ロンメルの本気   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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チャンピオンズカップ 2 挿し絵あり

 そのレースは歴史のターニングポイントと呼ばれることとなる

 

 このレースよりロンメルの時代、絶望の時代、暗黒期、魔王の時代等言われた

 

 パドックに姿を現した

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ロンメルはベレー帽のマークを十字からクロスに変え、襟元にマークを付ける

 

 青いコートを脱ぎ捨て

 

 手を腰に当てて筋肉を膨らませる

 

 歓声があがる

 

 しかし、その姿を見ても観客はスカイプラザの勝利を確信していた

 

 スカイプラザの単勝オッズは1.1倍、単勝支持率51%

 

 青い髪を靡かせ、スカイプラザが登場する

 

 スカイプラザは拳を掲げる

 

 そしてロンメルを指差す

 

「私は負けない」

 

「私の力によって引き出されたプロトタイプでしかないのだよ貴女は」

 

 ロンメルは堂々と反論する

 

「「勝つのは私(うち)だ!」」

 

 他は眼中に無しという異例のパドック

 

 アメリカ勢は腹を立て、他のチームはどうやって一泡吹かすか考え続ける

 

 レース場に入場し、ゲートに入っていく

 

 ロンメル10番、スカイプラザ1番、コアランタン4番、カラスマーチ8番

 

 ゲートに全員が入りスターターの声が響く

 

「よーい」

 

 ガゴン

 

 チャンピオンズカップ ダート1800が始まった

 

 始まってしまった

 

 人々は現実から離れ、神話と呼ぶレースが始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 抜群のスタートを決めたスカイプラザ、ロンメル両名はスタートと同時に全力で走る

 

 アクセルをベタ踏みした車のようにどんどん加速していく

 

 このスピードにもう他のウマ娘はついていけない

 

 レースはこの瞬間に決まったと人々は言う

 

 緩やかな上り坂をスカイプラザは滑るように、ロンメルは力強く蹴りあげて進んでいく

 

 まさに重戦車である

 

(さて、神域の時間ですよスカイプラザ先輩)

 

(わかってるよロンメル言われなくてもね)

 

 以心伝心……目は両名血走り、透き通る世界に入る

 

【天上の調律者】

 

 星が煌めく絶景にスカイプラザは入る

 

 音が聴こえる……呼吸の音が、心音が……バカでかい巨星がうちの神域に入り込む

 

 ロンメルしか居ない

 

 

 

 

 

 

 異常なプレッシャー、圧迫感、殺気、恐怖を前を走る1人の怪物から他のウマ娘達は感じていた

 

 [異次元過ぎる]

 

 アメリカのウマ娘はそう呟いた

 

 10バ身差以上前居る2人は片方は蒼き光に、もう片方は赤黒い……まるで血液の様な不気味な光を放ち続けている

 

 [震えている……震えが止まらない……]

 

 これはレースなのか? 

 

 レースとは楽しいものでは無いのか? 

 

 エンターテイメントではないのか? 

 

 スポーツではないのか? 

 

 これではまるで……戦場じゃないか

 

 

 

 

 

 

 

 

(おいおいマジかよ。ロンメルトレーナーの方が化物じゃねーか! 着いていく? 冗談じゃない怖すぎだろ!)

 

 ボルボックスは早々に前目のプランを投げ捨てて距離を取ることを選択した

 

(学生連合の他2名はプレッシャーに慣れてやがるな。こんな本能に語りかけてくるような恐怖になれるとかウマ娘辞めて兵隊にでもなった方がいいんじゃね?)

 

 ペースはもう既に壊れている

 

 スカイプラザとロンメルに釣られて皆ペースがぐちゃぐちゃである

 

(いかに平常心を保てるかがレースの鍵ってか?)

 

 

 

 

 

 

 やっぱりロンメルはレース場全体に圧をかけてきたか

 

 ふふん、慣れとは怖いし、何度も受けたくはないけど……生存本能に触れやすくなるんだよね

 

 さぁスカイプラザよ、うちの魂よ出番だよ

 

 ウマソウルを輝かせるのはこの瞬間なのだよ! 

 

 

 

 

 

 

 実況席も唖然となっていた

 

「誰が予想したか残り1000メートルで後続とは20バ身差、ガラス越しでわかるくらいプレッシャーが飛んできますチャンピオンズカップ! 蒼き巨星世界王者に挑むのは重戦車ロンメル! 恐ろしいハイペースですが両者先頭を譲りません。3番手にカラスマーチ、アメリカ勢と続きます。カラスマーチがじわじわと上がってくるがおそらく2名には届かないことがわかってしまいます。世界よ、これが日本のウマ娘だ!」

 

「第三コーナーに入ってもスピードは落ちない! 外を回るロンメル凄まじいパワー! スカイプラザは滑るように進みます」

 

「ロンメル独特な走り……あれはナンバか! ナンバ走りだ! ストライド走法かつナンバという超高難易度走法で走っております! スカイプラザいつもの余裕がありません! うお! ロンメルが更に加速していく、まだスピードか上がるのか」

 

「スカイプラザ負けるのか! 負けてしまうのか!」

 

 

 

 

 

 

 

「負けてたまるか!!」

 

(よく言った! 世界最強は仮初めではないのだ! お前はダート最強のスカイプラザなのだ!)

