
「ロンメルのお陰だありがとう」
「天皇賞(春)と比べてどうでしたか? こちらのレースは」
「夏前に来た時も思ったが、メルボルンカップが名誉あるレースには変わり無いが、長距離全体の質は日本の方が高いな」
「まぁ日本のウマ娘の食生活からしてスタミナが増えやすいですからねぇ」
「逆に短距離はオーストラリアはスゲーや、全体の質が全然違う」
「確かにそうですねぇ」
「正直今年メルボルンカップを勝てたのは実力もそうだが運も大きいだろ。凄い強いってウマ娘も居なかったし」
「まぁそうですねぇ……ですが運が良くても勝ちは勝ち。学生連合はこれでG1ウマ娘が8名に今年の合計G1は20勝……いや、天皇賞(秋)のヤクルトガッツ先輩も合わせると21勝ですか」
「ヤクルトも核の世代3人との決戦をよく凌いだよな」
「まぁそれが神域に入っている者と入っていない者の差でしょうね……ただ、メルトダウンは間近で神域をこれで目撃したことになりますから次のレースは入ってくるかもしれませんね……神域に」
「うちやエンジェルも頑張ってるけど断片は判れども入れないんだよねぇ……神域に」
「こればっかりは才能ですよマスターハリアー先輩、後はレース経験を蓄積していくしかありません」
「でもそんな悠長にしてたら劣化始まらない?」
「まぁ大丈夫でしょう。マスターハリアー先輩もベストエンジェル先輩もあと2、3年は走れると思いますし……今引退してもドリームクラスでドリームトロフィー目指すのもアリだとは思いますが?」
「うちらバカだからドリームクラス上がったらチームを脱退しないといけないじゃん。ロンメルの庇護下に居ないとまずい事ぐらいは分かるよ」
「まぁバカコンビのお二人は私から見たら大丈夫だとは思うのですけどねぇ」
「劣化が始まるまでは学生連合に居させて貰うよ」
「ヌルフフフ、頼もしいですねぇ……さてさてでは皆さん次のレース希望は有りますか?」
「「「有馬記念」」」
「ヌニャ!? ミッションタイマー先輩は聞いていましたが、ベストエンジェル先輩とマスターハリアー先輩もですか!? お二人は香港という選択肢も有ったハズですが?」
「ロンメルと戦えるのたぶんここを逃すと無さそうだし」
「一回私達もロンメルと本気でぶつかってみたいからね」
「「だからお願い!」」
「ぬる、ヌルフフフ! やってやろうではないか!」
これで学生連合の有馬記念のメンバーが決まる
「最高の舞台で勝ってこそ燃えるって奴ですよ」
学生連合が快進撃をするということは他のチームが皺寄せが行くということである
芝ダートでバカスカ勝つものだから妬みや恨みを買ってしまう
しかも成り上がりなので余計である
しかし、妬んだり恨んだりしても勝てないものは勝てない
そこで中堅のとあるチームのトレーナーが声をかけて連合を作らないかという提案が出された
勝てる可能性の高い選手により多くのリソースを割くべきである
残念ながらこのままでは学生連合ばかりが勝ってしまう
そこでチームの垣根を超えての大連合をするべきであると
チームの再統合の流れができた
トレーナーでも勝てないのであれば居る意味が無い
だったら得意分野のサブトレーナーとしてトレーナーを支えるべき
結果それが金になるから
最初のこの呼び掛けに15チームによる大連合が決まり、彼ら彼女らは【プラネット(惑星)】となる
まぁ各チームの強みが一気に濃縮した結果選手の質が上がったのだが、維持コストがかさみ数年で破綻することとなる
こうした取り組みの中ラインハルトが公約通りサポート科の組織化を発表、強豪だろうが中堅だろうが無所属だろうが例外無く何かしらの組合に参加させられた
ロンメルはせっかく雇ったサポート科の生徒達と再契約を結ぶこととなり、賃金が向上したり、休みが確定したり等の良い点もあれば、外部施設への選手委託を行い、サポート科生徒を使わなくても良いシステムを作るなどという抜け穴をつつく様なチームも現れる
