ひぃひぃ言いながら禁呪の文字を書き写していたベスを、同じ体で眺めていたエリーゼであったが、ふと何かに気付いたように眉を上げた。レオニーを介抱していたマリィも、屋上の入口の方に視線を向けながら、どうしましょうかと呟いている。
「ベス」
「なんじゃい!」
「あなた、首が無くてもそれを続けられて?」
「知らんわ! やったことないもん」
「そう。なら試しましょう。雌豚、わたくしの首を持ちなさい」
「はいっ」
流れるようにエリーゼの首が落ちる。慣れた調子で体と分離した彼女の首を持ったマリィは、そのままどうですかと視線をベスへと動かした。抱えられたエリーゼも同様に、そちらを見て彼女の答えを待つ。
「それで、どうなの?」
《出来なきゃよかったんだけどなぁ……》
「首がっ!? エリザベス様の、首、がっ……!?」
首から上があったのなら吐いていたであろう溜息の仕草をしながらベスはぼやく。そのタイミングで、目の前の光景をようやく認識したレオニーが叫んだ。目を見開き、今日一番の青褪めた顔のまま、ぷつりと何かが切れたようにぶっ倒れる。
まあ普通の令嬢ならこうなるよな、とベスは気絶したレオニーを見ながらそんなことを思った。が、そうなるとほぼ同じリアクションだったアシュトンはこれと同レベルだというわけで。騎士としてどうなんだろうと疑問を覚えた彼女に向かい、エリーゼが余所事を考えている暇があるのかと文句を述べた。
《へーへー。んでも、何で急に分離したの?》
「そんなもの、決まっているでしょう」
首だけのエリーゼを持っているマリィは、先程から意識を屋上の出入り口へと向け続けている。危険や気配の察知は研ぎ澄まされている彼女は、エリーゼと同様にここにやってくる何かに気付いたのだ。先程の言葉はそういう意味である。
そしてそんな二人の態度で、ベスも何となく察する。再度溜息を吐こうとして、首から上がないため霧の吹き出しによる書き文字だけが宙に流れた。
《……んじゃ、邪魔にならないように気絶したこの四人まとめて遠くに行ってるね》
「ええ。勘のいい子は好きよ」
「わたしの方が早かったですよ!」
「雌豚、あれはわたくしの体よ」
「なるほど」
《納得すんなよ! その方向だとあたし褒められ損じゃん!?》
いいから行け、とエリーゼに促され、覚えてろよと捨て台詞を吐きながらベスは四人をまとめて抱きかかえ出入り口から距離を取る。向こうの邪魔にならないように、それでいて、即座に距離が詰められるように。そんな位置に陣取った彼女を見たエリーゼは、それでこそよと笑みを浮かべた。
「さて、雌豚。落とすことは許しませんわよ」
「死んでも離しません」
悪役令嬢の首を抱えるヒロインの図。乙女ゲームでこんなイベントが存在してたまるか、と微妙にずれたツッコミを抱きながら、ベスは作業を再開させる。ツッコミどころはそこではない、という極々普通の感性は彼女の中で死に絶えた。
ともあれ。そんなことなどおかまいなしに、屋上へと乱入してきた男達は、目標を確認すると武器を構え近付いてきた。どうやら話をする気は欠片もないらしい。
「ごろつき、にしてはきちんと武装しているわね」
「エリーゼさまを見ても驚かないみたいですし。事情を聞かされているか、洗脳されているか、みたいな感じでしょうか」
「そうね。見る限り生きているようだもの。……まあ、これからそうでなくなる可能性もあるでしょうけれど」
とはいえ、そうなったのならば破魔呪文を使えるマリィの独壇場である。ベスの持っている既にあまり参考にならない知識の中ではマリィの力は聖女の証、ことアンデッドと悪魔相手にならば絶対的な有利が取れるのだ。
まあつまり現状ではほとんど役に立たないわけで。筆記の成績は良くとも、実技の実力は精々中くらい、武装した人間相手には心もとない。そんな自身の認識を告げたマリィは、しかしエリーゼが何を言っているのかと口角を上げたので目を瞬かせた。
