オリキャラギャグTS物語   作:ナナシ

4 / 4
天馬司の友人枠でTS@聖視点

 奏姉とそのご友人二人によって着せ替え人形となり、俺の心が死んだ翌日。俺は奏姉がこっそりと買ってくれていたジャージを身にまとって家からそれなりの距離がある公園にやってきていた。……なんでも、今日は打ち上げオフ会があるらしいものの合鍵がないために防犯の観点から俺がずっと引きこもるか、二人で外にいるかしか選択肢がなかったのだ。

 あの家は我が家ではないから家主が居ないのに居続けるというのも悪くてこうして出かけて、時間をつぶしているのだが……。ものの見事に財布を忘れたために当初考えていたプランのほとんどを失ってしまったのだ。そして財布は俺のスマホと共に鞄の中……。

 まぁ歯に衣を着せなければ今の俺には金も連絡手段もないわけだ。一応オフ会会場は教えてもらったものの、流石に部外者が行くのも良くないだろう。その辺はわきまえているので公園に来た。だが、ここで問題が一つあることに気づいた。公園で純粋に遊ぶには俺の精神年齢が高すぎる。あと一緒になって遊ぶ友達がいない。

 

「……参った」

 

 休日であるというのにこの公園はまさに伽藍洞(がらんどう)、誰もいない世界に一人取り残されたような気分だ。

 これだけ人がいないのなら、いっそ天然のカラオケとして知っている曲を歌いつくすのもいいかもしれないな、なんて思った時だった。

 "ハーッハッハッハッハ"と大胆不敵に大声で笑うような声が聞こえてきたと思えば、輝くような金色の髪を風に靡かせながら公園の入り口でポーズを取る人間が現れたのだ。……知っている声だったし、なんならそこそこ関りはある相手だった。その名は――

 

「天翔けるペガサスと書き、天馬! 世界を司ると書き、司! その名も――」

 

「「天馬司!!」」

 

 "なにぃ!? なぜ見ず知らずの少女がオレの名を!?"と大げさに驚く司。変わらないなと思うが、まぁそもそもせいぜい1、2週間会わなかった程度ならそうそう変わるものでもないかと考えを改める。

 ……そういえば、出会ったのもこの公園だった気がする。好奇心の赴くままに歩き続けて帰り道を見失った俺を励まそうとしてか、かつて司は色々と遊んでくれた。

 そして今途方に暮れていた俺を見て司はこうしてやってきた。フェニックスワンダーランドでバイトをしながらも世界一のスターになると言って走り続けている以上、昔ほど時間はないだろうに。

 

「して、少女よ。待ち合わせか?」

 

 ひとしきり驚いたのか、地面に膝をついてベンチに座る俺に目線の高さを合わせた上で司が優し気に質問する。多分いじめとかを懸念してるんだろうが、それを悟らせないだけの演技があった。

 この姿の俺を見て"む? (ひじり)ではないか!"などと言われる方が驚くんだから見ず知らず扱いなのは分かるが、やっぱり少し堪えてしまった。

 

「いいや、違うよ司。俺はここに一人で来た」

 

「呼び捨て……。ゴホン、そうなのか? ――だが、一人で遊ぶよりも二人で! さぁ少女よ、この天馬司と共に遊ぼうではないか!」

 

 バッ、と立ち上がって腕を大きく振り、胸を張って。自信満々に司が俺を立ち上がらせようとする。……この体、アルビノの特性あるからもしかしたら司のこの輝きでやられてしまうかもな、とどうでもいいことを思いついて、少し笑う。ちゃんと司が輝けるようになったんだなって再確認できたから。

 

「そうだな。司、何して遊ぶ?」

 

「ふーむ、そうだな。この公園にあるもので遊ぶとするなら――」

 

 そう言いながら司は顔を動かしてこの公園にあるものを確認していく。だがこの公園にあるものは最近の超安全志向な自治体の煽りを受けて精々鉄棒とブランコくらいしかない。

 次いで司が俺を見る。俺の格好はどこまでも動きやすいジャージだ。汚れても気にする必要がなく、量産品故に安いので作業着・運動着としてはこの上ないものである。ただし、俺の体は真っ白だし小さいし細い。運動が得意なようには見えないだろう。

 顎に手を当てて改めて情報を吟味する司。さほど時間を置かずにそのまま司がパッと顔を上げる。

 

「名も知らぬ少女よ、ショーは好きか?」

 

「あー、まぁこの公園で時々ショーの練習を見てるから……嫌いではない」

 

「それは行幸!」 

 

 答えを受けて明るく笑った司の目が変わる。見慣れた、とは言えないけれど時折見る顔だ。世界一のスターになるために、役に入り込む一瞬の間に生まれる表情。どこまでも真剣に、真摯に役に入り込むために生まれる真剣さ。そうして司の中で構築されたキャラクターが現実へと出力される。

 ……今日はどんな喜劇が見られるのか楽しみになるこの気持ちは体に釣られて変わらなくて良かったと心から思う。

 ショーを演じられる人間はたった一人だけ。観客だって俺一人しかおらず、司の大好きな大々的な注目はない。それでも司はショーを投げやりになんて行わない。だからこそ、多分こんなにも笑顔になれるんだろう。

 ――小恥ずかしくて、そんなこと本人に言うつもりは毛ほどもないけれど。

 

 

 


 

 

 

「……以上、終幕だ!!」

 

 見事にたった一人の観客のために一つのショーをやりきった司に拍手を送る。

 今即興で考えられたためか、やはり振り返ってみれば設定的に違和感を覚える部分はある。だがそんなことを言い出すには、俺は対価を払えていない。それに、司視点なら誰ともわからないような相手なんだ。正直司なら"なるほど、そういった点も考えねばな!"とか言って前向きなアドバイスとして捉えそうだがまぁ、俺が自分を許せなくなるから仕方ない。

 

「さすが、未来のスター」

 

「ハハハ、そうだろうそうだろ……うん?」

 

 いつもの言葉を何も考えずに贈ったが、そういえば今日の司は自分のことをスターであると言っていなかったことを思い出す。司も疑問には思っているが、まぁ普段から自分がスターだと思っているからか言った言ってないが曖昧なようで訝し気にコチラを見るだけに留まっている。

 ……まぁ、もうそろそろいい時間だしネタ晴らしをしてしまってもいいかもしれない。

 

「司、久しぶり。ショーの練習に時々付き合ってる暮羽(くれは)聖くんだぜ」

 

 手を振ってそう改めて自己紹介をした返答は圧倒的な量の疑問符を浮かべた表情だった。まぁ普通そうなるだろうなとしか思えない反応だ。うちの親とか奏姉が何であんなにすんなりと受け入れたのか、未だによくわかってないし。

 ……まぁ、奏姉は作曲できればいいやって思ってそうってわかる。けどマジでうちの親が謎なんだよなぁ……。

 

「お、オレの知っている暮羽は確か機械と好奇心が友達の男なんだが……?」

 

「合ってるよ。いや他にも友達は居るけどな?」

 

 司の中の俺の像が一体どうなっているのか疑問に思ってしまう言葉だったが、まぁさほど否定はできないので肯定する。

 そのままいくつか質疑応答があり、落ち着いたらしい司が天を仰いで一言だけ呟いた。

 

「世界は、広いな……」

 

 しみじみと呟かれるそれが何となくおかしくて笑ってしまった。









(ニーゴのメンツに聖君が含まれてないから絡ませるの)やっぱつれぇわ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。