 

 ウマソウルが共鳴する

 

 四足歩行の動物と一体化する

 

 背中を押してくれる

 

(はー、全く、休ませてくれよ俺……SSの血を、親父のヘイローの血を活性化させやがって……死してなおサンデーサイレンスは精神体として生き続ける!)

 

 全身から力が沸いてくる

 

 呼吸が変化した? 

 

「コォォォォ」

 

 全身から金色のオーラが溢れてくるように見える

 

(覚えておけ子孫よ! 全集中とか言う呼吸の他にも特殊な呼吸は存在する! 俺が編み出した呼吸法……波紋だ!)

 

 魂が語りかけてくる

 

 私の中に流れる血液が語りかける

 

 私だけの呼吸法

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シィィィィィ」

 

 スカイプラザは神域の次に触れたようですねぇヌルフフフ、概念世界……まぁ神域の更に先とは言いづらいですが、次に行く為の条件の1つでしょう

 

『おい……おい!』

 

「……ずいぶんと今日は煩いですね鬼舞辻無慘」

 

『私の血液を大量摂取し、鬼をも超越した存在なのだお前は! 遊んでないでリミッターを外してしまえ! お前もまたこのレースにより魂との繋がりが近くなっているのだ。お前はこちら側だ! ロンメル! お前は死ぬことは許されず、血にまみれた地獄こそ相応しい。早く来い私だけにするなぁ!!』

 

「鬼舞辻無慘、私の中で永遠に封印されていろ。魂に癒着しやがるゴミめが……さて、魔王となろう……信長様、あぁ、私の最愛の主君織田信長様……どうかお力を」

 

【第六天魔王】

 

「リミッター解除」

 

 ブチブチと血管の一部が破裂し始めるが、その箇所は触手細胞に置き換わる

 

 より強靭な肉体に変化する

 

(ウマ娘を完全には辞めない……が、このレースは落とせない)

 

「私は神話となるのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーラは激突する

 

 黄金のオーラと血のように赤黒いオーラが激突する

 

 空気が震える

 

 オーラとオーラが激突し、そこには巨大な柱がたったかのような幻覚が現れる

 

 それを特等席で視ていたボルボックスは

 

「おいおい、今日がラグナロクって言われても信じるぞおい! ……マジで神話の世界じゃねーか」

 

 私が第三コーナー入った時には2人は最終直線に入っていた

 

「はは、これと勝負なんてもうしたくねーや……引退しよ」

 

 心を折るのには十分すぎた

 

 

 

 

 

 永遠にも感じた1800メートルのレースも終わりを迎える

 

 いつもならば歓声やウマ券が舞う観客席は誰もが息を飲みながら見守った

 

 世紀の一戦とはまさにこのこと

 

「神話だ」

 

 誰かが言った

 

 ウマ娘が人間を本当の意味で超えた瞬間だった

 

 神は人間をまず作り、そしてその反省からウマ娘を作った

 

 ウマ娘は人の良き隣人でなければならない

 

 聖書に記された一文

 

 それには更に続きがあった

 

 神はウマ娘自身の魂を分け与えた

 

 スカイプラザとロンメルはこの瞬間だけ神へと進化した

 

 スカイプラザは勇気を元気を人々に与えた

 

 ロンメルは恐怖を人々に思い出させた

 

 現地に居た人間にしかわからないぐちゃぐちゃにされた感情を体に押し込め、固唾を飲んで見守る

 

 

 

 

 

 

 

 

「「勝つのは私(うち)だぁぁぁぉ!!」」

 

 ロンメルの足下が爆ぜた

 

 水素爆発

 

 呼吸により空気中の水素を集めて行った最後の一押し

 

 それが勝敗を分けた

 

 10cm

 

 それがロンメルとスカイプラザの差であった

 

【1.43.2】

 

 人々はタイムよりも賭けの結果よりも2人の伝説に感動した

 

 まばらに拍手が起こり、どんどん大きくなる

 

 押し止めていた歓声が爆発する

 

 ロンメル右手を挙げる

 

 スカイプラザはラチに体を乗っけて息を整える

 

「完敗……でもどうよロンメル、プロトタイプにここまで追い込まれた気分は」

 

「ヌルフフフ、最高ですよ。最強は最高のレースが有って初めて最強となるのですから」

 

「ふふ、全く、うちのトレーナーは怪物だよ! ……有馬記念負けるなよ」

 

「負けませんよ。スカイプラザ先輩は居ないですから」

 

「「ドバイでまたやろう!」」

 

 握手をしてから抱き合う

 

 その姿の写真はこう書かれた

 

【神話の始まり】

 

 と……

 

 

 

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