戦争が急に終わったせいで無職になった元兵士の女の子が路頭に迷ってしまった話 作:エルカス
「げぼ、ご・・・・!ぺ!っぺ!テメエ女、もう許さ―――――ゲボォ!?」
「誰が!」
「バキィ!」
「誰を!」
「ボキ!」
「許さないって!?」
「ボゴ!」
「この薄汚い盗人野郎ぉ―――――――あ!?ぐぅ!?」
転倒する勢いで盗人に追突してそのまま地面にねじ伏せて馬乗りになって顔面に一発二発と入れていく。
そして三発目を入れてとどめの四発目を入れようとした直後に何かに激突されて吹き飛ぶ。
胴体辺りから力が加わったため首が痛い捩じり方をすると同時に地面と接する足の皮膚が捲れる。
「あ、が・・・!く、ぐぅ!離せ!放しなさ!誰だよもう!」
「っ、逃げて!アレン逃げて!」
「た、助かったよリーリス!このままそいつを袋叩きにして――――――」
「調子に乗るなぁ!」
「っくぅ・・・・!」
「リーリス!お前よくもリーリスを!」
「盗人が被害者面をするなこの・・・・・・・・・え、リーリス?あ、え、・・・・・な、何してるの・・・・?」
「え?・・・・だ、誰・・・知らない・・・・私、を・・・・知ってるの?」
「わ、私だよ・・・カフカ、チェルナー・カフカ、その顔の傷どうしたの・・・?」
「あぁ!?アンタこいつの事知ってんのか!?」
「黙れ盗人!お前何で私の友達を盗人仲間にしてるんだ!」
「うるせえ!生きるためにこんな事してんだ!」
私を突き飛ばした盗人仲間を肘で打ち解いて戦いの続きをしようとしたけれど受け身すら取らずに無様に転がる盗人仲間の顔を見て争う気概がなくなった。
リーリス、リーリス・シュタインホフ、私と同期で徴兵された兵士、他の子の面倒をよく見ていて皆からも慕われていてお母さんのように思っていると、よく周りから言われていた。
そんな彼女と想像しない形で再開したけど盗人をしているだとか私を害したとかそこら辺の事は一切どうでもよく、私は酷くただれていた彼女の顔にしか意識がいかなかった。
そして優しく、それでいて強さを感じる彼女の風格はどこにもなく、私とタイマンで負けかけた情けない男の背に守られてぶるぶると震えていた。
「見ていられないよ、どうしてそんな」
「おい!リーリスを馬鹿にすんのか!お前もリーリスを傷つけるのか!」
「そんなつもりないよ・・・・。でも、・・・・見てて辛いよ私も、・・・・・何か、欲しい物があるなら言って、助けになるから、こんな事はもうやめて」
「お、おう!?・・・・え?助けてくれるのか・・・・?」
「友達だもん、あんたは正直助けたくないけど話ぐらいは聞く」
「そうか!何だお前話せばわかるじゃねえか!」
決して内気ではなかったリーリスだがすっかり盗人の背に隠れて全く喋ろうとしていなかった。
痛々し過ぎて、殴り合いの方がもっと痛いはずなのに心に深い傷が付いたように私は脱力する。
直視できない程に彼女は可哀想だった。
だけれど見なかった事には出来ない、私だって彼女に沢山助けられた。なら恩返しをするべきだ、しなければならないのだ。
「俺はアレン・プリンツって名前だ、プリンツは気に入らないからアレンで呼んでくれ、プリンツは悪魔の名前だからな」
「うん?・・・まあ二人ともお腹は空いてない?」
「空いているぞ!大いにな!」
「コクリ」
「じゃあパンぐらいしかないけどあげる」
「マジサンキュー!いやー最高だぜ!ほらほら遠慮なく食べろよリーリス」
「うん・・・・あり、がと・・・・・アレン、・・・・カフカ、ちゃん?で、いいかな?」
「良いよ、私もリーリスで良い?」
「コクリ」
小さく頷くリーリス。
「いや本当助かった・・・なあカフカ、お前金に余裕はないか?」
「少ないけど手持ちはこれで全部。」
「あ、いやそうじゃなくて・・・・・」
「お金いるなら全部あげるよ?。」
「気軽に所持金を全部渡そうとするな!」
「でも困ってるんでしょ?」
「ありがたいよ!ありがたいけど俺達・・・・・まあ俺は何か身なりが良くないから店とかから追い出されるんだ、だからお金を貰っても使えないんだ」
「まあ臭いからね」
「っぐ」
実際臭いがストレートに言われて堪えているアレン。
髪もボサボサだし着ている服は浮浪者よりも穴が多い。
というか服と言うより下着ぐらいにボロボロでスカスカだ。
何をどうしたらここまで使い潰せるのか疑問に思ったけど盗人をしていればこうもなるかと勝手に納得した。
しかし待ってほしい、道の途中で忠告してくれた人は『昨日丸裸にされた奴が家に駆け込んできたからね』と言っていた、丸裸・・・・。
「追い剥ぎまでしてるって噂流れてたけど服ぐらいは替えたら良いんじゃない?」
「俺の服は別に良いんだよ!というか裸でも一向に構わん!」
「あなたが構わなくても周りがダメなの。そんなんだから入店拒否されるんじゃないの?」
「わ、悪かったな!」
「悪く、ないよ・・・・アレンは・・・・。」
「リーリス・・・・」
「呆けるな野生児」
「いて!?イテテ!耳を引っ張るな!」
「で、私の所持金じゃなかったら何を聞きたかったの?。」
「いや・・・・何だ、・・・・お金持ちだったら俺を雇ってくれないかなとか・・・・用心棒とかお掃除人とか・・・さ」
「ああね・・・・あー」
「やっぱ金持ちじゃないのか・・・カフカも」
「お金は・・・・ないけど、うん、よし・・・・口利きは出来そう」
「え、ホント?」
「ただし!」
「な、何だ・・・・人権か?」
「何で・・・?ゴホン、とにかく・・・・何がどうなって拗れて捻くれて今に至ったかを正直に、全部教えて、話はそれから」
「いいぞ、・・・俺から話せる全部を、教える」
アレンは戦争が終わってからどうして今日に至るまでを大雑把に話してくれた。
まず例に漏れず戦争が終わった事でアレンも家に帰る事になったけど家族が住んでいる場所がもぬけの殻になっていて所在が掴めずに各地を転々としていたらしい。
そんな中、道で行き倒れているリーリスを見つけたそうだ。
見つけた時のリーリスは酷い怪我を負っていた上に気絶していた。
すぐに警察に駆け込もうとしたけれど目を覚ましたリーリス自身がそれを拒否した。
事情を聞こうとしたけれど本当か嘘なのかは知らないがリーリスは何かあったかは覚えていなかったと言う。
というかリーリスと言う名前さえ所持していた軍隊のネームタグから暫定的にそう呼んでいたらしい。
道端に捨て置く事も出来ずに取りあえず1にも2にも治療とか食べ物の為にも働こうとしたけれど上手く行かずに結局lこの前の銀行倒産から始まる悪夢みたいな騒ぎで完全に行き詰まり盗人になってしまったという流れだ。
まあ彼の激情的な所を見れば兵士仲間はともかく普通の人にとっては大変危険だから誰が悪いかと断言はできない。
だから助けになれる私が何とかしなければならないのだと、より一層は私は決意を固めた。