「授業と実戦は違うわ。相手は名や地位のある連中でもなし、何をしても勝てばいいの」
「なるほど、勉強になります」
「まあ、わたくしは真正面から叩き潰すのが好みだけれど」
それは知っています、とマリィは微笑む。そうしながら、じゃあ真正面から行きましょうと言葉を続けた。彼女にとって、搦手なりなんなりで自分が勝利するよりも、エリーゼが気持ちよく戦えることの方が重要なのだ。
まったく、とエリーゼは小さく息を吐く。ちらりと首だけの自身を抱えているマリィを見上げて、彼女は口を三日月に歪めた。
「言う通りに動きなさい、雌豚」
「はいっ!」
男達はまず離れた場所の気絶している令嬢達に目を付けた。抵抗されることのない連中をまず始末しておけば、目的はある程度達成される。そのような考えが透けて見えるその動きに、エリーゼはほんの少し目を細める。
「多少は考えが回るようだけれど、わたくしにとってはゾンビと誤差ですね」
キン、と彼女のイヤリングが煌めいた。マリィに命じて、男達に自身の首を向けさせる。気絶した令嬢達、ベスが禁呪を書き記しているその場所へと向かおうとしているそこを真っ直ぐに見たエリーゼは、笑みを消さないままその口をかぱりと開いた。
ゴォ、とその口から炎が吐かれる。美少女の生首から炎のブレスが放たれたことで、男達は一瞬に阿鼻叫喚に陥った。前も後ろも、目標へ向かう道も、退路も。あっという間に燃え盛る炎で塞がれたのだから。
「一応手加減はしておいたわ。完全な人間であることを考慮して、ね。感謝しなさいな」
「凄いです、エリーゼさま」
《ねえリアクションそれでいいの? 手に持った生首が火を吹いたらそれは間違いなくモンスターだよ?》
突然の光景で思わず動きを止めてしまったベスがそんなツッコミを入れたが、エリーゼは彼女に視線を向けると、こちらを見ている日があるなら作業を続けろと言い放つ。勿論ベスは反論した、んなこと言わても、と。
「どうしてかしら? 呪文の発動箇所は手である必要はない。常識よ」
「手足とか縛られた時に有効な手段、なんですよね」
《えぇ……割と普通の技術なんだ……》
「いいえ、高等技術ですよ? 学院の生徒でこれが出来る人は、エリーゼさま以外にはニコラスくんくらいだと思いますし」
《うん、あたしの言いたかったのはそういう意味じゃない》
もういいや、とついてもいない頭を振ると、ベスは見過ぎて目が痛くなってきた禁呪の文字の書き写しを再開する。首から上は無いので錯覚なのだが、それほど疲れているという感覚なのだろう。もはや自分でもどうなっているかが分からない状態だ。元より他人の体なのでしょうがない可能性がないこともないが。
そんなベスを見てよろしい、と頷いたエリーゼは、炎に囲まれてのたうち回る男達へと視線を戻す。ゾンビ化する素振りもないことから、どうやら本当にただの人間であったらしい。興味を失った彼女は、ねえ雌豚、と自身の首を持っている少女に声を掛けた。あれと向こうの令嬢は繋がっていると思うか否か。それを問い掛けた。
「見る感じ、当人同士はそうじゃないみたいですよね」
「そうね。操っている者は同じかもしれないけれど」
こいつらからは大した情報は手に入らないだろう。はぁ、と小さく息を吐き、エリーゼは目を細め炎を消した。既に男達は気絶している。始末する気はないので、拘束をしたいところだが、生憎そのための縄も代用品もない。
「まあいいわ。手足を折っておきましょう」
「わたしの力だとちょっと無理ですね、申し訳ありません。手頃な石とか探しましょうか」
「待て待て待て待て!」
「ここは自分に――ひぃ、と、ふう。任せていただきたい」
