オリキャラギャグTS物語 作:ナナシ
ショッピングモールで瑞希、絵名と合流して自己紹介も終えたことでわたしたちは聖の服を買うためにいくつかのお店を散策していた。
聖は頑なにスカートを履くことを認めず、瑞希と絵名はそんな聖に対して少し残念そうにはしていたが子供の意見を真っ向から否定することはできないようで従っていた。
わたしもそれなりに探そうとはしたものの、少し探し始めるとすぐに店員さんがやってくるので結局諦めてしまった。……店員さんの対応を引き受けてくれる聖には頭が上がらないかもしれない。
「いくつか買いはしたけどあんまりしっくりくるものがないわね……」
「うーん……。ボクも普段自分のサイズを前提で見てるからあんまり心当たりがないなぁ」
二人の普段行っているというお店を回ったところで小休止として立ち寄ったカフェで話し合う。着替えを買おうとする当人は最低限外に出られればいいというスタンスなのだが、それが二人的には絶対的なNGらしく反発されてからはおとなしくしていた。
一応わたしの普段着ているジャージのサイズ違いがあったのでそれだけはこっそりと買っておいたものの、さすがにこの二人の前では渡せそうにない。
そうして悩む二人をわたしと聖が眺めること数分。それまで館内マップとにらめっこしていたのに急に立ち直った二人と一緒に改めてモール内部を歩く。
どういう訳か脇道に見えるお店には向かわず、どこか目的地があるように歩く二人をわたしと聖が追いかける。目の前に見えてきたのはものすごくファンシーな雰囲気を漂わせるお店。
聖の足がまず止まり、そしてくるりと体が反転する。それを予期していたかのように瑞希が即座に回り込む。
右へ向かうに体を傾けた聖がそのまま急に足の向きを変えて左へと走り出す。聖を捕まえようとした瑞希の腕が空を切り、聖に感心している間にわたしの手が何故か絵名に掴まれる。
そのまま逃げだそうとしていた聖に向かって絵名が声をかけた。
「貴女が逃げると奏があの服を着ることになるわよ」
「ぐっ……」
最低な脅し文句だった。というかどうしてわたしが巻き込まれているのだろうか。そしてなぜ聖はそれで止まるのか。いろいろと困惑は尽きない。けれど足を止めた聖を瑞希が捕まえる。"聖ちゃんゲットー"と楽し気な声をしているが、聖はわたしのであるため誠に遺憾である。
捕まった聖はそれでもなお、あのお店のものを着て外には出られないとせめてもの抵抗を見せる。それに対して"じゃあ着るだけ着てみよう"と瑞希が提案し、聖が"それで奏姉を守れるなら"と条件を飲み込んだ。とりあえず聖が詐欺に引っかからないように注意しなければならないことは分かった。
そして始まった聖のフリフリな服装限定のファッションショー。次から次へと服を持ってくる二人を絶望的な目で見ながらも自分で受け入れたものを反故にもできずに聖が袖を通す。
試着室から出てきた聖を二人が写真に収め、聖が試着室にまた引きこもって次へ手をかける。
幾度となく繰り返されたそれの末に聖の目から光が消え、瑞希と絵名はすごく満足気な顔をしていた。とりあえず瑞希と絵名には写真を送るようにお願いしておいた。
流石に聖の精神が持たないと判断されたことによって解散されたファッションショー。最後に瑞希と絵名からのプレゼントということで日焼け止めを受け取る余談の後でまたわたしと聖は同じ日傘に入って歩いていた。
死んでいた聖の目が、家に近づくにつれて徐々に明るくなっていく。家に着くころには復活した聖によってわたしの部屋に最低限と言って片付けの手が入り、それが済むころには夕暮れが空を赤く染めていた。
今日は時間がないからということで二人で並んでカップラーメンをつつき、私は作業を始めるために聖を抱えて部屋へと戻る。
「……奏姉、何してるの?」
「聖を膝に載せてる」
聖の素朴な疑問に答え、聖がわたしの膝の上から抜け出そうと暴れるため抱きしめることでその動きを押さえる。それでもなお暴れようとしていた聖がはたと動きを止める。
これ幸いと頭を撫でて癒されながらも作業を再開する。こうして聖といるとほわほわした感じがするからか何となく優し気な曲調でメロディが書き連ねられていく。
「奏姉、健全な男子高校生を膝に載せるのはどうかと思う」
「今は女の子でしょ」
再起動した聖が文句を言うからそう返せば現実を嘆くようなうめき声が聖の口から吐き出される。今ナイトコードではミュート状態だったからいいけれど、そうじゃなかったら色々と困惑されそうだと現実的なことを考える。
おとなしくなった聖の頭に自分の頭を乗せながらメロディを更に書き連ねる。聖も諦めたようで大人しくなり、わたしの作業風景を眺めるだけになっていた。……集中を妨げないようにしてくれるのもあるのかもしれないが、静かにしてくれるのはありがたかった。
そうして作業を進めている間にやってきた25時。聖は眠たそうに瞼を擦っていたが、まだ起きているようだった。その様子を傍目にナイトコードにみんなが集まっていることを確認してミュート状態を解除する。
「みんな、作業状況はどう?」
「ん、奏姉……?」
うとうととしていた聖が進捗の確認を行おうとしたわたしの声に反応する。まふゆがその声に困惑したような反応をしたために瑞希と絵名には昼のうちに説明をしていたが、まふゆにはまだしていなかったなと思いだす。
紆余曲折あって幼馴染をしばらく泊めることになったんだと昼に聖が瑞希と絵名に向けて行った説明を今度はわたしの口から説明する。瑞希と絵名が歳が近いと知って驚いた様子は記憶に新しい。
わたしがヘッドホンをつけているせいで聖には一方的な独り言にしか聞こえていないけれど、パソコンに映る画面を見て何となく状況を理解したようで静かにしてくれていた。
『しっかし俺っ娘なんて驚いたよねー』
『まぁ確かに珍しいけど、最近じゃそういうのもあるんじゃないの?』
「アハハ……」
瑞希と絵名の話のタネになっている当人は膝の上で再燃したらしい眠気と戦っていて自分が話題になっているとはまるで思っていない様子だ。そのまましばらく作業を進めていたものの、わたしの体に聖が倒れこんでくる。目は閉じられていて、規則正しい呼吸音が聞こえるからどうやら眠ってしまったらしい。
部屋着として昼に買ったわたしとおそろいのジャージを聖が着ていることもあって姉妹みたいな構図になったことに少しの満足感を覚えた。ちょっとした悪戯心でその様子を写真に撮ってナイトコードのチャット欄にアップロードしてみた。
瑞希と絵名が悶えて、まふゆが"よくわからないけど、いいと思う"と言ってくれた。とても作業がはかどった。