この様な激動の変化がトレセン内部では吹き荒れ、良くも悪くも荒れる
なのでそんな荒れている状態でも問題なく機能するチームが勝っていく
ラインハルト自身も京王杯ジュニアステークスを完勝、ファンタジーステークスをジークアイスが勝利で実力が有ることを証明した
ここでロンメルがオーストラリアから帰還し、サポート科の再契約で揉める他チームを横目に給料倍化を提示
このサポート科再編は他チームからしたら学生連合の秘密を少しでも知り得る機会だったので情報が欲しい他チームとの引き抜き合戦が起こりそうだったが、ロンメルの怖さを知っているメンバーは律儀にもロンメルとの契約を遵守
他チームは労働環境改善や給料改善等で痛い目を見ることになったので相対的に学生連合が得をした
他のトレーナーからはロンメルはこの混乱が予想できていたとか他チームを蹴落とす為の工作だとか陰口を言われたが、サポート科の手綱をしっかり握れていたチームへのダメージは浅かったので本当に各チームによるとしか言えない
ただラインハルトへの支持率はちゃんと公約を守る姿勢を評価されて高水準を維持していた
「もっとも儂のようなサポート科を雇う余裕の無いチームは問題ないか」
定年間際のトレーナーがそう呟いた
そのトレーナーは弱小チームゆえに所属している選手は3名と少なく、選手と協力して練習場所を確保したり、トレーニング後のケア等をしていた
彼の信条は壊れないウマ娘を作るということだった
このトレーナーがまだ新人だった頃、あるウマ娘を口説き落とし一緒にチームを作った
新人トレーナーが新入生とチームを作る……当時はありふれた光景であった
「俺たちの目標は!」
「ダービー!!」
そのウマ娘は才能に溢れていた
トレーナーである儂も彼女とならダービーを取れると期待していた
それが無茶なトレーニングへと繋がり
僅か2戦で儂は彼女を壊してしまった
右脚の骨折によるバランスを崩し、そのまま地面に高速で激突、後ろのウマ娘にもとっさの事で頭を蹴られてしまい脳挫傷により亡くなった
親御さん達から非難されたが、世間はありふれた1つの事故として彼女の名前が広まることは無かった
あの事故は儂の無茶なトレーニングで起こした物だ
儂はあの様なウマ娘はもう出て欲しくないと心に刻み、強さよりも長く、レースを去った後でも社会で活躍できるウマ娘の育成に勤めた
ウマ娘に関わって半世紀
ただ1つくらいは大きなのを取りたかったと願うのは罰当たりだろうか
「トレーナー、また彼女の事を思い出していたのですか?」
「ん、あぁ、すまぬ。どうも歳を取ると昔を思い出してしまってね」
「チームメトシェラ……古い星でしたか」
「老人の儂にはお似合いのチーム名じゃろ?」
「ええ、実に素敵なお名前だ。歴史が有ってチームの資料を纏めるのが凄く楽しくてしょうがない」
「全く変わり者だよ君は……ヴィザよ」
「私はあなたの性格に惚れたんだ。あまり弱気にならないでくれよトレーナー」
「はは、参ったな。ただ、ダービーを君なら取れるは儂にとって呪いの言葉でしかないからなぁ」
「そうか、そうか……しかし私は来年のダービーを取りたい……取るために色々と調べていたのだがね」
「何を調べたんだ?」
「学生連合について調べてね……お遊びで買ったハイスピードカメラとたまたまそのサポート科の生徒達が呼吸をトレーニングしていてね……面白いなぁと思ってデータを集めてみたんだ。ロンメルトレーナーは選手に対しては情報統制ができているみたいだけど、サポート科の生徒までは統制できていなかったみたいだね」
「ふむ? 呼吸が強さの秘訣なのかな?」
「たぶん違うと思うが、やらないよりはマシだと思うな」
「ならヴィザやってみなさい。無理は絶対にしてはいけないよ」
「分かっているさトレーナー」