冗談でも何でも無くそう結論付けたエリーゼと、迷いなくそれを実行しようとするマリィ。そんな二人が行動を起こす直前に割り込めたニコラスは、相変わらず全然活躍の出来なかったアシュトンに頼み、男達の拘束を行い始めた。
いい加減この人数だと執務室では収まりきらなくなってくる。部屋の拡張でも申請するか、とそんなことを思いながら、フィリップはご苦労さまと彼女達に述べた。横では、そんな彼の思考を読んだのか、グレアムがなんとも言えない目を彼に向けている。
「ええ。それでフィリップ」
「ああ。今回の騒動を纏めた結果についてだな」
再度合体したエリーゼのその問い掛け、フィリップは彼女のそれをみなまで言う前に理解し答える。まずその前に、と改めて先程思った部屋の狭さの原因となる面々を、騒動の当事者達を眺めた。ここの部屋の主であるフィリップと補佐のグレアム、何故かいるエドワードを除いた六人。正確に三分の一と三分の二と四人。エリーゼとベス、マリィ、ニコラス、おまけのアシュトン。そして自身の完全なる場違い感を受けて可哀想なほど震えているレオニーである。
「わ、わた、私は、何故、ここに……?」
「状況が状況だからな。どうしても帰宅したいというのならば止めないが……」
「その場合、次にわたし達が出会うケイスさんって死体ですよね」
「ひぃっ!?」
「脅すなマリィ嬢。だがまあ、あながち間違いでもないだろうな」
真っ青な顔色で歯をガチガチと鳴らしているレオニーを見ながら、グレアムもマリィの意見に同調した。令嬢達がどこからか用意されたゾンビを操り、そして最終的に関係者を皆殺しにしようと刺客が乱入してくる。そんな流れである以上、無策でこの城を出てしまえば、翌日には行方不明となり、三日後にはボロ雑巾のような死体で発見されるであろう。
そうなれば、伯爵家が声を張り上げ、一連の事件との結び付きがそれによって暴かれる。一人の少女の死で、事件が解決に向かうのだ。
「そういうわけだ。すまないが、ケイス伯爵令嬢、君と別室で眠っている令嬢達は暫く王宮預かりとさせてもらう。『真実』を押し付けられないためにも、だ」
「は、はい。……お心遣い、感謝いたします」
深々と頭を下げるレオニーに、よかったですねとマリィは微笑む。現状、彼女が遠慮なく縋れる相手からのその言葉を聞き。マリィの手を涙目で握ったレオニーは、そのまま彼女の背に隠れた。マリィの方が背が低いので、微妙に隠れきれていない。
「まあ、俺としても。マリィの友人はきちんと助けたいからね」
「おい愚弟。いいのか? 彼女は」
「知っているよ。でも、今のマリィは彼女に危害が加えられると悲しむかもしれない。そして見捨てた俺を嫌うかもしれない。俺は兄上と違って、好きな人に嫌がられたくないんだよ」
「まるで俺がリザに嫌がられて悦んでいるような言い方はやめろ」
兄弟喧嘩再び。ぶっ殺すぞてめぇと言わんばかりの眼光をフィリップは向けていたが、エドワードはどこ吹く風。それどころか、さらなる挑発をしかねないほどである。もういい加減にしろ、と何度目かの溜息を吐いたグレアムは、話を続けようと二人に割り込んだ。
「それで、フィリップ。向こうの二人はどうする?」
そうしてグレアムは残りの面々であるニコラスとアシュトンに目を向ける。レオニーと比べると、彼等は発端である断罪劇の当事者でもある人物であり、彼女ほど始末される可能性も低い。誰かに情報を漏らすことさえしなければ、ここで解散させても構わないとさえグレアムは思っていた。フィリップも考えは同じなようで、二人の意思に任せると告げていた。
「なら、僕は残る。どうせ巻き込まるんだ、情報はあるだけ欲しい」
迷うことなくニコラスはそう述べた。まあそうだろうな、と大半の面々も思っていたので、そこに異論は挟まれない。
この問い掛けは、どちらかといえばもう一人の方が本題だ。
「自分は……現状、足手纏であると理解しています」
それでも、何か手伝わせて欲しい。そう言ってアシュトンは頭を下げた。フィリップやグレアムに、ではなく、ここにいる全員に頼み込んだのだ。
きちんと騎士の誇りを持っていますわね。そう言って頭を下げたままのアシュトンにエリーゼが声を掛ける。まあそれくらいはないと話にならないと口角を上げた彼女は、前回と今回、両方を踏まえて答えを出した。
「なら堅物。きちんと働きなさい。自身の立場をわきまえて、ね」
「……心遣い、痛みいる」
「フィリップ、いいのか? 勝手に決められているが」
「リザがいいなら問題ない。誤解するなよ。今回の事件の中心はリザだ、あいつが拾い上げるのならば、それなりの役に立つだろうと思ったからだ」
「言い訳が長いよ、兄上。好きな人の前で調子いいこと言っちゃって」
似たもん同士だなこいつら、と王子兄弟を見ながらベスは思う。現在彼女は完全なる野次馬状態であった。禁呪の文字の書き写しを提出し終わった今の気持ちは、かつての高校生時代、夏休みの課題を終わらせて余裕が出来た頃の気持ちに似ていた。
そんな彼女の感慨など露知らず。では本題にと今回の騒動を起こした連中から得られた情報を机に提出する。それを指し示しながら、グレアムが説明を始めた。ゾンビから得られた情報は、とっくに死んでいた連中だったというものだけ。あの令嬢達がどうにかしたものではなく、予め用意されたものだということが分かって、レオニーはほんの僅かであるが安堵の溜息を零した。
「そしてあの武装した男達は、無実を主張していた。とある令嬢を殺害しようと企んでいた賊の始末だと依頼主から伝えられたのだとか」
「あの人達、わたし達を皆殺しにしようとしてましたよね?」
「勿論その辺りを突いたが、あそこにいたのがその賊だの一点張りだ」
「自分の発言に何も疑問を抱いていなかったみたいだからね。多分、これまでと同じように何かしらされていたんじゃないかな」
マリィの問い掛けにフィリップが報告書を読み返しながら返答し、エドワードが繋ぐ。何だかんだこういう時には息が合うのか、と誰ともなしに考えた。
そういうわけだから、とエドワードが視線を動かす。その先にいるのはエリーゼ、だが、彼が見ているのは彼女ではなかった。それが分かっているのか、エリーゼも無反応である。
「ねえ、ベス嬢。あの男達からは何か感じなかったかな?」
「うぇ!?」
急に話を振られたベスが変な声を出す。当然エリーゼに咎められ、はいすいませんと彼女は項垂れた。グレアムはそんな彼女を見て、視線を逸らし肩を震わせていた。
それで何だっけ、とベスは問い掛け直す。あの時の男達に禁呪の痕跡があったかどうか。エドワードのその質問に、ベスは首を横に振った。
「エリーゼに言われたから一応見たけど、あいつらには何もなかったよ」
「ええ。有るか無いかはわたくしにも確認出来るもの。その点については保証しますわ」
「……成程、男達には、ね」
二人が言うのならば間違いないだろうと頷きながら、エドワードはどこか含みのある言葉を零した。フィリップもグレアムも、そんな彼の呟きに怪訝な表情を向けることもなく、同意するように、話の続きを促すように佇んでいる。
「ニコラス。すまない、自分は殿下達が何を考えているのかがさっぱりだ」
「僕も大まかな予想しか出来ないから、素直に向こうの話を聞いていた方が早いと思うけど」
はぁ、とニコラスが溜息を吐く。そうしながら、件の黒幕は禁呪だけで状況を作り上げているわけではないらしいと机の資料を眺めながら彼に述べた。
「だから男達に禁呪が使われていないのは別に不思議なことじゃない。というところから先があるんだろう、きっと」
「そうだね。あの連中には禁呪が使われていなかったけれど、依頼自体には禁呪が使われていた。というのがこちらの見解さ」
「肝心の証拠がないのが問題だが、まあ、仕方ない」
男達の持っていたという依頼書は綺麗さっぱり消え去っていた。禁呪の文字を見過ぎて限界ギリギリのベスが一瞬だけ何か見た気がすると言っていたのが唯一の手掛かりといっていい。
「恐らく、炎のブレスに反応して燃えたのでしょう。わたくしならばそうする、と予測して、予めそうなるよう仕込んでいたのね」
忌々しそうにエリーゼが舌打ちをする。自分の行動を読まれその上にいかれたのが悔しいのだろう。フィリップはそんな彼女を見て、最終的に勝てば問題ないだろうと頭を撫でる。思い切り振りほどかれたが、彼はしょうがないなと笑うのみだった。エドワードの先程の言葉に若干の真実味が帯びる。
「それで。消えて無くなった本当の依頼書の代わりが、あるのでしょう?」
「ああ、その通り。男達は傭兵を自称していたが、まあ脛に傷を持った連中ばかりでね。軽く調査すればすぐに分かった」
そんなことを言いながら、エドワードが自身の立ち位置を変える。ガタガタ震えるレオニーに引っ付かれたままのマリィの横で、彼は柔らかな笑みを浮かべた。
「エドワードさま? どうしたんですか?」
「ん? マリィの近くにいたくなったんだけれど。駄目だったかい?」
「えっと、別に、駄目じゃ……ないですけど」
いきなりどうした、とベスはそんなエドワードの行動に怪訝な表情を浮かべる。それに対し、エリーゼは別段気にすることなく、むしろまあそうだろうと言わんばかりに溜息を吐いていた。
「エロ王子がこっち来たから、腹黒王子も好きな人の横に移動したってこと?」
「さあ? あなたには関係ないことよ」
バッサリと切り捨てつつ、エリーゼは視線をフィリップ、グレアム、そしてエドワードの順に移動させた。まあつまりはそういうことよね。そう前置きし、頷く三人を確認しながら言葉を紡いだ。
「その見付かった依頼書に書かれていた依頼主の名前は、アップルトン男爵ね」
「ああ、そうだよ」
「え?」
それを聞いて、マリィは目をパチクリとさせる。そうして己を指差し、今出た家名が自分の家であること、聞き間違いではないことをしっかりと飲み込んで。
「エリーゼさま。では、わたしは自決しますので、もしよろしければ首を刎ねてもらえると」
「ちょいちょいちょーい! 素直に受け取りすぎだってば! 油断するとすぐ薩摩武士するのやめてくんない!?」
「ベスさん……」
「何を言っているか分からないけれど、その通りですわ! そんな、あの子達みたいなことをするのは許しません! 貴女がいなくなったら……誰がこの場で私を守ってくれるの!?」
「最後で台無しだよこいつ」
ちなみに騒いでいるのはこいつらだけである。エリーゼ、フィリップとグレアムは言わずもがな。ニコラスとアシュトンですら察したのか静かにしている。エドワードはマリィの反応を予想していたのか慰めようと手を伸ばしていたが、そんな空気でなかったのでそっと下ろしていた。
「でも、わたしは」
「いやそもそも、さっきの流れ的にこれ偽の依頼書でしょ? マリィちゃんの家を犯人に仕立てて、噂を本当にする仕込み的なやつ」
「あ、成程。……エリーゼさまが断言していたので、わたしはてっきり」
「腹黒王子、これどうにかして」
「素直なところが可愛いじゃないか。抱きしめたくなるくらいに」
「ホント似たもの同士だなあんたら! このエロガッパども!」
「おいベス嬢。愚弟の奇行に俺を混ぜるな」
フィリップの言葉にグレアムが思わず吹き出す。ついでにエリーゼも楽しそうに笑みを浮かべた。お前の体の中の人にはぴったりだな、という顔を見合わせた彼の言葉に、彼女はふん、と鼻を鳴らすことで返答とした。